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魔王「なぜ私がこんな人間じみた容姿をしてると思う?」
Part4


140 :名無しさん@おーぷん :2014/07/11(金)23:16:52 ID:EpeWZU9ND
勇者「なにを、なにを言ってるんだ……!」
魔王「ありのままの事実を話しただけよ」
勇者「うそを言うなっ!」
魔王「そうね。私もうそだったら幸せだったかも」
魔王「……でも。だったら、私のこのすがたはなに?」
魔王「どうして魔王であるはずの私が、人間のすがたをしてるの?」
勇者「……っ!」
魔王「私も父と母がどんな経緯をたどって、
   そういう関係になったのかは知らないけどね」

142 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:34:22 ID:nFqrBl9cg
魔王「勇者と魔王の争いは仕組み、
   勇者を兵器として使える段階にまでする」
魔王「そして、そのために魔王までもが人間に利用されてきた」
勇者「だけど、どうして魔王は逃げない?」
勇者「いくら監視がいるからって、逃走は不可能ではないはず」
魔王「魔王はどこに逃げても、場所を特定されるようになってたの」
勇者「そんなことできるはずが……」
魔王「できる。あなたにもあるじゃない、右腕の刺青が」
勇者「……刺青? これが場所を特定するためのもの?」
魔王「道具屋の店主に勇者であると証明するなら、刺青は普通に彫るだけでいい」
魔王「わざわざ魔術で施す必要はないわ」

144 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:36:55 ID:nFqrBl9cg
勇者「だけど、どうして僕にまで!?」
魔王「勇者が旅のつらさから逃げ出さないって保証が、
   どこにあるの?」
勇者「僕は逃げ出すなんてマネはしない!」
魔王「……わかってるわよ、生真面目なあなたが逃げないってことぐらい」
勇者「……それだけなのか?」
勇者「それだけで魔王は、人間たちに屈したっていうのか?」
魔王「……ほかにも理由があるって、そう言いたいの?」
勇者「ああ」
勇者「僕が魔王だったら、真っ先に勇者を殺しにいく」

147 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:43:32 ID:nFqrBl9cg
魔王「それはできないのよ」
勇者「なぜ?」
魔王「潜在的な能力に関しては、
   勇者と魔王はハナから最高値に達してるのよ」
勇者「言ってる意味がわからない」
魔王「魔王である私たちは、最初から自信の能力の扱いを熟知している」
魔王「それに対して、勇者は能力の扱いかたを理解していない」
勇者「じゃあ、僕はもう魔王をたおすだけの力はもってる……?」
魔王「まあ、あなたの場合は魔力の爆弾みたいなものだけどね」
勇者「爆弾……」
魔王「下手に能力の使い方のわからない勇者を刺激すれば……」
勇者「……自分にまで被害が及ぶ可能性があるってことか」
魔王「正解」

148 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:45:12 ID:nFqrBl9cg
勇者「……」
魔王「受け入れられないって顔ね」
勇者「当たり前だ」
勇者「ようは人類と魔物は、裏でつながっていたってことじゃないか」
勇者「僕はたんなるあやつり人形だったっていうのか……」
魔王「……」
勇者「でも……待て」
魔王「まだあるの?」
勇者「ある!」
勇者「もしお前の話が本当だとしたら、
   勇者が勇者であると特定できなきゃいけないっ!」

149 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:45:48 ID:GkCaPzEbK
なんかスゴイな

150 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:48:07 ID:nFqrBl9cg
勇者「国中の人間を調べるのか?」
勇者「この国の人口から考えて、そんなことはできないっ!」
勇者「なにより! それを国民に気づかれないで、
   実行するなんて……不可能だ!」
魔王「そんなに難しいことでもないわ」
魔王「そうよ、勇者の特定方法を説明してくれたのは、あなたじゃない?」
勇者「そんなわけあるか!」
魔王「覚えてないの、あなたが私に教えてくれたこと?」
魔王「『洗礼を受けるのは、国民の義務のひとつになってますし』」
勇者「!」

151 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:51:06 ID:R5oAMN04v
キタ━(゚∀゚)━!!

152 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:55:42 ID:nFqrBl9cg
勇者「洗礼? 洗礼が勇者の特定手段?」
魔王「幼児洗礼。全国民がごく自然に受ける儀式だし、
   それを勇者特定の手段なんて、誰も思わないでしょ?」
魔王「あとは英才教育でもして洗脳すれば、
   勝手に魔王をたおしに行く勇者の完成ってわけ」
魔王「あなたみたいな勇者がね」
勇者「そんな……そんなことって……」
魔王「そろそろ納得してくれないかしら?」
魔王「ちょっと気分が悪くなってきたから、宿に戻りたいの」
勇者「待て、待ってくれ!」
勇者「もうひとつだけ、納得いかないことがある」
魔王「……私と話をしていて、
   ここまで食いついてくれたのは、あなたがはじめてよ」

153 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:59:21 ID:iPCOSFt4H
待ってました!

154 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)00:59:46 ID:GkCaPzEbK
色んなとこにフラグみたいなんが立てられてて感心してる

155 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:08:05 ID:nFqrBl9cg
勇者「僕の言ったことを覚えてるか?」
勇者「『歴代の勇者で、教会送りにならなかった者は誰ひとりいない』」
魔王「ああ、そのことね。それがなにか?」
勇者「この旅は、人間兵器としての勇者を作るのが目的なんだよな?」
勇者「にも関わらず、すべての勇者が教会送りにされてるって、おかしいだろ」
魔王「記録から考えても。国が勇者を死なすように、
   仕向けてるのは間違いないわね」
勇者「戦士や賢者たちのように、復活させられない可能性だってあるんだ」
魔王「なら、発想を逆転させてみれば?」
勇者「逆転?」
魔王「勇者を教会送りにするメリットが、なにかあるのよ」

158 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:19:21 ID:nFqrBl9cg
勇者「僕を死なせて、得るものなんて……」
魔王「……そうね。たとえば、教会に送られてから、
   意識が戻るまでにどれぐらい時間がかかる?」
勇者「早ければ一日、遅ければ三、四日はかかる」
魔王「それだけの時間があれば、あなたのからだを
   いじくりまわすことも、十分にできるわね」
勇者「……は?」
魔王「まだまだ開発途中の医薬品や回復系の魔術に、
   これほど、つかりきった肉体ってあるかしら?」
魔王「……いや、ない」
魔王「それに。勇者のからだを調べられる機会って、そうないわよね」
勇者「そういう、ことなのか……?」

159 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:20:59 ID:kdKeTIkxr
こええよ…

160 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:27:51 ID:nFqrBl9cg
魔王「さらに、もうひとつ。あなたが私に説明した復活の感覚」
魔王「あれも興味深いわよね」
魔王「『死んでから意識が戻ったときは、
   自分のからだが自分のものじゃないみたいで』」
魔王「『絶えず、違和感がつきまとう』」
魔王「『しいて言うなら、魂が肉体にとまどっているような感覚です』」
勇者「なにが……なにが言いたい?」
魔王「仮に腕が丸ごと切断されたとして、
   それはいったいどうやって治すの?」
勇者「それは……」
魔王「神との契約は、死へ向かう魂を肉体に戻すことの許可だけのはず」
勇者「……」
魔王「あなたのからだーーそれ、本当にあなたのからだ?」

161 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:28:46 ID:R5oAMN04v
おい…

162 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:29:16 ID:kdKeTIkxr
うぎゃあああああああああああぁ

163 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:30:28 ID:ZcmyAXCXv
面白い

167 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:37:30 ID:nFqrBl9cg
勇者「あ、ああぁ……」
魔王「まあでも、これには証拠はない。邪推ってヤツなのかもね」
勇者「じゃ、じゃあ今の教会の話は……」
魔王「私のただの想像」
魔王「でも、からだをいじくりまわしてる可能性は高いわ」
勇者「……なにを根拠に言ってる?」
魔王「やっぱり」
勇者「?」
魔王「あなた、さっきからこのニオイに気づいてないんでしょ?」
勇者「ニオイ? ニオイなんてしてないぞ」
魔王「私が魔物を引きよせる香水を使ったの、見たでしょ?」
魔王「あまりにもニオイがキツすぎて、気分が悪いのよ」
勇者「!!」

168 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:38:31 ID:R5oAMN04v
そういうことなのか!

169 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:41:26 ID:iPCOSFt4H
きたか!

170 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:46:32 ID:nFqrBl9cg
魔物「あなたの嗅覚は、とうの昔におかしくなってるのよ」
勇者「……僕の鼻が?」
魔王「はじめて顔合わせをしたときから、 
   そうじゃないかとは思ってた」
魔王「『とても素敵なかおりだと思いません?』って、
   コーヒーのこと聞いたの、覚えてる?」
勇者「なんとなくなら」
魔王「焙煎したコーヒーのニオイよ」
魔王「鼻がつまってても、まずわかる」
魔王「なのにあなたは『よくわかりません、僕には』って答えたのよ」
勇者「……」
魔王「あなたの嗅覚はとうの昔に機能を失ってたのよ」
魔王「その原因が魔術か薬か、あるいは肉体をいじられたことなのか」
魔王「そこまでは判然としないけどね」

173 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:49:37 ID:fZgiRnRMu
ヤバイな
前半にめっちゃヒントばらまかれてたんだな

178 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:56:42 ID:nFqrBl9cg
勇者「僕は……」
魔王「ここまでの話を聞いて考えてほしいんだけど」
魔王「あなたは私を、魔王である私を殺そうとするの?」
勇者「…………僕は、勇者だ」
勇者「勇者は、魔王をたおさなければいけない」
魔王「どうして? それが使命だから?」
勇者「そうだ! 僕がお前を殺すこと、それは望まれたことだ……!」
魔王「そう。じゃあもうひとつだけ、いいこと教えてあげる」
勇者「……」
魔王「私はね、ある方にたのまれたのよ。あなたを殺すことを」
魔王「あなたの国の王にね」

179 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:58:16 ID:ZcmyAXCXv
うわあああああ

180 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:59:13 ID:R4q126211
勇者が悲惨すぎて泣ける

181 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)01:59:35 ID:R5oAMN04v
ほう

182 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)02:02:27 ID:iPCOSFt4H
勇者は散々だな

183 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)02:03:16 ID:nFqrBl9cg
勇者(頭が悲鳴をあげそうになっていた)
勇者(次々と襲ってくる受け入れがたい現実)
勇者(足元がしずむような感覚。呼吸が勝手に浅くなっていく)
魔王「魔王をたおせない勇者」
魔王「魔力を満足に扱えない勇者」
魔王「仲間すら殺してしまう勇者」
魔王「戦争の兵器になりえないあなたは、切られたのよ」
魔王「だから、私が駆り出された」
勇者(僕の意識はそこで途切れた)
勇者(ある意味、それは救いだったのかもしれない)
勇者(わずかな時間でも、なにも考えないですむから)

184 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)02:03:32 ID:nFqrBl9cg
つづく

186 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)02:04:26 ID:R4q126211

いっきに面白くなって来たな!

197 :名無しさん@おーぷん :2014/07/12(土)15:00:38 ID:DyUjaUEbR
面白い
でももっとビックリするような伏線が隠されてそうでワクワクする
C

209 :名無しさん@おーぷん :2014/07/13(日)22:18:13 ID:VChUJubgG

勇者(昔の夢を見ていた)
勇者(物心つくころには、自分が勇者だという自覚はあった)
勇者(魔王をたおすために、ひたすら訓練に明け暮れる毎日)
勇者(勇者として周りの期待を背負い、それに応えるために生きてきた)
勇者(僕だけじゃない)
勇者(魔法使いや戦士たちだって)
勇者(それなのに)
魔王「あら。思いのほか、早く起きたのね」
勇者「お前っ……!」
魔王「そこまで警戒しなくてもいいじゃない」

210 :名無しさん@おーぷん :2014/07/13(日)22:19:17 ID:PscNvHF66
更新か!

211 :名無しさん@おーぷん :2014/07/13(日)22:21:19 ID:VChUJubgG
勇者「ここは……宿か」
魔王「勇者っていいわね」
魔王「ここもタダで借りられるんでしょ、勇者の特権で」
勇者「お前には関係ないこと」
魔王「関係なくはないわ」
魔王「私もあなたの肩書きでここを借りてるし」
魔王「ついでに意識を失ったあなたを、ここまで運んだのは私なのよ」
勇者「……」
魔王「なんでにらむのよ」

213 :名無しさん@おーぷん :2014/07/13(日)22:24:35 ID:VChUJubgG
勇者「どうして僕を殺そうとしない?」
魔王「どうしてあなたを殺さなきゃいけないの?」
勇者「勇者は魔王にとって、宿敵じゃないのか!?」
勇者「お前なら、僕を殺すことなど容易だろ!?」
魔王「説明したはずよ。勇者と魔王の争いは仕組まれていたって」
魔王「私個人に、あなたを殺す理由は一切ない」
勇者「だけど! だけど僕は……!」
魔王「……勇者が存在して、魔王が存在しなかったことはない」
魔王「魔王が存在して、勇者が存在しなかったこともない」
魔王「そういう意味で、私たちの間には因縁とも呼ぶべき縁がある」
魔王「でもだからって、殺し合う必要性はどこにもない」