魔王「なぜ私がこんな人間じみた容姿をしてると思う?」
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Part1
魔王「なぜ私がこんな人間じみた容姿をしてると思う?」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1404830284/
1 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:38:04 ID:
YORUUUqRO
魔王「それとも。まだ私が魔王だって信じられない?」
勇者「……この禍々しい魔力、まちがいなく魔王のそれだ」
魔王「私もあなたが勇者だって本能的にわかる。
そしてそれは、あなたも同じようね」
勇者「だけど、どうして? なんで魔王が人間のすがたを?」
魔王「そんなに私の見てくれが重要?」
勇者「当然だ。魔王が人と寸分変わらないすがたをしてるなんて」
勇者「そんな話、聞いたことがない」
4 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:40:35 ID:
YORUUUqRO
魔王「やっぱり人間ってなり形にこだわるのね」
勇者「……」
魔王「腰が細いほうがいい。足は小さいほうがいい」
魔王「人間の女ってたいへん。私だったら耐えられないわ」
魔王「まあ、容姿にこだわるのは人間だけじゃないけど」
勇者「魔王が人間について語るなんて、滑稽だな」
魔王「滑稽、ね。滑稽なのはあなたでしょ?」
勇者「なに?」
魔王「自分がなぜ旅をさせられているのか。
自分がなぜ魔王をたおさなければいけないのか」
魔王「あなたは考えたことがあるの?」
5 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:41:21 ID:EMtYQ8t4T
なん…だと…
6 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:44:07 ID:
YORUUUqRO
勇者「なにが言いたい?」
魔王「勇者と魔王の争いは仕組まれていた」
魔王「人間によってね」
勇者「……」
魔王「『なにを言ってるのかわからない』って顔ね」
勇者「さっきからお前はなにを言ってる?
人間がそんなことをする理由がーー」
魔王「あるのよ。人間には。
勇者と魔王の争い。それを仕組む理由がね」
勇者「僕がお前の言葉を信じるとでも?」
魔王「あなたは、すでにヒントを見つけてるのよ」
7 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:44:40 ID:BZKpKpBuc
これは久々に期待したくなるスレ
10 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:45:50 ID:
YORUUUqRO
魔王「そして答えなら目の前にある。勇者、あなたの目の前にね」
勇者「目の前?」
魔王「そう。人のすがたをしながら、魔王である私」
魔王「この私の存在が、すべてを証明する答えなのよ」
11 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:47:42 ID:
YORUUUqRO
勇者(そもそもこの女は)
勇者(パーティーを失った僕のために、派遣された尼僧じゃなかったのか?)
勇者(その女が魔王だった?)
勇者(なのに、どういうことだ?)
魔王「さて、振り返ると言っても。
全てを振り返っていたら時間がもったいない」
魔王「重要な部分だけを、切り取っていきましょ」
12 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:49:32 ID:lVPhMW3R8
ここからどうなるか
13 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:49:39 ID:LHdtDayH8
そもそも魔王なんていないからなw勇者も
14 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:50:04 ID:
YORUUUqRO
◇
勇者「あなたが派遣された尼僧、ですか」
尼僧「お会いできて光栄の至りでございます、勇者様」
勇者「そんなふうに畏こまらないでください」
勇者「僕はあなたの想像してるような勇者じゃないだろうし」
尼僧「たしかに。私の想像していた勇者様とは、かけはなれてますわ」
尼僧「顔色もパンみたいです」
勇者「……朝の顔はいつもこんな感じです」
勇者「そんなことより、今後の旅のことについて話をしたい」
尼僧「あっ、その前にコーヒーの注文してもいいですか?」
勇者「……どうぞ」
15 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:51:06 ID:lVPhMW3R8
しえん
16 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:51:50 ID:Lqsgt1q3g
おっ始めたんか
楽しみにしてるよ
17 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:51:51 ID:
YORUUUqRO
尼僧「勇者様も眠気覚ましのために、飲んでは?」
勇者「コーヒーは甘いものがないと飲めないんで、ミルクなら」
尼僧「奇遇ですね」
尼僧「私もコーヒーは、必ず甘いものと摂取するようにしてます」
勇者「はあ」
尼僧「そのほうが、コーヒーのうまみも引き立ちます」
勇者「……朝から食事の話はしたくないです」
尼僧「あら。これは失礼」
勇者「今後の旅の話をしましょう」
19 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:55:00 ID:
YORUUUqRO
勇者「魔王討滅の旅はあまりにも過酷です」
尼僧「そうらしいですわね」
尼僧「勇者様一行の旅の記録、『冒険の書』を何冊か拝読したことがあります」
尼僧「ですが。実際のそれとは、ずいぶんちがうようで」
勇者「しょせん『冒険の書』は娯楽。現実とはちがいます」
勇者「歴代の勇者で、教会送りにならなかった者は誰ひとりいない」
尼僧「勇者様だけでなく、その勇者様のお仲間もでしょう?」
勇者「はい。それぐらい旅は過酷なんです」
21 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:57:49 ID:
YORUUUqRO
尼僧「旅が過酷であることは、重々承知していますわ」
尼僧「勇者様の仲間のうちのふたりが、
教会どころか、あの世に送られていることもね」
勇者「……」
尼僧「死からよみがえるというのは、いったいどんな感覚なんです?」
勇者「どうしてそんなことを聞くんですか?」
尼僧「死から逃れることは、私もできないので」
尼僧「普通は死んだら死ぬしかないんですよ、どんな生物も」
尼僧「あなたたちを除いて、ね」
勇者「……あの感覚を言葉で伝えるのはむずかしい」
23 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/08(火)23:58:47 ID:fTVc3XW61
僧侶じゃなくて尼僧ってところにこだわり感じる
24 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:01:44 ID:
tqju4CcEj
魔王「なぜ私がこんな人間じみた容姿をしてると思う?」
勇者「死んでから意識が戻ったときは、
自分のからだが自分のものじゃないみたいで」
勇者「絶えず、違和感がつきまとう」
勇者「しいて言うなら、魂が肉体にとまどっているような感覚です」
尼僧「なるほど」
尼僧「神と契約した勇者様一行は、
肉体の一部があれば、魂の復活が可能と言われてます」
尼僧「しかし、魂のありかである肉体がなければそれも不可能」
尼僧「戦士様と賢者様は、肉体の一部すら残らず亡くなったそうですね」
尼僧「勇者様の魔術のせいで」
勇者「……僕は自分の魔力をまともにあやつることができません」
26 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:03:48 ID:
tqju4CcEj
勇者「剣の腕なら誰よりも優っている自信はあります」
尼僧「自慢ですか?」
勇者「自慢です、幼少のころからずっと訓練を受けてきた」
勇者「勇者になるために」
尼僧「けれど。魔術の才能に関してはまるっきりなかった、と」
勇者「簡単な魔術だったら、問題はないんですが」
勇者「膨大な魔力を必要とする魔術になると、とたんにダメになる」
尼僧「魔王城に近づくほど、魔物は手ごわくなりますものね」
勇者「ええ。剣術だけではもはや、魔物に太刀打ちできない」
27 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:05:31 ID:
tqju4CcEj
尼僧「そして、いよいよ魔術が必要な状況になった」
尼僧「ところが、使ってみたら暴走して仲間を殺めてしまった」
尼僧「しかも、塵ひとつ残さず」
勇者「僕のせいで、あのふたりは……」
尼僧「勇者様、もうひとつお聞きしてもよろしいですか?」
勇者「なんでしょうか?」
尼僧「どうして魔法使い様を殺さないのですか?」
勇者「え?」
尼僧「魔法使い様は、現在この街の医療機関で治療中なんですよね?」
28 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:06:04 ID:x196F6mMg
珍しく礼儀正しい勇者だね
29 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:07:08 ID:MWbYhhJhC
尼僧っつか魔王ぶっちゃけてるなww
30 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:10:57 ID:
tqju4CcEj
尼僧「治療に時間をあてるなら、教会で復活させたほうが手っ取り早い。
それに、魔法使い様の苦しむ時間も減りますよ?」
勇者「神に仕える身で、よくそんなことを言えますね」
尼僧「今は国に仕える身です」
尼僧「もう一度聞きます。どうして殺さないのですか?」
勇者「……」
尼僧「……このことは、とりあえず保留にしましょう」
勇者「僕は……」
尼僧「勇者様?」
勇者「いいえ、なにも」
31 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:14:16 ID:
tqju4CcEj
尼僧「そういえば最近は、
教会による魂の救済を、命を弄ぶ所業と批判する知識人が増えてるとか」
勇者「『新教会人』たちのことですか?」
尼僧「そうそう、それです」
尼僧「神と契約してる勇者様たちにたいして、
そんな批判をするのも、的外れな気がしますけど」
尼僧「そんな批判をなさるぐらいなら、
もっと批判すべきことがあると思いますし」
勇者「批判すべきこと?」
尼僧「勇者様たちだけに、魔王殺しの旅をさせていることです」
勇者「それは……」
32 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:15:08 ID:pXK04mtFA
うん
33 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:17:44 ID:MWbYhhJhC
RPGのタブーに魔王が触れるんかい
34 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:17:56 ID:
tqju4CcEj
勇者「それは、仕方ないことです」
尼僧「仕方ない? なぜ?」
尼僧「国が兵力を注ぎこめば、魔王を滅ぼすことは不可能じゃないでしょう」
勇者「あなたの言うとおり、不可能ではないかもしれません」
勇者「でも、そうすることによる被害の規模は、はかりしれません」
勇者「魔王だけが人類の敵ってわけでもない」
勇者「人びとの生活をおびやかすのは、むしろその魔物たちです」
尼僧「つまり。街を守ることに兵士を割くから、
魔王討滅には回せない、と」
勇者「それだけじゃありません」
勇者「小規模ながら、人間どうしの戦争だってある」
勇者「だから僕たちだけで、魔王をたおすしかないんです」
35 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:19:34 ID:
tqju4CcEj
勇者「僕からも質問いいですか?」
尼僧「ええ、ぜひ答えさせてください」
勇者「あなたは勇者とその仲間を、
どういうものと、とらえていますか?」
尼僧「あやつり人形」
勇者「……はい?」
36 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:21:33 ID:
tqju4CcEj
尼僧「ああ、ごめんなさい」
尼僧「アレです。窓から広場が見えますよね?
ほら、人形師がマリオネットをやってます」
勇者「だから、なんですか?」
尼僧「はじめて見たので、すごく惹かれちゃって」
勇者「僕はあんなものに、興味をもてません」
尼僧「あら、残念」
尼僧「……勇者様の質問の答えですが、『英雄』でしょうか?」
勇者「英雄か。僕も最初は、そんな甘っちょろい考えをもってました」
尼僧「では、ちがうと?」
勇者「僕はこう考えます、暗殺者だと」
37 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:24:05 ID:yYjndtZMi
仮に軍が魔王討伐に参戦したらどうなるんかね
38 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:25:02 ID:
tqju4CcEj
尼僧「暗殺者なのに勇者様一行が旅に出たことは、
国民には大々的に伝えられてるんですね」
尼僧「下手したら、魔物たちも小耳に挟むかもってレベルで」
勇者「……あくまで、たとえです」
尼僧「あら。ちょうどコーヒーが来ましたね。んっ……」
勇者「なにをしてるんですか?」
尼僧「かおりを堪能してるんですよ。ああ、すばらしい」
勇者「かおり、か」
尼僧「とても素敵なかおりだと思いません?」
勇者「……よくわかりません、僕には」
39 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:25:59 ID:APuB4hCXV
尼僧たんぺろぺろ
40 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:27:25 ID:
tqju4CcEj
◇
尼僧「これからどうなさるつもりですか?」
勇者「とりあえず、道具屋で薬の類を購入します」
尼僧「道具屋で、扱ってる物で役立つものがあるんですか?」
勇者「どういうことですか?」
尼僧「勇者様と会うまでに、私もいくつか街の道具屋をたずねてますけど」
尼僧「戦闘中に使えるものはなかったはずです」
勇者「表向きには、僕たちが使う物は販売されていません」
尼僧「勇者様たちしか、購入できない物があるってことですね」
勇者「そういうことです」
43 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:32:48 ID:
tqju4CcEj
勇者「傷口を一瞬で直せたり、解毒を数秒で終わらせたりできる薬が、
世に出回ったら、確実に世の中は狂います」
尼僧「病院や癒しの術の使い手が、損をしますものね」
尼僧「しかし、どうやって勇者様であると店主に証明を?」
尼僧「なにか証明できるものがあるってことですよね?」
勇者「……あなたは、質問をするのが好きなんですね」
尼僧「あ、ごめんなさい。知りたがりなんです、私」
勇者「店に行けば、すぐにわかりますよ」
44 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:33:32 ID:
tqju4CcEj
つづく
45 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:35:40 ID:WUcah8w0D
乙
ファンタジー世界の病院って確かに存在意義が魔法のせいで微妙だよね
次の更新に期待
50 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)00:44:37 ID:S3qR2CTXz
どうせ最後は勇者と魔王がくっつくんやろ!
嫌いじゃないので砂糖多めで!
53 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)01:27:38 ID:P4OxkSYre
予想はよそう
54 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)01:28:01 ID:pXK04mtFA
>>53
55 :
名無しさん@おーぷん :2014/07/09(水)02:47:39 ID:UwKaaXuPE
これは面白い