勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」
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Part5
84 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:55:10.32 ID:
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勇者「俺は本能で動く人間です。一挙手一投足が全て本気だと捉えてくれても構いません」
町娘「……」
勇者「無論、ご家族に不幸があったばかりです。そんな気分には到底ならないでしょう。ですが……」
町娘「はい」
勇者「貴女に微笑みを与える約束ぐらいはさせてくれませんか?」
町娘「……あの」
勇者「なんですか?」
町娘「弟の仇をとっても弟は戻ってきません。きっと私は自分の不幸を口実に貴方に酷いことをいうかもしれません」
勇者「……」
町娘「心から笑えるときなんてこないかもしれません。それでも……勇者様は……」
勇者「貴女の不幸、俺に分けてください。貴女の苦悩を俺にください」
町娘「勇者様……」
勇者「貴女が笑ってくれるのなら、俺は悪魔にでも魂を売ります」
町娘「……あなたを信じても、いいんですか?」
勇者「俺を信じないで、どうするんですか?」
85 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 22:59:46.90 ID:
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兵士「勇者殿……」
店主「決まりだな」
勇者「行くぞ」
兵士「ど、どこへですか!?」
勇者「馬鹿野郎。ーー犯人を捕まえにだ」キリリッ
兵士「は、はい!!!」
町娘「ゆ、勇者様!」
勇者「……」
町娘「……お気をつけて」
勇者「心配しなくていいですよ。俺は、勇者。死にはしません」
勇者「貴女の笑顔を見るまではね」
町娘「はい」
店主「ちょっと気障だけど、いい人そうだなぁ」
町娘「うん……」
町娘「がんばってください……勇者様……」
86 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:04:02.11 ID:
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広場
兵士「ここで待つ!?」
勇者「ここで待っていればいずれ犯人から現れるはずだ」
兵士「しかし!! 危険すぎます!!!」
勇者「腰抜けがぁ!!!」
兵士「……!!」
勇者「俺は刺し違えても犯人を捕まえるつもりだ」
兵士「な、なんですって……」
勇者「それでこの町に平和が戻るなら安いものだろう」
兵士「勇者殿、そこまでの覚悟が……」
勇者「君はーー」
兵士「分かりました。では、もう何もいいません。勇者殿」
勇者「え? あの、近くで見張りをーー」
兵士「ご武運を!!!」
勇者「……ああ。まぁ、みてろ」キリリッ
87 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:08:25.33 ID:
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夜 広場
勇者「……」
勇者「(かっこつけすぎちゃった……)」
勇者「(い、いや、犯人が捕まれば俺は……あの子と……夢の生活が……)」
町娘『勇者様……』
勇者『……終わったよ。全部ね』
町娘『バカ! どれだけ心配したと思ってるの!?』
勇者『すまない。でも、これで君が未亡人になることはないだろ?』
町娘『……愛してるわ、あなた』
勇者『俺も。一目見たときから君の虜さ』
町娘『……してっ』
勇者「あ、いかん。ちょっと俺の伝説の剣が暴れだしてーー」
「グルルルル……」
勇者「……ん? この唸り声……」
88 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:13:06.75 ID:
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「グルルルル……!!!」
勇者「まさか、犯人は……」
狼「グルルル……!!」
勇者「こいつ……!?」
「見つけた……仲間を傷つけたやつ……!!!」
勇者「なに?」
狼少女「ガルルルル……!!!」
勇者「お前が犯人なのか!?」
狼少女「ガァァァウ!!!!!」
勇者「ちっ!! やるしかないか……!!」シャキン
狼少女「アァァアァアオ!!!!!」
勇者「ふん!!」ドガァ!!!
狼少女「ガッ……!?」
勇者「……次は、お前か?」
狼「グルルル……!!」
90 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:17:34.99 ID:
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「キャアアアアアア!!!!!!」
勇者「なに!?」
狼「……!!」タタタタッ
勇者「あ、待て!!」
勇者「何がどうなってるっすかぁ!?」
狼少女「ウゥゥ……にが……さ……な……」ギュゥゥゥ
勇者「ええい!! はなせぇ!!!」
狼少女「ガルルル……」
勇者「あぁぁ!!! 面倒だ!!!」ヒョイッ
狼少女「ウアァ!?」
勇者「行くぞ!!!」ダダダッ
狼少女「はなせ!! おろせ!!!」ドガッ!!!
勇者「いっってぇぇ!!! 寝てろ!!」
狼少女「ガァァァウ!!!」ガブッ!!!
勇者「かむなぁぁ!!!」
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:22:57.89 ID:
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酒場
勇者「どうしたっすかぁ!?」
狼少女「アァァァウ!!!」ガブッ!!
町娘「あ……あぁ……父さん……父さん……!!」
勇者「何があったっすかぁ!? しっかりすーー」
狼少女「血の臭い……嫌い……」
勇者「……」
町娘「あぁぁ……いやぁぁ……」
勇者「落ち着いて。犯人の顔は見てないんすか?」
町娘「あぁ……あぁ……ちがうの……ちがう……」
勇者「違う!? どういうことっすか!?」
町娘「あ……う……」
勇者「(ダメだ。錯乱してるっす。無理もないけど……)」
隊長「悲鳴が聞こえましたがいったいなにが……あ……」
狼少女「血の臭い……いっぱいする……」
93 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:28:36.85 ID:
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隊長「……勇者殿、その肩に担いでいる少女は?」
勇者「こいつは関係ないっす」
隊長「それを信用しろと」
勇者「俺が証人っす。悲鳴がしたとき、こいつは俺と一緒にいたんで。別件っすよ」
隊長「……とにかく、その少女は渡してもらいましょうか」
勇者「関係ないっていってるっす」
隊長「勇者殿!!」
狼少女「ウゥゥゥ……!!!」
勇者「唸るな!!」
狼少女「ガァァァウ!!!」ガブッ
勇者「いってぇ!!」
隊長「勇者殿……渡して……モラい……マスよ……」
勇者「だーかーらー」
狼少女「アアァ……!! ウゥゥゥゥ!!! 変……こいつ……変……!!」
隊長「ゆ、ウシャ……どノ……わた……して……コ、ろす……!!」シャキン
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:33:14.94 ID:
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勇者「な……!? なんの真似っすか……!?」
隊長「アァ……!!! コ、ろス……!!!」
勇者「殺すって言われてもまだ死にたくないんすけど……」
狼少女「アァァァウ!!! ガァァァウ!!!」
勇者「なんだよ、うっせえなぁ!」
町娘「コ、ろサナキャ……」
勇者「……マジすか」
狼少女「ヘン!! ここ、嫌い!!」
勇者「俺も嫌いだよ」
町娘「オォォォ!!!!」
勇者「待って!! 結婚の約束は……!!」
隊長「オォォォォ!!!!」
勇者「なんで……なんで……!!」
狼少女「にげる……!! にげるぅ……!!」ジタバタ
勇者「俺は呪われてるのかよぉ!!!!」ダダダッ
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:37:29.67 ID:
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路地裏
勇者「はぁ……はぁ……」
狼少女「はなせぇ……!!!」ググッ
勇者「お前、何かしたのか?」
狼少女「お前、仲間傷つけた!!」
勇者「……はぁ」
狼少女「あやまれぇ!!! あやまれぇ!!!」
勇者「ごめん」
狼少女「う……ぁ……?」
勇者「(犯人が捕まらないわけだ……)」
兵士「そうです。犯人はこの町に住んでいる人全てですから」
勇者「……!?」バッ
狼少女「ガルルル……」
兵士「勇者殿……」
勇者「貴方はなんともないんですか?」
97 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:44:35.65 ID:
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兵士「……私も数人、殺めています」
勇者「……」
兵士「分からないんです。何故か、突発的に人を……」
勇者「……!」
兵士「この町は呪われたんです……」
勇者「町を出れば……。いや、そういう問題でもないっすね」
兵士「隊長はいち早く事実を突き止め、解決の道を模索していました」
勇者「俺には言ってくれてもよかったんじゃないっすかね?」
兵士「そんなことをすれば、貴方は国王陛下にこう伝えるでしょう。あの町を滅ぼしましょうと」
勇者「(家畜を殺処分するように……)」
兵士「だから、外に情報を漏れないようにしていました……」
勇者「(隊長さんが一人かと聞いたのは、軍を引き連れてきたのかどうか知りたかったからか)」
兵士「隊長や他の者も原因を必死に探っています。だから、勇者殿。ここで見た事は、どうか……」
勇者「……少し、待っていてもらえますか? 貴方たちを救えるかもしれません」
兵士「な……!? ほ、本当ですか!?」
98 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:48:59.43 ID:
nfVCKxWoo
勇者「この町で起こっていることは解決できます。滅ぼそうなんて提案するわけないです」
兵士「勇者殿……」
勇者「とにかく待っていてください。1日……いや、半日もあれば……」
兵士「お、お願いします!! 勇者さまぁ!! わ、わたしたちを……町の人たちをすくってください……!!」
勇者「分かりました」
兵士「うぅ……」
勇者「とはいえ……」
狼少女「ウァ?」
勇者「お前は後回しだ」
狼少女「ナニが?」
兵士「ウゥ……」
勇者「今すぐいってーー」
狼少女「こいつ、ちがう!!」
勇者「……!」
兵士「アァァァ!!! ユ、うしゃ……!!!!」シャキン
99 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:54:06.94 ID:
nfVCKxWoo
街道
勇者「ーーここまでこれば大丈夫か」
狼少女「おーろーせー!!!」バンバンッ
勇者「……ほら」
狼少女「ふぎゅ!?」
勇者「行け。君に構ってる暇はなくなった」
狼少女「ガルルル……!!」
勇者「じゃあな」
狼少女「……」
勇者「(くそ……くそ……!! 例え正気を戻せたとしても……もうあの子は……!!!)」
勇者「うわぁぁぁあああああ!!!!!! ちくしょぉぉぉぉ!!!!!」
勇者「誰がこんなことしやがったんだぁぁぁ!!!」
勇者「俺の幸せを……かえしやがれぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
勇者「わぁああああああああ!!!!!!」
狼少女「わぁー」タタタタッ
100 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/21(月) 23:59:07.02 ID:
nfVCKxWoo
翌朝 農村
「はぁー。今日もいい天気だなぁー」
「いいことありそうだなぁ」
村娘「ふぅー」
医者「……よし。異常はなさそうだ」
馬「ヒヒーン」
医者「次は……」
勇者「ごめんくださいっす!!!!」
村娘「勇者様!?」
「おぉ!! どうしたんですか!!」
勇者「ちょっと来てくださいっす!!」
医者「な、なにか?」
勇者「実は……」
狼少女「……」
村娘「(あれ。あの子、勇者様の……彼女ではないよね……)」
101 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:05:02.87 ID:
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医者「……先の異変と酷似しているともいえますね」
勇者「確か薬あるんすよね。それ分けてください。今すぐに、ありったけ」
医者「しかし、効果があるかどうかは分かりませんよ。動物たちのとは別のもの、或いは改良されたものかもしれませんし」
勇者「んなこと言ってる場合じゃないっすよ!!」
医者「逆効果になってしまったら、どうするんですか」
勇者「うっ……。くそぉ、嫁さんがいる人はいちいち正論を……!! むかつくっす!!!」
医者「ともかく、その町の人を診てみないことには」
勇者「なら、みにいきましょう。今すぐ」
医者「私は獣医ですよ」
勇者「採血ぐらいできるんじゃないんすかぁ!?」
医者「……無茶苦茶な」
勇者「ガルルル!!」
狼少女「ガルルル……」
医者「守ってくださいますか?」
勇者「あんたが死んだら、悲しむ人がいるから、仕方なく守ってやる。ほら、いくっすよ!!」
102 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:09:02.02 ID:
WNVHldV5o
村娘「大丈夫?」
医者「勇者様がいるから心配ないよ」
村娘「気をつけてね」
医者「すぐに戻ってくるよ」
村娘「うん……」ギュッ
医者「……」ギュッ
勇者「……」
狼少女「おぉー」
勇者「で、なんでお前ついてきてんだ?」
狼少女「お前、仲間傷つけた。許さない」
勇者「謝っただろ」
狼少女「ゆるさない!」
勇者「……好きにしろ」
狼少女「するっ!!」
勇者「(この差はなんだ……。俺、なんかしたんすかね……神様……)」
103 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/22(火) 00:14:30.80 ID:
WNVHldV5o
東の町 詰め所
隊長「……勇者様」
勇者「今から血を採るんで、じっとしててください」
医者「……どうも」
隊長「助かるのですか?」
医者「それはまだなんとも。ですが、調べれば分かることもあるはずです」
隊長「そうですね。お願いします」
医者「はい」
勇者「貴方、解決策を模索していたそうですけど、どうするつもりだったんすか?」
隊長「……」
勇者「こうしてお医者さんに診てもらおうとか思わなかったんすか?」
隊長「……医者はもういない」
勇者「もしかして」
隊長「私が殺した……。診てもらおうとしたら……私が……」
勇者「(都合が良すぎる……。誰かが操ってるのか……)」