勇者「俺が勇者になった理由は女の子にモテるためだ。文句あんのか」
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Part16
344 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 19:01:29.62 ID:
MT50MpWlo
通路
兵士「ーー終わりました」
兵士長「そうか」
兵士「隊長。やはり我々で陛下と魔女を……」
兵士長「陛下はともかく魔女は無理だ。何人も返り討ちにあってるじゃねえか」
兵士「それは……」
兵士長「俺たちはもう毒に犯されてる。俺が今すぐお前を殺しても不思議じゃねえんだ」
兵士「しかし、このままでは」
兵士長「分かってる。俺たちの希望は最初から一つしかねえのさ」
兵士「勇者殿……」
兵士長「そういうこったな」
兵士「我々にできることはないでしょうか。勇者殿に頼りきりというのも」
兵士長「あの馬鹿がどうするかわからんが、それに合わせるーー」
衛兵「隊長!! 大変です!! 遠方より見たことのない隊が近づいてきます!!」
兵士長「……すぐに行く。各兵に通達。戦の準備をしろってな」
345 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 19:16:24.14 ID:
MT50MpWlo
見張り台
兵士長「見せてくれ」
門兵「は、はい!!」
兵士長「んー……?」
兵士長「(どこの一個小隊だぁ……? あんな人数で戦争しようってか? 魔女とくっついた国王を殺しにきたにしては戦力不足だろうが。しっかりしやがれ)」
兵士「隊長!! 隊の後方より馬車が……!!」
兵士長「んぁ? ありゃぁ……」
兵士長「(あの村にいたバカでけぇ馬じゃねえか……。まさか……)」
兵士「誰が乗馬しているのかわかりませんね。布をかぶっていて顔が……」
兵士長「(あのでけえ荷台にゃなにが積んである……? 武器? いやぁ、あんなちいせえ村にんなもんはなかったし、他からかき集める時間なんざない)」
兵士長「(姫か? いやいや、あいつがそんなバカなことするわけねえし……)」
兵士長「(兵隊だって揃えられるわけねえし……だったら、あんなでけえ荷台はいらねえよなぁ……)」
兵士長「(あいつが考えそうなことといやぁ……。待てよ。そういやぁ、魔女から獣の臭いしなくなってるよなぁ……)」
兵士「隊長?」
兵士長「おい。火だ。火を用意しろ。今すぐだ」
346 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/04/26(土) 19:38:26.30 ID:thhqUD5T0
あらやだ兵士長有能
347 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 19:48:36.14 ID:
MT50MpWlo
草原
勇者「先輩、こっちの考えわかってくれてるっすよね……」
狼「ガウッ」
勇者「顔出すな」
狼「クゥーン……」
勇者「しっかり頼むぜ?」
馬「ヒヒーン!!」
隊長「勇者殿!!」
勇者「あんたもしっかり罪滅ぼしするっすよ」
隊長「はい。この穢れた手でも大切なものが守れるのなら……!!」
勇者「けっ!!!」
隊長「は? な、なにか気に触るようなことを……?」
勇者「うるせぇぇぇ!!! さっさと先行しろぉい!!! 駄馬にでものってんのかぁ!? はぁぁん!?」
隊長「も、申し訳ありません!! 行くぞぉ!! 俺たちの力、魔女に見せ付けてやるんだぁぁ!!!」
「「おぉぉぉぉ!!!!」」
348 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:03:10.30 ID:
MT50MpWlo
城内 謁見の間
王「なに? どこの賊だ?」
兵士長「それはわかりません。しかし、あの統率の取れた動きは賊ではないでしょう」
王「……わかっているな?」
兵士長「……陛下の命は、我が身に代えても守ります」
魔女「私も守ってくれるわよね?」
兵士長「無論です」
王「いけっ!!」
兵士長「はっ!」
魔女「……信用して、大丈夫なの?」
王「お前の力があれば心配はないだろう?」
魔女「そうだけど……」
王「お前には傷一つつけさせやしない」ギュッ
魔女「ありがとう、信じてるわ」
魔女「(正面から来るつもりかしら……?)」
349 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:09:16.90 ID:
MT50MpWlo
城下町
兵士長「民間人の避難は済んだか?」
兵士「いえ! まだ完全ではありません!!」
兵士長「急げよ。どうなるかわかんねえぞ」
兵士「はっ!!」
兵士長「(さぁて……次は……)」
門兵「隊長!! 準備が整いました!! 点火しますか!?」
兵士長「俺が合図を出すまで待ってろ」
魔女「ーー火でどうするつもりなの?」
門兵「な……!?」
兵士長「貴女は城の中にいてください。危険です」
魔女「ねぇ、どうするつもりなの?」
兵士長「狼は煙に弱いそうですから。まぁ、獣の殆どは火を恐れますが」
魔女「……へぇ。そういうこと」
兵士長「さぁ、早く。城の中へ。町中を戦場にするつもりはありませんが、万が一ということもありますので」
350 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:28:39.68 ID:
MT50MpWlo
城内 妃の部屋
魔女「ふふふ……」
魔女「(可愛い娘だけでは飽き足らず、ペットまで盗むなんてね……)」
魔女「(まぁ、あの狼たちに実験台以外の価値なんてなかったから、壊れるまで使ってくれても構わないけど)」
魔女「(でも狼を手懐けたってことは、私の薬を無効化させたってことよね。どうりで娘も帰ってこないわけだわ)」
魔女「……」
『入ってもいいか?』
魔女「どうぞ」
王「間もなく衝突する。危険はないだろうが、一応私の傍にいたほうがいい」
魔女「ごめんなさい。用意しておきたいことがあるから」
王「何をするつもりだ?」
魔女「飼い犬に手を噛まれたくないもの」
王「しかし、先日町で使用したばかりだ。あの濃霧は出せないんだろう?」
魔女「そっちは作るのに手間が掛かるもの。でも、これなら……」
王「おぉ。もしや改良を加えたのか?」
351 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:41:06.53 ID:
MT50MpWlo
城下町
隊長「敵は近いぞ!!! すすめぇぇぇ!!!」
「「おぉぉぉぉ!!!!」」
門兵「止まれぇぇ!!!」
兵士「貴様たち!! どこに属する兵だ!?」
隊長「我々はこの呪われた町を救うためにやってきた!! 道をあけてもらうぞ!!!」
兵士「できぬ相談だ!! 賊めが!!」
隊長「お前たちもわかっているはずだ!! 魔女が世界を混乱に陥れようとしていることは!!!」
兵士「……っ」
兵士長「負けんな。ここで退けば、俺の嫁と娘がどうなるかわかんねえだろ? んで、お前のカーチャンもな」
兵士「た、隊長……」
兵士長「どこのバカなのかはこの際、きかねえ。でもなぁ、俺たちにも守りたい家族がいることは知っておいてくれ」
隊長「私にも守りたい大事な人はいる!!」
兵士長「だったら、お互いに戦うしかねえだろ? ほら、かかってこい」
隊長「ーーかかれぇぇぇ!!!」
352 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:46:00.79 ID:
MT50MpWlo
「「うぉぉぉぉ!!!!」」
「「おぉぉぉぉ!!!」」
隊長「はぁぁぁ!!!」
兵士「このぉぉ!!!」
兵士長「(始まったか……。あいつは……)」
勇者「ふんふーん」
兵士長「なーにしてやがる?」
勇者「どうも先輩。でも先輩の相手をしている暇はないっすよ」
兵士長「つれねえなぁ。ゆっくりしていけよ」
勇者「先輩はこいつらと戯れていてくださいよ」バッ!!!
狼「グルルルル……!!」
「「ガルルルル……!!!」」
門兵「お、狼……!?」
兵士長「てめぇ……!!」
狼「ガァァァァウ!!!!」
353 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 20:51:43.59 ID:
MT50MpWlo
隊長「勇者殿!! お願いします!!」
勇者「うっす!!」
兵士「行かせはしません!!!」
勇者「なんでっすかぁ? 俺が折角ボランティアで町を救おうっていってるのに?」
兵士「魔女は民を人質にしているのです!! 我々が貴方を通してしまうと……!!」
勇者「はぁ? んなのしらねーっすよ」
兵士「な……!?」
勇者「あんた恋人は?」
兵士「な、なんですか、いきなり……」
勇者「いるのか、いないのか?」
兵士「……います」
勇者「はぁぁぁ!? じゃあ、お前の大切な人なんて死んでよし」
兵士「なぜですかぁ!?」
勇者「恋人がいるやつなんて助けるかぁぁぁ!!!!! ボケェェェ!!!! アホー!!! しんじまえぇぇー!!!!」ダダダダッ
兵士長「(病んでるなぁ、あいつ……)」
354 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 21:00:45.59 ID:
MT50MpWlo
勇者「どこだぁぁぁ!!! 魔女ぉぉぉ!!! でてこいっすぅ!!!」
兵士「勇者殿を取り押さえろ!!」
勇者「俺を誰だと思ってるっすかぁ!!」
兵士「このぉ!!」
勇者「誰よりも強い兵士、それが俺だぁぁ!!!」ザンッ!!!
兵士「ぐぁ!?」
勇者「憎い……恋人がいる全ての男が憎い……!!」
勇者「今の俺を突き動かすのは憎悪だけなんだよぉ!!! あと妹の願いもちょっとだけ」
「とめろぉ!! 城の中にはいれるなぁ!!」
勇者「邪魔だ!! 邪魔だ!!! うわぁあああああ!!!!」
兵士長「勇者は俺が引き受ける!! それよりも火だ!!! 点火ぁ!!!」
門兵「了解!!」
狼「ガァァァァウ!!!!」
兵士長「狼を町にいれるなよぉ!!!」
門兵「はい!!」
355 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 21:04:57.76 ID:
MT50MpWlo
城内
衛兵「止まってください!!」
勇者「とまるかぁ!!」ザンッ
衛兵「ぎゃぁ!?」
勇者「魔女はどこだ!!」グイッ
衛兵「ぐっ……む、むこうに……」
勇者「よしっ」
衛兵「……お願いします」
勇者「うすっ」
勇者「……ん? なんだ、この匂い……?」
勇者「(この香り、どこかで……)」
衛兵「ガ……イ……ゆ、ウシャ……!!」
勇者「ちっ!?」
衛兵「ウアァアアアアア!!!!!」
勇者「眠ってろぉ!!!」
356 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 21:22:18.11 ID:
MT50MpWlo
王の部屋
王「いつ嗅いでも素晴らしい香りだ。幾億の花を揃えようがこの芳香には敵わんだろう」
魔女「あまり褒めないで。照れるじゃない」
王「さて、そろそろ城内にいる者はこの香りに誘われ、狂気しているはず」
魔女「町のほうへももうすぐ流れていくわね」
王「そうか……」
魔女「よかったの? 下手をしたら町民が全滅する場合もあるけど」
王「構うことはない。お前さえ居れば兵力も町民もいくらでも増やせる」
魔女「ふふ。そうね」
王「理想の世界を創ろうではないか」
魔女「私のこと、本当に愛してくれているのね」
王「前の妻に子どもができなかった。そして奴は私のことも愛しておらず、欲していたのは王族の椅子だけだった」
魔女「そうだったの」
王「妻に見限られた私は、私のことを愛してくれているお前に私は恋をした。それだけのことだよ」
魔女「嬉しい……」
357 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 21:48:33.79 ID:
MT50MpWlo
通路
兵士「ガァアアアア!!!!」
勇者「ふーん!!!」ドガァ!!!
兵士「ギィ!?」
勇者「(魔女がつけていた香水か何かが凶暴化の引き金になってたのか……)」
勇者「狼たちが言うことを聞いていたのも同じ理由か」
衛兵「オォォォオオオ!!!!」
勇者「うるせぇ!!!」ドガァ!!!
勇者「さっさと魔女を倒しにいかないと……。この臭いが町のほうまで流れたら……」
勇者「あぁ……もう……面倒だなぁ……」
兵士「オォォオオオ!!!」ガキィィン
衛兵「ォォアアアア!!!!」ガキィィン
勇者「おーおー。ああいう風に同士討ちしてくれてたら楽ーー」
兵士「ガァアアアア!!!」
勇者「こっちに来るなよ!?」
358 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 22:13:32.12 ID:
MT50MpWlo
城下町
兵士「こっちでいいのか!?」
門兵「指示ではそうだ!!」
兵士「しかし、これでは風の影響で……!!」
狼「ガッ……ウゥゥ……!!」タタタッ
「ガァァァ……!!」タタタッ
隊長「狼たちが町のほうへ……」
兵士「ほら見ろ!!」
門兵「だが!! 命令どおりに火は配置したんだぞ!!」
兵士「狼を町に入れないようにとも言っていただろう!!」
門兵「俺がしるかぁ!!」
隊長「(向こうの兵が混乱している……!! 今のうちに……!!)」
隊長「お前たち!! 急げ!!! 攻め入るぞぉ!!!」
「「おぉぉぉぉ!!!!」」
隊長「(勇者殿、こちらは任せてください!!)」
359 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 22:37:08.58 ID:
MT50MpWlo
王の部屋
王「ふふ……」
魔女「もうこんなときに……だめ……」
王「いいではないか……」
勇者「ここかぁ!!!」バンッ!!!
魔女「あら。いらっしゃい」
王「痴れ者が。場を弁えろ」
勇者「兵士たちがあんたらのために血を流してるのに、ちちくりあってんっすかぁ?」
王「勇者よ。お前は死罪が確定している。その前に答えてもらおうか。娘の居場所を」
勇者「てめえらみたいな超絶ハッピーどもに教えるものはなにもないっす!!!」
王「……そうか。まぁ、想像はついているがな」
魔女「どうせ、あの農村でしょう?」
勇者「それはどうっすかねぇ?」
魔女「バカな男ね。勇者は皆、死に急ぐ」
勇者「ああ、死に急いでるかもなぁ。俺はもうこの世界に絶望してるっすからぁ!!」
360 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 22:56:41.54 ID:
MT50MpWlo
王「頼むぞ」
勇者「あぁ!?」
兵士長「……」ブゥン!!
勇者「おぉぉう!?」ギィィン!!!
王「さぁ、行くぞ」
魔女「ええ」
勇者「なんだ!? 今からベッドインっすかぁ!?」
魔女「気をつけてね。凶暴化しているから」
勇者「くっそ……!! せんぱぁい!!!」
兵士長「ウァァアアオオオ!!!!!!」ドガァ!!
勇者「ごぉっ……!?」
兵士長「ユ……う、シャ……!!」
勇者「先輩、恨まないでくださいよ」
兵士長「オォ……ガ……!!」
勇者「俺、先輩には手加減できねえっすからね。何故なら……先輩のことずっと前から羨ましいって思ってたんだぁぁ!!! 幸せそうな家庭築いちゃってぇぇぇ!!!!」
361 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/26(土) 23:02:02.27 ID:
MT50MpWlo
王「勇者といえど、あの男には敵うまい。狂人化させれば無敵だ」
魔女「可愛い娘を迎えに行く準備もしないといけないわね」
王「すぐに会えるよ」
魔女「ええ」
狼「ガルルルル……!!!」
王「何……!?」
魔女「どうして……狼たちへの対処は……」
魔女「(煙が風に流れて城のほうへ……。あの男……!!)」
王「下がっていろ」
魔女「あなた……」
王「獣一匹、私の敵ではーー」
「グルルルル……!!」
「ガルルルル……!!」
王「くっ……!! 何匹入り込んだ……!!」
魔女「……」