Part16
414 :
>>1:2014/03/02(日) 21:12:02.02 ID:
tNQd1I9V0
私は人形。
言われた通りに行動し、
言われた通りを言葉にし、
自分と言うものがなく、
私の身体なのに、私に自由はなかった。
死なない身体。
死ねない躯。
誰もがそれを求めていた。
……
…
魔王「……ぅ……」パチ
先代「ようやく起きたか、どうだ」
先代「この部屋は……あの時のままだぞ?」
魔王 (……また、ここに戻ってきたんだ……)
先代「目覚めの感想くらい聞かせたらどうだ?」
魔王「…………」
先代「『また』だんまりか」
魔王「…………」
先代「まぁいい。時間は永遠と言えるほどある」
先代「さっそく始めるとしよう」ザッ
魔王「……っ」ビクッ
イヤアアアアッ
ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ
415 :
>>1:2014/03/02(日) 21:13:12.08 ID:
tNQd1I9V0
………
…
勇者「…………」
戦士「目を覚まさないな……勇者」
僧侶「もう、1週間……傷は治したはずなのに……」
魔法使い「………勇、者……」テ ヲ ニギル
コンコン
魔法使い「は、い……」
側近「失礼いたしますね」ガチャ
戦士「側近さん、か……。どうだったそっちのメンツは?」
側近「厳しいです」フルフル
側近「手酷くやられていて、あれでは使い物になりません」
戦士「そう……か」
側近「勇者さまの方も……未だ、起きませんか」
僧侶「魔法使いさま……少し休まれた方が良いかと」
魔法使い「……」フルフル
魔法使い「一緒に……いたい……側、に……いてあげ……たい……」
僧侶「魔法使いさま……」
側近「……魔王、さま……ご無事でいてください……」
戦士「魔王の嬢ちゃんは無事だろうか?」
側近「えぇ、早く助けにいきたい……」
僧侶「でっ、でも、勇者さまが目を覚まさない事には……」
側近「わかっています」
側近「魔王さまを助けるには……どうしても勇者さまの御力が必要ですので」
勇者「……」スピー…スピー…
側近「……」イラッ
側近「ただ、本当に寝ているのか確かめてもいいですかね?」
魔法使い「もう……すぐ……起、きる……よ」
勇者「……必ず……助ける。任せろ……」ムニャ
側近 (本当に……お願いします……)
416 :
>>1:2014/03/02(日) 21:15:01.89 ID:UGLJjeEQ0
ここは……どこだろう。
真っ白で何もない。
??『何もない? 当然だろうな。お前自身が何もない、だからここには何もない』
勇者「誰だ!?」
??『分からない振りをしているのか……それとも本気で分からないのか……』
勇者「な……お前……は……?!」
勇者?『僕はお前だよ』
勇者?『ようこそ、自身の中へ……クソ勇者殿』
勇者「俺、自身の……中?」
勇者?『あぁ、忠告があってな。それを伝えるために呼んだ』
勇者「忠告が……?」
勇者?『このままじゃ魔王に殺されるだけだ。姫のことは諦めろ……そして忘れるんだ』
勇者「殺される、だから諦めろだと?」
勇者?『そうだ……魔王は強く、冷酷で残忍だ』
勇者?『しかし魔王は姫のことにしか眼中にない。余計なことさえしなければ、こちらには何もしてはこない』
勇者「おい、ちょっと待て。さっきから何だ? 姫だの魔王だのと……」
勇者「魔王はアイツだろう? 能天気で嫉妬深くてさみしがり屋で……だけど優しくて、無邪気に笑う……」
勇者?『そうだったな。殺されるとわかっていても、助けに行くと言うのか?』
勇者「アイツは俺の仲間を助けるために着いてきてくれた……今度は俺の番だ」キッ
勇者?『本気なのか……?』
勇者「あぁ!」
勇者?『いいだろう……記憶を、かつて何あったのかを……そして』
勇者「記憶……?」
勇者?『見せてやろう……お前自身が誰なのかを』カッ
417 :
>>1:2014/03/02(日) 21:16:10.14 ID:
tNQd1I9V0
かつて、世界を闇が覆った。
光は遮られ、木々は腐り、水は淀み、世界が凍えた時代。
人々は絶望に喘ぐ中、一筋の光が如く闇の中でも笑顔を絶やさない少女がいた。
少女は人の国を束ねる王家の娘。
どんな絶望であっても、姫の心は闇に霞むことがなかった。
しかし、姫は闇に連れ拐われてしまう。
希望を失った人々の中、ただ一人の青年が立ち上がる。
どこから現れたか誰も知らない。
一人の青年は一振りの剣を手に、その闇に立ち向かった。
その戦いは熾烈を極めた。
七日七晩にも及んだ末、青年の持つ剣が光輝き、ついに闇を貫く。
世界は光を取り戻した。
人々は歓び、青年と、姫の帰りを待つ。
……だが、青年と姫はついに帰ってくることはなかった。
418 :
>>1:2014/03/02(日) 21:20:07.37 ID:
tNQd1I9V0
勇者「……絵本でよくある話だろ?」
勇者?『だが事実だ』
勇者「その姫とやらが、あの魔王……?」
勇者「だけど、この物語は何百年も前から……」
勇者?『なぜだかわからないか?』
勇者?『姿形を変えても、お前の魂に刻まれたこの想い……簡単には消せやしない』
勇者「待て、待て待て! その言い方、それじゃまるで俺が……その……」
勇者?『青年本人だ』
勇者?『姫を取り戻せなかった理由。それは彼女に深く関係している』
勇者?『彼女はこの世界を創った女神の生まれ変わりだ』
勇者?『生まれながらにして、死なない身体を持つ彼女を狙う魔物は多かった。しかし、その凄まじい光は魔物を寄せ付けはしない』
勇者?『だから魔王は世界を闇で覆い、彼女の力を弱めることにした』
勇者「そんな……」
勇者?『だが、闇が覆うほどに照らす光は強く、姫の力は増していく。だから魔王は彼女自身を狙うことにした』
勇者?『自分自身が狙われている事を知った姫は、自分がいなくなったあとの人々を護るために力を奮った。そして生まれたのが……』
勇者「俺……なのか?」
勇者?『皮肉にもそれが彼女の力を弱らせる結果となり、苦しむことになったがな……』
勇者「なんの話だ?」
勇者?『……さぁ、剣を取れ。そうすればかつての力を取り戻すことが出来る。そして、今度こそ、彼女を救ってくれ……』キィィン
勇者?『彼女の心を救えなかった、僕からの最後の頼みだ……』パァァァ
聖剣『……』
勇者「……よくわからねぇ事ばかりで何が起きて、どうなっていくのか分からない」
勇者「だが俺は俺だ! お前じゃない!!」
勇者「俺は勇者だ!! 闇を祓い、世界を救う!!」
勇者「魔王も、俺が必ず助ける。必ずだ。あとのことは任せてくれ」ガシッ
ズッ ジャキィィン
パァァァァァッ!!
青年「……頼んだよ」
……
…
419 :
>>1:2014/03/02(日) 21:24:17.62 ID:
tNQd1I9V0
パァァァァァッ!
魔法使い「み、みんな……! 勇、者が……!!」アセアセ
戦士「なんだ!? どうした!?」
僧侶「魔法使いさま?!」
側近「なんですか、この光は!!」
魔法使い「……ゆー、しゃ……」
勇者「……おはよう、みんな」
魔法使い「勇者……ぁ……」ダキッ
側近「……こ、これは一体……」
戦士「ようやく目が覚めやがったか? 置いていくところだったぞ、コイツ!」ガハハハ
僧侶「戦士さまったら、もう」クス
魔法使い「勇者……もう、起きない……かと、思……って……」グスグス
勇者「心配かけたな、もう大丈夫だ」ナデナデ
側近「……あなた……本当に勇者ですか?」
勇者「そう見えないか?」
側近「その力は……あの時の……」
勇者「……」
側近「勇者……さま?」
勇者「俺は俺だよ。それ以外の何者でもない」
側近「つくづく不思議な人ですね、あなたと言う人は……」フフ
魔法使い「……?」
勇者「魔王を助けに行こう」
魔法使い「……うん、彼女に……は、助けられた……借りが、ある……」
僧侶「えぇ、これが最後の戦いです!!」
側近「はいっ!」
戦士「行くぞ! みんな準備はいいか!!」
全員『おおっ!!』
勇者 (待っていてくれ……魔王。今度こそ助けてみせる) ギンッ
420 :
>>1:2014/03/02(日) 21:28:20.82 ID:
tNQd1I9V0
勇者「結局、ここまで来るんだな」
僧侶「これが……」
魔法使い「魔王……城……」
戦士「瘴気が濃いな……魔物の臭いもプンプン漂ってるぜ」
勇者「ずいぶん形状も雰囲気も、前と大分違うな?」
側近「はい、もともと先代の城を作り直したのですが……」
勇者「それだけ奴の力が並外れてる……か」
側近「先代は強いです……無駄な戦闘は避けて、魔王さまの奪還を……」
勇者「よぅし、そんじゃあ……」スラッ ジャキッ
側近「あ、あの……勇者さま? 何をする気」
勇者「轟雷」ガガッ!
ドドドドォォォ…… ガラガラガラ……
側近「……」アングリ
魔法使い「……」ボーゼン
戦士「やるじゃないか!」ガハハハ
僧侶「……」バタッ
勇者「行くぞ!」
側近「な、何してるんですかアンタ!? 気付かれちゃいましたよ、確実に!!」
勇者「どうせいつかは気付かれるんだ。それが早いか遅いかの違いだよ」アハハ
側近「あぁぁ……あなたは先代の強さをまるでわかってないのです!!」
勇者「わかっているさ……誰よりもな」
側近「……あなたは……」ハァァ
421 :
>>1:2014/03/02(日) 21:29:32.01 ID:
tNQd1I9V0
オオォォォォッ コロセェェェェッ
戦士「おー、おー……ぞろぞろ来たぞ!」
僧侶「ひぃ……数が多すぎません?」
魔法使い「……所詮……雑魚……蹴散らすのみ……」
勇者「言うね、魔法使い! んじゃ、一掃してやるか!」
魔法使い「任せ……て……」
側近 (一体、彼に何があったのでしょうか……まるで別人のように……そう)
側近 (かつて先代と戦った、あの人間のような……)
勇者「ボンヤリしてんなよ、側近! 魔王を助けるんだろ?」
側近「わ、わかっています!」
魔法使い「来るよ……!」
勇者「邪魔するな、雑魚共がァァァ!!」ヒュヒュン
勇者「双竜雷斬破!!」ズガズガァァァン
戦士「まーた強くなってる! こりゃ浮か浮かしてられんな!」ジャコッガシャッ
戦士「死にたい奴から前に出ろ! 特攻! 爆走圧壊撃ィィィッ!」ドゴォォォォォン
僧侶「戦士さま、かっこいい! 魔法使いさま、私たちも負けてられませんよ!!」
魔法使い「勇者のほうが……かっこいい……僧侶……合わせて……」
僧侶「はいっ!! 風よ風よ、往く疾きて……」ビュォォォォッ
魔法使い「燃え、盛る……火焔、と……交ざる……」ゴォォォォッ
魔法使い・僧侶「そして、新たなる誕生を!!」
魔法使い・僧侶「超新星……スーパー……ノヴァ!!」ギュォォォオオオッ
側近「……すごい……これが、勇者さまたちの力……」
勇者「魔法使い!」ダンッ
魔法使い「はいっ……天高く…………太古の支配者……吹き荒ぶ、嵐と……なりて……」キィィン
勇者「猛れ! 轟け!! 雷の神よ!!」
勇者・魔法使い「雷神……サンダーブレードォォォッ!!」ガラガラァァァァッ!
側近「本当に……一掃してしまうとは……」
422 :
>>1:2014/03/02(日) 21:31:08.84 ID:
tNQd1I9V0
戦士「魔王城の中は、一段と濃い瘴気だ……」
僧侶「禍々しい妖気が蠢いてるようです……」
魔法使い「……これ、じゃ……探知も……狂う……」
側近「魔王さまの居場所はきっと……あの部屋に違いありません……」グッ
側近「新手が来る前に、突破してしまいましょう……」
勇者「……と、行きたかったがお出迎えだ。歓迎してくれているみたいだな」
側近「!?」
先代「ようこそ我が居城へ。招待もしていないのに来てくれるとは……汝らは余程死にたいらしい」
勇者「勘違いしてないか? ここはもう姫の城だ。アイツの家に遊びに来るのに、わざわざ断りをいれる必要もないだろう」
勇者「アイツはいつだってオープンだったぜ?」
先代「口が回るじゃないか。一度は我に殺されかけた分際が……」ズォォォッ
勇者「勇者様を舐めるなよ……」バチンッ バチバチッ
ゴゴゴゴゴ……
僧侶「やはり……魔王の魔力は……桁が違いすぎます……」ブルッ
戦士「しかし、勇者だって負けちゃいない……」ゴク
魔法使い (勇者……あなたに、なにが……あったの……? これじゃ、まるで……)
側近「……勇者さま……」
勇者「側近……みんなを連れて先に行け」ボソ
側近「え……!? 一人で先代を相手にするつもりですか!?」
勇者「心配するな……魔王を助けたいんだろう?」
側近「し、しかし!!」
勇者「アイツは強い……手加減が出来ない。それに……」
勇者「お前たちがいると、全力を出せないんだ」
側近「……っ!」
勇者「頼む。今度こそ魔王を……姫を助けたいんだ」
側近「わかり……ました……っ!!」
勇者「ありがとう」ニコ
側近「必ずあとから追い付いてください……魔王さまが待っているのは勇者さま……あなたなのですから」
勇者「あぁ……」ギンッ
423 :
>>1:2014/03/02(日) 21:32:04.09 ID:
tNQd1I9V0
先代「死ぬ算段はついたか?」
勇者「お前を倒す算段ならついたな」
先代「減らず口を……!!」ゴァッ
勇者「側近、行けェェ! 雷竜咆!!」ガォォォォッ
先代「貴様……!? この力は……!!」
ドゴォォォォォン!!
側近「みなさん! 私について来てください!!」ダッ
僧侶「え!? ゆ、勇者さまを置いていくのですか?!」タタッ
戦士「しかし、俺たちではレベルが違いすぎる!! 勇者がそうするように言ったんだろ!?」ダッ
魔法使い「勇者……待ってる、から……!!」タタッ
勇者「オラァァァァアアアッ!!」ガガガガガガ
先代「グヴゥゥゥゥッ!?」
ドドドドォォォ…
勇者「さぁ……一対一だ。心置きなくやろうぜ……魔王!!」ヒュッ ジャキッ
先代「貴様ァァァ……!!」ググッ
先代「なぜ貴様がその剣を持っている!! なぜ貴様があの男と同じ力を持っている!?」ズドオォォオッ
勇者「…………」
先代「我を深き眠りに付かせた忌々しい光……今世こそ、この手で葬り去ってやろう!!」スッ
ゴォォォォン!! ……バシュッ
勇者「ハァァァッ!」ビュォッ
先代「ヌゥゥゥッ!!」シャッ
ガキィィン!! ズシャァァァッ
先代「黒の衝撃!!」ドンッ
勇者「光の一閃!!」キィィンッ
先代「オオオォォォッ!」
勇者「はぁぁぁぁっ!!」
……
…
424 :
>>1:2014/03/02(日) 21:34:30.31 ID:
tNQd1I9V0
とりあえずここまで!
修正したい箇所を発見したので
ちょっと、直してきます。
直し次第また投下します。
425 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします:2014/03/02(日) 21:36:04.07 ID:z5y9npAY0
乙乙。
順調に厨二路線を突き進んでいるな。
426 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします:2014/03/02(日) 22:52:22.69 ID:4/+K7fBao
いいねえ
こういう熱い厨二的展開好き
自分の中に何かいるとか、一緒にいると巻き込まれるとか王道だけどそれがいい
428 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします:2014/03/03(月) 13:05:28.79 ID:J35yAXdXo
王道いいね!!
しかし魔王が心配だ…
429 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします:2014/03/03(月) 17:29:15.86 ID:dMvQn7730
これが毎日の楽しみや…