Part9
106:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/27(土) 16:11:26.53 ID:
q/igm2keO
魔女「っつーわけで、はるばる来たぜ妖精界!」ドーン
術師「工房に帰る……んじゃなかったの?」
魔女「何言ってんだよ。
『ハイパーかっこいい魔女と不愉快な仲間達の冒険・妖精界征服編』に
主人公が居ないわけにはいかないだろーが。
だからこないだの『門』だって妖精界仕様に改造してやったんだろ」
術師「自己顕示欲……のかたまり」
魔女「うるせぇー!」
少女「とにかく、とりあえず首都を目指しましょう。
あまり目立たないように……ってもう手遅れかな……」
侍女「以前より更に荘厳で巨大な造形になっていますね、あの門」
魔女「階段も13段まで減らした改良型だぜ。
妖精界にも似たようなもんはあるだろうが、
地獄にも竜界深部にも対応してるやつはそうそう無いな」
術師「すぐ張り合いたがる……お子ちゃま」
魔女「お前だけ今から地獄行くか? あ?」
163:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/28(日) 22:14:21.23 ID:
GsBlRFawO
少女「侍女さん、地図を」
侍女「はい。すぐに用意いたします」ガサゴソ…
バサッ、
侍女「こちらが妖精界の地図です。
書庫にあったものですが、これはかなり正確なものかと思われます」
魔女「お、僕の持ってるやつより細かいな」
術師「魔導式……が施されてる」
侍女「暦に従った回路に魔力を流せば、
その年月日時点での移動地形や浮島の座標も厳密に表示されます」ポゥ…
ジジッ…ザザザザ……
魔女「おー、地図が書き換わったな」
侍女「便利……」
165:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/28(日) 22:26:14.04 ID:
GsBlRFawO
少女「今いる場所もこの印を見れば一目瞭然ですね」
術師「首都は……これ?」
少女「それですね。
ここからだとそんなに距離は無いはずです」
魔女「そうなるように設定したからな。
……まぁ問題と言えば、僕が使ってた地図はそんなハイカラなもんじゃなかったから、
移動地形に乗った妖精軍哨戒基地がすぐそばに来てたってのを知らなかったっつーことだ」
術師「三方向から多数……の魔力源の移動……を感じる」
魔女「早速お出迎えか」
侍女「どういたしましょう?」
少女「ここで捕まるわけにはいきません」パリッ、パキキッ
166:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/28(日) 22:41:19.94 ID:JXzBhmcLO
かぜは治ったのか?
168:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/28(日) 22:55:03.62 ID:
GsBlRFawO
>>166
熱は下がったが、今は謎の腹痛に襲われてる。
169:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/28(日) 22:58:16.59 ID:
GsBlRFawO
「目標消失しました!」「機器系統は全て異常無しを示しています……」
「探せ。まだこの付近にいるはずだ」「はッ! 直ちに!」
「ここに足跡が……」「結界解析班が到着……」
魔女「なんだ、腕慣らしに一発かましてやろうと思ったのによー」
術師「目と鼻の先……なのに全然気付かれない……」
少女「『門』の構造を応用した術式です。
魔導的存在階層を僅かにずらしたことで、
わたし達は通常階層からは魔力質量ゼロとしてしか認識されません」
侍女「つまり、彼らから見れば完全に『消失』したと言うわけでございますね」
魔女「なるほどなー。術式の痕跡も残らないから追跡も難しいってことか」
術師「しかも全員分……無駄魔力垂れ流し……してるコレまで……すごい」
少女「あまり長くは保ちませんけどね」
魔女「一々喧嘩売りつけないと喋れねぇーのかてめぇーは」
170:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/28(日) 23:17:35.99 ID:
GsBlRFawO
少女「では、このまま首都の王宮まで行きましょう」パキッ、パリッ……
魔女「そんなに保たないんじゃねぇーのか?
あの門を連続稼働させてるようなもんなんだろ?」
少女「そうですね。
大体この人数だと三日間ぐらいかな」
術師「それでも三日……」
魔女「改めて、大概規格外だなてめぇーも」
侍女「しかし、近いとは言ってもここから首都までは大河を越えなければなりませんし、
三日で歩ききれる距離でしょうか?」
少女「大丈夫ですよ。
わたしに考えがあります」
171:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/28(日) 23:31:15.30 ID:
GsBlRFawO
皇帝「……わかった、下がって良いぞ」
大臣「失礼致します」
……バタン。
皇帝「やれやれ……戦争か……」
ーーーーバキンッ
少女「どうも初めまして、皇帝さん」ペコリ
術師「ここが……執務室……すごい結界装置……」
魔女「お疲れ気味の所申し訳ねぇーけど、お茶でも淹れてくんない?」
侍女「では、わたくしめが」カチャカチャ
妖精「♪」パタパタ
皇帝「……は?」ガタンッ
172:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/28(日) 23:47:40.63 ID:
GsBlRFawO
術師「まさか氷竜……ごとあの術式……を施して首都まで飛ぶなんて……」
少女「さすがに半日弱しか保たなくなりますけど、間に合ったでしょう?」
魔女「都市の周りを雲の上まで貫いてた結界も完全スルーだったしな」
侍女「王宮の結界もまた同様です。
どんなに堅牢でも、そこに存在しない者の侵入は拒めない」トポポポ……
魔女「おー、いい香りだな」
侍女「携帯型魔導ティーセットでございます。
どうぞお熱いのでお気を付けて」カチャ、
魔女「ちょっと防犯対策考え直した方がいいんじゃねぇーの?
さっきここの裏庭に氷竜が着陸したんだぜ」ズズッ
術師「これが戦争……だったらチェックメイト」
皇帝「……何が望みだ?」
少女「対話ですよ、皇帝さん。
お茶、こっちにも頂けますか?」
178:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 01:16:43.56 ID:
RjlMA036O
侍女「お待たせいたしました」カチャカチャ、
少女「ありがとうございます。
……さて、では、とりあえず自己紹介からですね。
わたしは人間界四帝国同盟監査調停役の者です。
あ、魔王代理もやってます」
皇帝「……第五八代妖精界皇帝だ。
君達の噂はよく聞いている」
魔女「光栄なもんだぜ。
これなんだ?」ツンツン
術師「それ……は魔導天秤……妖精界の魔導工学で用いる複合実験機……
……今はこの部屋の結界……を維持、調整してる」
魔女「ふーん。他にも色々あるな」
少女「あんまり暴れないで下さいね」
魔女「わかってるっつーの。
さすがに敵陣のど真ん中で面倒事は御免だ」
皇帝「……どうしてここに?」
少女「あなたに皇帝として、一つ意見を伺いに来ました」
皇帝「……」
少女「あなたは人間を憎んでいるのですか?」
179:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 01:31:37.26 ID:
RjlMA036O
少女「特使さんの説明では、どうしても納得できなかったんです。
もし妖精界全体が人間を憎んでいるなら、色々な矛盾が生じるはずです」
術師「……妖精と人間が結ばれ……その子孫……が活躍する伝説は、
妖精界……でも人間界……でも無数にある」
魔女「古い魔導書の中では、人工妖精やホムンクルスの由来はそこにあるってことになってるしな」
少女「それどころか、妖精界の王家にも人間と結ばれた人や、
その子供が玉座についた記録もあります」
皇帝「……その通りだ。
太古の昔、人間が妖精を異世界の住人として特別視していたように、
妖精もまた人間を特別な存在だと考えいた。
まだ今ほど魔導が発達しておらず、互いに素朴な暮らしを営んでいた頃はな」
魔女「王権に説得力を持たせるために、人間との混血も大いに歓迎されたわけだ」
術師「歴史上の偉大な魔導師……は、その多くが異種族との混血……」
皇帝「ある意味で、我々が人間界と密接に繋がっていた時期が、
最も妖精界が繁栄した時期であると言える……
妖精界の優れた魔導工学技術も、その時代に生み出されたものだ」
181:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 01:42:32.24 ID:
RjlMA036O
魔女「えらくあっさり認めるじゃねぇーか」
術師「人工妖精の話……は戦争と関係……ない?」
皇帝「いや、人間や人工妖精を忌み嫌っている者も相当数いるのは事実だ。
……しかし、さっき言ったように、それは現王権の否定にもなる」
少女「では、一体何が原因なんです?
なぜ突然妖精界は人間界と断絶して、今度は戦争まで起こそうとしているのですか?」
皇帝「……」
侍女「お茶のおかわりはいかがですか?」カチャ、
術師「気が利く……ありがとう」
182:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 02:06:17.97 ID:
RjlMA036O
皇帝「……妖魔大戦の折り、魔王に引き渡された第二皇女。
あの子は……この五八代皇帝の実の娘だ。
まさに、その侍女はあの子の生き写しだ……母親にも良く似ている」
侍女「……」
皇帝「第一皇女の母親は純粋な妖精族の貴族出身の者だったが、
第二皇女の母親は人間と交わった血流を持つ有能な魔導技師だった。
……しかし妖魔大戦終結時には、彼女らの血筋は完全に途絶えたのだ」
術師「第一皇女……とその母親たる現王妃……が皆殺しにした。
……ま、コレもそれ……に荷担してたわけだけど」
魔女「なんだよ、昔の話だろ?
そんな事情知らねぇーよ」
皇帝「……王妃とその一族は、純粋な妖精族のみが妖精界を束ねるべきだと考えている。
第一皇女にも、人間の血は流れていない」
少女「つまり……あなたの娘では無い?」
皇帝「そうだ。
地位の関係で第一継承権を持ってはいるが……」
術師「……その理屈……で考えると、皇帝もまた憎むべき血ーーーー」
ーーーードゴォォォオオオン……
185:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 02:24:18.18 ID:
RjlMA036O
ゴゴゴゴゴゴ……
皇帝「……始まったようだな」
魔女「なんだなんだぁ?」
術師「恐らく皇帝を……人間の血筋を王権から排除……する計画……」
少女「王権の乗っ取り……これが特使さんの言ってた炙り出しですね」
侍女「すでにここは囲まれていると見てよろしいかと」
皇帝「軍は王妃側に付いたようだ……」
魔女「どうする?
正規の妖精魔導軍が相手だと、正面突破はさすがに厳しいぞ」
少女「あの術式もまだしばらくは使えませんし、氷竜の召還もまだ厳しいですね」
侍女「このペースで砲台が放火を続ければ、ここの陥落も時間の問題でございます」
妖精「!」パタパタ
術師「……と言うわけで、ついに出番到来……」オォン…
魔女「そう言えば一応てめぇーも術師だったなぁ」
少女「お願いします、術師さん」
侍女「さぁ、あなたもこちらへ」
皇帝「す、すまない……」
術師「……呪術精霊召還……」
オォンオォンオォンオォンオォンオォン……
186:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 02:39:14.76 ID:
RjlMA036O
術師「……、…、……、……、」ブツブツブツブツ……
魔女「今更だが……あいつの本業は召還術と呪術だ。
見ろ、あのキモい光ってる線。
全身に魔導式やら魔法陣やらを埋め込んでるんだよな」
少女「なんと言うか……禍々しい魔導回路ですね」
魔女「僕はよく魔族より魔族っぽいとか言われるが、
僕に言わせればあいつは地獄の怨霊より怨霊っぽいぞ」
侍女「……多数の精霊がこの周囲一帯に呪術を媒介しています」
魔女「下手な結界はあの精霊が全部突き破っていくわけだ。
連中は完全に包囲戦のつもりで来てただろうし、ドンピシャだな。
守りはてんで薄い」
少女「ところで、一体どんな呪術を……?」
魔女「あんまり考えたくないね」
212:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 17:23:19.69 ID:
7BjQiiB3O
少女「……砲撃が止みましたね」
侍女「周囲の魔力反応が消えて行きます」
術師「……さぁ、これで……脱出できる」オォン……
魔女「一体どんな手品を使ったんだ?」
術師「色々……戦意喪失するようなもの……術式自体はすごく……簡単」
魔女「例えば?」
術師「もしこの王宮……の壁に、自分の歯の神経……が繋がってたらどうする?」
魔女「相変わらず果てしなく趣味悪ぃーな」
術師「コレに言われたら……おしまい」
少女「とにかく、この隙に安全な所に行きましょう」
皇帝「……第二研究室の室長なら、我々を匿ってくれる」
侍女「第二研究室……副室長が特使の方でございましたね」
魔女「そこが既に抑えられてるって可能性は?」
皇帝「それは考えられるが、そう簡単には陥落しないだろう。
あそこの研究員は皆、人間の血筋を汲んでいる」
魔女「あの特使を含めて、全員相当な火力を持ってるってことだな」
少女「わたし達も戦力になります。
なんとか拮抗状態を作りましょう」
214:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 17:38:34.82 ID:
7BjQiiB3O
ガシャンッ
皇帝「この地下通路を通れば、安全に研究室まで辿り着けるはずだ」
魔女「安全? それマジで言ってんの? なんかの冗談だろ」
少女「この地下通路の存在を知っているのは、あなただけですか?」
皇帝「……いや、確かに向こうにも漏れていると考えるべきだったな」
術師「壁面に施された位相転移術式……から補助魔導式に偽装した撹乱魔導回路……を検出」
侍女「魔導式修正を妨害する結界もあるようです」
少女「ただちにその結界ごと上書きします。
かなり大掛かりな魔導回路なので、侍女さんと術師さんは補助に回ってください」パキキッ
侍女「はい」ビリッ
術師「了解……した」オォン…
魔女「僕は再起動スイッチ役かよ。地味だなー」
妖精「!」パタパタ
魔女「わーってるよ、心配しなくてもちゃんとやるっつーの」
216:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 17:53:24.42 ID:
7BjQiiB3O
皇帝「……しかしこれは第一、第三研究室の研究員が総出で十日掛かって施工した魔導装置だぞ。
援軍がここに突入するまでに間に合うのか?」
……バキンッ!
少女「上書き終わりました。
魔女さん、お願いします」
魔女「あいよ」バチバチバチッ
術師「この子……はひとりで魔導工学……を52世代分ぐらい進めちゃう……
……そう言う子だから。魔王後継者は伊達じゃあ……ない」
魔女「いつまでも妖精界の王立十二研究室が首位独走してるとか勘違いしてたら、
そのうち痛ーい目見ることになるぜ、おっさん。
そら、トンネル開通だ」バチンッ
侍女「最終点検を行います。今しばしお待ちを」ヴゥン…
魔女「しっかりやれよ。
暗黒空間にばらまかれるのは御免だからな」
皇帝「……確かに色々と認識を改める必要がありそうだ」
217:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 18:06:56.27 ID:
7BjQiiB3O
ガチャッ、
室長「皇帝! よくぞ御無事で!」
皇帝「何とかな。この者らのおかげだ」
特使「……また会ったな。増援なら歓迎する」
魔女「ついこないだ宣戦布告したばっかだろーがよぉー。
張り合いがねぇーな」
術師「ともあれ……人間界と妖精界、それぞれ……最高戦力の即席魔導師連合……ここに結成」
侍女「魔王様なら『敵に回さなくてよかった』と仰るところでしょう」
室長「勝ち馬に乗れて幸運だと喜ぶべきかね?」
魔女「お、なかなか言うじゃねぇーか。
妖精にも話のわかるやつがいるんだなー」
219:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/29(月) 18:26:06.60 ID:
7BjQiiB3O
少女「戦況は?」
特使「この研究室は既に包囲されている。
今はまだ結界を保てているが、突破工作隊が到着するとさすがに厳しいだろう」
魔女「迎撃はできねぇーのか?」
室長「実はこの間、王宮命令で魔導弾薬をほとんど全て徴発されたばかりでねぇ」
侍女「予め弱体化を図っていたわけでございますね」
特使「新たに精製するにも時間が足りなかった。
少ない弾薬で下手に挑発すれば、戦略魔導砲台の砲門をこちらに向けられかねない」
室長「だが、それは相手方が圧倒的有利な状況に胡座をかいて油断していると言うことでもある。
我々とて、ただ座して弾薬が運び出されるのを見ていたわけでは無い」
術師「秘策……あり?」
特使「この研究室は移動地形に乗っている。
つまり、妖精界の地脈の上に建っているわけだ」
室長「その地脈に秘密裏に細工をして置いた。
特定の座標で魔導式を起動すれば、この研究施設ごと人間界に位相跳躍できる」
魔女「そりゃ……えらい派手な亡命方法だな」
室長「この研究室は捨てるには惜しくてね」