Part5
271:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 00:19:19.49 ID:
znoTLrJOO
ーーーーガシャッ
魔女「ふー。
素体の方はこれでパーペキだな」
少女「……どう見ても侍女さんですね」
魔女「問題は人工妖精の方なんだけどよー。
魔導工学に召還魔術と錬金術をブレンドした技術が要るんだわ。
これに必要な水準の召還魔術は基本的に専門家でないとキツいぞ」
少女「どうするんですか?」
魔女「知り合いに丁度いいのがいるから、軽く殴ってコツを聞くか」
少女「はぁ」
魔女「墓の下に住んでて、いっつも死体いじくり回して、
毒虫やらよくわからん木の根っこやらで遊んでるやつだ。
一緒に来るか? 最近はすっかり希少種になった屍霊術師だぜ」
少女「……遠慮しておきます」
272:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 00:27:22.64 ID:
znoTLrJOO
魔女「あっそ。
じゃあ僕はちょっと行ってくるから、留守番頼んだぞ」
少女「お客さん来たらどうしましょうか?」
魔女「客ぅ?
滅多に来るやつはいねぇーが、まぁもし来たら待たせとけ。
そのうち帰って来るってな」
少女「はぁ」
魔女「勝手にそこらへんのもんいじったらぶっ殺すからな」
……バタン
少女「……何してよう」
274:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 00:38:59.35 ID:
znoTLrJOO
少女「工房の中は掃除もできないし……
……召還魔術か。ちょっと試してみようかな」ガタン、
ガリガリガリ、ガリガリ…
少女「えーと、魔法陣はこんなもんかな?
とりあえず、ちっちゃい火蜥蜴のにしてみよう。
んー……」ポゥ…
……パキッ
パキンッ…ギギッ……ボッ!
蜥蜴「……」ノソノソ
少女「おー、できたできた。
案外なんとかなるものなのかな?
他も試してみようっと」
276:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 00:49:36.62 ID:
znoTLrJOO
……バキンッ
シュウゥ……
少女「うーん、またダメか。
ある程度複雑な魔導式と魔法陣の組み合わせになると、途端に難しくなる……
多分何かコツがあるんだろうなぁ。
魔導式はある程度回路を自動化して……これでどうだ」ガリガリ
ポゥ……
少女「んんん……えいっ」バリッ
バキッ
ビリビリッ……バチンッ!
天馬「ヴルル……」バサッバサッ
少女「やった!
この方向性で魔導式を書き換えて行けばもうちょっと上階層のもできるかな?」
285:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 02:08:58.16 ID:
znoTLrJOO
……バギ……ギギッ
……シュウゥ
少女「ダメだー。
魔導式の自動化にも限界があるね。
根本的な術式の組成を考え直さないといけないのかな……
でも魔法陣は基本的にいじれないし、魔導式はこれ以上複雑には出来ないし……
どうすればいいんだろ……」
……バチッ、バチンッ、
バギギッ……バギンッ!!
翼竜「ゴァアァッ!」バサァッ
少女「?!」バッ
術師「複雑な……魔導式と魔法陣……を組み合わせる術式……では……
……魔導式と魔法陣……の間に回路を対応……させる変換式……
……を置けばいい……回路の自動化……までは正解」
286:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 02:15:27.65 ID:
znoTLrJOO
少女「……あなたは?」
術師「ここ……の工房の魔女……の知り合い……屍霊術師……をやっている」
少女「え? 魔女さんの?
……ってことは、魔女さんと入れ違い?」
術師「アレと話す……のは疲れる……すぐ叩くし……怒鳴るし……
次の満月……にアレが来る……のを守護霊が暗示……したから……
……入れ違いになる……ようにこっち……に来た。
要件……は知ってるあなたに……人工妖精の召還……を教える」
少女「あはは……わざわざありがとうございます」ペコリ
術師「あなたは才能……がある資質……がある。
独学……で幻獣族の召還……は普通無理……あなたに教えたいそれに……
……アレになにか教える……のが嫌」
少女「酷い言われようだ……」
289:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 02:25:52.41 ID:
znoTLrJOO
術師「人工妖精……は厳密……には召還物……じゃあない。
錬金術の人工精霊……に近いけどより魔導的……な存在。
魔力から生成……されるもの……その生成術式……にたくさん召還術……
……との共通……する手順……がある」
少女「ふむふむ」
術師「人工妖精にも上級種……から下級種……まで色々な種別がある。
今回必要……なのは最上級の人工妖精……だから難しい」
少女「難しいと言うと、どのくらい……?」
術師「……魔王を倒すぐらい」
少女「それは難しいですね……」
290:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 02:31:46.34 ID:
znoTLrJOO
術師「とにかく……下級種の生成……から始める。
魔導式と魔法陣……はこれ」ペラッ
少女「うわっ、下級種でこの複雑さですか!」
術師「中間変換式……の使い方がわかれば簡単……になる多分。
……やってみて……見てる」
少女「が、頑張ります。
まずは魔導式……」ガリガリ、ガリガリガリガリ……
309:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 12:07:09.33 ID:
znoTLrJOO
ポゥ……
……パキッ、パリッ!
妖精「?」キョロキョロ
少女「ふー……できました!」
術師「……」
少女「あれ? ダメ……ですか?」
術師「一回目で成功……するとは思わなかった……
さすがに魔王……の後継ぎか」
少女「し、知ってるんですか?」
術師「あなたこの界隈……では割と有名人。
『竜王の眼』と『妖精の衣』……と『魔王の才覚』……を持った幼い……魔女って」
少女「そうなんだ……」
術師「アレ……が『そんなヤツが僕に弟子入りした』……って言いふらしてるから」
少女「あはは。
……これは喜んでいいのかな?」
310:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 12:17:12.40 ID:
znoTLrJOO
術師「実際あなたの才覚……はすごい。
それはアレ……も認めてる。
ねぇ……この際うちの研究室……に来ない?」
少女「えーと……考えておきますね」
術師「是非……じゃあ次、これ……」ペラッ
少女「はい」
術師「ここから一気……に難しくなる……頑張って」
313:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 12:46:25.02 ID:
znoTLrJOO
シュウゥ……
少女「手応えはあるんですが、さすがになかなか上手く行きませんね……」
術師「まだ始めてから数時間……充分な成果。
アレが帰って来る前……には術式は完成する」
少女「だといいんですけどね。
そろそろ暗くなって来たし、ご飯にしましょうか?」
術師「これ……飲むから平気。
食事の代わり、これ」スッ
少女「お薬ですか?」
術師「霊薬……タウリン入ってる。元気……になるよ。いる?」
少女「……遠慮しておきます」
術師「元気……になるのに……」グビッグビッ
316:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 12:53:48.81 ID:
znoTLrJOO
ガチャッ、
少女「お休みになられるなら、こちらでどうぞ」
術師「これあなた……のベッド?」
少女「ごめんなさい、この工房には魔女さんのとわたしのしか無いんです」
術師「それは全然……問題無い……けどあなたはどこで……寝るの?」
少女「わたしはもうちょっと練習してから、工房で寝ます。
慣れてるんで平気ですよ」
術師「……そう、ありがとう。
じゃあ……また明日」
少女「はい。おやすみなさい」
……バタン。
術師「……あんな助手……本当にほしいな」
318:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 13:15:43.17 ID:
znoTLrJOO
少女「……よし、これだ」ポゥ…
パリッ…パキンッ……ギギッ……
……バチンッ!
妖精「……」シュウゥ…
少女「できた!
術式を安定させる補助魔導式を足せばいいんだ……」カキカキ
妖精「……あの」
少女「えっ?」ビクッ
妖精「あなたがわたくしの主ですか?」
少女「あっ、うわっ、びっくりした。
えーと、はい、まぁそう……かな?」
妖精「わたくしは何をすればいいですか?」
少女「あ、えと、……練習で召還したと言うか、えーと……」
妖精「わたくしは何をすればいいですか?」
少女「困っちゃったな……どうしよう」
322:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 13:23:43.66 ID:
znoTLrJOO
術師「拘束魔導式を解除……すればいい。
術式には最初……からそれが組み込まれてる」
少女「あ、おはようございます。
拘束魔導式……これかな。えいっ」パキンッ
妖精「!」
少女「はい、これであなたは自由ですよ。
わたしの命令に従う必要はありません」
妖精「……どこに行っても、いいのですか?」
少女「もちろん。……大丈夫ですよね?」
術師「その魔力水準……なら十分自然界……でも独立できる。大丈夫」
少女「だ、そうです。
練習に付き合ってくれてありがとうございました」ペコリ
妖精「……」ペコリ
フワッ……
少女「うわー、飛んでいっちゃった」
術師「驚いた……一晩中やって……たの?」
少女「いえ、寝てたんですけど、ちょっと今朝方に試してみたい方法を思いついて」
術師「……お疲れさま」
少女「いえいえ、なんのこれしきです」
329:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 14:42:30.13 ID:WnmOZKIxO
ママはどこにいるの?
330:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 14:43:15.84 ID:
znoTLrJOO
少女「ところで、術師さんの研究室までどのくらい掛かるんですか?」
術師「ルートに……よるけど大体片道……5日から10日ぐらい……かな」
少女「結構掛かるんですね、やっぱり」
術師「アレがあんまり早く……戻ってこないように結界……
……いっぱい作ったから……往復2ヶ月は掛かる……ふふふ……ふふ」
少女「あはは……」
術師「でも1週間も掛からなさそう……あなた、飲み込みが早すぎる。
そうなると……暇になっちゃうな……」
少女「んー、多分ですけど、もう言ってる間に魔女さん帰ってくると思いますよ」
術師「……そんな気がする。
早いうちにお暇……しよう」
331:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 14:46:37.59 ID:
znoTLrJOO
勇者御一行→無口な魔女の助手(奴隷)として資材調達やなにやらをしている。
少女の母親→故郷で娘の帰りを待ちながら暮らしている。
334:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 14:53:52.13 ID:
znoTLrJOO
ガリガリ、ガリガリガリ……
術師「もう上級種の妖精……も呼び出せるよう……になってるはず。
中級種と特別種……は上級種と同じ手順……で大丈夫」
少女「はい」
ガリガリガリ、ガリッ
術師「でも、特別最上級種……しかも精密魔導装置の機関……として呼び出す人工妖精は……
……普通の術師にはまず扱えない……色々条件……がある」
少女「条件、ですか?」
術師「そう、条件……」
336:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 15:07:01.65 ID:
znoTLrJOO
術師「……まず魔力水準……使う魔力は僅か……
……でも膨大な魔力保有量の後ろ盾がない……とこの術式は使えない……
これはあなた……なら問題無い」
少女「はい」
術師「それから……魔導式の超高速演算……魔法陣の超精密展開……
……これを同時にできる……術師としての資質……これもあなた……なら大丈夫」
少女「ありがとうございます」
術師「最後に……呼び出す人工妖精……の強固なイメージ……
内在的な象徴……を媒体にして……人工妖精を召還……する」
少女「イメージ……」
術師「最上級の人工妖精……は知性も魔力……もずば抜けて高い……
つまり……個性がある……しかも安定している……
……この矛盾すら内包……する魔力運用のイメージ……
……できそう?」
少女「……はい。大丈夫です」
337:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 15:13:18.21 ID:
znoTLrJOO
術師「そう……じゃあやって……みて。
ここで見てる……これは手伝えない」
少女「わかりました。やってみます。
えと、魔導式を書き足して……」ガリガリガリ……
ペラッ
【ごゆっくり。】
魔女「あの腐れ死体マニアめぇぇぇええええッ!!」ビリビリビリ
338:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 15:22:57.22 ID:
znoTLrJOO
少女「召還媒体はこの侍女さんのメンテナンス機材の中枢と……それからこのドレス」
術師「その……ドレス?」
少女「はい。
魔王さんも多分、このドレスを媒体にしたはずですから」
術師「……そう」
少女「よし、魔導式、魔法陣、補助術式全て準備できました」ポゥ…
術師「集中して……イメージを強く……」
少女「はい……」
…キィィ…ィイイイイインッ
バキッ…ギギッ……バチンッ……
少女「……侍女さん……戻って来てください……!」カッ
バリバリバリッーーーー
341:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 15:34:05.36 ID:
znoTLrJOO
ーーーーバァン!!
魔女「今帰ったぞッ」
少女「あ、お帰りなさい」
魔女「留守中に死体みたいな見た目の死体みたいな喋り方する死体マニアが来なかったか?」
少女「すごく綺麗で優しい人でしたよ」
魔女「あぁそうだよ、ムカつくぐらい顔はいいよあいつは!
だから黙ってても勝手に馬鹿な貴族が研究費用出すんだろうよ!」
少女「……」
魔女「僕を見てボロい工房を見回してしかも納得した顔すんなクソガキッ!
で、あいつはどーした? 一発絞めないと気がすまねぇーッ」
少女「ついさっき出発されましたよ。
『絶対アレに見付からないルートで帰る。ばーかばーか』って言ってました」
魔女「うがぁあああああ腹立つぅううううう」
343:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/23(火) 15:44:45.85 ID:
znoTLrJOO
魔女「それで召還の方はどうなったんだ?」
少女「あぁ、それなんですけどーーーー」
侍女「夕食の準備が整いました」ペコリ
少女「はい、今行きますね。
……と言うわけです」
魔女「お前がやったのか? 術式は?」
少女「一応これなんですが……」ペラッ
魔女「どれどれ……
……なんじゃこりゃあ!
こんなもん人間にできるわけないだろ!」
少女「あの、裏面に術師さんの注意書きがありますよ。
この術式を使うにあたっての」
魔女「あぁ?」ペラッ
【単細胞には一生無理。ばーかばーか】
魔女「あいつ殺す。絶対殺す。
百回ぶっ殺す」
少女「とりあえず夕食にしましょうよ。
侍女さんの料理、すごく美味しいんですよ」
侍女「恐悦至極でございます」