Part12
439:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 09:34:48.96 ID:
d1ftEQ+IO
魔竜「……いいにおい」
少女「今日も美味しそうですね」
侍女「ありがとうござます」ペコリ
少女「じゃあ、冷めないうちに頂きましょう」
魔竜「……?」
少女「どうしたの?」
侍女「何かお嫌いなものがあったのでしょうか?」
魔竜「これなに?」
少女「これ……ってどれ?」
魔竜「この机にあるいいにおいのするの」
侍女「……あの研究所では普段はどんなものを食べておられたのですか?」
魔竜「苦かったり変な味がするちっちゃい石みたいなの」
少女「……わたしの真似をしてみて」カチャカチャ
魔竜「うん」カチャカチャ
少女「……」パクッ
魔竜「ん」パクッ
侍女「どうでございますか?」
魔竜「……苦くない。ちゃんと味がする」
少女「明日、本格的に魔導薬依存などの検査しましょう。
保護時の報告書はあてになりません」
侍女「はい」
魔竜「これ、口の中が、いいにおい?」
少女「それは『おいしい』ってことよ」
魔竜「おいしい」パクパク
侍女「光栄でございます」ペコリ
441:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 09:47:22.19 ID:
d1ftEQ+IO
魔竜「はぁ……」ケフ
少女「ごちそうさまでした」
侍女「いえいえ」
魔竜「明日は? 明日もこれ?」
少女「明日はまた違う、他のおいしいものよ」
魔竜「……明日の明日は?」
少女「それからもずっと、おいしいもの」
魔竜「……嬉しい」
侍女「これは、わたくしが精進しないといけませんね」
少女「わたしも期待していますよ」
魔竜「あれ、なんか……眠い」ウトウト
少女「お腹いっぱいになったからかな?」
侍女「寝室の準備はできております」
少女「じゃあ、今日はもう寝よっか」
魔竜「うん……」
侍女「こちらです」
443:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 10:00:32.61 ID:
d1ftEQ+IO
少女「さて、わたしもこの書類の処理が終わったら寝ますね」
侍女「お疲れ様でございました」
少女「……明日があの子に取って、楽しい幸せな日であることを願います」
侍女「明日もきっといい日になりますよ」
少女「……そうですね」
侍女「はい。わたくしはそう確信しております」
444:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 10:15:17.27 ID:
d1ftEQ+IO
侍女「改めまして、連日遅くまでお疲れ様です。
おやすみなさいませ」
少女「侍女さんも、あまり無理しないようにお願いしますね。
おやすみなさい」
……バタン。
少女「……はぁ」
ドサッ
少女「なんだかよく眠れそう……」
……コンコン、コンコン
少女「ん? どうぞ、なんですか?」
445:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 10:16:43.05 ID:
d1ftEQ+IO
ガチャ、…
魔竜「……」
少女「あれ、どうしたの?」
魔竜「……明日も、痛いことしない……?」
少女「あぁ、……怖い夢を見たのね。
こっちに来て」
魔竜「うん……」
少女「明日も、その次の日も、誰もあなたに痛いことはしないわ。
わたしや、侍女さんが守ってあげるから」ギュッ
魔竜「……」
少女「今晩はここで寝る?」
魔竜「……」コクリ
少女「じゃあちょっとこっちに詰めて……はい、どうぞ」
魔竜「……あったかい」
少女「安心しておやすみなさい。
なにも怖くないから」ナデナデ
魔竜「……うん……」
449:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 10:43:48.15 ID:
d1ftEQ+IO
室長「検査結果が出た。これだ」
少女「……」ペラッ、ペラッ、ペラッ、…
室長「見ての通り、やはりいくつかかなり問題のある数値が出ているな」
少女「魔導薬や実験の影響でしょうか?」
室長「それはおそらく間違い無いだろう。
……ところが、これも見てほしい」バサッ
少女「これは……」
室長「2日後に念のため行った同じ検査だ」
少女「……数値がわずかに正常に近付いてますね」
室長「魔導汚染に対する恐るべき順応力と抵抗力のなせる業だろうな。
他に要因として考えられるとすれば……君との生活だろう」
少女「……」
室長「最近はだいぶ君以外の者とも話すようになってきたようだが、
話す内容はいつも君とのことだ。とても幸せそうにしているぞ」
少女「このまま行けば……」
室長「あぁ。そう遠くないうちに、通常の授業にも参加できるようになるはずだ」
少女「……よかった」ホッ
室長「いやはや、すっかり姉か母のようだな」
少女「そう、……ですか?」
451:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 10:56:42.55 ID:
d1ftEQ+IO
室長「しかし、一つ気になることがある」
少女「と、言うと……?」
室長「君だよ。君のことだ。
確かにあの子が今まで年相応の愛情を受けられなかったのは不運なことだった。
……だが、君もまだ世界の事情を背負い込むには……幼すぎる。
君も年相応の幸せを享受したり、時には誰かに甘えたりする権利があるはずだ。
違うかね?」
少女「……わたしは、……」
456:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 11:17:54.86 ID:
d1ftEQ+IO
魔竜「……それで、すごく綺麗な花がいっぱい咲いてた」
侍女「それは素晴らしいですね。
わたくしが前に妖精界に行った時は、とてもそんな観光をする暇はありませんでした」
魔竜「今度、侍女さん達と一緒に来たい、って言ってたよ」
侍女「それは楽しみです」
魔竜「うん。楽しみ」
侍女「それにしても、お二人は最近ますます仲がよろしくなって来ていますね」
魔竜「あのね……お姉ちゃんが手を握ってくれるとね」
侍女「はい」
魔竜「体があったかくなってきて」
侍女「はい」
魔竜「……ドキドキする。
嬉しいんだけど、ちょっと恥ずかしくなったり……これ、なに?」
侍女「……なんでございましょう?」
魔竜「わからない?」
侍女「申し訳ございません」ペコリ
魔竜「なんなんだろ、これ」
侍女「直接聞いてみては?」
魔竜「お姉ちゃんに?
それは……だめ」
侍女「なぜですか?」
魔竜「……なんだか、恥ずかしいから……」
侍女「それは……困りましたね」
魔竜「うん……」
463:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 11:53:59.63 ID:
d1ftEQ+IO
ゴゴゴゴゴ…
魔王「おい、話が違うじゃねぇーか。
なんでお前が魔王職後継なんだよ。
内定してたやつはどうしたんだよ」
「何百年も王子やってたら飽きるんだもの。
暇すぎてちょっと色々やっちゃった。
だってあんたのせいで第一王位継承者なのに魔王になれないとか酷くない?」
魔王「お前みたいな馬鹿を魔王にしないために決まってんだろが」
王子「ま、どーでもいいからちゃっちゃと魔力寄越してよ。
それが決まりだろ。次期魔王は前任者から魔力貰えるってやつ」
魔王「あ? んなもんねぇーよ。
195年分はすっからかんだ」
464:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 11:57:32.60 ID:
d1ftEQ+IO
王子「……げ、ガチじゃん。
なんで? なんで? なんでそんなミイラみたいになってんの?」
魔王「さぁな。帰れ帰れ」
王子「おっかしいな……なんでだろ……んんー? ……あ、ひょっとしてアレか?
もしかして例の代理人にあげたとか?」
魔王「馬鹿は馬鹿らしく馬鹿みたいにしてりゃいいものを……」
王子「やっぱりそうか。
じゃあそっちに貰ってこよっと」
魔王「言っとくけど俺より強いからな、魔王代理」
王子「はいはいわかったわかった。
ちゃきっと貰って来てやんよ。
それから、魔王らしく魔王してやらぁ」
魔王「はん、やって見やがれってんだ」
王子「見てろよー元魔王」バシュッ、
魔王「……やれやれ。不味いことになったぞ」
475:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 14:46:01.74 ID:
d1ftEQ+IO
少女「やっぱり竜族だけあって、竜の召還は得意みたいね」
魔竜「うん。イメージしやすいからかな」
少女「じゃあそろそろ日も暮れて来たし、そろそろ帰ろっか。
まだ夜は冷えるし」ギュッ
魔竜「あっ……うん……その、……うん、お姉ちゃん」モジモジ
少女「どうしたの?」
魔竜「……なんでもない、よ」
少女「そう?
ならいいけど……
今日のご飯はなにかな?」
魔竜「なにかな……」キュッ…
ーーーーバシュッ!
476:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 14:58:28.07 ID:
d1ftEQ+IO
少女「っ!?」バッ
魔竜「?」
王子「みぃーつっけた!
確かにあいつの魔力だ!
なるほど、お前が魔王代理…………か…………?」
少女「……あなたは?」
王子「お、……俺? 俺はその、一応次期魔王なんだけど……その、アレだ。
あの……えーと」
少女「……?」
王子「ちょちょちょ、えっと、
ちょ、ちょっとたんま」クルッ
…パキンッ
王子「……あの、これを」スッ
少女「は、はぁ。お花ですか?」
王子「それじゃっ!」バシュッ!
少女「な……なに?」
479:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 15:04:58.55 ID:
d1ftEQ+IO
少女「今の誰だろう?
魔王代理とか聞こえたような……」
……バシュッ!
王子「や、やぁ!」
少女「あれ、また来た」
王子「と言うか、一目惚れしました!
俺と! 結婚! してくださいっ!」ギュッ
少女「……はっ?
いや、いや、えっ、何を言ってーーーー」
ーーーーズォアッ!!
魔竜「お姉ちゃんから手を離せ」ガシッ
王子「あ? なにこの目つきの悪い餓鬼。
人のプロポーズ邪魔すんなよ」
484:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 15:15:05.32 ID:
d1ftEQ+IO
王子「子供は暗くなる前にさっさと帰ってーーーー」
魔竜「手を、離せ」バギギギリギギギシギシッ
少女「っ!」ゾクッ
王子「お前……なんなんだ?」パッ
魔竜「お姉ちゃんに触るな」ギンッ…
王子「竜族の眼……魔力は魔族……?」
魔竜「……」ザッ
少女「え、……」
王子「人の婚約者の前に立ちふさがるたぁ、いい度胸じゃねーか。
大人の魅力と怖さを教えてやるぜ」バキッ、バギギッ
魔竜「お前なんか、怖くない」メキッ……バキッ……
……メキメキメキメキッ
王子「お、……おおお?」
486:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 15:23:00.45 ID:
d1ftEQ+IO
メキメキメキメキメキメキメキメキッ……
……バサァッ!!
魔竜「グヴヴゥ……」ギロッ
少女「りゅ、竜に……?!」
王子「や、やっべ、ちょっとおっかねぇ!
こいつ全盛期の魔王どころじゃねーぞ!」
魔竜「グァ……」パカァ
……ゴゴゴゴゴゴ
王子「受け切れる気がしねぇー!
なにこいつ、チートじゃん!」
488:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 15:30:33.41 ID:
d1ftEQ+IO
魔竜「グヴルル……」バサッ…
少女「つ、翼で……守ってくれるの?」
魔竜「ヴヴ……」コクン
王子「ずっ、ずるいぞー!」
魔竜「ヴヴゥ……ヴグォアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!」ドォッ
ゴバァアアアアッ!
王子「うおあっ! マジやっべぇー!」バシュッ
ーーーーズォォォオオオオオオォォオォオォンッ!!
492:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 15:40:43.54 ID:
d1ftEQ+IO
ゴゴゴゴゴ……
少女「見渡す限り灰に……ここが無人の平原でよかった……」
魔竜「……ヴグゥッ……」メキッ、メキメキメキッ……
少女「だ、大丈夫?!」
魔竜「グ……」ズシィイィィイイイン……
シュウウゥ……
メキッ……バキッ……
少女「人型に戻った……?」
魔竜「うぅ……ん……」
少女「……と、とにかく研究室まで急いで連れて行かなきゃ!」
495:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 15:52:44.23 ID:
d1ftEQ+IO
……ガチャ、
少女「どうですかっ?」ガタンッ
室長「落ち着きたまえ。
他の人型竜族の例に漏れず、あの子に取っても竜化は著しく魔力を消耗する。
特に幼体には、かなりの負担になる。
……しかし、おそらく一時的に衰弱しただけだろう」
少女「そうですか……よかった……」
室長「『極北限界領域の魔竜』、か……
確かに、この魔力は驚異的だ。
世界を跨いだ冥界や妖精界でさえ、史上稀にみる魔力爆発を観測したそうだぞ」
少女「……」
室長「あらためて、あの力が軍事利用されなかったことを幸運に思わねばなるまい」
少女「……あの子は、わたしを守ろうとしてくれました」
室長「次期魔王、からか?
それにしてもいきなり求婚して来るとはね」
少女「ええ……もう色々ありすぎて何がなにやら……」
室長「君もゆっくり休みたまえ。
今日はここに泊まって行くといい」
少女「ありがとうございます……」
498:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 16:06:17.03 ID:
d1ftEQ+IO
魔竜「……くぅ……くぅ……」
少女「魔力の制御と、竜化の制御も勉強しないとね……」ナデナデ
魔竜「……お……姉ちゃ……」
少女「わたしはここにいるから」ギュッ…
魔竜「ね……ちゃん……くぅ……くぅ……」
少女「守ってくれてありがとう。かっこよかったよ」
魔竜「……くぅ……んん……くぅ……」
少女「……竜王さんなら、あなたのことや、竜化の制御の方法も知ってるかもしれない。
身体が良くなったら、一緒に竜界に行ってみようね。
でも、今はゆっくりおやすみ……」ナデナデ
魔竜「お姉……ちゃん……」ギュッ…
ーーーーバシュッ!
王子「っぷはぁー! びびったぁ!
でもあきらめねーからな俺はっ!
また会いに行くからなーっ!」ズビシッ
499:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 16:20:48.50 ID:
d1ftEQ+IO
ーーーー魔竜の力を制御する術を知るため、
また魔竜の出生の謎を解き明かすため、次なる舞台は竜界。
少女と魔竜、そして侍女と魔女(しぶしぶだが)の四人が、
竜界最深部、竜王の宮殿を目指して再び旅立った。
次期魔王の王子のちょっかいも予想される中、
魔王と魔女の間に微妙な変化が……?
それを間近で見ている侍女の心境とは……?
少女と魔竜も心身共に成長しつつあるが、果たしてどんな冒険道中となるのか……
その物語は、また次の機会に。
500:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 16:22:31.34 ID:vRt9Ubda0
お?
501:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/12/03(金) 16:22:38.79 ID:
d1ftEQ+IO
駆け足になったが第四部終わり。
長々と保守してくれて本当にありがとう。
またそのうち話をまとめて改めてスレ立てるかも知れないので、
その時はまたよろしく。