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魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
Part6


164:1:2012/07/01 22:33:49.19 ID:t7AGZr+qAO
魔法使い「私は第一発見者のところへ、剣士は剣を見に行く」
魔法使い「戦士は?」
戦士「個人行動はぶっちゃけ嫌だが…残っているよ」
剣士「憲兵が来るかもだしな」
戦士「そうだ」
僧侶「お待たせしましたー。なんの話ですか?」
戦士「今日なにするかって話だよ」
魔法使い「私は第一発見者のところ、剣士は剣を見に、戦士は留守番だが」
僧侶「わたしは…」
戦士「剣士についてってやれよ。変なもの買わないように見張ってくれ」ニヤニヤ
剣士「ぶっ!?」
魔法使い(こいつも知っているのか)

165:1:2012/07/01 22:39:35.07 ID:t7AGZr+qAO
――街
魔法使い「……」スタスタ
青年「よう」
魔法使い「一働きしたみたいだな」
青年「まあな」
魔法使い「容赦ないんだな」
青年「生ぬるい支配は争いを起こす。厳しくしないといけない」
魔法使い「大変なのか」
青年「ふん。反勢力も芽を摘まないとな」
魔法使い「へぇ」
青年「それに勇者の行動の監視も加わると死にかける」
魔法使い「激務だな……」

172:1:2012/07/02 22:57:55.84 ID:I+GLQUbAO
青年「だから、勇者がいなくなって楽になったと喜ぶべきか」
青年「退屈を壊す人間がいなくなってしまったと嘆くべきなのか」
青年「おれにはさっぱり分からん」
魔法使い「…なんとも“魔王”らしい言葉だな」
魔法使い(それか揺れる感情に困っている思春期っぽい)
青年「ふん。だてに魔王を百数年しているわけではない」
魔法使い「……容姿、若いんだな」

173:1:2012/07/02 23:02:44.76 ID:I+GLQUbAO
青年「魔王を討伐に来ているのに魔物のことを知らないのか」
魔法使い「わ、私はなんでも知っているわけではないからな」
青年「はっ。――年をとるのが遅いんだよ、人間と比べてな」
魔法使い「…どのくらい?」
青年「長くて千年。長寿は龍族だ」
魔法使い「そんな長く、か。本気を出せば人間界を征服できるんじゃないか?」
青年「ほう?」
魔法使い「コツコツと攻めていけば、さ」
青年「なんだお前。攻めてほしいのか?」
魔法使い「そういうわけじゃない。ただの思いつきだ、本気にするな」

174:1:2012/07/02 23:16:47.02 ID:I+GLQUbAO
青年「今のところ、おれたちはこの状態が一番いい形だ」
魔法使い「そう…なのか」
青年「それをわざわざ壊すなどアホか」
魔法使い「………」
青年「それにこちらから戦争をおっぱじめるとなると各種族に協力を仰ぎ」
青年「効率の良い陣地の配分をし指揮をあげて指示をし毎朝毎晩会議続きだ」
青年「勇者に殺されるとか、攻められて落城云々の前に過労で倒れる」
魔法使い「かなり過酷だな!?」
青年「…普通は前代も手伝ったりしてくれていいんだがな」ボソ

175:1:2012/07/02 23:27:33.03 ID:I+GLQUbAO
魔法使い「……?前代魔王と、仲が悪いのか?」
青年「……ふん」
魔法使い「なんでそう頑なな態度に――」ザクッ
鷹「調子に乗るな、小娘」ヒソリ
魔法使い「あぃだ!?つ、つつかれた!おいつつかれたぞ!」
鷹「魔王さまの深部にずけずけと入り込むな馬鹿者。殺されないだけよしと思え」ヒソ
魔法使い「〜〜〜」
青年「ははっ。端からみると鷹の調教に失敗したやつみたいだな」
魔法使い「悠長なこといってないでなんとかこの鷹を――っぃだ!?」ザクッ
鷹「だいたい貴様は魔王さまに無礼すぎる!ここで叩き直してやろう!」
魔法使い「赤毛になる!髪の毛が赤毛に!!」
子供「ママー、あそこで男の人が悶えてるよー」
母親「見ちゃだめ」

176:1:2012/07/02 23:38:17.48 ID:I+GLQUbAO
魔法使い「ひどい目にあった」
青年「なかなか愉快だった」
魔法使い「私は不愉快だがな」
青年「当人には悲劇でも周りから見ると喜劇って本当のことだったことが分かったよ」
魔法使い「性格悪いぞ」
青年「ふん」
魔法使い「しかしなんだあの鷹は。過保護か。過保護なのか」
青年「まあな。気づいたらおれの監督官だったわけだし」
魔法使い「へぇ」
青年「…思えば、あいつもおれのそばにいてよく死なないな」
魔法使い「何をしてたんだあなたは」

177:1:2012/07/02 23:46:56.41 ID:I+GLQUbAO
青年「大したことじゃない。ほら、ここだろ」
魔法使い「…まあいい。ここだな」
リンリン
青年「……」
魔法使い「ごめんください」
シン…
魔法使い「やけに静かだな」
青年「配達物が箱に挟まったままだ」
魔法使い「郵便受けというものだよ。まだ寝ているのかな」
おばさん「あれま、あんたたちどうしたの?」
魔法使い「おはようございます。少し、ここの人に用が」
おばさん「ベルは鳴らした?」
魔法使い「はい。――でも、誰も出てこなくて」
おばさん「おかしいわねぇ?いつも早起きなんだけれど…」リンリン

178:1:2012/07/02 23:58:42.93 ID:I+GLQUbAO
青年「……」スッ
カチャッ
魔法使い「…ドアが開いた」
青年「なるほど…」
おばさん「え?え?」
魔法使い「すいません、そこにいて下さい」
青年「嫌な予感がしますので」
おばさん「あ、ちょっとー!」

179:1:2012/07/03 00:02:55.92 ID:AqoyYSCAO
魔法使い「おはようございまーす、魔法使いですが」スタスタ
青年「誰かいらっしゃいませんか」スタスタ
魔法使い「リビングに灯りがついてる。いるかもな」
青年「期待した形ではいないだろうがな」
魔法使い「……。見なくちゃ分からないだろ」
青年「そうか」
魔法使い「開けるぞ」
青年「ああ」
カチャ

180:1:2012/07/03 00:06:52.31 ID:AqoyYSCAO
魔法使い「……」
青年「……」
魔法使い「……」
青年「……期待通りか?」
魔法使い「……全然。出来れば、予想で終わって欲しかったものだが」
青年「見事なまでに惨殺されているな。抵抗のスキを与えていない」
魔法使い「このお婆さんには罪はないのに…」
青年「第一発見者は?」
魔法使い「…確か、上にいたはずだ。いってみよう」

181:1:2012/07/03 00:10:53.79 ID:AqoyYSCAO
魔法使い「ご主人!」ガチャッ
青年「きっちり殺ったか……」
魔法使い「……」
青年「喉が切り裂かれている。即死だな」
魔法使い「叫ばせないためか?殺人に慣れた人物の犯行だろうか」
青年「ああ、これは剣の傷跡か」
青年「傷は喉のみ。強い恨みはなかったようだ」
魔法使い「……」スクッ
青年「だいぶ、犯人絞り込めてきたんじゃないか?」
魔法使い「…残念なことに、そうだな」

189:1:2012/07/04 19:49:37.92 ID:DCjhf9KAO
――市場
僧侶「初めてかもしれませんね、剣士さんと二人っきりになるのは」
剣士「お、おお、そうだな」ドキッ
剣士(俺の馬鹿!意識してどうする!)
剣士(もしかしたら付近に勇者と盗賊を殺した野郎がいるかもしれないんだ)
剣士(今は色恋云々している場合じゃないんだよ俺!)
僧侶「…剣士さん、そのまま進むと香辛料の中に突っ込みますよ?」
剣士「うおっ、危ねぇ」

190:1:2012/07/04 19:55:59.28 ID:DCjhf9KAO
僧侶「やはり、剣士さんも無理をしてられるのでは…」
剣士「大丈夫さ。何回か戦場に行ったりしてるし――」ハッ
僧侶「そうですか…」
剣士(間違えた…会話の選択肢を明らかに間違えたぞ)
剣士(彼女は聖職者だから生き死にに敏感なんだったな…)
剣士「まあ、なんだ。僧侶は?顔色が優れていないが」
僧侶「わたしは大丈夫ですよ。今日はよく眠れましたから」
剣士「そうか、それはよかったな」
僧侶「はい」

191:1:2012/07/04 20:32:18.55 ID:DCjhf9KAO
剣士「っと、あれか?」
僧侶「剣や槍が並んでいるところですか?そうみたいですね」
剣士「なんか覚えてるといいんだけどな。こんちは、おじさん」
店主「アァ?冷やかしは帰れ」
剣士「冷やかしじゃないぜおっさん。聞きたいことがあってな」
店主「媚薬は向こうのババアんとこだ」
僧侶「?」
剣士「誰もそんなこと言ってねぇよ」
僧侶「ビヤクってなんですか?」
剣士「………。人の理性を壊す代物だよ」
僧侶「まぁ怖い…」
店主「なるほどお嬢ちゃんは知らなくて当然だわな」ヒッヒッ
剣士「黙ってろおっさん」

192:1:2012/07/04 20:54:27.77 ID:DCjhf9KAO
僧侶「あの、それで。この数日で剣を買いに来た方はいらっしゃいませんでしたか?」
店主「何人かいたが…なんでだ?」
剣士「…おっさん、勇者が殺されたことは知ってるか?」コソ
店主「なんと。あれは嘘じゃなかったのか」
剣士「ああ。混乱起こすから大々的には言ってないが」
店主「その方がいい。ふむ――凶器は剣か」
僧侶「そうです」
店主「…あんちゃん、どうやら“剣士”っぽいが」
剣士「俺を疑っているなら答えは『いいえ』だ」
剣士「勇者を殺すメリットどころか、デメリットしかない」
僧侶(剣士さんは称号と成功報酬が欲しいんでしたっけ)

193:1:2012/07/04 21:41:22.85 ID:DCjhf9KAO
店主「はいはい分かった分かった」
店主「しかし…この数日で買ったのは何人もいるからな…」
僧侶「何か変な人はいませんでしたか?」
剣士(…さすが中古、刃が曇ってやがる)シャリン
店主「変な人なぁ。あ、見るからに初心者みたいなのはいたぜ」
僧侶「初心者ですか」
剣士「おっさん詳しく」
店主「長い布で顔を巻いていたから顔は分からん。体つきはがっしりしてたな」
剣士「なるほど」
剣士(確かにあの傷は力任せに斬りつけたものだった)

194:1:2012/07/04 22:17:22.20 ID:DCjhf9KAO
剣士「がっしりか…そんなやつどこにでもいるからな…」
店主「全体的に鍛えた感じだったぞ」
剣士「そうか…むむぅ」
僧侶(…一人該当する人が…いえ、そんなわけありませんよね)
剣士「ありがとなおっさん。行こう僧侶」
僧侶「はい」
店主「くそっくそっイチャイチャしてんじゃねーよ」
剣士「あとその宝石ついた鞘のやつ、下手すんと王族のだぞ」
店主「なんだって!?」

196:1:2012/07/05 14:38:37.17 ID:n03jP6sAO
――第一発見者の家
魔法使い「殺された理由は口封じだな…どうみたって」
青年「だな」
おばさん「あの…なにがあったのかしら?」コソッ
魔法使い「入らないでください。憲兵に来てもらわないと」
おばさん「え?きゃ、きゃあああああああ!!」
魔法使い「落ち着いてください!」
おばさん「」バタ
青年「なんで入るなと言われているのに入るのか」ガシ
魔法使い「そういうもんなんだよ!奥さん!奥さん!?」ユサユサ

197:1:2012/07/05 15:14:18.42 ID:n03jP6sAO
……
魔法使い「はぁ…説明があんなに大変なものだったとは」
青年「血が固まっていて良かったな。危うく犯人扱いだ」
魔法使い「まったくだ…」
青年「進展はしたな。犯人は何か見られてはいけないものを見た」
魔法使い「そうだな。だからって、殺さなくてもいいものを」
青年「死人に口無しって言うじゃないか。運が悪かった、そんだけだろ」
魔法使い「……あなたは他人事のように話すな」
青年「他人事どころか種族事だし」
魔法使い「…私ももっと彼らの周辺を警戒しておけば良かった」

198:1:2012/07/05 18:18:44.88 ID:n03jP6sAO
青年「肉の調理法は前もって言えってやつだな」
魔法使い「は?」
青年「焼くか煮た肉はどんなに嘆いても生肉には戻らないっていう言葉だが?」
魔法使い「覆水盆に返らずとかそういうやつか…」
青年「ふん。そっちとこっちでは違うのか」
魔法使い「全然違う。いや、今はそんな話をしているわけではなくてだな」
魔法使い「……」
魔法使い「あれ?魔王?」キョロキョロ
僧侶「魔法使いさーん!」
剣士「遅かったじゃないか」
魔法使い(隠れたのか…空気は読めるんだな)

199:1:2012/07/05 20:15:16.00 ID:n03jP6sAO
剣士「どうだった?」
魔法使い「それが……」
――説明中――
僧侶「なんてことでしょう…」フラ
魔法使い「僧侶!」
僧侶「冥福のお祈りばかりが増えていきます…」
剣士「……。慌ててんのかな?」
魔法使い「ん?」
剣士「慌ててんのかな、犯人は。バレてしまいそうで」
魔法使い「じゃないのか?」
剣士「早く止めないと、こりゃ――被害が大きくなるぞ」
魔法使い「……そうだな」

200:1:2012/07/05 20:21:05.70 ID:n03jP6sAO
僧侶「とにかく、宿に戻りましょう!わたしたちは離れないほうがいいですね」
剣士「その通りだな。離れていると――」
僧侶「特に魔法使いさん」
魔法使い「え、私?」
剣士「」シュン
僧侶「もしかしたらなんらかの手がかりを掴んでしまったかもしれません」
僧侶「狙われるとするなら、魔法使いさんでしょう」
魔法使い「んー…狙われる実感はないが…警戒はしておこう」
僧侶「施錠もお願いしますよ!魔法使いさんが傷ついたら悲しいので!」ズイ
魔法使い「あ、はい…」
剣士「」ショボン

201:1:2012/07/05 20:27:08.04 ID:n03jP6sAO
――宿
魔法使い「戦士はちゃんといるといいんだが」
剣士「こういうときはちゃんとした男だよ」
戦士「俺がなんだって?」ノソリ
魔法使い「いた」
剣士「いた」
僧侶「?」
僧侶(どうして戦士さんの靴が土まみれなんだろう…)
魔法使い「どうした僧侶?」
僧侶「いえ…戦士さん、今日はどこかいきましたか?」
戦士「いや?ずっとここにいたが」
僧侶「そうですか…なんか靴が汚れている気がして…」
戦士「ああ、手入れ怠っちまったからな」
剣士「ちゃんとそういうのはやっておけよ」