Part32
224:
1:2012/09/09 20:26:31.44 ID:xRvxQtXAO
魔法使い「あの日のまま、止まってる。何もかもが」
父「……」
母「……」
魔法使い「私だけが進んでいる」
父「うん、さすが僕らの娘だ。気づいてしまったか」
母「気づかなかったら気づかないままで良かったんだけど」
魔法使い「ここはどこなの?私はもう『いない』の?」
父「まあ落ち着きなさい。これが恐らく最初で最後だ」
魔法使い「……」
父「都合の良い夢か、はたまたあの世に君がいるのか。どっちがいい?」
魔法使い「どっちも良くない。夢ならすべてが自作自演だから」
225:
1:2012/09/09 20:35:54.33 ID:xRvxQtXAO
母「なら、ここは生死にさ迷うあなたがちょっとだけこちらに来てるってことにしましょう」
魔法使い「いいのか。それでいいのか」
父「魔法使い」
魔法使い「なに?」
父「よく頑張ったよ」
魔法使い「……たくさん殺したけど、ね」
父「ああ、大団円にしては君は殺しすぎた」
父「だから、彼らの死を無駄にさせてはいけない」
魔法使い「分かってる」
母「あと好きな人の前ではあんな顔晒さないようにね?フラれちゃうわよ」クスクス
魔法使い「な、なんの話!?」
226:
1:2012/09/09 20:40:04.57 ID:xRvxQtXAO
コン
魔法使い「!誰かドアを…」
コンコン
父「……」
母「……」
魔法使い「ちょっと待って、開けてくる」
母「いいの?」
魔法使い「え?」
母「そのドアの向こうには、苦しみや壁が立ちはだかっているわ」
母「ここにいてずっと穏やかにいたほうが幸せじゃないかしら」
父「母さん」
母「あなたが混血として生きることを決めた次に…もしかしたらそれ以上に大きな選択よ」
227:
1:2012/09/09 20:44:45.53 ID:xRvxQtXAO
コンコン
魔法使い「私は……」
父「時間はないだろうが、悩みなさい。君だけが決められる選択だ」
魔法使い「私だけの」
父「そう。魔法使い自身はどうしたい?」
コンコン
魔法使い「……」
魔法使い(ここにいれば、もう痛い思いをせずに済む)
魔法使い(おかあさんもおとうさんもいる)
魔法使い「……」
魔法使い「おかあさん、おとうさん」
母「どうしたの?」
父「なんだい?」
魔法使い「私のこと、どう思ってる?」
母「そりゃあ」
父「もちろん」
両親「愛してる」
母「……どこにいたってね?」
228:
1:2012/09/09 20:48:48.93 ID:xRvxQtXAO
魔法使い「ありがとう」ニコ
魔法使い「やっぱり私はいかなくちゃいけない」
魔法使い「やらないといけないこともあるし、なにより」
魔法使い「傍にいたい人がいるから」
父「そうか」
魔法使い「全部全部終わったら、また会いに来るね」
母「お土産話期待してるわ」
魔法使い「それじゃあ――いってきます」
ガチャ
229:
1:2012/09/09 20:52:46.18 ID:xRvxQtXAO
――魔王城、一室
魔法使い「!」ハッ
魔王「っ」サッ
魔法使い「ま、魔王?今何をしていた?」
魔王「……なんでもない」
サキュバス「なにって、そりゃ眠り姫を起こすためにはモゴモゴ」
側近「空気読め!!」
魔法使い「というか、ここは一体……?」
魔王「城だ」
魔法使い「誰の?」
魔王「おれの」
魔法使い「嘘っ!?」
人魚「魔王さまは嘘なんかつかないわよこの泥棒猫!」
ゴブリン「こっちにかけるなぁぁぁぁ!!」
魔法使い(に、賑やかだ)
230:
1:2012/09/09 20:58:05.28 ID:xRvxQtXAO
魔法使い「ちょっと待て、なんで私が魔王城にいるんだ!?」
魔王「成り行きで」
魔大臣「気づいたらお持ち帰りを」
魔法使い「お持ち帰りって……」
ミノタウロス「一応恩人ですし?」
蝙蝠「チューシタナカジャナイ」
人魚「なんですってぇぇぇぇ!?一回以上キスしてたんですか!?」
魔王「……」テレッ
人魚「無理してでも加わるべきだったわー!」バシャッ
ゴブリン「」グッショリ
魔法使い「え?一回以上ってことは、やっぱりさっきのは…」
魔王「言うな」
魔法使い「……」
231:
1:2012/09/09 21:13:36.51 ID:xRvxQtXAO
魔法使い「え、ええとこの方たちは?」
魔王「おれの部下。非戦闘員だ」
サキュバス「奮闘したんでしょ?お疲れ☆」
人魚「ふ、ふん。べ、別によく頑張ったなぁとか思ってないんだから」
サキュバス「おばさんのツンデレは痛い…」ボソ
人魚「あ?」
魔法使い「どうも……」ペコ
側近「小娘、身体の具合はどうだ」
魔法使い「背中がひきつってますが、その他は特に。どのぐらい眠って…?」
魔王「丸三日寝ていた」
魔法使い「わお」
232:
1:2012/09/09 21:18:36.92 ID:xRvxQtXAO
魔王「あと人間の城はまだ直ってない。からお前も手伝いにいけ」
魔法使い「ああ」
側近「本当にいかせるんだ……」
ミノタウロス「容赦ない…」
魔法使い「…ん?どうしてまだ直らないんだ?魔物さえいれば」
サキュバス「人間のものだからできるだけ人間で直したいんだって☆」
魔王「だから重いものを持ち上げるなどの手伝いをしてる」
魔法使い「魔王がか?」
魔王「空いた時間にな」
魔法使い「律儀だな」フフ
側近(あ、これ二人の世界に入ったや)
233:
1:2012/09/09 21:25:00.70 ID:xRvxQtXAO
側近「じゃあこちらは仕事してくるんで、では」グイグイ
ゴブリン「えっえっ」
ミノタウロス「なんだなんだ」
蝙蝠「ボクマデ?」
サキュバス「バイ☆」
人魚「ちょ」ガラガラ
ワアワア
ガチャ
魔王「なんだいきなり…」
魔法使い「」ポカーン
魔王「…大勢の前じゃいえない話でもするか」
魔法使い「そうだな。あ、翼しまってくれたんだ」
魔王「寝る時邪魔だろうと思ってな」
魔法使い「ありがとう」
魔王「どうも」
234:
1:2012/09/09 21:39:18.30 ID:xRvxQtXAO
魔王「それで?お前は本当に混血の王となるのか」
魔法使い「ああ」
魔王「王というだけで首の価値があがる。ましてや混血だ」
魔王「おれ以上に変なやつが命を狙いに来るぞ」
魔法使い「…狙われてるんだ」
魔王「週一で」
魔法使い「!?」
魔王「生半可な気持ちならやめておけ」
魔法使い「生半可ではない。私はもう決めたんだ」
魔法使い「混血の迫害を無くす。不当な扱いを受けさせないようにする」
魔王「ほう」
魔法使い「すぐには不可能だろうが…まずは始めなければ」
235:
1:2012/09/09 21:51:16.43 ID:xRvxQtXAO
魔王「忙しくなるな。まずは混血の現状を知らなくてはいけない」
魔法使い「だとすると、また旅だな」
魔王「そうだな」
魔法使い「魔王は?」
魔王「なんだ?」
魔法使い「魔王は、その…旅に、こないのか?」
魔王「そんなに城を空けるわけにもいかないからな」
魔法使い「…そうか」
魔王「なんだ?いっしょに来て欲しいのか?」ニヤニヤ
魔法使い「ば、ばか!別にそんなんじゃないから!」
魔王「ま、安心しろ。おれはここにいる。お前の知らないところには行かない」ポンポン
魔法使い「……ん」
236:
1:2012/09/09 22:21:35.84 ID:xRvxQtXAO
――魔王城、食堂
側近「甘!?」
人魚「コーヒーに砂糖入れた?」
側近「わ、分からない…ただいきなり甘くなって…」
ミノタウロス「はい?」
237:
1:2012/09/09 22:29:43.62 ID:xRvxQtXAO
――人間の城
キュウケイニスルベー
オー
僧侶「あ」ピキン
剣士「どうした?」
僧侶「なんだか、魔法使いさんが目覚めた気が」
剣士「なんなんだその能力は…ところでさ、僧侶」
僧侶「はい」
剣士「昨日、魔王と何か話していたじゃないか。なんだったんだあれ?」
僧侶「ああ……。この話、内緒ですよ?」
剣士「え、うん」
僧侶「わたし、もしかしたらあと五年も生きられないかもしれないんです」
剣士「はぁ!?」
僧侶「しぃ」
剣士「ご、ごめん」
238:
1:2012/09/09 22:34:44.95 ID:xRvxQtXAO
僧侶「あの薬の副作用、だそうです。本来なら十年だとか言われてますが――」
僧侶「…治癒魔法はかなり身体に負担をかけます。そのことから考えるに、五年かと」
剣士「う――嘘だろ……」
僧侶「いえ…確かに、身体は弱くなってきているんです」
剣士「……」
僧侶「だから、魔王さんからあるものを渡されたんです」
剣士「あるもの?」
僧侶「魔法使いさんの血です」
剣士「ええ!?」
僧侶「こっそり抜いてきたとか言っていました」
僧侶「あ、魔法使いさんに言わないでくださいね。なんとなく顔が合わせづらくなるので…」
剣士「わ、分かったよ」
239:
1:2012/09/09 22:39:46.02 ID:xRvxQtXAO
僧侶「あるんだそうです。混血の血には、寿命を伸ばすモノが」
剣士「……噂とかではなかったのか」
僧侶「今回飲んだ血でいうなら、あと七、八年は生きられます。二年延長ですね」
僧侶「もしお婆さんになるまで生きたいというなら――それこそ、人一人分飲まなくてはいけません」
剣士「結果的に魔法使いの血をすべて…」
僧侶「はい。…でもいいんです。短い時間でも、充実していれば」
剣士「僧侶……」
僧侶「剣士さん」
剣士「な、なにかな」
僧侶「わたしとあなたは結ばれることができません。神に仕える身ですから」
240:
1:2012/09/09 22:42:34.30 ID:xRvxQtXAO
剣士「うん?……うん?」
僧侶「だけど――いっしょにいることはできます」
剣士「それってつまり…」
僧侶「はい……剣士さんの傍で、生きていていいですか?」
剣士「……」
剣士「もちろんだ!」
マスター「よくやったな…」グスッ
老兵「あいつらも空で喜んでるだろうな…」グスッ
241:
1:2012/09/09 22:54:51.56 ID:xRvxQtXAO
――魔王城、一室
魔王「……まだ、この城には混血を忌むものがいる」
魔法使い「……」
魔王「無理矢理強制して考えを変えさせるつもりはない。逆効果だからだ」
魔法使い「そうだな」
魔王「だが、諦めなければ少しずつ混血に対する認識も変わるだろう」
魔法使い「……」
魔王「お前がここで認められるまで時間はかからないと思うが――その時は」
魔王「おれもお前もやるべきことが一段落したら」
魔法使い「…うん」
242:
1:2012/09/09 23:05:07.33 ID:xRvxQtXAO
魔王「……おれと、結婚してくれないか」
魔法使い「うん…喜んで」
243:
1:2012/09/09 23:11:42.65 ID:xRvxQtXAO
かくして、少女と青年は結ばれた。
そこに行くまで血に濡れた道ではあったけれど。
その後をここで足早に語るのは彼らに失礼というもの。
またいずれか、出会う機会があったときに話そう。
了
244:
1:2012/09/09 23:15:07.71 ID:xRvxQtXAO
終わりです。お疲れさまでした
矛盾やら文章の稚拙さやらで読み返すのが恥ずかしいですね
言い訳をすると、プロット考えてなかったんですよ…
楽しめてくれたならいいかなって
あとは何本か小ネタを投下しようとおもいます
おつきあいありがとうございました
246:
1:2012/09/09 23:21:18.15 ID:xRvxQtXAO
【ない】
魔法使い「」
サキュバス「二日も起きないね〜」
人魚「…なんでわたし達が看病しないといけないのよ」
サキュバス「だって手が空いてるから☆」
人魚「恋敵の看病なんかできるかー!」ウガー
サキュバス「……本当に恋敵かな」
人魚「え?」
サキュバス「なんか…男の子っぽいんだよね」タユン
人魚「まあ確かに」タユン
魔法使い「」ゲソッ
サキュバス「調べてみるね☆」ゴソゴソ
人魚「ちょっ」
サキュバス「……」
人魚「さ、サキュバス?」
サキュバス「………上の膨らみも下のあれも、両方ない」
人魚「えっ」
247:
1:2012/09/09 23:24:17.08 ID:xRvxQtXAO
【魔法使いが起きる前】
魔王「起きないな」
側近「一体なにが原因で…」
魔大臣「……す」ボソ
側近「ん?」
魔大臣「ほら、あるじゃないかおとぎ話で……目を覚まさせるために、キスを…」
ミノタウロス「!」
ゴブリン「!」
蝙蝠「チュー!」
人魚「なんですってぇ!?」
サキュバス「やってみなよ魔王さま☆」
魔王「……本当に起きるんだろうか」スッ
起きた。
248:
1:2012/09/09 23:26:06.99 ID:xRvxQtXAO
【NG】
「「チェックメイト(アウト)だ」」
魔法使い「……」
魔王「……」
大臣「……」
魔王「テイクツーで」
249:
1:2012/09/09 23:27:49.59 ID:xRvxQtXAO
【ピーヒョロロ】
魔法使い「側近さん、序盤ではよくピーヒョロロって言っていたけど最近言いませんね」
側近「……あれな。鳶の鳴き声だったんだよ」
魔法使い「……」
250:
1:2012/09/09 23:30:48.41 ID:xRvxQtXAO
【泥棒猫】
人魚「あれから考えたんだけど」
魔法使い「はい」
人魚「泥棒猫より泥棒鷲よね」
魔法使い「そんなこと言われましても」