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魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
Part28


60:1 ごめん、つまったから差し替え...:2012/08/31 22:16:07.76 ID:XcSJkxKAO
バタバタバタ
魔王「行ったか」
魔法使い「ああ」
蝙蝠「ボクハドウシヨ?」
魔法使い「お前もいっしょに行った方がいいんじゃないか?」
蝙蝠「ウーン。ココニイルヨ」
魔法使い「…私は私のことで精一杯だぞ」
蝙蝠「イイヨ」
魔王「ふん。魔法使い、どうやらあちらさんはキレたようだ」
 同時に爆風が起こる。
大臣「……私は」
魔王「なんだ」
大臣「私は、王となるのだ」
魔王「ほう」

61:1 ごめん、つまったから差し替え...:2012/08/31 22:30:33.22 ID:XcSJkxKAO
魔法使い「まあ…王をふたり捕らえた辺りから予想はしていたが」
魔王「で?貴様は何故王になりたいのだ」
魔法使い(あ、口調変わった)
大臣「魔物と人間が共存する国の、だ」
魔法使い「……」
魔王「共存ねぇ。ふん、この件は後回しだ。本当にそれだけか?」
大臣「ない」
魔王「どうせ誰もいないんだ。喋っちまえよ」
大臣「……仕返しだ」
魔法使い「仕返し」
大臣「私を笑ったものへの仕返しだッ!」
大臣「魔法の使えない混血だからと嘲った奴等への!」

62:1 ここの欄消し忘れた[saga...:2012/08/31 22:39:32.04 ID:XcSJkxKAO
魔法使い「驚いた。大臣も混血だったのか」
大臣「狼と人間のだ。だが、私は…私は魔力もわずかしか持っていなかった」
魔王「ふむ」
大臣「ただの人間も当然だ……弱いだけの人間に!」
魔法使い「……」
大臣「だから魔物と対等となるべく努力を重ねた」
魔王「変なところにエネルギーを使ったな」
大臣「今の私には両方を従えることができる。もう二人の王なぞいらない」
大臣「そもそも、人間と魔物を分けるから混血が疎まれるんだ。なぁ魔法使い、そう思うだろ?」

63:1 ここの欄消し忘れた[saga...:2012/08/31 22:45:20.63 ID:XcSJkxKAO
魔法使い「そうだな」
魔王「……」
魔法使い「だが混ぜるな危険とは良く言うじゃないか」
魔法使い「魔物と人間は習慣から違うぞ?それを一つに?馬鹿か」
魔法使い「別けなければいけなかったから別けた。それだけの理由だろ」
魔王「だな」
大臣「混血として苦しんでおきながら……それはこれから生まれる混血を不幸にする気か」
魔王「根本的に駄目だってことだ。人間が圧倒的に不利になるだろ」
魔王「魔法を使えないからって魔法を使える同類に八つ当たりか?」

64:1 :2012/08/31 22:58:59.87 ID:XcSJkxKAO
魔法使い「ほぼそれだろ」
魔王「そうだな」
魔法使い「何故私の事情を知っているのかは謎だが」
大臣「簡単だ。お前の母親と知り合いだったから」
魔法使い「……何?」
大臣「たまたま事故にあったところを助けてくれたんだよ、お前のお節介な母親は」
魔法使い「おかあさんと…話したことがあるのか」
大臣「それどころか初恋の相手だ」
魔法使い「え」
大臣「そして――彼女を殺したのも私だ」

70:1:2012/09/01 20:41:50.09 ID:KKdpnHEAO
魔法使い「…なんで?」
大臣「お前を庇ったからだよ」
魔王「……」
大臣「お前が死ねばそれで終わったんだ」
魔法使い「私がどうして殺されなければいけない」
大臣「目を覚ませてあげたかったんだよ。自分がどんな化物を生んだのかってな」
大臣「魔物である父親を凌駕する魔力を持つ子供なぞ――危険な爆薬だ」
大臣「彼女が不幸せになるのは目に見えて分かっていた」
魔王「ふん。貴様、こいつの母親に恋したのか」

71:1:2012/09/01 20:50:15.75 ID:KKdpnHEAO
大臣「……」
魔王「なんだかんだ理由をつけておいて――」
魔王「自分の出来損ないさを他人のせいにしているわけか」
魔王「そして人妻に恋狂い、こいつに嫉妬しただけか」
魔法使い「……」
魔王「なるほどなるほど、じゃあ鷲一族を殺すように言ったのは?」
大臣「…魔力を無効にする矢を試したかった。まあ、結果は可の下だったが」
魔王「あいつらが住んでる森を焼いて、逃げ出したところを集中攻撃か。いい的だったろ」

72:1:2012/09/01 21:03:39.40 ID:KKdpnHEAO
大臣「そうだったな。悶えながら死んだよ。愉快極まりない」
魔法使い「っ」
魔王「それで?鷲族を全滅させて、何を得られた?」
魔王「可哀想な混血たちは救えたか?貴様の焦がれた女は助けられたか?」
魔法使い「…魔王」
 横に並ぶ魔法使いの肩を魔王が掴む。
 とちらかの身体が小刻みに震えていた。
大臣「…彼女と父親に拒まれ、それからそいつの爆発に巻き込まれてすべてはおじゃんだ」
大臣「魔物の血のせいか死だけは免れたが……数年は修復にあてなければいけなかった」

73:1:2012/09/01 21:16:10.12 ID:KKdpnHEAO
魔王「なんにもできてねぇじゃねえかよ」
大臣「なに?」
魔王「なんにも達成できてないだろ。なんにも」
大臣「……」
魔王「自分が弱いから強いやつに八つ当たりか」
魔法使い「…魔王討伐に行かせたのも…そういう理由だったか」
魔王「死ぬ可能性があるからな。帰ってきたら適当に理由つけて殺すもよし、襲わせるもよし」
魔法使い「……」
大臣「私は、失敗したが正しいんだよ!混血の格差をなくせれば――」
魔王「でめその前に他の混血殺すんだよな。あと王がなんだとか止めろ。笑うから」
大臣「なっ……」
魔王「貴様が思うほど王ってのは楽じゃないんだよ」

74:1:2012/09/01 21:22:32.76 ID:KKdpnHEAO
魔王「自分のために国をまわすんじゃない。国民のために国をまわすんだ」
魔王「確かに混血の地位上昇はいいがな――今の貴様じゃ、魔法使いみたく強い混血は処分するだろ」
大臣「……危険因子となりかねないから」
魔王「なら人間にも魔物にも危険因子はたくさんいるだろ」
魔王「結論を言わせてもらうと、貴様は強いやつが羨ましいだけなんだ」
大臣「ふ――ふざけたことをォォォォォォォ!!」
 目が潰れるほどに強い光が大臣を中心に弾けた。
 様々な種類の攻撃が魔王たちを襲う。魔王は攻撃そのものを消し、魔法使いは弾いていく。

75:1:2012/09/01 21:29:52.22 ID:KKdpnHEAO
魔王「図星か」
 魔王が呟いたのは攻撃がやみ、静けさが空間を占領した頃だった。
 頬に切傷ができていたが、流れた血の跡を残して瞬く間に消えてしまう。
魔王「すまないな、魔法使い」
魔法使い「……」
魔王「挑発とは言え、お前にはかなり辛いことだったな」
魔法使い「鷲一族は」
魔王「ああ」
魔法使い「どこに住んでいたんだ?」
魔王「村民がほぼ全滅し、兵の虐殺が起こった村のすぐ近くの森だ」
魔法使い「それって、私の村だよな」
魔王「知らん。…ただ、人間に化けた魔物が居たとは聞いた」

76:1:2012/09/01 21:36:37.91 ID:KKdpnHEAO
魔法使い「人口とかは、分かるか?」
魔王「八十人程度の規模だと聞いた」
魔法使い「じゃあ、私の…村か」
魔王「今まで調べなかったのか」
魔法使い「思い出したくなかったから」
魔王「ふん、そうか」
魔法使い「私は…鷲一族に認められていたのかな?」
魔王「そんなに近くに住むってことはそうだろ。記憶は?」
魔法使い「昔過ぎて覚えてないよ。ああ、でもそうだったんだ」
 大臣はいない。
 新たに天井に穴が空いているのを見つけ、上に行ったのだろうと魔王は考える。

77:1:2012/09/01 21:42:05.32 ID:KKdpnHEAO
魔王「魔法使い、泣いたり動揺するなら今のうちだ」
魔法使い「泣いてないし動揺してない」グッ
魔王「目拭いたじゃないか」
魔法使い「目にゴミが入っただけだ」
魔王「そういうことにしとくか」
魔法使い「うるさい」
 彼女は袖でごしごしと目元を擦る。
魔法使い「…おかあさんは、筋金入りのお人好しだったからなぁ」
魔王「そうか」
魔法使い「あはは、大臣、追わないと」
魔王「……」
 手近にあった剣を拾い上げる。
魔法使い「何もないより…マシかな」

78:1:2012/09/01 21:46:45.31 ID:KKdpnHEAO
魔王「触れるのか」
魔法使い「え?うん」
魔王「…とんでもないやつだな」
魔法使い「何が?」
魔王「なんでもない」
魔法使い「……?」
魔王「さてと…決戦は上ってことか。見ろよ、もう夜だぜ」
魔法使い「見えるかな」
魔王「あちこち燃えてるから大丈夫だろ。――……」
魔法使い「魔王?」
魔王「いや……きっと、死ぬか生きるかの戦闘になるかと思う」
魔法使い「そうだな」
魔王「生きられたとしても、今のこの状態とは限らない」
魔法使い「うん」
魔王「だから、問うが――」

81:1:2012/09/01 21:48:31.32 ID:KKdpnHEAO
魔王「おれと来てくれないか、魔法使い」
魔法使い「…ああ」

82:1:2012/09/01 21:57:31.96 ID:KKdpnHEAO
魔王「今度は断るじゃないんだな」
魔法使い「断れるか。一緒に戦おう」
蝙蝠「ボクモ!」
魔王「いたのか」
蝙蝠「シリアスダッタカラネ。サスガニデレナイヨ」
魔法使い「はは、そうだったのか」
 上へ繋がる階段は、あちこち崩れていたが使えないこともない。
 魔王は魔法使いに向けて片手を差し伸べた。
 魔法使いは魔王の手に自分の手を置いて、握った。
魔法使い「戦場までエスコートしてくれますか、王子?」
魔王「もちろんですよ。どこまでも連れていきましょう、我が姫」
 二人は顔を合わせて笑った。

96:1:2012/09/02 20:21:44.99 ID:lIr8fK+AO
――通路
人間兵「あっ、国王さま!」
マスター「国王さま!」
国王「どうも国王です…」ゼヒュゼヒュ
剣士「ちょっと走ったぐらいで息切れないでください…」
老兵「運動不足ですよ」
国王「言いたいこと言い過ぎじゃろ!」ゼヒュゼヒュ
側近「となると、魔王さまも――」
僧侶「あ、そのことなのですが!」
側近「どうした」
僧侶「今すぐ城から出ろと、言付けを受けました!」
魔大臣「何?」
僧侶「魔王さんが大臣さんと――交戦をしているんです」

97:1:2012/09/02 20:28:53.69 ID:lIr8fK+AO
ゴブリン「何としてでも仕留めるつもりか…」
側近「小娘は?」
僧侶「小娘?」
側近「魔法使いのことだ」
僧侶「…あの方は、魔王さまと残りました」
側近「そうか……」
ミノタウロス「退却させちまうなら退却させるぜ」
側近「頼む」
ミノタウロス「全軍退却!怪我人を忘れるなよ!」
剣士「あれ?」
マスター「どうした」
剣士「なんだろうな……あのでかいの」

98:1:2012/09/02 20:35:32.17 ID:lIr8fK+AO
ゴブリン「あの外にいるやつか。あの大きさでどこに隠れていたんだろ」
トロール「巨人族だナ。その中でもさらにでかいほうダ」
剣士「へー」
側近「なあ魔大臣」
魔大臣「なにかな側近」
側近「どうみてもこっち来てないか、あの巨人」
魔大臣「やっぱり?」
巨人「グオオオォォォォォォォォ!!」ドシドシ
側近「こっちに走ってきたぁぁぁぁ!!」
魔大臣「とにかく逃げろ!!」
ゴブリン「振動やべぇ!!」
国王「ぎえええ!!」
マスター「あ、早い」
老兵「この城は年寄りに優しくないな」

99:1:2012/09/02 20:39:34.51 ID:lIr8fK+AO
――中庭
ギャーギャー
王女「賑やかだわ」
后「すごく嫌な予感がするけど…」ガタガタ
王女「あら、お父様が来たわ」
后「良かっ……」
従者「」
王女「なにかしら。大きいのも後ろから付いてきたわよ、お母様」
従者「に、逃げましょう」
后「そうね」
王女「お父様は?」
后「あの人、殺しても死にはしないから大丈夫よ」
従者「……」
王女「あーあ。天使さんにまた会えるかしらね?」

100:1:2012/09/02 20:49:08.95 ID:lIr8fK+AO
ドタバタ
魔大臣「魔法は!駄目か!?」
側近「皮膚が分厚いのか深刻なダメージは無理だ!」
ミノタウロス「とにかく足止めはしないと!」
国王「はひゅ、はひゅ、」
ミノタウロス「……」ヒョイ
老兵「か、軽々と」
側近「だめ押しでもう一発だ――『破裂せよ』!」
巨人「」ボリボリ
側近「これで切傷かよちくしょう!!」
魔大臣「落ち着け」
剣士「僧侶!大丈夫か?」
僧侶「ま、まあまあ……あっ」ステン

101:1:2012/09/02 20:56:47.90 ID:lIr8fK+AO
剣士「僧侶!」
 逃げ惑う兵をかき分けながら僧侶を助け起こす。足を捻ったようだ。
 後ろを見上げれば巨人はあと二三歩の位置に迫っていた。
僧侶「剣士さん、なにやってるんですか!早く逃げてください!」
剣士「一日に何度も見殺しにしてたまっか!」
 僧侶を抱えあげて走る。
 だが、もう足掻きにしかならない。
 巨人が二人に狙いを定め、意思を持って踏み潰そうと足を上げた。
僧侶「ごめんなさい…!」ギュッ
剣士「まだ諦めんなァァァァァァ!!」ダダダ

102:1:2012/09/02 21:05:09.99 ID:lIr8fK+AO
 背後に突如気配を感じた。
 振り向える余裕なぞなく、走り続ける剣士の耳に入った言葉。
師匠「一番弟子を泣かせたくはないのう」
 直後、巨人が後ろ向きに倒れた。

103:1:2012/09/02 21:12:48.25 ID:lIr8fK+AO
剣士「し、死ぬかと……」
僧侶「ありがとう…ございます…」ギュウ
マスター「ヒヤヒヤしたぞ…」
僧侶「それにしても、あの方は…?」
剣士「そ、僧侶。まず降りてくれないか?」カァァ
僧侶「す、すいません」カァァ
側近「本物か?」
魔大臣「本物だな」
ゴブリン「本物だ」
ミノタウロス「本物だろ」
トロール「本物だネ」
剣士「本物って――あの人は誰なんだ?」
一同「「「 前々代魔王さま 」」」