Part24
890:
1:2012/08/26 00:14:33.31 ID:2ahOSzHAO
魔術師「ふむ」
魔術師2「強いな」
魔術師3「ならもっと――!?」
魔術師「どうした?」
魔術師3の喉にぐるりと赤い線か引かれた。
それにそってぽろりと頭が取れた。一拍遅れて血が吹き出す。
魔術師「弟!?」
魔法使い「ごめん。まとめてやろうとしたんだけど――」
先ほどと変わらぬ位置で、困ったように笑いながら魔法使いは言った。
魔法使い「両親を最初に侮辱したから。ついやってしまった」
魔術師「ぁ…ぁ…」
魔法使い「確かに力は強いけど、個人戦向きじゃない。力を一つにするまで時間かかりすぎ」
891:
1:2012/08/26 00:20:59.57 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「見た感じ、薬の調合とか研究で“魔術師”になったんじゃないか?」
魔術師二人に向かい歩いていく。
魔術師たちは兄弟を殺した相手に恐怖を感じ、とにかく攻撃をしかける。
標準の合っていないそれを軽く魔法使いはいなしていく。
魔法使い「だとしたら悪い。こちらは最近ずっと戦いっぱなしで――」
バサリと翼を広げてみせた。
魔法使い「正直、ぬるいよ」
魔法使いが片手の指を曲げた。
それだけで、ふたりの人間の頭と四肢が胴体から離れ落ちた。
892:
1:2012/08/26 00:30:16.57 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「駄目だよ。両親は悪くいっちゃあ」
魔法使い「これでも誇りに思ってるんだ」
魔法使い「嫌だろ?尊敬してる人を馬鹿にされたら」
魔法使い「それを戦場で言ったら――敵が怒るのも無理はないよ」
魔法使い「今更だけどね」
魔法使い「時間食った。魔王は何処だろう」
彼女が気づかぬ内に――爪は、厚く固く、伸びていた。
鳥の爪のように。
魔物化が進んでいることに。
893:
1:2012/08/26 00:34:00.08 ID:2ahOSzHAO
――魔王城、医務室
ゴブリン「はっ!?」
サキュバス「チッ」
ゴブリン「待て、今どうして掛布団に潜っていた。何をした貴様」
サキュバス「今からするトコだったのに〜」
ゴブリン「おい」
サキュバス「気分はどう?」
ゴブリン「気分?そういや、いきなり意識が――」ハッ
ゴブリン「みんなは!?」
サキュバス「魔王さま奪還の戦いに出ちゃった☆」
ゴブリン「魔王さまが!?なんで……」
サキュバス「……さぁね。ほら、まだうごかなーい」
894:
1:2012/08/26 00:37:07.69 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「こうやって寝てる場合じゃないんだ!行かないと!」
サキュバス「ま、そうだけどね」
人魚「ゴブリン!起きたの!?」ガラガラ
ゴブリン「なんか水槽ごと運ばれてきたよ…」
人魚「呪いが解けたの…?」
サキュバス「みたい☆メイド達も起きてきてるし」
ゴブリン「人魚は残ったのか」
人魚「ええ。陸じゃ戦えないから、代理で城内指示」
ゴブリン「そうか…」
895:
1:2012/08/26 00:40:01.41 ID:2ahOSzHAO
サキュバス「あれあれ〜、お礼言わなくていいの?」
ゴブリン「お礼?」
人魚「ちょっ」
サキュバス「人魚さんったら、ずっとあなたを見守ってたのよ〜」
ゴブリン「えっ」
人魚「な、何言ってるのよ!」
ゴブリン「本当…みたいだな」
人魚「べ、別にあんたが昏睡してて不安で仕方なくて見ていたわけじゃないし」
人魚「ただ死なれたら困るなーって思っていただけよ!文句ある!?」
ゴブリン「ないです」
サキュバス「素直じゃないね☆」
896:
1:2012/08/26 00:43:22.60 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「うん、体は大丈夫そうだ」
人魚「病み上がりで戦いに行く気?」
ゴブリン「呪い上がりだけどな。戦いに行く気だ」
人魚「体調は?」
ゴブリン「バッチリ。一切問題ない」
人魚「…城内を一緒に見てよ。パニックが起こると大変なの」
ゴブリン「人魚ならいけるだろ」
人魚「無責任すぎるわ」
ゴブリン「ほら、でもさ。自分だけ暢気に寝てるのも悪いし」
人魚「……分かったわよこの戦闘馬鹿」
人魚「そうね、元々戦いが生き甲斐だものね」
897:
1:2012/08/26 00:46:44.26 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「そこまで戦闘狂ではないが……」
人魚「転移してあげる。用意してきて」
ゴブリン「どうも。ちょっと待っててくれ」タッ
人魚「ハァ……」
サキュバス「え〜、気になっちゃった感じ?」
人魚「ばっ、そんなんじゃないわよ!」
サキュバス「へぇ〜」ニヨニヨ
人魚「い、嫌な子ね」
サキュバス「ひとの恋愛は見てるだけで面白いからね〜」ニヨニヨ
人魚「だからっ、恋でも愛でもないわよ!」キー
898:
1:2012/08/26 00:53:16.97 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「用意してきた。飛ばしてくれ」タタッ
人魚「ええ。みんなによろしく」
ゴブリン「分かった」
人魚「じゃね」
ゴブリン「頑張れよ」
人魚「そっちこそ」
シュンッ
サキュバス「うひひっ☆」
人魚「…何?」
サキュバス「戦場に行くオトコに惚れちゃった?」
人魚「うずまき管壊すわよ」
サキュバス「ごめんね」
899:
1:2012/08/26 00:58:53.45 ID:2ahOSzHAO
――人間の城、中庭付近
側近「待て!」バサバサ
術師「はーっはっはっ!待つ馬鹿がどこにいる!」
魔大臣「うるせぇ!大人しく捕まれ!」ダダダ
側近「口調が乱れているぞ」バサバサ
術師「はっはっは!」
魔大臣「ちぃ、ゴーレムにお姫様抱っこで運ばれてるくせに」
側近「しかしアレ防御強いな。すぐ再生するし」
魔大臣「早くしないとミノタウロス達の体力が――」
ゴブリン「ギャ――――!!!あいつどこに落としてんだ――!!」ドサッ
全員「!?」
900:
1:2012/08/26 01:03:04.40 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「あいたた……うわ、なんで土に埋もれてるんだ」
側近「ご、ゴブリン……?目覚めたのか」
ゴブリン「お陰様で」
魔大臣「なんで空から……」
ゴブリン「人魚がちょっと間違えたみたいで…あれ、誰かの上に座ってるぞ」
術師「きゅう」
ゴブリン「うわっ、なんだ平気かこいつ」
魔大臣「……」
側近「……」
魔大臣「給料上げよう。人魚もな」
ゴブリン「え?」
側近「次に行こう」
魔大臣「そうしよう」
ゴブリン「え?え?」
901:
1:2012/08/26 01:10:02.15 ID:2ahOSzHAO
――別のとある部屋の前
兵士「なんだ貴様――ぐぁ」バキ
兵士2「大臣さまに歯向か――べぁ」バキ
魔法使い「なんだ、ここは異様に見張りが多いな――ん?」
魔法使い(微弱に魔力がある――なんだろう)
魔法使い「あれ?」ガチャガチャ
魔法使い「開いてない」ガチャガチャ
魔法使い(普通の錠と魔力で鍵がかかっている)
魔法使い(魔王の気配じゃないし――)
魔法使い(見張りの多さといい、これといい、まさか国王がこの部屋にいるんじゃ)
902:
1:2012/08/26 01:14:30.58 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「……」
魔法使い(この姿じゃ、ちょっとな)
??『もし?誰かいますの?』トントン
魔法使い「! はい」
??『あなたは誰?』
魔法使い「…大臣の敵とだけ。あなたはどうしたのですか?」
??『大臣にこの部屋に監禁されていますの。助けて下さらない?』
魔法使い「……ひとつ、条件が」
??『はい』
魔法使い「絶対に目をお開けにならないようお願いします――王女さま」
王女『あら――知ってましたの?』
魔法使い「ええ。では、開けますよ」
王女『分かりました』
903:
1:2012/08/26 01:19:24.16 ID:2ahOSzHAO
パキン
魔法使い「……」ギィィ
そこに立っていたのは上等なドレスを着た金髪の少女。
年は十代中ごろほどか。
瞳は瞼に遮られ見えない。
魔法使い「お妃さまは?」
王女「分かりません。どうしているのでしょう」
魔法使い「心配ですね――ちょっと目隠しをさせてもらいます」シュルッ
懐に包帯があったのでそれで緩く目を覆う。
王女「そんなに容姿が気になるの?」
魔法使い「はい。怖がらせてしまいますから」
王女「優しいのね」
904:
1:2012/08/26 01:29:12.15 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「いいえ。私は優しくなどありません」
王女「そうかしら。――何も見えないから、腕を掴んでいい?」
魔法使い「どうぞ、お気になさらず」
王女「細いわ。声は低いけど高い感じがするし……」ギュ
王女「不思議。あなたは男なの?女なの?」
魔法使い「お好きなほうで」
王女「意地悪ね。じゃあ、男の人。こういうのは王子さまが助けにくるものだから」
魔法使い「…そうですね」
魔法使い(戦士に呪われそうだ)
916:
1:2012/08/26 21:22:52.18 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「王女さま、大臣には会いましたか?」
王女「…ええ、会いました」
魔法使い「何か言われましたか?」
王女「あの男、『お前たちの時代は終りだ』って」
魔法使い「困った人です。しっかり叱っておきましょう」
王女「会いにいくつもり?」
魔法使い「はい、大臣が全ての元凶ですからね。灸をすえにいきます」
王女「嘘」
魔法使い「え?」
王女「そんな大人しい言い方しなくてもいいのに。殺しにいくのでしょう?」
917:
1:2012/08/26 21:31:41.64 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「……まあ、はい」
王女「別に、殺しちゃ駄目なんて子供じみたことは言わない」
王女「大臣は説得で投降するほど軟弱な人間ではないだろうし――意志も弱くないでしょう」
魔法使い(僧侶に聞かせたら泣きそうだな…)
王女「でも、気をつけて。もう――あの男は止まれない」
魔法使い「……」
王女「自分が死ぬなら周りももろとも、というやり方しかねないわよ」
魔法使い「ああ…なんかありそうですね」
王女「ところで」
魔法使い「はい」
王女「本当に大臣倒しにいくだけ?」
918:
1:2012/08/26 21:41:37.69 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「はい」
王女「嘘」
魔法使い「……読心が得意なんですね」
王女「いいえ。読心なんて技術持ち合わせていないわ」
王女「ただ、聞いているかぎり、何かの『ついで』みたいだから」
魔法使い「『ついで』……ですか」
王女「そう。わたくしがたまたまそこに居たから助けた感じでしょう?」クスクス
魔法使い「えっ、いや、そんな」
王女「いいのよ。ああ、お父様が目的じゃないのは分かるけど」クスクス
魔法使い「えっとですね……」
王女「大事なひとでも捕まっているのかしら?」
919:
1:2012/08/26 22:57:26.72 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「だ、大事なひと……なのかな」
王女「今ので全部分かっちゃった♪」
魔法使い「え、いや、そういう関係じゃないですし…」
王女「体温上がってるわよ?」
魔法使い「うぐ」
王女「……大臣も酷いことをするわね」
魔法使い「……」
王女「わたくしは何も出来ないけど…応援はするから」
魔法使い「…ありがとうございます」
王女「生きてね」
魔法使い「はい、必ず。この戦い、勝ちます」
王女「フフッ、頼もしいわ」
バタバタ
兵「あ!王女さま!」
兵2「ご無事ですか王女さま!」
920:
1:2012/08/26 23:02:14.68 ID:2ahOSzHAO
王女「ええ」
兵「その…お疲れさまです」
魔法使い(血まみれでこの姿だもんな。怖がられても仕方ない)
魔法使い「いえ……彼女を頼みます。私は、まだやらないといけないことが」
兵2「しかし…」
王女「いいわ。足手まといでしょうし」
魔法使い「すみません。私がいなくなったら包帯をはずして下さい」
兵「あ、ああ」
魔法使い「では」タッ
兵2「お気をつけて!」
王女「」シュル
兵「あ、王女さま――」
王女「あら」
わずかに見えた魔法使いの背を見て王女は口に手を当てる。
王女「天使に恋してしまったみたい」
921:
1:2012/08/26 23:14:36.55 ID:2ahOSzHAO
――とある部屋
剣士「お邪魔します」キィ…
剣士「」
剣士「お邪魔しました」バタン
僧侶「どうしたんですか?」
剣士「何にもなかったよ。何にも」
僧侶「は、はぁ」
剣士(バラバラ死体があった…)
老兵「まだ階段登るのかい、僧侶さん」
僧侶「すいません…まだもう少し」
老兵2「どこに行くんだっけ?」
老兵3「ちゃんと聞いとけよボケジジイ」
老兵2「あぁん?」
922:
1:2012/08/26 23:17:18.34 ID:2ahOSzHAO
剣士「争ってる場合じゃないだろじいさん達」
僧侶「上に、脱出不可と言われる凶悪犯罪者用の牢があるんです」
剣士「何故そんな物騒なものを城に…」
僧侶「国王さまを守るために選りすぐりの人がいつも待機していますから」
僧侶「仮に逃げられてもその人たちが早期に押さえつけることができるから、だそうです」
剣士「へぇ」
僧侶「それに窓から脱出は飛び降りと同意義ですから」
老兵「もちここから国王さまの部屋までは容易にいけない造りになってるそうだ」
老兵2「人質になったら大変だからな」
923:
1:2012/08/26 23:28:06.45 ID:2ahOSzHAO
僧侶「わたしの予想ではそこにいるんじゃないかと…間違えたらごめんなさい」
剣士「そんな消極的になるなよ。オレらじゃそもそも検討もつかないし」
老兵「慰め下手だな」ヒソヒソ
老兵2「な」ヒソヒソ
老兵3「ありゃだめだ」ヒソヒソ
剣士「おい」
僧侶「ここから階段が狭くなります。足元に気をつけて」
老兵「じゃ、儂が前に出る。一応な」
老兵2「後ろから敵は?」
老兵3「いない。静かすぎて不気味だが…」
剣士(この辺りはほとんど魔法使いがやったみたいだからな)