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魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
Part2


34:1:2012/06/19 00:05:32.61 ID:rz/v2xqAO
盗賊「まだ旅が始まったばかりと言っても過言じゃないじゃん?」
戦士「数ヶ月は経ってるけどな」
盗賊「あと、魔王は歴代の“勇者”を墓場送りにしたんだろ?」
魔法使い「……」
盗賊「どうして早めに芽をつむ?あっちには相当な力があるのに?」
僧侶「実は勇者さんにすごい力を秘めていたから早めに始末したとか…」
盗賊「……」
剣士「……」
戦士「……」
魔法使い「……」
僧侶「…なんて」

35:1:2012/06/19 00:07:57.17 ID:rz/v2xqAO
魔法使い(むしろ最弱のほうだからなぁ)
戦士「まあな、俺も最初は思ったさ」
魔法使い(先代勇者の息子だから、“勇者”の血が流れているから)
剣士「死んだやつのことを悪くいいたくはないがな…」
魔法使い(それだけで、選ばれた――力ではなく血筋しか見ていない)
盗賊「先代“勇者”がすごすぎたんだよな?」
魔法使い(納得は出来なかったが…剣を持てるのは彼しかいなかったからしょうがない)

36:1:2012/06/19 00:17:01.58 ID:rz/v2xqAO
戦士「……」
剣士「…寝るか」
戦士「だな」
僧侶「もう日付も変わりましたしね…」
剣士「とりあえず明日、国に連絡しよう。あとは朝起きてからだ」
魔法使い「分かった」
僧侶「ではお先に」ペコ
魔法使い「おやすみ」
戦士「ほら勇……、あー…そっか、いないのか」
魔法使い「戦士…」
戦士「気にすんな。そんなヤワじゃないからな、俺は。じゃ」
盗賊「あ、戦士?すぐ寝る?」スタスタ
戦士「なんだよ」スタスタ
魔法使い「……私も寝る」
剣士「ああ。また明日」
魔法使い「また明日」

37:1:2012/06/19 00:24:55.82 ID:rz/v2xqAO
――宿部屋
キィ
魔法使い「ふぅ」ドサ
魔法使い「……」
青年「ここに一人とか豪勢だな」
魔法使い「!?」
青年「この宿は二人部屋しかないそうだから溢れたか?しかしぴったり六人のはずだが」
魔法使い「な、何でここに居る!?」
青年「もう忘れたか?おれは魔王だ。このぐらい余裕」
魔法使い「だからって人の借りた部屋でくつろぐなよ……」
青年「あ、分かった」
魔法使い「話を聞け」
青年「魔法使いお前、男って偽ってるだろ?」

41:1:2012/06/23 09:16:47.28 ID:GJnMgxMAO
魔法使い「…ひとつ、言わせてくれ」
青年「なんだ」
魔法使い「順番というか、順序ってものを知っているか?」
青年「それがどうした」
魔法使い「私が女だと暴く前に今のセリフだろ。普通は」
青年「ふん。順序なんて意味のないものに付き合うほど俺は暇じゃない」
魔法使い(どうみても暇そうなんだけどな……)

42:1:2012/06/23 09:17:36.51 ID:GJnMgxMAO
青年「で、どうなんだ」
魔法使い「…ああそうだよ。私はパーティー内では男としている」
魔法使い「だいたい何故あなたは私の性別が分かった?それが不思議なのだが」
青年「簡単だ。軽く解析したら普通ヒトのオスにあるものがなかったからな」
魔法使い(いつ解析とかしたんだ?というより解析ってなんだ?)
青年「しかし迷ったぞ。なんせメスにあるはずの豊満なものも――」
ガッシャーン

43:1:2012/06/23 09:18:23.61 ID:GJnMgxMAO
僧侶『魔法使いさん!?大丈夫ですか!』ドンドン
魔法使い「あ、やあ…僧侶」ガチャ
僧侶「どうしたんですか今の音!それに何か話し声もしたような…」
魔法使い「寝ぼけていて。ちょっと今日は疲れてしまったみたいだ」
僧侶「え?そう…ですか。早く寝た方がいいですよ?」
魔法使い「いや、もう寝ていた」
僧侶「?」
魔法使い「……実は私、寝相が悪いんだ」

44:1:2012/06/23 09:18:49.66 ID:GJnMgxMAO
僧侶「まあ…」
魔法使い「秘密にしていたんだが…言わないでくれるか?恥ずかしいから」
僧侶「も、もちろんです!」
魔法使い「ありがとう。おやすみ、僧侶」
僧侶「おやすみなさい、魔法使いさん」
魔法使い「僧侶も早く寝た方がいいぞ。体力ないんだから」
僧侶「失礼です!」
魔法使い「ごめんごめん」
パタン

45:1:2012/06/23 09:20:24.30 ID:GJnMgxMAO
魔法使い「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
魔法使い(騙してごめん僧侶)
青年「あの少女にはおれの存在が気づけなかったみたいだな」
魔法使い「…隠れていたのか」
青年「面倒なことは嫌だからな」
魔法使い「彼女は治癒に特化しているんだ。その他は全然……」
青年「全然?」
魔法使い「…そういえば、あなたは敵だったな…」
青年「ふん。仲間の弱点は言いたくないか」
魔法使い「……」
青年「その勇者無しのパーティーでおれを倒しにいくなら言わないほうがいいな」
魔法使い「……ふん」

46:1:2012/06/23 09:21:03.31 ID:GJnMgxMAO
青年「話を戻すか。魔法使い、お前は自分を男だと認識させる魔法でも使っているのか?」
魔法使い「魔法など使わなくても、私は昔から男子に間違われていたんだ」
魔法使い「ボロをみせなければ誰も私のことなど女だと思わない」
青年「ふうん、なるほどな。やっぱ胸の大きさも関係しているんだろうか」
魔法使い「………」イラッ
青年「だが、風呂とかはどうしている?」
魔法使い「それは言うべきことなのか――」
鷹「」バサッ

47:1:2012/06/23 09:21:31.18 ID:GJnMgxMAO
魔法使い「あ、窓から鷹が」
青年「ご苦労。なにかあったか?」
鷹「いいえ」
魔法使い(喋ったよ)
青年「魔物のほうは何もなし、か。さておれらも戻るかな」スク
魔法使い「戻るって、どこへ?」
青年「向かいの宿だよ」
魔法使い「は?」
青年「寂しくなったらいつでもこい」シュンッ
魔法使い「誰が行くか!――……もういないし」

48:1:2012/06/23 09:26:46.57 ID:GJnMgxMAO
――青年の宿部屋
鷹「魔王さま」
青年「ん?」
鷹「このような質素な部屋でよろしいのですか?」
青年「いいんだよ。あまり高い部屋に何日もいたら怪しまれるしな」
鷹「ならよいのですが」
青年「それに…外は久しぶりだからな。どこであろうと楽しめる」
鷹「……前々代魔王様と前代魔王様があんなに早く引退しなければ、もう少し自由に」
青年「よせ。もう終わった話だ」
鷹「はい…申し訳ありません」

52:1:2012/06/23 23:03:12.26 ID:GJnMgxMAO
――
――――
――――――

53:1:2012/06/23 23:07:47.70 ID:GJnMgxMAO
「おとうさん?おかあさん?」
 『……』『……』
「ねえ、おきてよ。にげなくちゃ、ねえったら」
 『おい、まだ子供がいるぞ』
 『ガキぃ?慰みもんにもなんねーじゃん』
「ひっ――!?」
 『こんな死体なんかにすがり付くなよ気持ち悪い』
 『おいおい、自分でやっといて良くいうよ』
「や、やめて……おとうさんたちをけらないで……」

54:1:2012/06/23 23:12:04.52 ID:GJnMgxMAO
 『あ?なに言ってんだよ』
 『敗戦国が偉ぶってるんじゃねえ』
「い、いた……やだ…」
 『つまんね、殺すか?』
「ころ…す……ころ…」
 『そうだな。じゃあ俺から――』
わたしには人をころせる力があるって
むかし、おとうさんがいってた
「………しんじゃえ」
それが、わたしの、はじめての

55:1:2012/06/23 23:12:55.05 ID:GJnMgxMAO
――――――
――――
――

56:1:2012/06/23 23:17:10.82 ID:GJnMgxMAO
チュンチュン
魔法使い「朝か……」ムクリ
魔法使い(頭痛い考えすぎたからかな)
青年「ふん。気持ち良さそうにうなされていたが」
魔法使い「それはどっち…だ…」
青年「こういうときはおはよう、というそうだな」
魔法使い「……」
青年「……」
魔法使い「なんでここにいるんだ!?ふざけているのか!」
青年「失礼な。おれは少しもふざけていないのだが」

58:1:2012/06/25 00:38:42.21 ID:VqcYmSQAO
魔法使い「なんで普通に私の部屋に侵入しているんだ!」
青年「魔王だからな」
魔法使い「したり顔やめろ!」
青年「それより、どうやら階下が騒がしいぞ?」
魔法使い「……?」
青年「早く行ってみたらどうだ。好転か後転、どちらだろうな」
魔法使い「……いいか、荷物漁るなよ」ダッ

60:1:2012/06/25 00:41:41.02 ID:VqcYmSQAO
トントントン
魔法使い「みんなおはよう」
僧侶「あ、魔法使いさん!今から呼びにいこうと思ってたんですよ」
魔法使い「どうしたんだ?犯人が見つかったか?」
僧侶「違うんです…」
剣士「おはよう。…盗賊がいなくなったんだ」

61:1:2012/06/25 00:45:13.91 ID:VqcYmSQAO
魔法使い「盗賊が?よりによってこんなときに?」
戦士「こんなときだから、だろ。怖くて逃げたんだ」
魔法使い「戦士」
戦士「くそったれが。あいつ、俺の所持金ごっそり持っていきやがった」
僧侶「ええ!?」
剣士「そうなんだ。同室だったこちらも半分盗まれている」
戦士「“盗賊”だからな。寝た人間を起こさず盗むなんて朝飯前だ」
戦士「それにこちとら相手を信用しているから…」ギリッ
魔法使い「……」

62:1:2012/06/25 00:48:27.17 ID:VqcYmSQAO
魔法使い「勇者の剣は?」
戦士「あんなの売れないだろ。金額的な意味ではなく知名度で」
魔法使い「ああ…そうだな。怪しまれるだろう」
剣士「昨日はそういう素振りを見せなかったんだがなぁ…」
戦士「心変わりは一晩あれば充分だ」

63:1:2012/06/25 00:50:21.01 ID:VqcYmSQAO
剣士「……」
剣士「勇者の件と盗賊の件、両方聞かなくてはいけないな」
戦士「勇者はともかく、盗賊め……」
僧侶「あの、魔法使いさん」
魔法使い「ん?」
僧侶「盗賊さんの位置を特定できないのですか?」
魔法使い「そうか、その手があったか。やってみよう」

64:1:2012/06/25 00:52:30.93 ID:VqcYmSQAO
戦士「出来るのか?」
魔法使い「私は攻撃専門だが、まあ出来ないってわけじゃない」
魔法使い「誰か、盗賊が使っていたものはないか?」
戦士「探してくる」トントントン
剣士「しかし…いったいどうなっていやがるんだ」
僧侶「……」
魔法使い「……」
剣士「五人パーティーのうち、一人が死亡一人が行方不明」

65:1:2012/06/25 07:15:50.71 ID:VqcYmSQAO
魔法使い「…酷いものだ」
剣士「とても魔王討伐など行けないな。諦めるしか…」
僧侶「帰るのですか」
剣士「それしかないだろう。そして新たな“勇者”が生まれるまで待つしかない」
魔法使い(その魔王は今私の部屋でごろごろしてるんだがな)

66:1:2012/06/25 23:45:40.43 ID:VqcYmSQAO
魔法使い「しかし、まあ」
剣士「なんだ?」
魔法使い「昨日から思っていたが、あまり勇者の死に動揺しないんだな」
僧侶「わたしは…もう、なにがなんだが分からなくて…」
剣士「死に方は違うとはいえ、仲間が死ぬことに…なんというか慣れちまってな」
魔法使い「……」
剣士「戦に参加しすぎた結果がこれだ。深く悲しめない最悪な人間となってしまった」
魔法使い「そうか…。悪かった、このようなことを聞いて」
剣士「いや、いいさ」

67:1:2012/06/25 23:49:29.38 ID:VqcYmSQAO
戦士「あったぞ」トントントン
魔法使い「それは?」
戦士「ベルトだな。かなり使い込んでいる」
魔法使い(……何故ベルトを置いていったんだ?)
魔法使い(いつもは確かズボンとの間にナイフとか挟むのに使っていたな)
魔法使い(新しいものを手にいれた――と考えるべきか?)
戦士「魔法使い?どうした」
魔法使い「あ、なんでもない。ちょっと外に行こう」

68:1:2012/06/25 23:51:36.10 ID:VqcYmSQAO
ガチャリ
僧侶「何故外に?」
魔法使い「汚れるからさ。宿の女将だっていい顔しないだろう」
僧侶「?」
剣士「む…朝はまだ寒いな」
戦士「それに雨が降りそうだ」
魔法使い「じゃあ、やるぞ」ブォン

69:1:2012/06/25 23:58:13.96 ID:VqcYmSQAO
魔法使い「……」コツン
僧侶「魔法陣がベルトを真ん中に回り出した……」
魔法使い「誰か、小さくていい。刃物を」
剣士「これはどうだ?手のひらに収まるぐらいだが」
魔法使い「少し借りる」ピッ
僧侶「っ!」
剣士「おい!」
戦士「なに手首を切ってるんだ!」
魔法使い「こちらの位置を手っ取り早く表すには血が有効なんだよ」ポタポタ
魔法使い「本当はさらに盗賊の血もあれば早く見つかるのだが…流石に常備しているわけでもないし」ポタポタ
戦士「…血の常備は嫌だろ。吸血鬼じゃあるまいし」

70:1:2012/06/26 00:00:24.73 ID:wrt7sgrAO
魔法使い「位置特定」
魔法使い(わりと近いな。…動いてはなさそうだ)
魔法使い(まだ早朝だし寝ているのか?)
魔法使い「こっちだ」タッ
僧侶「あっ、待ってください!」タッ
戦士「チームワークというものを大切にしろよ…」タッ
剣士「やれやれ、朝からマラソンか」タッ