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魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
Part19


713:1:2012/08/18 21:40:27.15 ID:cBmhwRSAO
――街を抜けて
戦士「人払いの結界は!?」ダッダッ
魔法使い「抜けた!」タタタ
戦士「だとするともう誰が敵か分かんなくなるな」
魔法使い「攻撃してきたら敵だ」
戦士「そんぐらい分かっとるわ馬鹿!もういっそ辺りを…」
魔法使い「いいか、みだりに周りへ攻撃するなよ」
戦士「なんでだよ、討たれる前に討たないと」
魔法使い「この脳筋が。仕方がないだろ、一般人なんか攻撃してみろ」
戦士「誰が脳筋だゴルァ」

714:1:2012/08/18 21:45:12.93 ID:cBmhwRSAO
魔法使い「大臣のやつ、嬉々として私たちを犯罪者に祭り上げるぞ」
戦士「ぐっ」
魔法使い「あまり敵は増やしたくないんだ」
戦士「……じゃあ翼生やせよ。強くなれんだろ」
魔法使い「あのな、混血狩りとかあるんだから。結果的には敵増やすだけだろ」
戦士「なんかお前本当にめんどくさいな!」
魔法使い「私がいいたいぐらいだ!」
戦士「ちくしょう、恨むぞ大臣の野郎!」
魔法使い「それには私も同意だちくしょうめ!」

715:1:2012/08/18 21:55:18.85 ID:cBmhwRSAO
――人間の城の近く、酒場にて
マスター「どうやら国王さまが捕まったらしい」
「なんで?」
「嘘だろ。平和じゃねーか」
マスター「いや…風の噂なんだがな。真実かは知りゃせん」
マスター「なんでもフードを被った女が『国王が危ない』と言いに来たそうだ」
「どこに?」
マスター「憲兵隊詰所」
「だから最近せわしないのか」
「季節外れのジョークだろ」
ガタ
マスター「帰るのかい」
剣士「なんか、そういう気分じゃなくてな」

716:1:2012/08/18 22:02:03.77 ID:cBmhwRSAO
カランカラン
剣士「いったい何が起きてるんだか…」
剣士(いやに静かすぎるのも不気味だが)
スタスタ
剣士「ん?」ピタ
フード「……」
剣士(女、か?)
剣士「ここは治安があまり良くないから出歩かない方がいいぞ」
フード「今はそういうことも言ってられない状況なのです」
剣士「え?」
フード「」パサッ
剣士「え、あ、あ、ああっ!?」
僧侶「お久しぶりです、剣士さん」
僧侶「さっそくで悪いのですが――どうか、助けてください」

722:1:2012/08/19 16:11:12.75 ID:og8I/D6AO
剣士「そ、僧侶……?」
僧侶「はい」
剣士「僧侶…」
僧侶「そ、そうですよ。剣士さん?」
剣士「」ポロッ
僧侶「ええっ!?な、なにか失礼なことをしましたか!?」
剣士「違うんだ…ただ、毎日しょうがないとはいえオッサンに囲まれてて…」ポロポロ
僧侶「は、はあ」
僧侶(確かどこかに所属しているんですよね、剣士さんは)
剣士「鍛錬で汗臭い男と剣を交える日々…花のような芳しい香りなどあるはずもなく」グッ
僧侶「」オロオロ

723:1:2012/08/19 16:17:14.35 ID:og8I/D6AO
剣士「そんなところに来たのが僧侶!女神か!天使か!」
僧侶(頭をやられてしまったのでしょうか)
剣士「あの日以来何度教会に行こうとしたか…しかし邪魔になると思い行けず…」
僧侶「き、基本的に来る人は拒みませんよ。お祈りの時以外は、いつでも」
剣士「優しい…やっぱり優しいよ僧侶…」
僧侶「…魔法使いさんには会わなかったんですか」
剣士「だってあいつ絶対『悪いが愚痴には付き合わない』で終わるぞ」
僧侶「…否定できません」

724:1:2012/08/19 16:21:09.21 ID:og8I/D6AO
剣士「で、どうしたんだ?」
僧侶「話が元に戻るまでずいぶんかかりましたね…」
僧侶「出来れば、人のよらないところで話をしたいのですが」
剣士「じゃあ、借りてる部屋があるからそこへ来るか?」
僧侶「」カアッ
剣士(しまった!男の部屋に女の子呼ぶとかどう考えてもアウトだろ!)
僧侶「……剣士さんならいいですよ」
剣士「」
僧侶「元パーティーでしたし、信頼していますし…剣士さん?」
剣士「」
僧侶「立ったまま気絶していますね…」パシパシ

726:1:2012/08/19 20:19:08.37 ID:og8I/D6AO
――剣士の部屋
剣士「今ランプに火をつけるから」シュボッ
僧侶「はい」
剣士「適当に座っていいよ。お茶持ってくる」
僧侶「そんな…悪いです」
剣士「いいからいいから」
僧侶(すっきりした部屋ですね)キョロキョロ
剣士「男の一人暮らしだからろくなもんねーけど」コト
僧侶「ありがとうございます」
剣士「で……なんだい?わざわざ遠くから来た理由は」
僧侶「その前にひとつ」
剣士「ん?」
僧侶「この話を全て信じてくれませんか」

727:1:2012/08/19 20:24:43.32 ID:og8I/D6AO
剣士「分かった。信じよう」
僧侶「助かります」
剣士「こっちからも一つ…憲兵隊のところに言ったのは、僧侶?」
僧侶「……はい。しかしなかなか動いてくれないので、もう剣士さんしかいないと」
剣士「そ、そんなにオレを頼られると困っちゃうなー」テレッ
僧侶「話に入りますね」
剣士「……ハイ」
僧侶「まず、国王さま一家が捕らえられました」
剣士「!」
僧侶「もうお聞きですか?」
剣士「ああ……でもなんで表向きはあんなに静かなんだ?」
剣士「普通は『この国はおいらのだー』とか言うと思うが」

728:1:2012/08/19 20:30:29.33 ID:og8I/D6AO
僧侶「ええ…普通は、その首謀者は大々的に公表するでしょうね」
剣士「時期を見計らっていたりするのか?」
僧侶「当たらずとも遠からず、です。まだ終わっていないのです」
剣士「というと?」
僧侶「この世界には大きく分けて王がふたりいるでしょう?『国王』と――」
剣士「――『魔王』!?次は魔王を捕まえるつもりなのか」
僧侶「単純な話、王をふたり倒せば人間と魔物、両方の王になれますからね」
剣士「バカげてる…国王はともかく、魔王は強いんじゃ」

729:1:2012/08/19 20:36:56.37 ID:og8I/D6AO
僧侶「現魔王は戦慣れをしていないと聞きます」
剣士「というと…」
僧侶「単体なら最強ですが、軍隊を組んで行動をしたことがないとか」
剣士「そう言われればそうだな。魔王直直の戦争は最近ない」
僧侶「不意打ちや罠には恐らく善処できないのではないか、と言われています」
剣士「じゃあ…うまく行けば魔王も…」
僧侶「…はい」
剣士「そいつは誰なんだ?思い上がりも甚だしいそいつの名前は?」
僧侶「…大臣さま、です」
剣士「なっ!?」

730:1:2012/08/19 20:43:13.26 ID:og8I/D6AO
僧侶「…わたしはあの人に近いため、このような話も多くされました」
僧侶「大臣さまは今、自らの望みのために堕ちています」
僧侶「もはやその姿は人間ではありません」
剣士「……」
僧侶「巻き込んでごめんなさい。でも、でも、この国は見えないところで危機に陥ってます」
剣士「危機…」
僧侶「わたしだけじゃもう……。どうか、国を…守ってください」
剣士「――分かっ」
バァン!
剣士「!」ジャキッ
大臣派兵「やっぱり裏切ったなぁ?この雌狐!」

731:1:2012/08/19 20:47:04.51 ID:og8I/D6AO
僧侶「つけられていた…!?」
大臣派兵「教会の人間のくせに尻が軽いな!…まあ」ジャキンッ
大臣派兵「大臣さまのそばにいたてめーは前から気に入らなかったんだよ。ここで死ね」
剣士「後ろに下がってくれ」
僧侶「で、でも……」
剣士(敵は五人、なかなかの強者に見える)
剣士(しかもこの狭さだ。不利すぎる。だが、やるっきゃ――ないだろ)
大臣派兵「行け!」
大臣派兵A「ウオォォォ!!」
剣士「くっ」ガキンッ

732:1:2012/08/19 20:51:17.76 ID:og8I/D6AO
ザシュッ
剣士「ひとり!」キィンキィン
大臣派兵B「ひでぶぅっ」ザシュッ
剣士「ふたり!っと――!?」
大臣派兵C「足元がお留守だ!」
剣士「うおっ」ドサッ
僧侶「剣士さんっ!!」
剣士「そ、僧侶!どけ、お前まで」
僧侶「嫌です!」
大臣派兵C「仲良く死―――あがっ」バタッ
剣士「……え?」
マスター「話は聞かせてもらった!!」
剣士「なんでマスター……」

733:1:2012/08/19 20:58:17.44 ID:og8I/D6AO
「おい剣士が羨ましいシチュエーションしてる」
「ケッ」
マスター「怪我はありませんか、お嬢さん」
僧侶「は、はい」
剣士「どうしてマスターがここに?」
マスター「なんか変な奴いたから追いかけたらここに来た」
剣士「運いいんだなオレ。ってか、マスター強かったんだ…」
マスター「昔は騎士だったからな!酒が好きだから酒場を開いたが」
剣士「っあー…なんかもう、ドッと疲れが」
マスター「まだまだ夜は始まったばかりだ。お嬢さん、最初から話をしてくれないかな?」
僧侶「え?」
マスター「元は国に仕えていた身だ。国がピンチなら助けにいかないと」
僧侶「マスターさん…」
剣士「あれっ、これオレ空気?」

734:1:2012/08/19 21:12:04.59 ID:og8I/D6AO
――魔王城、会議室
司書「……人間界の大臣ですか……」
魔王「ああ。そいつの情報はあるか?」
司書「……しばらくお待ちを……」フゥッ
ミノタウロス「魔王さま。なぜ大臣とかってやつをご存知だったんですか?」
魔王「…なんでだか大臣に嫌われてるやつがいてな。そいつから色々聞いたことがある」
側近(まだ混血の差別は色濃い…わざとはぐらかされましたか)
魔王「魔法を破る矢、魔法を使えるようになる薬。それらを開発したら張本人しい」

736:1 訂正:2012/08/19 21:29:55.26 ID:og8I/D6AO
魔大臣「人間の技術力は底無しですね」
人魚「なんで人間って魔法に憧れるのかしらね」
トロール「なかなか手に入れられないからじゃなイ?」
ゴブリン「憧れって怖い」
司書「……魔王さま……」フゥ
ゴブリン「で、でたァ――――!!」ダキッ
人魚「キャ―――――!!抱きつくな変態!!」
魔大臣「うるさい」
魔王「どうだった」
司書「……外からは人格者、生真面目、忠誠心のある有能な人材……」
ミノタウロス「そんな奴存在していたんだ…」
人魚「でも裏があったじゃない。そんなもんよ」

737:1 :2012/08/19 21:40:05.81 ID:og8I/D6AO
司書「……ただ、親や生まれた場所、また城に勤めるまでどこにいたかは謎……」
魔王「ふむ」
司書「……なにか知られては都合が悪いらしく……」
魔王「都合の悪い過去か。助かった」
司書「……以上です。それでは……」フゥ
ゴブリン「びびったぁー」ドッキドッキ
人魚「びびりすぎ!しゃんとしなさいしゃんと!」
側近「ああもうお前らは…」
魔王(過去になにか罪を犯したのか?いや、ならとうに暴露されててもおかしくない)
魔王(親すらも隠しているとなれば、可能性のひとつに――)

738:1 :2012/08/19 21:46:35.64 ID:og8I/D6AO
バッタァァン!!
人魚「キャアアア―――!?」ダキッ
ゴブリン「ウワアアア――――!?」ダキッ
魔大臣「小心すぎるだろ」
側近「メイド長か。どうした」
メイド長「緊急。メイドが何人か突然倒れました。呪いの魔法かと」
ミノタウロス「なぜ呪いにかかった?」
メイド長「不明。今詳しいものに調査を以来しています」
魔王「……そのメイドたち、暴動起こしたやつらの死体や血に触れたか?」
メイド長「多分。――そこから呪いが?」
魔王「あらかじめ仕込ませていたかもしれんな」

739:1 :2012/08/19 21:53:44.23 ID:og8I/D6AO
魔王「見に行く。案内を」
メイド長「御意」
魔王「お前たちはそれぞれすぐに動かせる兵の数を出しておいてくれ」
側近「!」
魔大臣「というと?」
魔王「その大臣とやらがいつ何をやりだすか分からない」
トロール「仲間呼ブ」
ミノタウロス「こっちも」
魔王「緊張はしておけ。最後まで何もなくてもだ」
魔大臣・人魚・トロール・ゴブリン・ミノタウロス「了解!」

740:1 :2012/08/19 22:02:17.70 ID:og8I/D6AO
ゴブリン「あー!」
トロール「やばイ」
ゴブリン「棍棒でぶん殴っちゃったじゃん!」
トロール「殴っタ」
魔大臣「なんだって!?」
人魚「妙ね。見た感じ呪いにはかけられてないみたい」
側近「トロール族は昔から呪いには強いぞ。ゴブリン族は知らないが」
トロール「良かっタ」
ゴブリン「どうしようどうしよう」
魔王「なにか異変を感じたら早く言え。死なないようにはする」
ゴブリン「ぴぎゃー!」

741:1 :2012/08/19 22:06:48.93 ID:og8I/D6AO
――魔王城通路
魔王「メイド長は血には触れなかったのか?」
メイド長「肯定。触れました」
魔王「何か体調の違和感は?」
メイド長「否定。ありません」
魔王「ふむ。では何故爪を伸ばす」
メイド長「不、明。あ、れ?からだ、の制御が、いきなり」カクカク
魔王「どこかで操られてるか」
メイド長「危険。魔王さま、逃げてくださいま――」ガク
魔王「…ほう。意識までもか」
メイド長「ハハ!はじめましてだな、魔王サマ」
魔王「誰だ」

742:1 :2012/08/19 22:15:04.13 ID:og8I/D6AO
メイド長「そっちはもう首謀者が誰だか分かってるんじゃないか?」
魔王「大臣とか言ったな」
メイド長「大当たり。あいつらが吐いてるとは思っていたがね」
魔王「何が目的だ」
メイド長「そんなもの、あってないようなものだ。違うか」
魔王「知らんな。呪いの魔法をかけたのも貴様か」
メイド長「頼もしい私の部下だ。あれ、無理矢理解除すると死に至るからな」
魔王「なに?」
メイド長「人間界の城にご招待しよう。そしたら呪いも解こう」
魔王「ふん。もっと上手い招待をするべきだな」