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魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
Part17


626:1 ありがとう:2012/08/12 22:00:18.84 ID:kbEZEcFAO
魔法使い「わ、笑わなくてもいいだろ!」
青年「すまんすまん、でもツボにはいって」ククク
魔法使い「……にしても今回は厄介だったな」
青年「…そうだな。魔法を無力する矢、魔法を作り出す薬」
魔法使い「狙いが分からない。魔法で何をしたいのか」
青年「誰がしているのか検討はついてるのか?」
魔法使い「大臣だ。何故か私を嫌っている」
青年「難儀だな」
魔法使い「私も嫌いだし」
青年「その大臣がなにを企んでるのか不透明だな。どいつもこいつも」

627:1 ありがとう:2012/08/12 22:03:11.78 ID:kbEZEcFAO
魔法使い「?そっちでもなんかありそうなのか?」
青年「魔王反対派が妙に静かでな。絶対になにかあると睨んでいる」
魔法使い「…大変だな」
青年「王はそういうのが付きまとうからな。ところで魔法使い」ズイ
魔法使い「な、なんだ?」
青年「これだけはいわせろ」
魔法使い「?」
青年「おれの傍から勝手に離れて危険なことをするな」
魔法使い「…魔王だって、勝手に出掛けてるじゃないか…」
青年「魔王だからな」
魔法使い「……」

629:1 :2012/08/12 22:05:03.52 ID:kbEZEcFAO
青年「ならおれも魔法使い、お前のところに戻る」
魔法使い「…別にそういうことじゃないんだが」
青年「違うか」
魔法使い「なんか違う」
青年「ふん。まあいい――とりあえずさっさと体力を回復させろ」
魔法使い「ん、分かった」
青年「手紙も届けないとな」
魔法使い「すっかり忘れてた」

630:1 :2012/08/12 22:15:20.13 ID:kbEZEcFAO
蝙蝠「ネェネェ」
鷹「なんだ」
蝙蝠「マオウサマト、コンケツハ、リョウオモイ?」
鷹「やはりそう思うか」
蝙蝠「ドウナノ?」
鷹「その通りだろうな」
蝙蝠「ナンデツキアワナイノ?」
鷹「両方、とんでもない朴念仁なんだよ……」
蝙蝠「……ドウシテ、タカサンガ、ナヤムノ」
鷹「ふたりとも自覚していないんだよ……こっちがもんもんしてる」
蝙蝠「クロウシテルネ」
鷹「どうも…」
蝙蝠「ホゴシャミタイ」
鷹「えっ」

631:1:2012/08/12 22:22:25.97 ID:kbEZEcFAO
――さらに数日後
魔法使い(ここか)
コンコン
魔法使い「ごめんください」
ガチャ
黒髪の男「うぇい」
魔法使い(なんだか…師匠を若くしてボサボサにしたような)
黒髪の男「なんの用だ?」
魔法使い「こんにちは。これを師匠から預かってきました」スッ
黒髪の男「…なるほど。立ち話もなんだ、入ってくれ」
魔法使い「お邪魔します」

632:1:2012/08/12 22:26:30.91 ID:kbEZEcFAO
黒髪の男「わりぃな。客なんかこないから茶もいれらんね」
魔法使い「お構いなく」
黒髪の男「それにしてもなんだ?わざわざ手紙なんてよ」ガサガサ
魔法使い「知り合い、なんですか?」
黒髪の男「父親だ」
魔法使い「えっ」
黒髪の男「ふむ。ふむ。あー、なんかやべーのか」
魔法使い(軽っ)
黒髪の男「どうだい師匠は。相変わらず女好きか」クシャクシャ
魔法使い「…はい」
黒髪の男「かわんねぇな。俺はすっかり大人しくなっちまった」ポイ
魔法使い(捨てちゃった)

633:1:2012/08/12 22:30:08.72 ID:kbEZEcFAO
魔法使い「でもまだ若いですよね」
黒髪の男「何歳に見える?」
魔法使い「四十半ばでしょうか」
黒髪の男「嬉しいこといってくれんじゃん。いっひっひ」
魔法使い(帰りたい)
黒髪の男「…本当はここにいちゃいけないんだけどな」
魔法使い「え?」
黒髪の男「俺にも果たすべきものがあったんだが…全て投げてきた」
魔法使い「……?」
黒髪の男「子育てもろくにできなくてよ。捨てたも当然だ」
魔法使い「ご家族がいたんですか」

634:1:2012/08/12 22:37:17.34 ID:kbEZEcFAO
黒髪の男「美人な妻と健気な息子がな」
魔法使い「そうなんですか…」
黒髪の男「おっと、話しすぎた。忘れてくれ」
黒髪の男「遅くなると同行者も不安になるだろう」
魔法使い「なんでそれを」
黒髪の男「ひ、み、つ☆」
魔法使い「はは…。そういえばあなたも、魔力持ってるんですね」
黒髪の男「ん?ああ」
魔法使い「昔は『魔法使い』を?」
黒髪の男「もっとスゲーもんだよ。たまげるぐらいスゲーもん」
魔法使い「へぇ」
黒髪の男「じゃあな。同行者によろしく」
魔法使い「あ、はい。それでは」バタン
黒髪の男「…嫁さん候補かなー、あの子」

635:1:2012/08/12 22:48:00.20 ID:kbEZEcFAO
魔法使い(不思議な人だったな。どこで同行者がいると思ったのか)スタスタ
魔法使い(ま、用事が済んだからいいか)
魔法使い(魔王はしばらく城に行くらしいし…何してようかな)
魔法使い「ん」ゴソ
魔法使い(そういえば真珠のペンダント返してもらってないや)
魔法使い(魔王つけてたな。いつ帰ってくるんだろ)
魔法使い(…なんで仕事帰りを待つ妻みたくなってんだ?私)
魔法使い(なんか最近あいつといると変な気分なんだよな)
魔法使い「……」

636:1:2012/08/12 22:50:32.94 ID:kbEZEcFAO
魔法使い「……」
魔法使い(……そういえば最近、こちらの国も不穏だとか)
魔法使い(何か――嫌な予感を覚えるな)
魔法使い「!」
ヒュンッ
魔法使い「誰だ!」ズサッ
魔法使い(気配もないまま、後ろから攻撃――ただ者じゃない)
魔法使い(数秒遅れていればただでは済まなかった…拳、か?)
ザッ……

637:1:2012/08/12 22:52:22.63 ID:kbEZEcFAO
??「皮肉なもんだな。お前によって狂い、お前によって正気に戻った」
 がっちりした体型。
 顔に巻いた布。
 いやに聞き覚えのある声。
魔法使い「なっ…」
??「探したぜ……どっちつかずの混血児」
 バサリと布を剥ぎ取った。
 そこから表れた顔は
魔法使い「――戦士!?」

638:1:2012/08/12 22:57:32.21 ID:kbEZEcFAO
――国
兵士A「国王一家を拘束いたしました」
大臣「分かった。まだ外には知らせるな」
兵士A「は!」
魔兵士A「こちら、準備整いました!」
大臣「では作戦を開始しろ」
大臣「魔王は国王ほど丁重に扱わなくていいぞ。生きていればよい」
魔兵士A「了解!」
大臣「始まるぞ!身を引き締めろ!王は引きずり落とせ!」
大臣(そして暁には――――)
僧侶(…………)

639:1:2012/08/12 22:58:02.56 ID:kbEZEcFAO
魔王「おれと旅をしろ」魔法使い「断る」
―――了

647:1:2012/08/13 20:41:26.17 ID:hBHyrh3AO
閑話
蝙蝠「オジイチャンノ、ムカシバナシ!」側近「食われたいのか」

648:1:2012/08/13 20:44:25.08 ID:hBHyrh3AO
――魔王城、資料室
側近「……」パラッ
側近「……」パラッ
蝙蝠「ホンガ、タクサン!」
側近「そうだな」パラッ
蝙蝠「クチバシデ、メクルンダネ!」
側近「そうだな」パラッ
蝙蝠「ヒローイヒローイ」パタパタ
側近「あんまり暴れるなよ。司書が怒る」
側近「……」
側近「ちょっと待て」
蝙蝠「ナァニ?」

649:1:2012/08/13 20:49:33.50 ID:hBHyrh3AO
側近「なんでお前がいる!?」
蝙蝠「ツイテキタ!」
側近「元々住んでいたところはどうした!」
蝙蝠「ハンカイシタカラネェ。スメナイヨ」
側近「……仲間は?」
蝙蝠「イマ、イチニンマエノ、シュギョウチュウダカラ!」
側近「そうか。しばらくひとりで生活する掟があるんだな」
蝙蝠「ウン!」
側近「だからといってここに来るか!?」
蝙蝠「シャカイケンガク!」
側近「遠足か!」
司書「……お静かに……」ゴゴゴゴ
側近「すみませんでした」
蝙蝠「ゴメンネ」

650:1:2012/08/13 20:55:37.38 ID:hBHyrh3AO
側近「はぁ……まあお前さんはスペースもとらないし、居てもいいとは思うが」
蝙蝠「ヤッタ!」
側近「ちゃんと挨拶はしていけよ。友好を築きたいなら」
インキュバス「お、蝙蝠じゃん。ちっす」スタスタ
オーク「ちび助、迷子になるなよ」スタスタ
蝙蝠「ワカッタ!」
側近「……」
蝙蝠「モウアイサツハ、オワッテルヨ」
側近「………早いな」
蝙蝠「ミンナ、ヤサシイ!」
側近「…それは良かったな」

651:1:2012/08/13 21:01:59.51 ID:hBHyrh3AO
蝙蝠「トコロデサ」
側近「ん?」
蝙蝠「30ネングライマエニ、センソウアッタンデショ?」
側近「……あったな。魔物と人間が入り乱れた、最悪な戦争」
蝙蝠「ボクノイチゾク、ダレモハナシテクレナイ」
側近「……」
蝙蝠「ネェ、ナニガアッタノ?ソンナニヒドカッタノ」
側近「本当に好奇心旺盛だな…」
蝙蝠「エヘヘ」
側近「でも、そうだな。いつまでも、傷としてしまっていてはいけないな」
側近「若い世代に伝えて――二度と過ちを犯させないようにしなくては」
蝙蝠「ハナシテクレルノ?」
側近「大雑把にだけどな。まあどこか落ち着くところにぶら下がれ」

652:1:2012/08/13 21:02:26.87 ID:hBHyrh3AO
蝙蝠「オジイチャンノ、ムカシバナシ!」
側近「食われたいのか」

653:1:2012/08/13 22:15:45.39 ID:hBHyrh3AO
 実を言うと戦争が起きた直接的な理由は分からない。
 だが当時、きっかけはなんでも良かったのだろう。
 今以上に人間と魔物の溝が深かったのは確かだったから。
 人間は『勇者』がなかなか現れないことに焦りを感じていたし、
 魔物は人間が次々作り出す武器に恐れを感じていた。
 ならば、と両者は思ったわけだ。
 人間のほうは『勇者』がいないなら自分達でなんとかしようと考え。
 魔物のほうは人間が脅威になる前に潰してしまおうと考えた。
 そうだ。
 互いが互いを排除したかった。
 自分たちが生物界の頂点に立ちたかった。
 そのせいでどちらも大勢死んだ。

654:1:2012/08/13 22:24:12.34 ID:hBHyrh3AO
 前代魔王さまも、人間の前代の王もなんとか争いを止めるよう努力したが……
 え、ああ、違う。
 国あげての戦争じゃない。勝手に始まったんだよ。
 人間側は『救世主』とかって奴が率いて、魔物側は戦が好きな種族が率いた。
 で、お上の言うことなんか聞かずにやりたい放題始めた。
 魔物も人間も。
 次第に手口は汚くなって、敵の街や村を破壊したり無抵抗の住人を惨殺したり。
 …可哀想なことをした。後に知って無力さに泣いたよ。
 自分は自分の一族を守るだけで手一杯だったから。

655:1:2012/08/13 22:37:01.38 ID:hBHyrh3AO
 蝙蝠一族も大変だっただろうな。
 静かな日々を望んでいたのに夜の偵察に遣わされたりして。
 で、戦争は唐突に始まったのと同じように唐突に終わった。
 まあ終わりの方じゃどちらも戦力足りなかったし、長くは続かなかったかもな。
 史実だと、前代魔王さまが終わらせたことになっている。
 そう、史実。
 ……あんまり言い触らすなよ。
 まだこの事実を公表するのは早い。
 戦に参加した魔物から反感を買われるから。もう少し傷が和らいだらのほうがいい。
 魔物の兵と人間の兵。
 その間に立ってありったけの魔力を暴発させたのは――
 ――現魔王さまだった。

656:1:2012/08/13 22:50:42.89 ID:hBHyrh3AO
 遠くから見ていたが凄まじかった。
 というか巻き添えを食らいかけた。
 両者あわせて二百万。
 ――その大半が死亡した。即死に近い。
 現魔王さまが暴走したのは色々理由があったんだが…。
 かなりデリケートだから触れないでおく。
 それで、戦争は終わらざるを得なかった。
 前代魔王さまは現魔王さまに王位を渡し姿を消した。
 今更感もあったが。ほとんど城にいなかったし。
 様々なところに残した深い傷はまだあちこちに残っているし、
 なにより――自分にとって一番大きかったのは鳥族の最強とも言われた鷲一族がほぼ全滅したこと。
 かなり卑怯な手を使われたと聞く。

657:1:2012/08/13 23:00:28.94 ID:hBHyrh3AO
 ――知っていたのか。
 唯一の生き残りが小娘だ。純血は絶えた。
 小娘もわりとすごい暴走したらしいけどな。
 前前代魔王さまがそんなことを言っていた。止めるのに苦労したらしい。
 初対面じゃ気づかなかったけど。
 それもまさか恩人の娘だったなんて。
 以上だ。
 酷い戦争だった。
 今は前より敵意を持ってないみたいなのは救いだが。
 もうあんなことは見たくない。
 
 悩みのない平和な世界なんて来るわけないが、それでも。
 明日を迎えられると保証できる未来にはしておきたい。
 お話終わり。

658:1:2012/08/13 23:08:22.42 ID:hBHyrh3AO
蝙蝠「ウマクマトメタネ!」
側近「自分らしくないことを言った気がした」
蝙蝠「ソンナコトアッタンダネ。マオウサマ」
側近「本人には言うなよ。かなり気にしてるから」
蝙蝠「ソコマデ、ムシンケイジャナイモン!」
側近「信じられない……」
蝙蝠「タカサン、マオウサマ、シンパイ?」
側近「ああ。強さゆえに弱さをみせられないお方だから」
蝙蝠「コンケツナラ、ナントカシテクレル!」
側近「何故そこに話が飛ぶ!」
蝙蝠「ケッコン!ケッコン!」
司書「……未だ結婚できぬ我の嫌がらせですか……」ゴゴゴゴ
蝙蝠「ゴメンネ」
側近「ここで炎系魔法はやめよう」

659:1:2012/08/13 23:09:14.22 ID:hBHyrh3AO
閑話 了