Part12
409:
1:2012/07/18 22:28:33.63 ID:7JyL7mcAO
……
チュンチュン
魔法使い「……ん、朝か…」
青年「よう」
魔法使い「」
青年「なんだ?おれとお前で部屋をとったことを忘れたのか」
魔法使い「い、いや……あれ?なんで私があなたの手を握っているんだ?」
青年「覚えていないのか。まぁ寝ぼけていたしな」
魔法使い「ちょっ、一体私はあなたになにをしたんだ!?」
青年「なにって」
鷹「」バサッ
魔法使い「あっ、ちょうど良いときに!あの!私は昨晩なにを!」
鷹「……」
鷹「きのうは、おたのしみでしたね(主に魔王さまが)」
410:
1:2012/07/18 22:32:27.43 ID:7JyL7mcAO
魔法使い「」
青年「楽しかったな(撫でるのが)」
魔法使い「」
青年「お前案外ああいう(撫でられる)こと好きなのな」
魔法使い「」
青年「あれなら別に普段からでも(撫でて)やっていいぞ」
魔法使い「」
鷹(すごい放心状態…いじりすぎたか)
青年「」ナデ
魔法使い「!?」
青年「ああでも表情は固いな。寝ているときは無防備なのか」ナデナデ
魔法使い「え?え?」
423:
1:2012/07/20 00:05:59.15 ID:/dcsgKcAO
――街
少女「あ!おにいさーん」フリフリ
魔法使い「やぁ……」
少女「…どうしたの、お兄さん。顔が赤いよ」
魔法使い「なんかな…あんなことされると妙に意識するというか…」
少女「へ?」
魔法使い「いや、こちらの話だ。朝ごはんは食べた?」
少女「もちろん。お兄さんは?」
魔法使い「バッチリ」
少女「あそこの宿のご飯不味いでしょ。部屋はいいらしいけど」
魔法使い「……だから自分で朝食を買う客が多かったのか…」
424:
1:2012/07/20 00:10:26.11 ID:/dcsgKcAO
少女「お兄さんなんとも思わなかったの?」
魔法使い「別のことで頭がいっぱいで。それに、自分で作るものの方が不味いし」
少女「…お料理下手なんだ?」
魔法使い「みたいだな。食べた人は一回はひっくり返る」
少女「毒物!?」
魔法使い「それ言われたな。アオビカリキノコ入れたときとか」
少女「それあたしみたいな子供でも知ってるほどの毒キノコだよ!」
魔法使い「青いスープって美味しいのかなって思うじゃないか」
少女「お兄さん冒険しすぎだよ!」
430:
1:2012/07/21 23:58:03.08 ID:atPWQPUAO
魔法使い「まあ料理談義はここまでにして」
少女「料理なの…?」
魔法使い「どうしようか、ここから。何も考えてないんだ」
少女「……」
少女「じゃあ、うちに来て」
魔法使い「え?」
少女「きっと、どれだけ大変なことが起きてるか分かるから」
431:
1:2012/07/22 00:01:02.92 ID:EJf+syyAO
――街
住人「なんかよくわかんねーけど買っちゃって――」
住人A「俺もかかあに怒られて――」
住人B「なんかこう、買っちまうんだよな。その場のノリで」
住人「分かる分かる」
ヤンヤヤンヤ
少女「……」
魔法使い「…そうですか。お話、ありがとうございます」
432:
1:2012/07/22 00:06:27.61 ID:EJf+syyAO
住人B「しかしあんちゃんは何者だ?
住人A「や、杖もってるから“魔法使い”なのは分かるけど」
魔法使い「修行の旅、ですかね。いわゆる」
住人「わけぇのに大変だなぁ」
魔法使い「いえ」
住人A「なんだい、話聞いたってこたぁ兄ちゃんはここの謎を突き止めてくれんのか」
魔法使い「出来る限り」
住人「頼もしいなぁ」
住人B「でもひよっこだから期待はできんぞ」
アッハッハ
少女「」オロオロ
魔法使い「……」コツン
住人「あれ、急に小便行きたくなった」
433:
1:2012/07/22 00:11:22.09 ID:EJf+syyAO
住人B「俺も」
住人A「便所どこだった!?」バタバタ
少女「お兄さん、なんかしたの?」
魔法使い「…一応プライドはあるから。期待できない、とかはちょっとね…」
少女「意外だね。もうちょっとクールな人だと思ってた」
魔法使い「クールじゃないよ。すぐにキレる」
少女「意外……」
魔法使い「で、羽も生えてくる」
少女「お兄さん、あんまり冗談とかだじゃれとかうまくないほうでしょ」
魔法使い「あはは」
魔法使い(本当なんだよ…)
434:
1:2012/07/22 00:23:19.22 ID:EJf+syyAO
少女「じゃああのおっさん集団に止められたけど……あれがうち」
魔法使い(一般的な大きさだな)
魔法使い「入っていいのか?」
少女「うん」ガチャッ
魔法使い(……う、わぁ)
少女「すごいでしょ?」
魔法使い「これは、思ったよりも」
少女「色んなものがごっちゃごちゃ――足の踏み場もないよ」
魔法使い(全く家そのものの雰囲気と噛み合っていない)
魔法使い(なにもかもちぐはぐで――落ち着きがないというべきか)
437:
1:2012/07/22 08:39:01.98 ID:EJf+syyAO
少女「本当は、お母さんもお父さんもこんな趣味じゃないの」
魔法使い「なるほど…」
少女「なのに、わけの分からないものをどんどん買ってきて…」
魔法使い(なんだこれ…)ビヨヨーン
少女「やっぱりなんか起こってるんじゃないかなって」
魔法使い「そうか…」ビヨン
魔法使い「……行ってみるか、あの小屋に」
438:
1:2012/07/22 08:41:59.08 ID:EJf+syyAO
少女「でもあそこ、不定期だよ」
魔法使い「誰もいないほうがやりやすい」
少女「そうなの?」
魔法使い「何かしら残っている場合もあるだろうし」
少女「そうなのかな」
魔法使い「多分」
少女「……そういえば、もう一人のお兄さんいないね」
魔法使い「ああ、海に行くらしい」
少女「海?」
439:
1:2012/07/22 08:51:37.42 ID:EJf+syyAO
――海
ザザ… ザザーン
青年「静かだな」
鷹「人間の街の近くですからね」
青年「ふん。普段の“人魚”を知らぬからなんともいえんが」
鷹「そうでしたっけ?」
青年「ああ。おれは今まであの城にいる人魚ぐらいしかみたことがない」
鷹「あれは稀なタイプです」
青年「稀か」
鷹「あれは変化(へんげ)が出来ませんが、魔力と知力と化粧のケバさにおいては断トツです」
青年「今ちらりと悪意をこめてなかったか?」
鷹「気のせいです」
440:
1:2012/07/22 08:59:49.40 ID:EJf+syyAO
青年「となると、普通の“人魚”は変化できるのか」
鷹「はい」
青年「……無知だな。王のくせして他を知らないとは」
鷹「これから学べばよろしいのですよ。それに、そのための我らです」
青年「頼もしいな」
鷹「勿体なきお言葉」
青年「――さて」チャプ
青年「“人魚”は今海底にいるのか」チャプチャプ
鷹「恐らくは」
青年「では、あちらがこれないのならこちらが行くべきだな」
鷹「あの」
青年「なんだ」
鷹「…鳥人族は水が駄目で…」
青年「じゃあ留守番だな」
441:
1:2012/07/22 09:15:19.15 ID:EJf+syyAO
鷹「お気をつけて」バサッ
青年「分かっている」チャプ
バシャン
青年(かなり深くのようだな)
青年(魔力…こっちか)
〜♪
青年(歌声…意外だな、水中でも聞こえるものだったのか)
青年(元の姿に戻るか)
人魚A「……!しっ!誰か来る!」
人魚B「また人間!?」
人魚C「違うみたいね。人間なら泳ぐはずよ」
人魚D「歩いてきてるね。陸上みたいに」
人魚B「泳ぐ方が早い気がするんだけ……あれ?あの姿は……」
魔王「」スタスタ
人魚A〜D「」
447:
1:2012/07/22 23:34:40.76 ID:EJf+syyAO
魔王「初めてだな」ピタ
人魚A「え、ま、魔王さま?」
人魚B「強い魔力といい角といい、どう考えても魔王さまよ!」
人魚C「お化粧ちゃんとするんだった!どうしよう!」
キャアキャア
魔王(魔力は中ぐらいか。防護魔法が強いんだったな)
人魚D(やば!?無表情だ、怒らせたかも!)
人魚D「あーっと、申し訳ありません魔王さま」アセアセ
人魚D「今、わたくしどもは精神状態が不安定です。ご無礼をお許しください」フカブカ
448:
1:2012/07/22 23:38:57.72 ID:EJf+syyAO
魔王「構わん。こちらも突然来て悪いな」
人魚A「そんな!いいんですよ!」
人魚B「魔王さまが謝ることじゃありません!」
魔王「では本題に移ろうか」
人魚D(マイペースだなぁ)
魔王「――他の“人魚”はどうした」
人魚A「……」
人魚C「人間にさらわれました」
魔王「お前ら防護魔法が協力だと聞いたが」
人魚A「なぜかは分からないんですけど、人間側の武器で防護壁が一ヶ所破れたんです」
魔王「ふむ」
人魚A「それで、あの…パニックになってしまって。網でわーと」
449:
1:2012/07/22 23:45:09.57 ID:EJf+syyAO
人魚D「今は、ギリギリ逃げ延びたわたしたちだけです…」
人魚B「」グスン
魔王「今までにも人間はお前たちをさらおうとしていたか?」
人魚A「はい。でも最近は様子がおかしかったですね。ね?」
人魚C「なんかわたしたちが居るところを見に来てる感じだったよね」
人魚D「今思えばみんなで固まっているところを捕まえようとしてたんだね…」
魔王「ふむ――武器、か。どのような?」
人魚B「えっと、矢です」
魔王「矢?矢を水中に穿ったのか」
450:
1:2012/07/22 23:55:15.84 ID:EJf+syyAO
人魚A「魔法をかけられていました」
人魚C「それらがヒビをいれて、パリンと割れたんです。…わたしたちの防護壁が」
魔王「…人間め、厄介なものを作ったものだ」
人魚A「矢は一つ一つじゃどうってことありませんが、大量にだと話は違います」
人魚D「お願いします!わたしたちの仲間を助けてください!」
魔王「ああ。そのためにきたのだからな」
人魚B「」キュン
人魚D「なにか、お手伝いすることは?」
魔王「そうだな。お前らは仲間がそばにいるか確認するために何かしているか?」
451:
1:2012/07/23 00:01:34.36 ID:h+3vHk4AO
人魚A「あ、はい。真珠…この場合、わたしたちの涙のことですが」
人魚C「仲間がそばにいると、反応してほのかに光るんです」
人魚B「すごくきれいですよ」
人魚D「今は見つかるといけないから外していますが」
魔王「なるほどな。…では真珠を貸してくれないか」
人魚A「貸すだなんて。魔王さまのためならいくらだってあげますわ」ポロッ
人魚A「どうか…頼みます」スッ
魔王(曇りのない白色か)
魔王「ありがとう。必ずやりとげる」
人魚A(お礼言われた…)キュン
452:
1:2012/07/23 00:08:27.75 ID:h+3vHk4AO
――掘っ立て小屋
魔法使い「……」
魔法使い(わずかながら、魔力の跡)
魔法使い(あの商人は“魔法使い”までとは言わずとも、魔法はつかえるようだ)
少女「どう…?」
魔法使い「欲しい情報は得られたかな」
少女「本当?」
魔法使い「うん……っ!」バッ
魔法使い(今、明らかに視線を感じた!)
魔法使い(……誰だ?商人か、商人の仲間か)
少女「どうしたの?」
魔法使い「…なんでもない。早く行こう」
少女「ん?うん…」
453:
1:2012/07/23 00:13:24.51 ID:h+3vHk4AO
――少女の家近く
魔法使い「いいか、良く聞いて」
魔法使い「私と君はここで離れる」
少女「なんで?まだお昼前なのに?」
魔法使い「……昼は関係あるのか?ともかく、私と行動は危険になった」
少女「?」
魔法使い「変なやつに見られたようだ」
少女「えっ!」
魔法使い「君にも被害がかかる。だから、ここでお別れだ」
少女「あ、あたしだって戦えるよ!」
魔法使い「甘いよ。私たちの世界の戦うは殺すか殺されるかだ」
少女「……」
454:
1:2012/07/23 00:15:08.91 ID:h+3vHk4AO
魔法使い「わかってくれ」
少女「……うん」
魔法使い「いい子だ。また、すべて終わったら会おうよ」ナデナデ
少女「絶対だよ?」
魔法使い「ああ」
少女「じゃあね、またねお兄さん!」タタッ
魔法使い「」コク
魔法使い「……さぁてと」
455:
1:2012/07/23 00:19:03.88 ID:h+3vHk4AO
??1「おい、子供が消えたぞ!」
??2「まさかあの男、魔法を使いやがったか!」
??1「ちっ…。あの男を直接襲撃するしかないな」
??3「宿は?」
??2「つけていこう。本来ならあの子供の予定だったのに…」
??1「あの“魔法使い”を始末したらでいいだろう」
??3「だな。俺らの商売の危険因子は取り除かないと――」
456:
1:2012/07/23 00:27:00.09 ID:h+3vHk4AO
――宿前
青年「よう」
魔法使い「やあ。海から帰ってきたか」
青年「たった今な。で、お前、知ってるか?」
魔法使い「もちろん知ってる」
青年「ならいい」
魔法使い「夜になるまで街を歩こうかと思うんだが」
青年「手紙は?」
魔法使い「今のこの状態じゃ、迷惑がかかるだけだろ」
青年「そうだな」
魔法使い「じゃ」
青年「おいおい。おれを置いていくかよ」
魔法使い「…あなたもついてくるのか?」
青年「もちろんだ」
魔法使い「……」ハァ
457:
1:2012/07/23 00:30:31.43 ID:h+3vHk4AO
――市場
魔法使い「この麻の糸をください」
「はいよー」
青年「何に使うんだ?」
魔法使い「別に……秘密だよ」
青年「ふん。隠すことが好きだなお前は」
魔法使い「一つはバラしたら明らかに命に関わるけどな」
青年「注意しないとな」
魔法使い「うん、あなたが口を滑らさなければ多分大丈夫」
青年「信用ないな」
鷹(あれ…距離縮んだ?)