Part5
164 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:15:54.77 ID:
mH0itk+G0
――市の中心部。繁華街。
男「買い物はうまくいったか?」
幼馴「あったりまえですよー。
もっと私を信用しなさいよ」むー
友「いいの買えた?」
末姫「可愛いです♪」
幼馴「ばっちりよ!」
男「そりゃ良かったな」
末姫「兄様には後でぱんつ見せてあげるです♪」
友「……」
幼馴「……」
友「……まじですか」
幼馴「……多分天然なだけなんだけどね」
友「……やってられないすね」
幼馴「……てやんでーだね」
165 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:20:44.34 ID:
mH0itk+G0
男「案外早く片付いたな」
末姫「そうなのです?」
男「もっと暗くなるまでかかるかと思った。
女の買い物は長いって言うからな」
友「あはは。女ちゃんは女性にしては気が短いから」
幼馴「もうぅ。聞き捨てならないわねぇ。
私はちゃんと繊細なんですよーだっ」むぅ
男「どっか遊びに行くか。そうだ、お前らさ
今日つきあってくれたから、夕食奢るよ。
うちでカレー作ってやるからさ」
末姫「カレーです♪」きらきら
友「わ! 男のカレー久しぶりだ!」
幼馴「いいわね、ご馳走になるなる!」
男「じゃぁ、まぁ。材料は買って帰るとして
それでもちょっと時間が余るか……」
末姫「あ、あ。あれ、兄様!」
友「カラオケ?」
幼馴「カラオケじゃない」
男「あー。あれ行きたいのか」
末姫「はうはう!」
166 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:25:23.04 ID:
mH0itk+G0
――カラオケボックス
友「うわぁ、涼しい」
幼馴「エアコン効いてるわね」
末姫「兄様、兄様! キラキラしてます!」
友「大興奮だね」にこ
幼馴「可愛いわねー」
男「おちつけ」
末姫「凄いです! あれはパソコンですか?」
男「あれはカラオケの機械」
幼馴「パソコンは判るんだ」
男「いや、判るというか。それしか判らないというか」
友「どうゆうこと?」
男「テレビもビデオもパソコンだと思ってるんだ」
友「あー」
末姫「わくわく♪」
幼馴「わかったわかった。お姉さんが入れたげるからね」
末姫「はいです♪」
167 :
VIPがお送りします: [sage] 2008/09/19(金) 23:25:45.75 ID:573yo3/T0
え、それも駄目なのって食べ物多いねこ
169 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:38:50.19 ID:
mH0itk+G0
うぃん。〜♪ 〜〜♪
末姫「わ、始まりました♪」
幼馴「嬉しそうね」にこにこ
男「いや、本当好きだな。あ、マイク」
末姫「のーりぷらーぃ琥珀の砂時計人はこぼれた砂よ♪
せいまーくつぅ〜優しさが生きる答えなら、いいのにね〜♪」
友「うわぁ……」
幼馴「わぁ……」
男「……」
末姫「夢よりも鮮やかに、愛よりも密やかに♪
見えない意志がささやく〜星屑が眠る海ぃ♪」
友「すごいね」
幼馴「マイクもないのに」
末姫「金色の無言に生命の花びら♪
指でそっと触れたひとはだあれ〜♪」
170 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:40:18.68 ID:Ofyvq3z8O
とりあえず土鍋置いといて猫が入るの待ってよう
171 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:42:53.04 ID:
mH0itk+G0
友「嬉しそうに歌うんだ。
それにこの声……。金色の花びらが舞ってるみたい」
幼馴「これはちょっとした奇跡よね」
末姫「のーりぷらーぃ宇宙の迷い子たち♪
胸に抱いてあげたい♪
せいまーくつぅ〜優しさが生きる答えなら、いいのにね〜♪」
〜♪ 〜〜♪
〜〜♪
末姫「じゃん♪」
友「すごいすごい! 姫ちゃん歌すごく上手!」
幼馴「上手だったよう、姫ちゃん惚れるね!」
末姫「ありがとうです!」
男「上手いぞ! 末姫」
末姫「はいです♪」にぱー
友「アニソンとはねー」
幼馴「私もびっくりしたけどね。これが大好きなんだって」
男「しかも、なぜかロボアニメに強いんだ、こいつ」
172 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:47:09.38 ID:
mH0itk+G0
末姫「ロボットじゃないのも歌えますです」えへん
友「どんなの歌えるの?」
末姫「えっと」ごにょごにょ
友「おっけー。じゃ今度は僕が入れてあげる」
幼馴「はいです♪」
うぃん。〜♪ 〜〜♪
男「そうくるか」
末姫「どこから見ても、スーパーマンじゃない♪
スペースオペラの主役になれない」
幼馴「なになに?」
友「これは名作だったんだよ」ほろり
末姫「危機一髪も救えないっ♪
ご期待通りに現れない、ため息つく程イキじゃない♪」
男「ったく。こんなにはしゃいじまって」
末姫「〜♪」くるくる、にぱー
173 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:51:12.08 ID:
mH0itk+G0
――カラオケボックス、廊下
末姫(おろおろ)
男「ん? どうした姫?」
末姫「おトイレ判りません」おろおろ
男「泣くなよ。お馬鹿だなぁ」
末姫「おトイレ判らないのは一大事ですっ」
男「そりゃ一大事だけどさ。
確かこのフロアには無いんだ。ついて来て」
末姫「はいですっ」
男「姫。楽しいか?」
末姫「はい! カラオケ楽しいですっ!」
男「そうか」
末姫「アニソンがいっぱい入ってます。
みんなと一緒に歌うと楽しいです。
お姉さまとキャンディキャンディも歌いました。
友のお兄さんとドラゴンボールも歌いました♪」
男「聴いてたぞ。上手だったな。二人とも楽しそうだったぞ」
末姫「はいです♪」
174 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/19(金) 23:55:55.33 ID:
mH0itk+G0
男「ここだよ。行っておいで」
末姫「はいですっ」
とててて。
男「……」
とててて。
末姫「あの、兄様。その……」
男「待ってるよ」
末姫「はいです♪」
とててて。
男「――まったくお子様だなぁ、末姫は。
ちびすけって言われてたのもよく判るよ。
もっとも嫌われてたわけじゃないだろうけど」
男「まぁ、姉妹皆でからかって遊んでたんだろうな。
あのキャラってのはいじりがいがあるからなぁ」
177 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 00:26:16.01 ID:3PakTKU4O
セイレーンボイスなら、是非「荒野のヒース」が聴きたいなあ
なんて妄想しながら支援
178 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 00:31:49.23 ID:
bYbY9aRN0
(姫ちゃんって、……人間?)
男「それはこの際、横に置くとして。
あいつはカレー修行中のうちの居候だ」
男「アニソンが大好きで、風呂と猫が好きで、
意外に働き者で料理以外の家事は得意で。
睡眠時間がかなり長めな、小さい居候だ」
男「それで、いいよな。
――女も、喜んでる」
がちゃり。
末姫「おわりましたー♪」
男「おつかれさん」
末姫「姫は大変すっきりしましたっ!」
男「報告はいいから」
末姫「?」
男「戻ろうか。なんか入れてたろう?」
末姫「はいです♪ 兄様、一緒にガイキングを歌うのです♪」
男「いっちょ歌うか!」
#サルだった。うきゃー。もんきー。
179 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 00:36:25.42 ID:
bYbY9aRN0
――カラオケからの帰り道。
末姫「ZZZzzz……」
友「完璧寝ちゃってるね」
幼馴「もう、ぐっすりね。おんぶされて」
男「子供なんだよ。エネルギー限界まで遊んで、
電池切れたように眠りやがって」
末姫「むにゃぁ……」
友「すごく楽しそうだったもん。無理も無いよ」
幼馴「うんうん。はじけてたもんね」
男「まぁな」
友「それにしても、姫ちゃんの歌、すごいね。
声もさ。不思議な声だけど、魅力があるって云うか」
幼馴「上手く言葉にならないけど。
可愛くて透明感があるのに、迫力もあるしね」
男「うちの居候は無類のアニソン好きだからな」
友「そうそう。ドラえもんをあんなふうに
歌うとは思わなかったよ!」
幼馴「あれは傑作だったわね!」
男「勉強はもうちょっとしたほうが良いんだよな、コイツ」
180 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 00:41:57.37 ID:
bYbY9aRN0
末姫「むにゅう……」
幼馴「ああん。まったく可愛いわ、この子」
友「女ちゃんめろめろだねっ」
幼馴「あったりまえよ。一緒にパンツ買って
お姉様っていわれた仲なんですからねっ!」
友「あ、あはは。それってそうとうアレな発言に
聞こえちゃうんだけど」
幼馴「アレとはなによっ。
自分を慕う後輩の憧れの視線を受けて
普段は清楚な年上の私の心にも
微弱な電流にも似たときめきが走り抜けるのよ。
きゅん、としてしまうのっ」
友「……」
男「いつものロマンチック病だ。ほっとけ」
幼馴「眠りに落ちた後輩の安らぐ額に
流れた前髪を書き上げた私は囁くのっ。
いい夢を見てるのかしら、仔猫のような寝顔ね。
って。そしてそのさくらんぼのような唇を
そっとなぞって……」
友「うん……。放置しておくよ」
182 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 00:46:11.19 ID:
bYbY9aRN0
末姫「ZZZzzz……」
友「大丈夫? 変わろうか?」
男「いや。もうちょいだし。
なんかコイツすげー軽いんだよ」
幼馴「うわ。云いましたよ。
『すごい軽いんだよ』だって。」
末姫「……すぅーっ。すぅーっ」
友「今日は、このまま寝かせてあげようよ」
幼馴「うん、そうね」
男「悪いな。カレー作ってやろうと思ってたけど」
友「気にしないでよー。僕らの仲じゃない」
幼馴「気にしてよね。今度絶対うめあわせ!
カレーパーティーするんだからねっ」
男「判ったよ」
末姫「……じゅる」にぱー
幼馴「寝ながらカレーに反応してるの?」
友「カレー検定の資格は十分だね」
183 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 00:50:28.94 ID:
bYbY9aRN0
――自宅アパート前。
男「わり。鍵開けてくれる?」
友「判った」
がちゃ、がちゃん
幼馴「中はいるね。布団出してあげる」
男「さんきゅな」
末姫「ZZZzzz……」
友「食材は冷蔵庫にしまっておくよ〜」
幼馴「エアコンつけてっと」
男「よし、末姫。布団だぞ。……もう寝ろ」
末姫「……すぅーっ。すぅーっ」
友「聞き分け良い子だもん。もう寝てる」にこっ
幼馴「ほんっとに。
男もこれくらい可愛げがあれば良かったのにねー」
男「はいはい」
友「じゃ、今日のところは引き上げるよ」
幼馴「うん。男、姫ちゃんにちょっかい出したら許さないからね」
男「判った判った。いいから帰れ! 今日はあんがとな」
185 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 00:55:24.53 ID:
bYbY9aRN0
――海の宮殿、前庭 in夢の回想
末姫「あっあっ、あらしっぃ〜♪ あっあっ、あらしっぃ〜♪
ゲームセンターぅ♪ あ・ら・しィ♪」
とててて。ごしごし。
末姫「真っ赤な帽子にキラッと光る♪
チャンピオンマークだ、インベィダー♪」にぱ
ごしごし。
末姫「巨大な出っ歯がピカッと光りゃ♪
炎のコマが燃え上がる〜♪」くるくる
末姫「――そこで母君のノーブラ・ボイン撃ちなのです♪
あらしもノックダウーン! 母君強し! なのです」
きょろきょろ
末姫「姫のおむねはささやかなのです。
……五姉様と四姉様は何か特訓をするとか言ってましたけど、
姫のほうが小さいから
姫のほうが特訓するべきではないでしょうか。
ううう。また苛めにあっているのです!」
一姉「末姫? 末姫?」
186 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 00:59:33.15 ID:
bYbY9aRN0
末姫「はいです、一姉様!」
一姉「何をしてたの? 柱の掃除?」
末姫「はいです♪ お歌を歌いながら磨いていました」
一姉「うん。末姫は真面目で良い子です」にこ
末姫「褒められました♪」にぱ
一姉「でもここは四姉の担当のはずだけど」
末姫「四姉様はお勉強があるそうなのです。
難しい本を抱えていましたです」
一姉「まったくあの娘は。だからといって
掃除をさぼっていいわけでもないでしょうに」
末姫「姫は掃除好きなのです。お歌を歌いながら
くるくるお掃除してるととっても楽しいのです♪」
一姉「そう」にこっ
末姫「なのです♪」
一姉「では末姫にはこの飴を上げましょう」
末姫「もきゅ。おいひぃでふ♪」にぱー
一姉「四姉はあとで蝋燭責めです」
末姫「はいです?」
一姉「末姫は良い子だから気にしなくて良いですよ?」
187 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 01:04:45.54 ID:
bYbY9aRN0
とてて、ごしごし。
末姫「ムーンサルトだぁ空中回転〜ッ♪
風よ! 雲よ! 天までぇ届っけぇぇ〜♪」
一姉「……」
末姫「〜♪ 〜♪」
一姉「末姫は」
末姫「はいです?」
一姉「本当に人間の歌が好きなのね」
末姫「はいです♪」
一姉「でも、人間は恐ろしいのよ?」
末姫「はいです……。二姉様も言っていました。
大きな銛銃でクジラを殺しちゃうって」
一姉「そうよ。人間は残酷なの」
末姫「……」
一姉「それにね。人間はこう信じているの。
私たち人魚の肉を食べると不老不死になれるってね」
末姫「え?」
188 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 01:08:59.42 ID:
bYbY9aRN0
一姉「私たち神話執行者は古から続く血脈だから。
その身には魔力が宿ると考えているようね。
だから、殺して、生き血を啜り、肉を喰めば
寿命は消え果て、不老不死を得るのだと。
そう信じているの」
末姫「そんな」
一姉「昔は一族の娘たちが何百、何千と
人間に狩られたのよ」
末姫「……」
一姉「もちろん私たちにだって罪はある。
役目とはいえ私たちだって外洋の秘密を守るために
何百という船を歌声で沈めてきたわ。
だから善悪ではないし、私も人間を恨みに思うなんて
無いようにしているわ」
末姫「姉様……」
一姉「でも、それでも。善悪ではないとはいえ、
人間は恐ろしいのよ?
例え殺されなかった場合でも、正体がばれれば
良くて見世物にされるか、実験と称して生きたまま
解剖されてしまうかもしれないの」
189 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 01:13:14.90 ID:
bYbY9aRN0
一姉「人間の歌が好きなのは良いわ」
末姫「はい……」
一姉「私も古い古いアリアを人間から貰ったことがある。
今でも月の明るい夜には思い出して歌うわ」
一姉「でも、人間に気を許しては駄目よ」
末姫「……」
一姉「あなたも後数年もすれば成人。
十五になれば海面に行くことも許される。
そうなれば人間の島に近づいたり、
船に出会ったりすることもあるでしょう」
一姉「それでも、人間に気を許しては駄目。
六姉は引っ込み思案だから、例え勧めても
人間の船には近寄りたがりません。
だから安心しても居られますけれど、
あなたは人間も人間の歌も好きなように見える。
だから注意しておきたいのです」
末姫「はいです……。一姉様。
怖い人間には近寄りませんです……」
190 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 01:17:51.23 ID:
bYbY9aRN0
――深夜。男のアパート。
(はいです……。一姉様。
怖い人間には近寄りませんです……)
末姫「……むにゅ」
男「くー。くかー」
末姫「んぅ……。んぅ……。
おトイレです……。むー」ふらふら
むにゅ。
末姫「……むにゅ? ……!?
あやうくお兄様を踏んでしまうところでしたっ!」
男「くー。くかー」
末姫「踏んでしまったらホームスティとして
切腹しなくてはならないところです。
危ないところでした」
男「くー。くー」
末姫「眠いです。……おトイレしてもっと寝るです」
192 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/20(土) 01:23:55.43 ID:
bYbY9aRN0
じゃー。じゃじゃぁー。かちょり。
末姫「すっきりなのです。これでまた夢世界へ
チェイングできます……。わ。兄様」
男「くー。くー」
末姫「兄様はすでに夢のなかで
カレーパーティーですか? にこにこです」
男「くー」にぱ
末姫「一姉様……。人間は怖くないです」
男「すぅー。すぅーっ」
末姫「……」なで
男「すぅー」
末姫「兄様は怖い人間じゃないです。
姉様も友のお兄ちゃんも、楽しくて、優しくて。
――人間はお日様に照らされた波みたいに、
キラキラしてて、暖かいです」
くー。きゅるる。
末姫「あれ。そういえば。あれれ?
夕ご飯を食べた記憶がありません!」