Part1
1 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:27:43.65 ID:
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――海岸、突端埠頭
末姫「いざ進めやキッチン〜めざすはジャガイモ〜」
末姫「ゆでたら皮をむいて〜グニグニとつぶせ〜」
末姫「はう、ひもじぃです」
末姫「さあ勇気を出し〜みじん切りだ包丁〜」
末姫「タマネギ目にしみても〜涙こらえて〜」
末姫「ううう。私が泣きそうです」
男「お前、歌うっまいなぁ!」
末姫「へ」
男「おう、そこのおまえだ。こんな夜更けに
堤防で子供が一人は危ないぞ」
末姫「はい? 何で危ないのですか?」
3 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:28:36.58 ID:
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やっぱスレ持たなかった。
もう一回だけがんばる。
今度こそ駆け抜けてみたいぜ。
とりあえず、1サル出るまでサクサク張ってみる。
4 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:29:45.93 ID:
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男「そりゃぁお前。変質者とか強盗とかでたら怖いだろう」
末姫「へんしつしゃ……?」
男「俺は違うぞ」
末姫(くるくるきゅるるー)
男「腹減ってるのか?」
末姫「うー。はいです」
男「おでん食うか?」
末姫「おでんですか?」
男「コンビニのだけどな」
末姫「こんびに?」
男「まぁやるよ。よいせっと。ああ、海風だなぁ」
末姫「はいです」
男「さぁ、食え!」
末姫「いいんですか?」きらきら
5 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:30:29.63 ID:
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男「おう、いいぜ」
末姫「いただきますっ! もっきゅもっきゅ」
男「俺はビールでも飲むかなぁ」
末姫「もきゅもきゅ。美味しいです!」
男「そうかそうか! 俺も食うぜ」
末姫「この半透明のプルプルが美味しいです!」
男「コンニャクだな。おまえ小さいくせに渋い好みだなぁ」
末姫「お前じゃないです。末の姫です」
男「末姫か。なんだ、どっかのお嬢様か?」
末姫「お嬢様ではないです。お姉さまたちの妹です」
男「んぅ? まぁいいか」
6 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:31:57.88 ID:
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末姫「この黒いものはまさか、まさかっ?」
男「こんぶだけど?」
末姫「美味しすぎます! ほっぺたがとろけそうです!」
男「とろけるもなにも、最初からプニプニじゃねぇか」
末姫「あむっ! あむあむっ! 美味しいです!」
男「涙ぐむほどかよ」
末姫「おでんとは素晴らしいものです!
アニソンに勝るとも劣りません!!」
男「アニソン好きなのか? さっきもキテレツ歌ってたけど」
末姫「はいです。姫はアニソンが大好きです。
アニソンを求めて長い旅の途中なのです!」
男「よぉ判らんな」
末姫「日本はアニソンの聖地なのです。
姫はサスライガーを歌うために流離っているのです」
7 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:33:32.77 ID:
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男「おお! サスライガー!」
末姫「知っているのですか?」
男「おうともよ。J9シリーズ三部作の第三作目!
メカデザインとか色々言われることはあるものの
あれはあれでいいものだぜ。アダルトな雰囲気でな」
末姫「SOLARWIND♪ こころの帆に うけて♪
いま!! たびだちのぅさすらいの銀河〜♪」
男「おー! すげぇすげぇ!
ちっこいのにこんな懐アニソン、お前うまいなぁ!」
末姫「てへへ。それほどでもありません」
男「歌の褒美だ。卵も食って良いぞ」
末姫「これですか? もっきゅもっきゅ」
男「どうだ」
末姫「もふもふして美味しいです♪」
8 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:34:20.19 ID:
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男「マニアックなちびっ子がいたもんだなー」
末姫「まにぁくですか?」
男「あー。相当な。もちろんそういうのが
好きなやつってのは少なくないが、お前の歳だと
かなりマニアックだろうなー」
末姫「アニソンはいいです。素敵な歌です。
人魚の世界でもなかなかああはいきませんです」
男「へ?」
末姫「あ。あーっと、その。私の国ではアニソンが
余り有名ではないのです。だから日本に来れて嬉しいです」
男「あー外国人か。そういえば、髪の毛の色とか青いもんな」
末姫「はいです」
男「ホームステイか?」
9 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:35:23.76 ID:
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末姫「ほむすていって何ですの?」
男「えーっと、外国から来た人が、日本人の家に
寝泊りすることだ。お客さんっていうよりは、
しばらくの間居候というか、家族扱いだな」
末姫「そう、それです! 姫の目指すものは!」
男「目指す? よく判らんな。
で、どこの家に厄介になってるんだ?」
末姫「ありません」
男「え?」
末姫「ほむすてい、今から見つけます」
男「おいおい。もう夜更けだぞ」
末姫「でも、ほむすてい今知りました」
男「どこまで体当たりなんだよ」
末姫「若さは振り向かないことです」
男「ちょ」
10 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:35:56.19 ID:
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末姫「ほむすてい探しします!」
男「あー」
末姫「?」
男(これはなんだか、とってもアレな感じがするし。
それに山勘だけどこいつただの外国人じゃないし)
末姫「なんですか?」
男「あー。末姫くん。君は実は我が家のホームステイなんだ」
末姫「!?」
男「僕は君を迎えに来たのだ」
末姫「そうだったんですか!?」
男「うむ」
末姫「探す前からほむすていが来るとは……。
日本はとっても素晴らしい国です」
男(なんか相当にちょろいやつだなぁ)
11 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:36:57.56 ID:
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末姫「不束者ではありますがよろしくお願いしますです」
男「どこで覚えたんだそういうの」
末姫「?」
男「しばらく家で世話するからには家族同然だよ。
だからそういう堅苦しいのは抜きにしようぜって話」
末姫「ん〜。家族は姉さましかいなかったのです」
男「全員女か?」
末姫「そうです。一番上の姉さまから、六番目の姉さままで。
姫は一番下なのです。いじめられるんですよ」
男「そっか。じゃぁ、男兄弟は初めてか?」
末姫「そうです。じゃぁ兄様ですねっ。
はいっ。兄様って呼ぶことにします!」
男「なんだか犯罪的だなぁ」
末姫「だめですか?」
男「いや、一部の男のロマンだ。許可しよう」
末姫「はい、兄様!」
男「んじゃ、とりあえず帰るかー」
12 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:38:29.00 ID:
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――朝。男の自宅アパート
末姫「むにゅむにゃ〜」
男「くっ。やりたい放題な寝相だな」
末姫「おでーん」にぱー
男「よだれたらすな」
末姫「ZZZzzz……」にこー
男「まったく。……まぁ昨日は寝るまで
大はしゃぎだったからな」
末姫「ZZZzzz……」
男「おーい、そろそろ起きろー」
末姫「姉様、もうちょっと」
男「ダメ。起きなさい」
末姫「意地悪云うと、嫁きおくれちゃいま……」
男「酷い子ですな」
末姫「ZZZzzz……」にぱー
13 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:38:53.25 ID:
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末姫「ZZZzzz……」
男「おなか丸出しで、まぁ」
末姫「すぅ……。すぅ……」
男「まいったなぁ。時間もそろそろだし」
男「しかたないな。見捨てるか。
確か日本語はそこそこ読めるんだよな。
『ご飯は冷蔵庫の中』これでいーだろ」
末姫「ZZZzzz……うまうま」はぅー
男「微笑ってらぁ。なんか……」にこっ
末姫「むにゅむにゃ〜」
男「んじゃ、ちょっくら学校行ってくるかぁ」
14 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:40:11.02 ID:
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――海の宮殿 in夢の回想
三姉「おーい。おいこら、ちびすけ」
くりっく、くりっく。
末姫「はい。三姉さま」
三姉「まったく。ちびすけは
毎日毎日インターネットとやらだな」
末姫「だって、楽しいんですっ」
三姉「よく判らないけどな。で、何してたんだ?」
末姫「ようつーべで歌を聴いてました!」
三姉「ふぅん。人間の? お前も変り者だなぁ」
末姫「そんなことありません。人間の歌は素晴らしいです。
花の子ルンルンとかマクロスとかは心が震えますっ」
三姉「ふーぅん。そんなもんかねぇ」
末姫「そうです! マジンガーの勇ましさといったら!」
三姉「……へぇへぇ。それはともかく」
末姫「はい?」
三姉「そろそろメシだよ。おいで」
末姫「はい。判りましたの!」
15 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:41:04.23 ID:
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――朝。男の自宅アパート
末姫「ZZZzzz……」
末姫「ううう……」
末姫「?」
末姫「起きました! あれ、あれれ」
末姫「ここは宮殿じゃなくて。兄様の家です!
そうだ、兄様はどこですか?」
末姫「兄様ー。兄様ー。隠れてないで出てきてくださいー
まっくろくろすけでておいでー♪」
しーん
末姫「兄様が行方不明に!? うわぁん。兄様! 兄様!
もう勝手に画像フォルダあけたりしませんからぁ!!」
16 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:41:46.17 ID:
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かさり
末姫「えっと、これは兄様のメモです。
『学校いってくる。食い物は冷蔵庫の中。
良い子で待ってること』です」
末姫「得心しました! 姫はお留守番をしているようです!
お留守番です。それなら得意です。
海でも姉さまがお出かけのときはいつもしていました!
頻繁に、というかほぼ毎日していました!!」
末姫「姫ほどお留守番の得意な子はいませんよ!
何しろ生まれてこの方全ての日々を
お留守番で過ごしてきたのです!」
末姫「もしお留守番に世界大会があるのなら
上位に食い込むこと無しです! お留守キングです!
いえ、お留守エンペラーです!」
末姫「……なんだか泣きそうになってきましたっ!?」
18 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:42:56.64 ID:
e5xLxTZ40
末姫「しかしくじけません。
お留守番を立派に勤め上げることによって
私をほむすていに招待してくださった兄様へ
家族の義務を果たすのです!!」
末姫「えーっと、お掃除とか」
きょろきょろ
末姫「お洗濯とか……」
くるくるきゅー
末姫「まず冷蔵庫を探検するのです……」
末姫「こ、これは!
ぷちんぷりん?
なんとなくですが魅惑的な名前です。
二姉様を思い出します。深い意味はありませんが!」
19 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:43:57.36 ID:
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ぱかり
末姫「もきゅもきゅ。もきゅ!!??」
末姫「美味し〜〜ぃい♪」にこー
末姫「これは凄く美味しいものなのですっ。
うう、すごい。素晴らしいです!
地上はこんなに美味しいものがあるのですね。
泡イチゴよりも甘いのです」
末姫「とても美味しいのです。もきゅもきゅ。
そうだ。
ようつーべでゲッターを聞きながら食べましょう」
光をうばって〜僕らをおそう♪
悪魔のゴールの〜黒い影ッ♪
末姫「リョウよ〜ハヤトよ〜ムサシよ走れ♪
今だ〜今こそ〜合体だッ♪」
20 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:45:23.96 ID:
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――夕方。男の自宅アパート
男「たっだいまぁ」
末姫「ZZZzzz……」
男「うっわ。まだ寝てるぞ、こいつ」
末姫「むにゅむにゅ」
男「寝てると本当にぷにぷにだな」
末姫「ZZZzzz……」
男「んー。なんだろ、部屋の掃除したのかな。
整理されて小奇麗になって。
お。洗濯もして有るぞ!! 働き者だな! 姫!」
末姫「にゅー……」
男「で、疲れて寝ちゃったってところかな」
末姫「ZZZzzz……」
男「仕方ないな。夕飯は何かちゃんとしたものを
食わせてやらずばなるまいっ。材料買って来たしな」
末姫「むにゅぅ」にぱー
男「……って俺の秘蔵コレクションが整理されて
ジャンル別に並べられてるッ!?」
21 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:46:03.97 ID:
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末姫「むにゃぅ……。ZZZzzz……うに?」
男「起きたか?」
末姫「はいです?」
男「顔洗え」
末姫「はいです」
もそもそ、とことこ
男「おーい。末姫。お前、カレー食えるのか?」
末姫「かれーですか。食べたことありませんです」
男「だろーなぁ」
末姫「ぷちんぷりんは食べれます」
男「知ってる。みっつも食いやがって」
末姫「あれは!
だってあれしか食べ方判らなかったのです……」
男「いや、べつにいいよ」
末姫「もしや、ぷちんぷりんは
十年に一度取れるかという幻の果物だったですか!?
姫は許されぬ大罪を犯してしまったですか!?」
男「あー」
23 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:47:41.77 ID:
e5xLxTZ40
末姫「どうりで余りにも甘くて柔らかくて
頬っぺた蕩けそうになりました!!」
男「最初からぷにぷにじゃねぇか」
末姫「きっと珊瑚と真珠を百万個集めても
買えないほどの宝物だったのです……」
男「110円だっての」
末姫「……?」
男「気にするな。晩飯にしようぜ」
末姫「はいです!」
男「今日はカレーです!」
末姫「かれーです!」
男「うむ。文化を学ぶに当たって素直な態度は大事だ」
末姫「いい匂いです」
24 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:50:12.91 ID:
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男「カレーは大正期に発明された代表的な和食だ。
野菜と肉、時には魚介などをスパイスで煮込んだ料理で
それをこのように……」
男「ご飯にかけて食べる。ご飯は別名、羅居簾(ライス)だ。
ゆえにこれはカレーライスという。
他にもカレーうどん等がある」
末姫「はうはう!」
男「カレーは国民食なので日本では全ての人間が
一日一食はほぼ必ずカレーを食べる」
末姫「あぅ! 知りませんでした!」
男「問題ない。しかしカレーは奥深い。
基本的に辛い料理なのだが、厳格な身分制度によって
食べられる種類が決まっているのだ」
末姫「身分制度ですか?」
男「うむ」
25 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:50:53.66 ID:cMBjE+XnO
また最初からするというその覚悟と優しさに泣いた支援
26 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:51:15.27 ID:
e5xLxTZ40
末姫「姫は姫なので一番すごいカレーです!」
男「馬鹿者がッ!」
末姫「!?」
男「新参者がえらそうな口をきくな。
おまえのようなへなちょこは
まずはこの初心者用のカレーから始め
長いカレー坂を上り始めるのだ!」
末姫「わかります! ジャンプ漫画的根性路線ですね!」
男「そうだ!」
末姫「わくわくします!」
男「では食おう。いっただっきまーっす!」
末姫「いただきます!」にこー
27 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:53:13.83 ID:
e5xLxTZ40
男「もぐもぐ」
末姫「もきゅもきゅ♪」
男「もぐもぐ」
末姫「もきゅ♪」にこー
男「美味いか?」
末姫「美味しいです」
男「辛いのは平気なのか?」
末姫「これくらいどんとこいです。
このもふもふしたのが美味しいです」
男「じゃがいもか」
末姫「オレンジ色のも美味しいです」
男「それは人参だ」
末姫「はうはう♪」
男「もぐもぐ」
末姫「暑くなってきましたぁ」
男「カレーを食べるとそうなるんだ。
麦茶を飲むと更に美味しいぞ」
末姫「はいです!」
28 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:54:43.02 ID:
e5xLxTZ40
男「うむ、美味かった!」
末姫「美味しかったです!!」
男「ご馳走様」
末姫「ご馳走様♪」
男「よいせっと。ん。なんだ?」
末姫「姫も後片付けを手伝うのです」
男「そうか。でもおまえちっちゃいからなぁ」
末姫「チビスケじゃありません!」
男「じゃ、この台つかっていいぞ。お前、拭く役な」
末姫「はいです!」
男「……」
末姫「はるか〜はるかな時のながれ〜♪
刻まれた〜こころ〜幾千万のかなたより〜よみがえる♪」
男「お前どんだけシブいんだよ」
末姫「これは名曲なのです!」
男「歌はうまいなぁ、ほんと」
末姫「褒められました!」
29 :
VIPがお送りします: [] 2008/09/18(木) 18:56:15.28 ID:
e5xLxTZ40
くそう、支援すげぇ嬉しいぜ。
お前ら有難うございます。
ママレードサンドやる。
100くらいまでは書き溜めあるんで、
がんばって張る。その先は状況次第だっ。