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黒髪娘「そんなにじろじろ見るものではないぞ」
Part15


919 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:06:54.53 ID:J2V03bbQ0
友女房「ええ、どうやら噂の方はもうすでに
 ご存じのようでした。いえ、おそらくは……
 尚侍のこともお心をいためておいでだったのでしょう。
 その席でも、哀れみ深いご様子で。
 そして、ではならば、歌集の編纂でも、
 とのお言葉があったのです」
黒髪娘「歌集……ですか!?」
友女房「まぁ」
藤壺の君「ええ。ご存じの通り勅撰集※の選者は
 今まで女性が選ばれたことはございません。
 ですから戯れ言だという者もいますし
 おそらくは帝のご意志とは言え、院か後宮を
 通して私的な依頼で……
 私撰と云う形になるでしょうが。
 しかし、いずれにせよ帝の口から零れた言葉。」
黒髪娘「……」
藤壺の君「宴の席のこととは言え、
 仇やおろそかには出来ませぬ……」
※勅撰集:帝もしくは上皇が命令して編集した歌集。
国家の一大文化事業で、選者にえらばれるというのは
「国で一番わかってるひと」認定だった。
比して私人の資格で選定を行なった歌集は私撰和歌集という。

920 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 16:07:10.17 ID:RIs8EViV0
NTRだったら見限る

921 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 16:08:01.80 ID:02WHnCvI0
NTRは簡便してくれ…(;ω;)

922 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 16:10:32.50 ID:SZN59vhP0
容姿ではなく頭の中身に興味をもたれたということでは
望むところだろうとは思うのだが…

924 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:15:00.26 ID:J2V03bbQ0
黒髪娘「……」
友女房 がくがくぶるぶる
藤壺の君「正式な勅は未だ出ておりませんが
 女性でありながら、帝の信任を受けて
 選者に選ばれるかも知れぬ姫の噂で持ちきりです。
 このままで行けば、遠からず何らかの話が
 持ち上がるでしょう。
 帝自らが動かなくてもそのように進むのが内裏。
 それは黒髪の姫も重々ご承知でしょう」
黒髪娘「それは……」
藤壺の君「黒髪の姫が代理への出仕を
 避けていらっしゃったのはもちろん存じております。
 もしかしたら出家を考えていらっしゃるのかとも
 思いましたが、前回の宴で、遠慮深く恥じらいを持つ
 清らかなる方と判りました」
黒髪娘「……」
藤壺の君「……。姫……」
黒髪娘「はい……」

925 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:23:17.47 ID:mnhEdFBi0
ああ口惜しや 出立せねば

926 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:25:31.85 ID:axDRYlyp0
NTR悲恋欝確定だな
姫が藤壺やら友を捨てて男に走れるようなタイプではないのは明らかだし

927 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:26:35.74 ID:FNxcFQVK0
ややこしや〜ややこしや

928 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 16:27:58.45 ID:SZN59vhP0
だが…選者になるからと言ってお手付きになるものと決まったわけでもあるまい…
俺はその可能性にかける

930 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:29:54.34 ID:axDRYlyp0
>>928
選者になるってことは
要は政治の道具になるってことだ
帝の手つきになるかどうかじゃなく
道具が道具として地位が確立する
手つきにならなくても政略結婚の材料になる
狂ってるわけじゃないってバレたしな

931 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 16:31:47.45 ID:SZN59vhP0
今は藤壺の君に保護されてる格好だが
当然桐壷の君からのちょっかいも激しくなるだろうしなぁ…
だがそれでも黒髪なら!黒髪なら!

932 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:33:39.21 ID:0ZdeYae+0
>>1の腕を信じようぜ

933 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:34:03.39 ID:axDRYlyp0
>>1は欝も行ける

934 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:36:53.81 ID:gxIhifoX0
どんな展開だろうとどんな最後まで書いてくれればそれでいい

935 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 16:44:17.14 ID:J2V03bbQ0
藤壺の君「歌集の編纂ともなれば、
 多くの時を必要としましょう。
 短くとも一年。長ければ、それこそ十年が
 かかってもおかしくはありません。
 それだけにその名誉は計りがたいものがあります。
 私的な依頼とは言え、帝のご意向の選者。
 それは内裏……いえこの都一番の
 歌い手、技芸の理解者と目されると云うこと」
黒髪娘「わたしのような浅学非才のものに勤まるとは……」
藤壺の君「……姫。あの日の姫の瞳を覚えています」
すっ
黒髪娘「あっ……」
藤壺の君「たしかに、この任は重いでしょう。
 姫が嫌悪されていた、内裏の政争の駒と
 なることもあるでしょう……。
 でも、本当の姫は“羽ばたいて”みたかったのでは
 ありませぬか? 中納言の二の姫との歌合わせを
 見て私はそう感じたのです」
黒髪娘「……それは」

943 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 18:00:06.15 ID:/vqZmP3F0
残り少ないので緊急避難的に建ててみた。
でも俺はママレの好きなようにやってほしい。
建てたとこが使われなくてもかまわん。
完結しないのがいやなだけ。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1264236955/

944 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 18:04:20.41 ID:4Wbe2HU6P
>>943
使わなかった場合はhtml申請しといてね

945 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 18:05:49.40 ID:/vqZmP3F0
>>944
うん。わかってる。

995 :VIPがお送りします [] :2010/01/24(日) 01:21:54.50 ID:ROzDpNWKO
ここで黒髪娘と男の物語は一旦中止だ
あとはおまいらの心の中に…!

998 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/24(日) 01:23:29.92 ID:XnKIQMVf0
>>995
心中とか縁起の悪いこと示唆するなよ・・・なくぞ

1000 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/24(日) 01:24:50.28 ID:U2CpMwqF0
1000ならじっと裸で待つ

75 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 09:55:38.80 ID:.SHbYS2o
――数日後、藤壺の宮
藤壺の君「吉野から良くお戻りになられて、
 黒髪の姫。皆も心配していたのですよ?」
黒髪娘「はい。ありがとうございます……」 ふかぶか
藤壺の君「さる歌会はまだ雪残る春でしたが、
 はや、山裾には桜の袖がひろがっております」
黒髪娘「はい。風に舞うは雪のよう……」
藤壺の君「本当に……」
黒髪娘「……」
藤壺の君「お茶を入れさせましょう」 ぱちん
しずしず
藤壺の女房「……失礼いたします」
藤壺の君「……」
黒髪娘「……」
藤壺の君「実は、お話ししたいことがありお呼びしたのです」
黒髪娘「はい」

76 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 09:57:16.32 ID:.SHbYS2o
藤壺の君「……話は半月ほど遡るのですが
 承香殿(じょうきょうでん)※で鶯の音を愛でる宴が
 催された折のことです」
黒髪娘「……」
藤壺の君「宴そのものは、鶯の音こそ少ないものの
 盛会でした。管弦の楽の音は素晴らしく
 特に中将の笛は昨今にないあでやかさでした。
 それはよいのですが、その宴の折に
 黒髪の姫の話題が出たのです」
黒髪娘「わたしの……?」
藤壺の君「ええ。くだんの歌会からこちら
 姫の話は宮中の噂の的でした。主にその学識や
 見識の高さ、歌を詠む姿勢などですが
 臨席された帝が興味を持たれて」
黒髪娘「帝が?」
※承香殿(じょうきょうでん):内裏(天皇の住む
 私的な場所)の建物の一つ。かなり格が高い。

77 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 09:59:08.83 ID:.SHbYS2o
友女房「ええ、どうやら噂の方はもうすでに
 ご存じのようでした。いえ、おそらくは……
 尚侍のこともお心をいためておいでだったのでしょう。
 その席でも、哀れみ深いご様子で。
 そして、ではならば、歌集の編纂でも、
 とのお言葉があったのです」
黒髪娘「歌集……ですか!?」
友女房「まぁ」
藤壺の君「ええ。ご存じの通り勅撰集※の選者は
 今まで女性が選ばれたことはございません。
 ですから戯れ言だという者もいますし
 おそらくは帝のご意志とは言え、院か後宮を
 通して私的な依頼で……
 私撰と云う形になるでしょうが。
 しかし、いずれにせよ帝の口から零れた言葉。」
黒髪娘「……」
藤壺の君「宴の席のこととは言え、
 仇やおろそかには出来ませぬ……」
※勅撰集:帝もしくは上皇が命令して編集した歌集。
国家の一大文化事業で、選者にえらばれるというのは
「国で一番わかってるひと」認定だった。比して私人
の資格で選定を行なった歌集は私撰和歌集。

79 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:00:39.17 ID:.SHbYS2o
黒髪娘「……」
友女房 がくがくぶるぶる
藤壺の君「正式な勅は未だ出ておりませんが
 女性でありながら、帝の信任を受けて
 選者に選ばれるかも知れぬ姫の噂で持ちきりです。
 このままで行けば、遠からず何らかの話が
 持ち上がるでしょう。
 帝自らが動かなくてもそのように進むのが内裏。
 それは黒髪の姫も重々ご承知でしょう」
黒髪娘「それは……」
藤壺の君「黒髪の姫が代理への出仕を
 避けていらっしゃったのはもちろん存じております。
 もしかしたら出家を考えていらっしゃるのかとも
 思いましたが、前回の宴で、遠慮深く恥じらいを持つ
 清らかなる方と判りました」
黒髪娘「……」
藤壺の君「……。姫……」
黒髪娘「はい……」

81 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:02:54.89 ID:.SHbYS2o
藤壺の君「歌集の編纂ともなれば、
 多くの時を必要としましょう。
 短くとも一年。長ければ、それこそ十年が
 かかってもおかしくはありません。
 それだけにその名誉は計りがたいものがあります。
 私的な依頼とは言え、帝のご意向の選者。
 それは内裏……いえこの都一番の
 歌い手、技芸の理解者と目されると云うこと」
黒髪娘「わたしのような浅学非才のものに勤まるとは……」
藤壺の君「……姫。あの日の姫の瞳を覚えています」
すっ
黒髪娘「あっ……」
藤壺の君「たしかに、この任は重いでしょう。
 姫が嫌悪されていた、内裏の政争の駒と
 なることもあるでしょう……。
 でも、本当の姫は“羽ばたいて”みたかったのでは
 ありませぬか? 中納言の二の姫との歌合わせを
 見て私はそう感じたのです」
黒髪娘「……それは」

82 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:06:11.37 ID:.SHbYS2o
藤壺の君「……十分に考える時間や選択の自由を
 差し上げられれば良いのでしょうが、
 わたし達にそれはありません」
黒髪娘「はい……」
藤壺の君「おそらく宣下※は正式には出ないでしょう。
 今この場を持って、引き受けて頂けるでしょうか?」
友女房(姫を最大限立てて下さっているけれど
 おそらく藤壺の上も
 この話に巻き込まれていらっしゃる……。
 この場を断っても、宣下を断ったことにはならない。
 だから、即座に右大臣家の取りつぶしにはならないけれど
 その場合は藤壺の上が帝のご意志に反したと……)
黒髪娘「謹んでお受けいたします。
 精一杯勤めさせてご覧に入れましょう」
友女房(……姫)
藤壺の君「ありがとうございます。
 黒髪の姫。……藤壺はあなたに借りが出来ました。
 必要なものがあれば何なりと協力させて下さい」
宣下※:天皇の命令書。出ちゃうと取り消せないので、
かなり重大なのだ。

83 :パー速民がお送りします [] :2010/01/24(日) 10:06:55.17 ID:eRROAn6o
前スレの最後のほうだな…
おさらい?

85 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:08:52.94 ID:.SHbYS2o
――右大臣家、本宅
右大臣「ははははっ! 今宵は宴だ!
 皆のものも食ってくれるが良い!
 飲んでくれるが良い!
 我が娘がとうとう選者としての仕事を仕留めたぞっ」
下の兄「おめでとう。黒髪」
上の兄「かっ。この勉強娘が。やりやがったな」
黒髪娘「いえ、父上、兄上のお陰です……」
右大臣「いやいや。お前は物心ついた時より
 書物一筋、学問一筋。他の姫がだんだんと色気づき
 文の一つも書いてみようか、衣の色でも合わせて
 みようかという年頃になっても、毎日毎日
 毎日毎日、来る日も来る日も
 ずぅぅぅ〜っと漢詩だ律令だ歌だと勉学ばかり。
 どこをどうやってこんなに色気のない子に
 なってしまったんだろうと、
 我ら一同涙にかきくれていたのだっ!」
下の兄「父上、言い過ぎですよ」
継母「おとど、おとど」

86 :パー速民がお送りします [] :2010/01/24(日) 10:10:13.04 ID:eRROAn6o
継母…
複雑な家庭事情だな

87 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:12:07.51 ID:.SHbYS2o
>>83
当初の予定では、平安に戻った時点の引き
(どうも大変なことに〜)で2スレ目突入かな、と見ていたのだ。
いや、アンケート取れなくて打ち切り路線もあり得たんだけどww
なので、丁度良いので、復習から流してみた。
上下巻っぽい感じで、このスレで終わるから、大丈夫(´∇`)

88 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:13:49.76 ID:.SHbYS2o
右大臣「いやいや。その暗黒青春時代をも
 我は祝っておるのだ。あの蚕のような籠城も
 この選者選出への伏線だと思えば納得というものよ!」
友女房(大殿様は悪い方ではないんだけど、
 お酒が入るとお馬鹿になってしまうのですよね……)
下の兄「でも良かったよ。黒髪。
 学芸の道で身を立てるのは、君の望みだったものね」
上の兄「宮中の女なんぞ、雑魚ばかりよ。
 待ち技、はめ技、あげくに泣き落とし。
 俺の妹は正々堂々立ち技勝負だ。良いじゃねぇか!」
下の兄「兄さん、また義姉さんに?」
 友女房「上の奥様は目元に涙を溜めて良妻を
  演じる達者でございますからねぇ……」(小声)
上の兄「べっ、べつに俺はあんなの怖くねぇぜ?
 女は色々小手先の謀でめんどうくせぇって話だっ」
右大臣「ははははっ! 何をしけた顔をしているのだ。
 今宵はめでたい宴の席ぞ! 帝のお声掛かりともなれば
 我が右大臣家の将来も約束されたがごときもの!
 さぁ、皆のもの、下々のものも杯を掲げよ!
 今宵の酒は祝いの酒じゃ!」

92 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:16:14.88 ID:.SHbYS2o
――牛車の中
(今宵の酒は祝いの酒じゃ!!)
黒髪娘「……」
友女房「……」
(おめでとう、黒髪。やっとこれで仕事を得たね)
黒髪娘「めでたき、事なのだろうな」
友女房「……」
(はん! 右大臣の秘蔵の娘だぜ? あったりまえだ)。
黒髪娘「父上も義母上も、兄上達も喜んでいた」
友女房「……ええ、さようでございますね」
黒髪娘「これが……」
友女房「……」
黒髪娘「これがわたしの立っている場所なのだ。
 ……余りにも、綺羅めかしい華胥の夢を見て
 わたしは忘れていたのかな……」
友女房「……姫様」

95 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:19:00.60 ID:.SHbYS2o
黒髪娘「どうしたのだろう。
 こんなにめでたいのに。
 こんなにも嬉しいのに。
 学識を認められて、お飾りの尚侍ではなく
 わたしは本物のわたしになりたかったのに……。
 望んできた夢が目の前にあるというのに
 心の一部が引きちぎれそうになる」
友女房「姫様……」
黒髪娘「……私は意気地がない」
友女房「……」
黒髪娘「心弱い、駄目な人間だ……」
友女房「……」
黒髪娘「最初から判っていたはずではないかっ
 こちらとあちら。
 ――こちらとあちらなのだ。
 触れあえたとしても、交わらぬ。
 そんな事は、少し考えれば判りそうなものを……っ」
友女房「姫様っ」
黒髪娘「……すまぬ」
友女房「……」

96 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:21:23.32 ID:.SHbYS2o
ふわり、なで。
黒髪娘「友……」
友女房「……姫の、為さりたいように。
 男様にお話しなさいませ……。正直に」
黒髪娘「――友?」
友女房「男様に、以前、お話ししました。
 “尚侍は、帝と東宮のモノ”だと。
 いまは縁遠くあれど、結局は、そうなのだと」
黒髪娘「……」ぎゅっ
友女房「でも、同時にこうも言ったのです。
 “このまま庭の片隅で咲いて、
 誰見ることなくひっそり朽ちる姿は見たくない”と」
黒髪娘「え……」
友女房「ええ。そうですとも。
 そもそも男殿の後押しがなければ藤壺の上の
 歌会に姫が出ることも無かったでしょう?
 そうすれば選者へという話もなかったのです。
 ですから全てを捨てて男殿へと身を託すというのも
 悪くはありません」

98 :パー速民がお送りします [sage] :2010/01/24(日) 10:22:49.78 ID:.SHbYS2o
黒髪娘「そんなっ! そんな事になればっ」
友女房「はい」
黒髪娘「私はともかく、父上も、兄上もっ」
友女房「ええ」
黒髪娘「宣下ではないとはいえ、帝のご意向に逆らえば
 父上も兄上も恥ずかしくて出仕など出来ない。
 お怒りが解けるまで何日でも何年でも謹慎せざるを得ない。
 藤壺の君だってご対面を潰されてしまう」
友女房「ええ」
黒髪娘「友だって」
友女房「ええ」
黒髪娘「判っているのか。そんなことはっ」
友女房「ひめ、ひめ」きゅぅ
黒髪娘「――っ」
友女房「それが恋の淵です。私は姫が大人になられて
 嬉しくもあるのですよ……」
黒髪娘「それでも、私は右大臣家のっ。
 くぅっ。
 ううっ……。ううっ……」