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黒髪娘「そんなにじろじろ見るものではないぞ」
Part13


744 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 23:41:57.86 ID:fkJR1ewJP
男「さて。説明はこんなものかな」
黒髪娘「手間を取らせた、男殿」 にこっ
男「結構時間がたったな。面白かったか?」
黒髪娘「うむ、目のくらむ思いであった」
男「そっか」 なでなで
黒髪娘「……むぅ」
男「それじゃさ」
黒髪娘「ん?」
男「何か買ってやるよ」
黒髪娘「え?」
男「その予定だったんだ。沢山は買ってやれないけれど
 買ってやるからさ。何が良い? 選んでみればいいよ」
黒髪娘「よ、良いのか?」 どきどき
男「まぁな。でもダメなものはキッパリダメだからなっ。
 ……特に店のあっちの端には近づかないことっ!」
黒髪娘「迫力があるぞ、男殿。……それなら」
男「どうした?」
黒髪娘「一緒に選んで欲しい」

746 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 23:47:18.15 ID:s7gnoH1F0
男「どんな案配だ?」
黒髪娘「えっと、えっと……もう少し」
男「ああ。ゆっくりでいいぞ。時間をかけて」
黒髪娘「選ぶのが楽しすぎるのが問題なのだ」
男「楽しむのが良いって」
黒髪娘 ぱたぱた、ぱたぱた
男「……たのしいなぁ、あいつ」
黒髪娘 ぴたっ
男「お、止まった。実用書にするのか?」
黒髪娘 ぱたぱた
男「違うのか」
黒髪娘 ぴたっ
男「写真集か。そういやそんなのもあったなぁ」
黒髪娘 ぱたぱた
男「せわしないやつ」 ぷくくっ

747 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/22(金) 23:51:41.53 ID:s7gnoH1F0
黒髪娘「男殿、男殿」
男「決まったか?」
黒髪娘「これにしようかと思う」
男「これはまた。面白いのを選んだなぁ」
黒髪娘「そうなのか?」
男「いや、でもそれは読んだことがある。良い本だよ」
黒髪娘「猫の絵が凛々しいと思うのだ」
男「そうだな。小さくて黒いのは、黒髪みたいだ。
 ……じゃ、それにしようか」
黒髪娘「でも、その。……よいのか?
 これは千三百もするから、あの大きな菜が十個も
 買えるわけで……そのぅ」
男「いいんだよ。それくらい。遠慮しすぎだ。
 それからこっちの一冊は、俺からの贈り物」
黒髪娘「え? え?」
男「古語辞典だよ。黒神はこれがあると助かるだろう」
黒髪娘「こんなに厚い書を頂くわけにはっ」
男「なんだ。絵本を選んだのはそんな理由なのかぁ?
 変なところで慎み深いんだなぁ。黒髪は」

748 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/22(金) 23:53:35.23 ID:eWGPk1Ud0
かわいすぐてもうね
なんていうかね

751 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/22(金) 23:59:57.19 ID:eZ2AD9nV0
ちょっと気になる事があるけど
伏線かも知れないので黙っておく

752 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 00:05:07.66 ID:J2V03bbQ0
黒髪娘「変ではない。それが儒教の礼節だ」
男「いいのいいの。これは、俺が、黒髪にあげたいの」
黒髪娘「そんなっ」
男「――あの話だってさ」
黒髪娘「へ?」
男「あの姫が、蓬莱だ龍だなんて無茶振りして
 取ってこれないようなものを
 ねだったのがいけなかったんだよ。
 そうでなければ、男の中にはごく当たり前の好意で
 姫に贈り物をしようとした人もいたと思うぜ?
 それこそ、送っただけで満足。
 あの姫に使って貰えたら嬉しいなぁって、
 それだけの気持ちだったヤツだって、
 最期に残った五人の皇子以外にはいたと思うんだよなぁ」
黒髪娘「……」
男「まぁ、そいつらはあの話では、予選オチしたわけだけど」
黒髪娘「あの女は見る目がなかったのだ」
男「かもな」
黒髪娘「ありがとう。大事にする。男殿っ」 にこっ

753 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 00:08:59.89 ID:lc1DyhNK0
にこっ で毎回死ぬんだが誰か保険紹介してくれ

754 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 00:11:07.27 ID:J2V03bbQ0
――駅前ドーナツチェーン店
男「……っと、こんな感じかな」
黒髪娘「何がなにやらさっぱり判らぬ」
男「うん、説明しても良いんだけど、
 後ろも並んでるから」
黒髪娘「わっ」
男「適当に俺が選んじゃうぞ」
黒髪娘「う、うむ。頼む」
男「ミートパイがないのが痛いよなぁ。
 あれすげー美味いのに」
黒髪娘「白やら桃色やら、美しいなぁ」
男「甘いんだぜ?」
黒髪娘「甘いのかっ」
男「そりゃもう、大人気ですぜ」
黒髪娘「むむむ……。梅饅頭よりもうまいか?」
男「良い勝負かなぁ」

756 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 00:18:29.74 ID:J2V03bbQ0
カタン、すとん。
男「まぁ、どうぞ」
黒髪娘「うむ」 きょろきょろ
男「美味しいよ?」
黒髪娘「頂きます」
男「頂きますっ」
黒髪娘 あむっ 「っ!」
男「おお、びびってる。びびってる」
黒髪娘「何という軽さなのだ! 淡雪のようだっ」
男「エンゼルクリームって云うくらいだから」
黒髪娘「どうなつとはこのような食べ物なのか」
男「南蛮渡来の菓子なんだよ」
黒髪娘「これは、なんとも……。
 霞を食べているような心地よさではないか」 きらきら
男「どんどんどうぞ?」
黒髪娘「うむっ」

758 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 00:20:53.74 ID:J2V03bbQ0
男「こっちのも行けるぞ? ジャム入りだ」
黒髪娘「うむ。頂いている」 そわそわ
男「どうしたんだ?」
黒髪娘「いや」
男「?」
黒髪娘「男殿……」 ちらっ
男「ん?」
黒髪娘「その、わたしは、何か粗相をしているのではないか?」
男「なんでさ?」
黒髪娘「道行く人も店の人もこちらを見ていないか?」
男「あー。うん」
黒髪娘「なにか、悪いことをしてしまっただろうか」
男(今日のも、お出かけ前に姉ちゃんが
 わざわざ着飾らせたコーディネートだからなぁ。
 悪い意味で手抜きがないって言うか……。
 姉ちゃん無駄にきめまくりだろ……)
黒髪娘「ううう」 おろおろ

759 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 00:24:33.16 ID:J2V03bbQ0
男「いや、まて。落ち着け。説明するから」
黒髪娘「?」
男「その編み込み、姉ちゃんがやってくれたんだろう?」
黒髪娘「ん? 髪か? そうだ。
 姉御殿がそのままだと街歩きでは邪魔にもなるし、
 重かろうと編んでくれたのだ」
男「それと、服もさ」
黒髪娘「軽すぎて、心許ない」 かぁっ
男「そういうの、すごく可愛いんだよ。
 ……タイツとか。似合ってっから」
黒髪娘「――」 きょとん
男「可愛く見えるの。すごく。TVに出てる子みたくっ」
黒髪娘「そう……なのか?」
男「ったく」
黒髪娘「何で男殿が怒るのだ?」 むぅっ
男「怒ってない」
黒髪娘「そんな事無いではないか」
男「なんでもないって。ほら、食べよう?」
黒髪娘「……」

760 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 00:29:05.89 ID:23KKfwBu0
なんでこう、一言一言がカワイイんだ
文才を感じるぞ

762 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 00:32:57.50 ID:J2V03bbQ0
――帰りの夜道
黒髪娘「男殿?」
男「ん?」
黒髪娘「その……なんでもない」しゅん
男「そっか」
黒髪娘「……」
男「……」
黒髪娘「……」 ぎゅっ
男「荷物、持とうか?」
黒髪娘「ううん。これは自分で持ちたいのだ」
男「そうか」
黒髪娘「…………機嫌が悪いの……か?」 ぼそぼそ
男「どうした?」
黒髪娘「なんでもない」 ふるふるっ

764 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 00:40:27.06 ID:J2V03bbQ0
黒髪娘「男殿……」
男「どした?」
黒髪娘「頭を……撫でてくれないか?」
男「……」
黒髪娘「髪に触れて欲しいのだ」
男「……ん」
ふわり……。
 なで……なで……
男「……こうか?」
黒髪娘「……機嫌を直してくれ」
男「怒ってないよ」
黒髪娘 ぎゅっ
男「……黒髪。ほんとだよ」
黒髪娘「……」
男「本当だってば」 なでなで

767 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 00:54:41.29 ID:urJPcVEU0
おいお前ら
スレを埋めないように無駄なレスは避けるんだ

769 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 00:55:50.95 ID:J1TUnzS30
埋まったらパー速いけばいいじゃないか

772 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 01:02:36.35 ID:D8WC25nY0
>>769
次スレはパー速には賛成だな
保守いらないし

774 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 01:07:09.87 ID:f7KmUr4w0
>>772
>>1の事も少しは考えろ

777 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 01:08:39.92 ID:J2V03bbQ0
――翌日、祖父の実家
さーーーー
黒髪娘「雨だなぁ、男殿」
男「そうだな」
黒髪娘「春の初めの雨だ」
男「そのへんちょっと感覚ずれてるよな。
 まだまだ寒いじゃないか」
黒髪娘「温かくならなくても、年さえ開ければ春だ。
 同じ寒くても、これから小さく堅くなって行く年末の寒さと
 どこかにほころびを感じさせる、年明けの寒さは違う」
男「そっか? でもまぁ、そうかもな。
 雪じゃなくて、雨だしな」
黒髪娘「これでは今日は外には出られぬな」
男「行けない訳じゃないけれど、
 家にいるのが良さそうだ」
黒髪娘「男殿は何をしているのだ?」
男「調べ物と、レポート」
黒髪娘「そうか。……私もここで本を読んでいて良いか?」
男「もちろん」

781 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 01:12:57.35 ID:J2V03bbQ0
ぺらり/カタカタカタ
黒髪娘「……」
男「……」
黒髪娘「……」 もぞもぞ
男「……どした?」
黒髪娘「背中が温かくてくすぐったいのだ」
男「何もこんなにくっつかなくても良いのに」
黒髪娘「部屋の中で、ここが一番温かく思う」
男「そうですか」
黒髪娘「うむ」
ぺらり/カタカタカタ
男「……」
黒髪娘「……」
男「……」

784 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 01:25:26.91 ID:J2V03bbQ0
黒髪娘「――我がせこが衣はる雨降るごとに
      野辺の緑ぞ色まさりける」
男「それ、どんな歌なんだ?」
黒髪娘「それは、つまり……
 衣替えをして、雨が降るごとに、春の緑が濃くなる。
 そういう歌だ」 そわそわ
男「そうか。そういえば“一雨ごとに”なんて云うものな」
黒髪娘「そういうことだ」
男「ん?」
黒髪娘「なんだ?」
男「頬っぺ赤いぞ?」
黒髪娘「そんなことはないっ」
男「ふむ」
ぺらり/カタカタカタ
黒髪娘「……」 どきどき

785 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 01:28:28.33 ID:aBPMYJw90
春の雨が一日また一日と降る度、あなたへの恋も深まっていくようです

787 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 01:43:31.80 ID:J2V03bbQ0
男「……なんかさ」
黒髪娘「うむ?」
男「小腹減った」
黒髪娘「……そうかも知れぬ」
男「ドーナツは腹持ち悪いなぁ」
黒髪娘「蕩けるばかりに美味であるのにな。
 浮き世の栄華とは本当にむなしいものだ」しょんぼり
男「栄華ってほどのものか?」
黒髪娘「どおなつに勝る栄耀栄華はあるまいっ」
男「そうかそうか。んー」のびっ
黒髪娘「男殿は大きすぎる」
男「何か言った?」
黒髪娘「見上げるようだ」
男「黒髪が小さいんだよ」
黒髪娘「わたしは標準的な身長だ」
男「……何か食べるとするか」
黒髪娘「ご相伴する」

788 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 01:53:37.92 ID:mnhEdFBi0
簾を掲げて臨むのは、香炉峰の雪でしたかのう?

789 :VIPがお送りします [] :2010/01/23(土) 01:55:48.65 ID:eTl/Z+410
テレビをてれびんって言ったりドーナツをどおなつって言う所がずっとツボ

790 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 01:56:12.86 ID:J2V03bbQ0
――祖父の家、台所
男「黒髪ー?」
黒髪娘「ん。ここにいるぞ」
男「お前、餅何個食べる?」
黒髪娘「餅を食べるのか?」
男「このサイズだぞ。ほら」
黒髪娘「存外小さいな。私は3つだ」
男「んじゃ、俺は4つ〜」
黒髪娘「焼くのか? 雑煮か?」
男「どうすっかね。チーズいれちゃおっかなぁ」
黒髪娘「ちいず?」
男「いや、間食で高カロリーは危険かな?」
黒髪娘「ちいず……」どきどき
男(まぁ、いいか。こいつそうゆうの関係なさそうだし)
黒髪娘「ちいずとはなんだ?」
男「美味い食べ物だよ」
黒髪娘「それはたのしみだ!」 ぱあぁっ

791 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 01:58:21.21 ID:2C1XY/JQQ
>>1は平安時代の勉強でもしてるのか?
>>784の歌とか自分で作ったの?

793 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 02:00:36.70 ID:J2V03bbQ0
――祖父の家、居間
黒髪娘「美味しいではないか!」
男「落ち着け」
黒髪娘「餅と同じように伸びるとは」
男(可愛いヤツだな。ぷくくっ)
黒髪娘「熱くて、とろりとしていて」
男「ほら、慌てると、髪についちゃうぞ。
 右大臣家の娘なんだろう?」
黒髪娘「それもそうだ」 あむ、あむっ
男「ほら、お茶おくぞ。喉に詰まらせるなよ」
黒髪娘「いくら何でもそこまで子供ではない」むっ
男「くははっ。判った判った」
黒髪娘「この、まろやかな塩味がたまらぬ。
 美味く表現できぬが、一個食べるともう一個。
 ふたつめを食べると三つめが食べたくなる味だ」
男「ああ、チーズの溶けたヤツって
 そう言うところ有るよなー。わかるわかる」 もぐもぐ
黒髪娘「……」 じー

794 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 02:03:03.22 ID:bVCwdZJ00
むねがぁぁむねがきゅんきゅんするよぉぉ

795 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 02:05:42.08 ID:J2V03bbQ0
>>791
勉強してない。てけとう?
784の歌は紀貫之。古今和歌集収録。平安貴族は
古今和歌集丸暗記がステータスだったらしいので
黒髪も覚えていたのでしょう。黒髪の歌の解説は
間違ってないけど正解でもない。
そのほか、歌会の歌は、借り物や自作など。
雰囲気だけのなんちゃって平安だと思って貰えれば
それでOKでござる。にんにん。

798 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 02:08:44.01 ID:J2V03bbQ0
男「……」 もぐもぐ
黒髪娘「……」 ちらっ
男「もう一個欲しい?」
黒髪娘「……そうとも云える」
男「……半分こだからな」
黒髪娘「うむ」 にこっ
男「ん。美味いなぁ」
黒髪娘「美味しいなぁ。こちらのものは何でも美味しい」
男「あっちのだって美味しいぞ?」
黒髪娘「もてなしの心で用意しているのだ」
男「こっちだってそうさ」
黒髪娘「そうなのか?」
男「確かにこっちは変わった物があるように
 見えるかも知れないけれど、例えば近海産の
 天然の鯛やカニなんて、一人が食うくらいで
 七千円とか八千円とかするものもあるんだぞ?」
黒髪娘「なんとっ!?」

801 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/23(土) 02:13:04.37 ID:J2V03bbQ0
男「な? ものすごく値段が上がって
 高級になったものもあるんだよ。
 たとえば、生の山葵(わさび)なんて
 いまは普通のご家庭じゃ高くて
 滅多にお目にかかれるような食べ物じゃない」
黒髪娘「そうであったのか」
男「だから、おれがあっちで受けたもてなしは
 本当に大盤振る舞いの、大ご馳走だったんだよ」
黒髪娘「ふむ……。興味深いな」
男「だから、あんまり気を遣うことはないぞ?」
黒髪娘「うむ、わかった」にこっ
男「腹が一杯になったらごきげんか?」
黒髪娘「わたしはいつでも機嫌は良い。
 男殿と一緒にいる時ならばなおさらだ」
男「え。……あ」
黒髪娘「どうしたのだ?」
男「いや、その」
 (そう言うこと、不意打ちで云うかな。この中学生めっ)