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黒髪娘「そんなにじろじろ見るものではないぞ」
Part11


559 :VIPがお送りします [] :2010/01/21(木) 23:38:43.61 ID:cN7NTMxiP
――祖父の家、和室。並べた布団で。
黒髪娘「姉御殿はよかったのかな……」
男「良いんじゃないか。多分、明日か明後日には
 こっちに顔を出すと思う」
黒髪娘「うむ……。賑やかになるな」
男「あっちの方が良かったか?」
黒髪娘「あちらのほうが都の中心に近いのであろう?」
男「都、と云うか……駅には近いかな」
黒髪娘「で、あれば、こちらの方が落ち着く」
男「そっか。うん、そのせいもあって
 こっちに来たんだけどな。
 急に色々見ちゃうと、パンクしちゃうだろう。
 少し見聞をならさないとな」
黒髪娘「感謝する」
男「いえいえ。ちょっと馴れたら、お出かけにも
 連れてってやるよ。本屋とか、見たいだろう?」
黒髪娘「もちろんっ。それは、その……。
 もしかすると、でいと、と云うものか?」
男「でいと? あ。ああ……まぁ、そう……かな」
黒髪娘「そうか」 にこり

560 :VIPがお送りします [] :2010/01/21(木) 23:42:47.56 ID:cN7NTMxiP
黒髪娘「男殿……は」
男「ん?」
黒髪娘「いや……良いのか? こんなに世話をさせて」
男「たかだか五日やそこらだろう? 心配するなよ。
 黒髪はまだ14で子供なんだから甘えておけ」
黒髪娘「わたしは……子供か……」
男「あー。うん。……そだな。
 前も話したけれど、こっちの世界では
 二十歳で成人を迎える。元服、みたいなものかな。
 だから、黒髪の歳は、まだ、子供だ」
黒髪娘「……うん」
男「でも、黒髪の世界では子供じゃないんだよな。
 いや、それは判ってる」
黒髪娘「いや……子供だ……」
男「へ?」
黒髪娘「成人とは元服のような物なのだよな?
 女子のそれは裳着(もぎ)と呼ぶのだが……。
 それはおそらく、この世界において
 独り立ちを意味するのだろう……?」

562 :VIPがお送りします [] :2010/01/21(木) 23:45:55.59 ID:cN7NTMxiP
黒髪娘「よくは、そのぅ。判らないが……。
 貴族の居ないこの世界にあって、働いて
 菜を米を、味噌を購うと、それが成人なのだな。
 成人というのは、我が道を戦える者だ。。
 であれば……。
 私は、やはり子供なのだろう。
 右大臣家の娘として、
 自分の口に糊することもせず今を過ごしている。
 男の世界の目で見れば、
 一人前の人間として扱われずともやむをえぬ……」
男「……」
黒髪娘「そんな私が、言の葉にする資格のない
 そんな思いが沢山あるのだろうな……」
男「……黒髪は」
黒髪娘「……」
男「黒髪が大人だか、子供だか。
 あの長びつを見つけたこの屋根の下では
 俺にはどっちが正しいのか、判らないよ。
 でも、
 黒髪は、俺の知ってる誰より、頑張り屋さんだよ」
黒髪娘「……ありがとう。男殿」

566 :VIPがお送りします [] :2010/01/21(木) 23:51:41.45 ID:cN7NTMxiP
良い区切りなんでQKしてくるー。
書き溜め書き溜め。

585 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 02:02:30.34 ID:jkDRuLap0
ママレの上にあいまみえることのよろこびさらなり 支援

588 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 02:26:50.56 ID:fkJR1ewJP
――祖父の家、縁側
チチチ、チチチチッ
黒髪娘「四十雀だ」
男「シジュウカラ?」
黒髪娘「黄色い胸の小さな鳥だ」
男「ああ。ここは、山近いからなー」
黒髪娘「この時代にも居るんだな。……安心する」
男「そりゃ、変わらない物だって沢山あるよ」
黒髪娘「……」ぽやぁ
男「……」ぽやぁ
黒髪娘「今日はこんな感じか?」
男「うん、そう」
黒髪娘「日向ぼっこか……」
男「陽がある間だけな。すぐ寒くなるから」
黒髪娘「色々見聞を広めたい気もするのだが」
男「無理だろ。ほれ」 ちょこんっ
黒髪娘「くぅっ!」
男「どれだけ引きこもりなんだよ。
 スーパーに往復するだけで筋肉痛とか」

590 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 02:32:31.31 ID:fkJR1ewJP
黒髪娘「いや、しかし。それはわたし個人と云うよりも
 牛車によって生活している者全般にいえる事で」
男「あと、動きが鈍い」
黒髪娘「うう……」
男「十二単って重いじゃない?」
黒髪娘「うむ」
男「だから、あれを脱いだら
 サイヤ人みたく早くなるかとちょっと期待してた」
黒髪娘「そんなわけ無いであろうっ。
 そのなんとか人と云うのはわからぬが。
 天竺の導師でもないのに器用に動けるものか」
男「ほら、脚伸ばせ」
黒髪娘「うむ……」おずおず
男「痛いか?」
黒髪娘「そうでもない。すぐに良くなる」
男「まぁ、今日は一日ゆっくりしよう」
黒髪娘「退屈はしないな」
男「そうか?」

591 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 02:34:42.01 ID:fkJR1ewJP
黒髪娘「家の中にも見知らぬものが沢山あるのだ。
 てれびんとか、水のでる台とか」
男「そりゃそうか」
黒髪娘「こちらの家は、皆小さいのだなぁ」
男「悪いな。ははっ」
黒髪娘「ん?」
男「人間が沢山増えたんだよ。
 だから、土地が不足して高くなった。
 宮古の中心部は、そりゃすごい価格だぞ」
黒髪娘「そういうことなのか。
 しかし、それら全ての家に湯浴みの施設があるのだろう?
 さらに云えば、自動の竈(かまど)さえある」
男「そうだな。殆どにはあるな。水洗のトイレも」
黒髪娘「驚愕すべきことだ」
男「かもなー」
黒髪娘「それに、色々書籍もある」
男「いや、それは本じゃなく出前のチラシだから」
黒髪娘「このように色鮮やかな錦絵とは」
男「ピザだって」
黒髪娘「興味深い」
男「うーん」

594 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/22(金) 02:58:32.77 ID:wJ4+kOud0
宮古というと岩手ですか

595 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 03:02:13.72 ID:fkJR1ewJP
――祖父の家、納戸
黒髪娘「これがこちらの長びつか」
男「そうそう」
がちゃ、かちゃ……
黒髪娘「何をさがしているのだ?」
男「どっかに懐中電灯とか、そういうのないかなって。
 この家、田舎やだから、夜のトイレの廻りとか暗いんだよ」
黒髪娘「わたしなら平気だ。
 暗いのは故郷で十分に経験している」
男「まぁ、そりゃそうだろうけど」
がちゃ、かちゃ……
黒髪娘「……ん?」
男「どした?」
黒髪娘「この長びつ、ずいぶん黒いな」
男「ああ、汚れてるし、ここ暗いしな」
黒髪娘「そういえばそうか」
男「あったあった。……え、あっ」 がたっ
むぎゅっ
黒髪娘「っ!!」

601 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 03:34:42.84 ID:fkJR1ewJP
男「ご、ごめんっ」
黒髪娘「いや、この程度、なんでもない」
男「いやいや、悪かった」
黒髪娘「こ、こちらこそ……粗末なものを」
男「そんな事無いぞ。ふっくら良い感じだ」
黒髪娘「ふっくらしているからダメなのだ」
男「……」
黒髪娘「……?」
男「あー」
黒髪娘「ん?」
男「いや、こう。色んな誤解がね」
黒髪娘「誤解?」
男「黒髪は、その卑屈なところは良くないぞ?」
黒髪娘「仕方ないではないか。私は不器量なのだ」
男「いいから、こっちこい」
黒髪娘「へ? へ?」

604 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/22(金) 03:52:12.64 ID:Elr9gC6O0
幻の「巣守帖」か…写本確認
既知?

605 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 03:55:35.53 ID:XChJvsfW0
メモ:揉んだ。超揉んだ。

614 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 06:03:11.37 ID:dHKpN0HO0
>>594
いや伊勢崎だ

616 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 06:06:08.00 ID:fkJR1ewJP
いや、今回はマジでへこんだ。
この2時間くらいp2鯖落ちてたように思う。
もうね、泣きそうです。

617 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 06:07:03.30 ID:dHKpN0HO0
長びつがずいぶん黒い…?汚れてる…?…伏線か

618 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 06:11:08.43 ID:fkJR1ewJP
――祖父の家、お茶の間
TV:わははははは! あはははは!
男「判ったか!」 ばぁぁん!!
黒髪娘「っく!!」
男「これがこの時代的な『美人の女』だっ」
黒髪娘「馬鹿な! これは肥満した年増ではないかっ!?」
(注:別に1はTVに悪意があるわけではありあせん)
男「時代と共に価値観は変わるのっ」
黒髪娘「この時代だったら
 私だって十人並みの器量だったのか……」
男(いや、この時代だったら相当可愛いだろ)
黒髪娘「しかし年齢はどうにもならない……。
 どっちつかずなこの身が恨めしい……」
男「いや、そのままでいいんだって。黒髪は」

620 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 06:23:14.34 ID:fkJR1ewJP
黒髪娘「それにしても、このてれびは不思議だな」
男「まぁ、そうな」
黒髪娘「道術で動いているのか?
 つまり、宝貝のごときものなのか?」
男「当たらずとも遠からず、かなぁ」
黒髪娘「それにしても……」
男「ん?」
黒髪娘「何でこの者たちは裸なのだ?」
男「〜〜っ。ちがうって、着てるじゃん」
黒髪娘「裸も同然ではないか。……デブなのに」
男「デブじゃないって。しかも裸じゃないって。
 ただのキャミソールだろうにっ」
黒髪娘「むぅ」
男「これがこっちの世界のスタンダードなのっ」
黒髪娘「そうなのか。こういうのが人気があるのか……」

621 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 06:54:20.49 ID:fkJR1ewJP
男「黒髪はこういうのの影響は受けないで良いんだからなっ」
黒髪娘「むぅ……」
男「こういうのは、そのー。
 なんていうのかな、芸人というか。
 人気商売で、男性受けを考えてやるものだからっ」
黒髪娘「白拍子※なのか?」
男「それは判らない」
黒髪娘「つまり、その……。遊女、のような?」
男「あー。そうそう。そういうことっ」
黒髪娘「やはり異性への魅力ではないか」ぼそり
男「?」
黒髪娘「いや、なんでもない。いくらなんでも
 右大臣家の娘が真似できることではない」
男「そうそう。そのままが一番」
黒髪娘「それはそれで成長を否定されているようでつらい」
男「なんでそんなに急ぐかなぁ」
黒髪娘「……う」
男「まぁ、十分可愛いから心配無用だよ」
※白拍子(しらびょうし):歌舞の一首でありその舞い手。
美人の娘さんがなった。身分は卑しくても貴族の家で
上演することも少なくなかった。

622 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 07:19:30.94 ID:fkJR1ewJP
――祖父の家、勝手口
からから
姉「こんばんわー」
男「あー。姉ちゃん。電話しようかと思ってた」
姉「ちゃんと買い物行ってきたよ」
男「さんきゅー。何にした?」
姉「アジとハマグリとね、後は野菜はーカブと大根と、
 適当に見繕ってきた。和食が良いんでしょ?」
男「んだね。食べつけてるだろうし」
姉「なんだかなぁ。めちゃ惚れじゃない」
男「そういうんじゃないよ」
ドサドサッ
姉「んっと。黒髪ちゃんは?」
男「ああ、いま部屋。布団ひいてるんじゃないかな」
姉「ふぅん……」
男「どったの?」

623 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 07:22:38.22 ID:fkJR1ewJP
姉「いやいや。あんな娘、どこでモンスターボールに
 閉じ込めやがったんだこのえろ人間と思って?」にやにや
男「……」
姉「お。なんか反応薄い?」
男「可愛いとは思うけど、そういうのとはね」
姉「違うの?」
男「――わかんねーけど」
姉「ま。難しいよね。中学生じゃ、ずいぶん年も違うし?
 まぁ、歳以外にも色々違うみたいだし」
男「え?」
姉「あの子、ずいぶんお嬢様でしょ?」
男「――どうして?」
姉「だって、お風呂場で髪を洗う時、
 明らかに“洗ってもらうことに馴れて”いたもの」
男「……」

624 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/22(金) 07:27:16.09 ID:QZbxzpEf0
姉ちゃんするどい

625 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 07:28:09.80 ID:fkJR1ewJP
姉「それも、そんじょそこらの箱入り娘じゃないよね」
男「駆け落ちとか誘拐とかじゃないからな」
姉「あったりまえよ。あんたそんなに根性無いでしょ」
男「う」
姉「……ん? 違う?」
男「ま、仰るとおり」
姉「気持ちはわかるけれどね。
 ――あんた甘いから。
 相手の分まで臆病になるって云うのは」
男「……」
姉「でも、あんまり子供扱いしない方が良いよ」
男「また、云われた」
姉「説明無しで大人が全部責任取るって
 まさに子供扱いでしょう?
 でも、それでも、一緒にいたいって女が願ったら
 そうゆうのってただのいじめだからね。
 諦めるなら、相手にも諦めるチャンスくらい
 あげなさいよね」
男「経験者みたいだな、姉ちゃん」
姉「うっさい。バカ弟」

626 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 07:35:57.18 ID:qhn16OMP0
いいぞ姉ちゃんもっといってやれ

632 :VIPがお送りします [sage] :2010/01/22(金) 08:32:20.94 ID:fkJR1ewJP
――祖父の家、お茶の間
姉「と、云うわけで!」
男「本日は、アジフライとかぼちゃの煮物。
 カブのクリーム詰め。大根のお味噌汁です」
姉「いぇーいっ!」
黒髪娘「……」じぃっ
男「どしたの?」
黒髪娘「あ。いえ、すごく美味しそうだ……です」
姉「いいのよ。普段どおりで。黒髪ちゃんは」
黒髪娘「すいません……。すごく美味しそう」
男「ではいただきますっ」
姉「頂きますっ!」
黒髪娘「いた、だきます」 ちらっ
男「そうそう、ご自由にどうぞ。
 ああ、ソースかけるな、……んっしょっと」
姉「お姉ちゃんもー!」

633 :VIPがお送りします [] :2010/01/22(金) 08:35:00.34 ID:dQlfsvdU0
フライとか未知の領域なんだろうなぁ。あとソースも。