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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part98


474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 22:53:05.69 ID:8sofY9MP
裕福な貴族「ふふふっ。そうだ、勇者どの?」
勇者「はいっ?」
裕福な貴族「武器庫でも見に行ってくるかね?
 これでも我が領地は歴史があるのだ。
 勇者ではないが、伝説の剣士が使っていたという
 名剣もあるのだよ」
貴族婦人「あら、そういえばそうですね」
勇者「行って良いか、じじ……賢者ー」
老賢者「まぁ、良かろう」
勇者「行きたいですっ!」
裕福な貴族「では、侍従に案内させよう」
 侍従「ははっ。こちらでございます、勇者様」
 勇者「ありがとうね、お爺さん」
  ガチャ。カッカッカッ
裕福な貴族「ふむ。あの少年が……」
老賢者「そうですな」
裕福な貴族「どうなのですか、素質は?」
老賢者「まさに勇者です。歴代の中でもことに優れた、
 心根の正しく、優れた若者になるでしょう。
 しかし、それには時間が必要ですな」
裕福な貴族「時間はない。賢者殿もお聞きになられたでしょう?
 教会付きの法術官も高名な占術士も、こぞって告げるのを。
 新たなる魔王が現われたのです。一刻も早く勇者を旅立たせねば」
老賢者「あの子はまだ幼いのです」
裕福な貴族「幼いとは言え、二十四音呪と無類の剣技。
 勇者としての力は十分だ。一刻も早く戦場へ出さねば我ら人間は
 魔族の脅威にいつさらされるのか判らないのですぞ? 賢者殿」
老賢者「そんなことで滅びるぽんぽこぴーなど
 滅びてもちっとも構わないとわたしは思うのですがね」

480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 22:56:01.06 ID:8sofY9MP
――14年前、夏、ある領主の館、武器庫
じゃきーん! がちゃー!
勇者「うっわ、すっげぇ! 格好良いー!」
勇者「いいなっ。いいなっ。これ格好良いなぁ」
がちゃがちゃ
勇者「これなんかすごい良いなぁ。鎧は、結構大きいけど。
 剣なら持てるよな。この剣、魔力あるんだな」
 ペカー! キラキラ! シュォンシュオン! ライドゥ!
勇者「すっげー! 回るよ! 音が出るよ! 光るよ!」 きらきら
  貴族の娘「ねぇねぇ、あれ?」
  貴族の息子「そうだろう」
勇者「ん?」
 貴族の息子 じー
勇者「こんにちは?」 ぺこっ
貴族の息子「お前、勇者なのか?」
貴族の娘「勇者なの?」
勇者「うん、そうだけど。この家の子?」
貴族の息子「そうだ。領主の跡取りだ、偉いんだぞ」
貴族の娘「わたちは姫なのよ」
勇者「そうなんだー。おれ勇者。よろしくねっ」
貴族の息子「ふぅん」じろじろ
貴族の娘「勇者は無敵って、本当?」

481 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 22:57:05.76 ID:8sofY9MP
勇者「えーっと、強いよ。うんっ」にこぉ
貴族の息子「本当かよ?」
貴族の娘 くすくす
勇者「え?」
貴族の息子「ちょっと向こう見てみな、お前」
勇者「うん」くるっ
ゲシッ! ボカッ!!
貴族の息子「うわー! 本当だ!」
貴族の娘「すっごーい!!」
勇者「い、痛いな。何するのさっ!!」
貴族の息子「剣が刃こぼれしてるよ!」
貴族の娘「ほんとだ、ほんとー!」
勇者「なにするんだよっ」
貴族の息子「怒るなよ。良いじゃないか、怪我しないんだから」
貴族の娘「身体が鉄なんでしょ?」
勇者「違うよ。ちゃんと痛いよっ」
貴族の息子「血も出て無いじゃないか」 蹴りっ
勇者「あぅっ」
貴族の息子「わ、すげー! “がちん!”だって」
貴族の娘「ほんと? ほんと?」
勇者「なんで痛くするんだよっ」
貴族の息子「訓練だよ。兵士はみんなやってるだろう?」
勇者「俺は兵士なんかじゃないよっ」
貴族の息子「兵士だろ? 父様が言ってたぞ」

484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 22:58:15.66 ID:8sofY9MP
勇者「違う。おれは勇者だもんっ」
貴族の息子「給料が要らないから便利、なんだよな」
貴族の娘「ねー?」
勇者「……ちがうもんっ」
貴族の息子「ふーん。つまんないのっ」
貴族の娘「田舎者ねー。言葉が通じないわ」
勇者「通じてるよ」ぶんぶんっ
貴族の息子「何かぶひぶひ聞こえるねー」
貴族の娘「豚さんじゃないわよ。豚さんはもっと可愛いもの」
勇者「っ!」
貴族の息子「しーらない。おい、勇者、ここ、片付けておけよ。
 あと、いくら金に困ってるからと云って盗むなよ」
貴族の娘「着てる服も、ぼろぼろだもんねぇ」
勇者「〜〜っ!」
がちゃっ
  貴族の息子「全然言い返せないの。弱虫だ」
  貴族の娘「勇者なんて、ただの田舎者ねー」
勇者「……」
かちゃ、かちゃ
勇者「……」
かちゃ、かちゃ
勇者「馬鹿は相手にしなーい。じいちゃんも云ってたもんね。
 そんなの予想済みだもんねーだ。ばーやばーや。うんこたれー」
かちゃ、かちゃ
勇者「お掃除、片付け。おけー」 ぐいっ

488 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 23:04:02.84 ID:8sofY9MP
――14年前、夏、ある領主の館、廊下
がちゃ。かつーん、かつーん。
勇者「じじーの話は終わったかな。おなかへっちゃったよ」
かつーん、かつーん。
勇者「でも、も、いいや。……早く帰ろう。
 森で修行してたほうが楽しいや。
 貴族の子供って、うるさいし、偉そうだし。馬鹿ばっかりじゃん」
    貴婦人「ええ、先ほどお目にかかりましたわ」
    若い貴族「ほほう」
    貴族の女性「どうでした? 勇者とやらは」
勇者「あ! さっきの綺麗なお姉さんだ♪」
    貴婦人「気持ち悪い。見られただけでぞっとするわ。
     あの黒く磨いたような髪の色。あんなに幼いのに
     二十四音呪を全て使うそうですよ?
     湖の国の魔法学院であれば八の呪をこなすだけで
     教授として迎えられるほどの難関詠唱魔法を」
    若い貴族「それはそれは」
勇者「え……」
    貴婦人「見た目は子供ですけれど、とんでもない。
     こちらの頭の中も服の中までも見通されているのかと
     思うと怖気がとまりませんわ」
    若い貴族「ははは、気にしすぎですよ。
     あれは、王の使う強大な軍事力の1つに
     過ぎないんですから」
    貴族の女性「でも、気持ちは判りますわ」

489 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 23:05:59.09 ID:8sofY9MP
    貴婦人「ええ。考えてもご覧なさい。
     一緒の部屋に自分を一瞬にして
     氷付けにもで消し炭にでも出来るような怪物がいるのよ。
     自分の命も尊厳もそいつの言いなり、指先1つ。
     幼い姿をしていてもそんな存在は、怪物よ」
    若い貴族「確かにそうかもしれないな」
    貴族の女性「わたし達は遠慮して正解でしたね」
勇者「――」
    貴婦人「にこにこと人間のように喋って……
     わたしはダメ。一緒の部屋にいただけで気が狂いそう」
    若い貴族「ははは。これは嫌ったものだ。
     憂さ晴らしに葡萄酒でもどうです? 梢の荘園を
     もつ叔父から素晴らしい一品が……」
かつん、かつん、かつん
勇者「――」
勇者「……ぽんぽこぴーの。……ぽんぽこぴー。
 一般人なんてぽんぽこぴー……♪」
がちゃん。ざっ
老賢者「おろ?」
勇者「あ! じじー。もう話し終わったのかっ? 帰るか?」
老賢者「うむ、そうじゃの。疲れたわい」
勇者「おれもだよー。やっぱ森がいいね」
かつん、かつん、かつん
勇者「……」
老賢者「……」
勇者「あのさ。じじー」
老賢者「なんじゃ?」
勇者「期待なんてするもんじゃないね」
老賢者「それに気が付くとは、成長したではないか。勇者よ」

513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 23:47:39.25 ID:8sofY9MP
――開門都市、城壁を囲む聖鍵遠征軍、陣地後方
光の銃兵「王弟元帥だっ! 王弟元帥の軍が戻られたぞっ!」
光の槍兵「聖王国の王弟元帥、総司令官だっ!」
カノーネ部隊長「王弟元帥の軍が戻られた!
 これで食料が手に入る!」
カノーネ兵「なんと、王弟元帥の軍は、
 一戦もせずに無傷で食料を手に入れて戻られたらしいぞ。
 流石希代の名将だ。敵さえもその意の前にはひれ伏すという!」
 「王弟元帥っ!」 「王弟元帥っ!」 「元帥万歳っ!」
王弟元帥「現金なものだ」
参謀軍師「それが民草というものです」
聖王国将官「いかがしましょう」
 光の銃兵「王弟元帥万歳!」
 光の槍兵「ばんざーい!!」
王弟元帥「食料馬車50台分を振る舞え。
 医薬品は全て我が軍の天幕へ。
 残りの食料は2/3を灰青王へと届けさせろ。
 1/3は我が軍で押さえておけ」
参謀軍師「そんなにも灰青王へと送って平気なのですか?」
王弟元帥「やつは無能な男ではない。
 上手く配分して長持ちさせるだろうさ。それより問題は後方だ」
参謀軍師「はっ」
聖王国将官「謎の軍によって、我が軍の後方陣地および
 食料集積地点が強襲されている問題ですね」
王弟元帥「残りはいくつだ?」
参謀軍師「現在はすでに残り3かと」
王弟元帥「もはや無いな」
聖王国将官「え?」
王弟元帥「この時点ですでに落ちているだろう」

516 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 23:49:36.52 ID:8sofY9MP
参謀軍師「敵の軍とは……?」
王弟元帥「それは判らぬな。しかし、ここは魔界だ。
 あの都市で打ち破ったという敵の軍勢六万が
 魔界の軍の全てなどと云うことはあるまい。
 未だに十万、二十万の軍を保持しているはずだ。
 今までその軍が出てきていないのは、
 ただ単純に氏族間の力関係の問題であるか、
 集合に時間が掛かっていると云うことに過ぎないのだ。
 また、如何に宗教的な聖地であるとはいえ、
 1つの都市を守るために割ける防衛力には、
 自ずと価値的な限界があるという事実を示唆するともいえよう」
参謀軍師「はっ」
王弟元帥「あるいは……」
聖王国将官「あるいは?」
王弟元帥「可能性は濃いとはいえないが、人間か」
聖王国将官「人間と云いますと」
王弟元帥「南部連合だ。
 南部連合が、魔族の援軍に立つと決めた場合、
 その侵攻ルートからしても聖鍵遠征軍の後衛地は
 全て撃破されるだろうな」
参謀軍師「……ふむ」
伝令兵「伝令です! 王弟元帥閣下!!」
王弟元帥「なにごとだ?」
伝令兵「はっ。本陣後方、つまり南方から接近中の軍有り。
 距離はまだ10里ほどあるはずですが、その数おおよそ4万弱。
 王弟元帥閣下におかれましては、食料調達の遠征より戻られ
 お疲れかとは存じますが、麾下三万を率いて、この軍勢4万に
 当たって頂くようにとの、大主教猊下からの仰せです」
参謀軍師「統帥権は王弟閣下にあるのだぞっ」
聖王国将官「4万……」
王弟元帥「しかし防がぬ訳にも行かぬだろうさ。
 都市攻略にかかり切りの灰青王の軍では再編成が間に合わぬ。
 となれば仕方があるまい。
 行くぞっ! 至急前線の決定と周辺索敵、
 そして軍議の準備をせよっ!」

517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 23:51:19.69 ID:8sofY9MP
――開門都市、城壁を囲む聖鍵遠征軍、豪奢な天幕
           ……ォォン!
           ……ドォォーン!
伝令兵「王弟元帥閣下、軍を返し最後尾警戒に入られました。
 元帥閣下は早くも前線司令部として天幕を設営、
 周辺に灌木を用いて防御柵を作られております」
従軍司祭長「わかった。何か変事があれば、即座に知らせるが良い」
伝令兵「はっ! 承りました」
           ……ォォン!
従軍司祭長「王弟元帥閣下であれば
 後方の守りは盤石でありましょう」
大主教「丁度良い時に帰ってきた。有能な男よ」
従軍司祭長「はい」
大主教「これもやはり精霊の導き。天意は我にあり」
ころり。ころり
従軍司祭長「そ、その……。大主教、猊下?」
大主教「どうした?」
従軍司祭長「目の……瞳の治療をされねば……」
大主教「よいのだ。ふふふ。
 我らが光の子の同胞、前線の兵士達が
 その命を掛けて戦っている……。
 われも相応の痛みをともにせねばな。ふっふっふっ」
百合騎士団隊長「そのお心、感じ入ります」

518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/11(日) 23:52:31.44 ID:8sofY9MP
大主教「ふふふ。それに、われにはもはや俗世の視力など
 必要はない。常に精霊の導きを見ることが出来るゆえ」
従軍司祭長「で、では、せめて包帯を」
大主教「好きにいたせ」
百合騎士団隊長「私がやりましょう」にこり
従軍司祭長「あ、ああ……」
大主教「ふふふ。さて、隊長よ、あちらの準備はどうだ?」
百合騎士団隊長「ええ、大主教猊下。機は熟しました」
従軍司祭長「……?」
大主教「防壁は、崩れそうか?」
百合騎士団隊長「灰青王様の言葉によれば、
 もはやひびの入った欠陥品とのこと。
 巨大な鉄槌の一撃あれば卵の殻のように砕け散りましょう」
大主教「任せる。好きなようにせよ」
百合騎士団隊長「有り難き幸せです」とろん
従軍司祭長「……」
           ……ォォン!
           ……ドォォーン!
大主教「後方を王弟元帥が固めている間に」
百合騎士団隊長「承りました」
従軍司祭長「何を……?」
百合騎士団隊長「精霊の子らの献身を届けるのです。光の根源に」

521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 00:08:48.63 ID:fsI5836P
――地下城塞基底部、地底湖
ピィピィピィ! ピィピィピィ!
女魔法使い「うるさい……」
明星雲雀「起きて、起きてご主人。寝ている間に終わっちゃう」
女魔法使い「……」
明星雲雀「ご主人ぼろぼろ」
女魔法使い「……すぅ」
明星雲雀「起きて! 起きてご主人!」
女魔法使い「……揚げちゃうぞ」
明星雲雀「ピィピィピィ! 虐待反対動物愛護!」
女魔法使い「……」
ふわり
メイド長「魔力回路のチェックはただいま急がせています」
明星雲雀「ピィピィピィ!」
女魔法使い「……助かる」
メイド長「あらあら、まぁまぁ」
明星雲雀「揚げられちゃうよ! 食べられちゃうよ!」
女魔法使い「……“捕縛式”」
明星雲雀「ピギャン!」
メイド長「女魔法使い様」
女魔法使い「……?」
メイド長「僭越ながら、お手当を」

522 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 00:11:52.46 ID:fsI5836P
女魔法使い こくり
メイド長「では、包帯を巻きますので」
女魔法使い「聞かないの?」
メイド長「……」
女魔法使い「この両手の平の刻印を」
メイド長「聞いて宜しいのですか?」
女魔法使い「……」
メイド長「……」
女魔法使い「……」
メイド長「仰る必要はありませんよ」
女魔法使い「……必要だから」
メイド長「はい」
明星雲雀「ピィピィ!」 バタバタ
女魔法使い「騒がしい」
メイド長「18小隊のメイドゴーストを配置しております。
 まもなく、回路の断線部分は全てリスト化されるでしょう。」
明星雲雀「わたしが修理しますよ。するんだったら!」ばたばた
女魔法使い「させる。鳥に」
メイド長「はい」
明星雲雀「わたしは専用なんですからねっ」
女魔法使い「……態度が大きい」
明星雲雀「ピィピィ! 主人、仕事をとってはダメですよ」
女魔法使い「……判ってる」

527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 00:18:16.65 ID:fsI5836P
――火焔山脈、紅玉神殿、あてがわれた官舎
カツーン、カツーン
辣腕会計「15番から42番までは小麦」
中年商人「小麦確認。よーっし」
同盟職員「こちらも合致ー」
辣腕会計「ふぅ。欠品は無いようですね」
中年商人「ああ。それにしても。だが」
同盟職員「お茶でも持ってきましょうか?」
辣腕会計「ああ、頼む」
中年商人「街では今頃激しい戦闘だろうな」
辣腕会計「そうですね」
中年商人「俺たちはこうして倉庫の資材管理かー」
辣腕会計「これも大事な仕事ですよ」
中年商人「それにしても、この量はなんだ?
 『同盟』はこれほどの物資を開門都市に集めていたのか?
 どうやって運び出したんだ?」
辣腕会計「これは火竜大公の個人財産ですよ」
中年商人「個人財産!? 馬鹿いえ、べらぼうな量の小麦だぞ。
 俺は魔界でこんな量の小麦を見たのは初めて。
 いや、魔界ってそもそもこんな量の小麦がとれ」
ガチャ
青年商人「ご無沙汰してますね」
中年商人「おい、なんでこんなとこにっ!」
辣腕会計「委員! いつこちらにっ!?」

529 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 00:20:34.38 ID:fsI5836P
青年商人「たった今ですよ。
 転移符のおかげで、身体中痛くてかないません。
 こんなに衝撃があるとは……。
 勇者のはもうちょっと乗り心地が良かったのですが」
火竜公女「お二人の力が必要です」
中年商人「これは姫君」
辣腕会計「やっとこちらへ避難されたのですか?」
青年商人「いや要らないでしょう」
火竜公女「必要です」
青年商人「ここは穏便に三人で話を詰めてですね」
火竜公女「そのような時間的猶予はありませぬっ」
中年商人「どういう事なんだ?」
辣腕会計「さぁ」
ガチャン!! ざっざっざっざっ
火竜公女「お二人もついてきてくださりますよう!」
青年商人「……」じー
中年商人「あの視線はついてくるなって云う意味じゃねぇか?」
辣腕会計「そうですね」けろり
中年商人「結構趣味悪いな、お前さん」
辣腕会計「口に出して再度要請しないと云うことは、
 “ついてきて欲しくはないが、止めるほどの強い権限はない”
 というところでしょう。で、あれば事態を把握しておく方が
 後々委員のためにもなるかと考えます」
中年商人「ものは言いようだな」
辣腕会計「内勤が長いとは言え、わたしも商人ですから」
中年商人「違いない」

531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 00:25:15.84 ID:fsI5836P
――火焔山脈、紅玉神殿、大公の部屋
バターンッ!!
火竜公女「父上っ!!」
火竜大公「むぅ、なんじゃ小桜角。騒々しい。
 いったい何時ついたのだ。探させておったのだぞ」ぼふぅっ
  辣腕会計「“小桜角”ってなんです?」
  青年商人「幼名ですよ」
  中年商人「詳しいんだな」
  青年商人「ありがたくないことにね」
火竜公女「結納とはどういう事ですっ!?」
中年商人「はぁぁぁ!?」
辣腕会計「結納っ!?」
青年商人「……」ふいっ
火竜大公「いや、結納とは、結婚を望む殿方の家から
 花嫁の家に送られる支度金の一種じゃな」
火竜公女「そのような蘊蓄を聞いているわけではありませんっ!」
火竜大公 ちらっ
青年商人「ふぅ……」
火竜大公「そこなる男から、送られてきてな」
火竜公女「それは聞きました。わたしがお聞きしたいのは、
 なぜわたしの意志も確かめずにそのような
 仕儀となったかと云うことですっ」
火竜大公「それこそ、二人で話合えば済む問題ではないか」