Part9
691 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 20:58:39.54 ID:5kaffl9OP
火竜大公「貴様もだ! 貴様も魔王様直属の執行官で
あるのならば、人間どもに奪われた魔界の都市を
奪い返すのが筋という物であろうにっ!」
勇者「それは云うとおりなんだけどさ」
火竜大公「何を躊躇う。人間を皆殺しにすべきではないかっ!」
勇者「とりあえず、魔王は『開門都市』奪還の命令を
発してはいないんだよ」
火竜大公「魔王がふぬけなのだ!
わが竜族から魔王が出ていれば、あのような柔弱な弱腰の
魔王などいただかぬでもすんだろうにっ」
勇者「つまり、魔王に弓引くのか?」
火竜大公「……」
勇者「それは盟約に背くよな。さんざん諸侯が争って
滅亡寸前まで何回も行った魔界が、なんとかやっと
つくった協定らしき協定だもんな」
694 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 21:07:55.39 ID:5kaffl9OP
火竜大公「魔王は『開門都市』奪還の命令を発してはいない」
勇者「うん」
火竜大公「だがしかし、禁止の命令を発したわけでもない」
勇者「あー。気がついちゃってるよ、このおっさん」
火竜大公「諸侯に檄を発して、魔王の名をかたり
『開門都市』奪還を目指すなら、それは盟約に触れようが
我が部族だけで向かうのであれば、
それは王である私の決定だ。
誰に口を挟まれる云われもないっ!」
勇者「俺に勝てればな」
火竜大公「ならば殺すが良いっ!
魔界の溶岩の中で生を受けた火竜大公、逃げも隠れもせんっ!」
勇者「なんかもー。難しいなぁ。
気に入らないヤツ、刃向かうヤツをかたっぱしから
ぶっ飛ばせた勇者生活が懐かしい……。
あの頃は殺さないように話をまとめる苦労なんて
全然しなかったぞ……」
697 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 21:15:45.78 ID:5kaffl9OP
勇者「火竜大公」
火竜大公「何だ、黒騎士」
勇者「では、俺があの街に先乗りをしよう」
火竜大公「……」
勇者「あの街、『開門都市』は
魔族があがめる片目の神の聖地だ。
そこを人間に支配されるのは苦痛だろう。
それは判る。しかしまた、その聖地の守りを忘れ
人間世界を攻めるに酔っていた竜族の罪もあると知れ」
火竜大公「それは……」
勇者「言い訳無用。……人間が憎いのは判るが
あの都市は彼らが戦争で奪ったのだ。
争いの勝者は神聖だ。その魔界の不文律を忘れるな。
特にその敗北が油断から成されたのなら、なおさらだ」
火竜大公「……ぐぐ」
701 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 21:21:37.65 ID:5kaffl9OP
勇者「それに、火竜大公の軍で攻めたところで
あの街はこの魔界で唯一人間が暮らす街だ。
たやすく奪還できるとはかぎらない。
精鋭たる聖鍵遠征軍が守っているのだからな。
悪くすれば、火竜の民は全滅だ。
それを望むのか、火竜大公」
火竜大公「そのようなこと、やって見ねば判らぬ!」
勇者「次の春まで時間をくれ」
火竜大公「……」
勇者「黒騎士が、魔王の名にかけて誓おう。
『開門都市』を取り戻し、魔王の直轄地とする」
火竜大公「魔王の、直轄地に!?」
勇者「火竜の一族の関心は誇りだろう?
魔王の軍勢が取り戻し、直轄地になるのであれば
問題なかろう。魔王はその柔弱という評判を払拭できる」
703 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 21:25:30.11 ID:5kaffl9OP
火竜大公「しかし、もし約束をたがえれば」
勇者「そのときは魔王がまさに弱腰と云うことだろう」
火竜大公「容赦はせぬぞ?」
勇者「ああ、魔王は魔王にふさわしくない。
そのときは魔王の位を譲り渡そう。黒騎士が約束する」
火竜大公「……」
勇者「どうだ?」
火竜大公「よかろう」
勇者「おー! よかった」
火竜大公「おぬしには男気がある! だれか、だれかある
公女を呼んで参れ!」
火竜公女「おとうさま、私はここに」
勇者「えーっと」
火竜大公「約束を見事果たした暁には、この公女を
くれてやる! 妻にでも妾にでもするが良い! がはははは」
718 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 21:34:44.87 ID:5kaffl9OP
――冬越しの村、村はずれの屋敷
魔王「こっ、これでいいかの?」
メイド長「ええ。あらあら、まぁまぁ。見違えましたね」
魔王「何だ、そのコメントは」
メイド長「勇者様がいなくなってから
まったくお召し物に頓着なさいませんでしたからね」
魔王「『いなくなって』などと不吉なことを云うな。
ちょっぴり出張しているだけではないか」
メイド長「ええ、もちろん。まおー様が捨てられた
女であるかのような印象を持たれてしまったのならば
その誤解、このメイド長一生の不覚ですわ」
魔王「……」
メイド長「今日は綺麗ですよ、まおー様」
魔王「むぅ。釈然としない」
メイド長「とはいっても、交渉事ですからねぇ。
多少は見栄えを良くしないと」
720 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 21:41:44.31 ID:5kaffl9OP
魔王「それにしても、なんというか」
メイド長「?」
魔王「ちょっとビラビラしすぎではないか? このドレス」
メイド長「素敵ですよ?」
魔王「それに襟ぐりが随分深いような気がする」
メイド長「それくらいがお洒落なんですよ」
魔王「ううう」
メイド長「みっともない駄肉なので恥ずかしいですか?」
魔王「ええーい、うるさい! そ、そんなに駄肉ではない!
女騎士殿もグラマーですとくれたし、みなそういってる。
ちょっぴり母性的なだけではないかっ」
メイド長「人格的母性のない肉を駄肉というのです」
魔王「ううう。今日のメイド長は厳しい」
メイド長「ちょっと気が立ってるんですよ。
警備体制を整える関係で」
魔王「どうなっている?」
722 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 21:49:36.34 ID:5kaffl9OP
メイド長「妖霊と夜精霊を配置しています。
まぁ、軍でも出てこなければ充分でしょうが……」
魔王「心配か?」
メイド長「相手が貴族や軍人ならばともかく、
『同盟』の商人ですからね。その点に関しては
まおー様におまかせするしかないわけで」
魔王「信用なさ過ぎだな、わたしなのか」
メイド長「いえ、お手伝いできないことが不安なのです」
魔王「しかたない。これは避けては通れない関門なのだ」
メイド長「せめて勇者様がいてくだされば」
魔王「勇者に役目が渡るとすれば、それは交渉が
失敗した時だからな。そうなったら逃げる段階だ。
だから意味はない」
メイド長「あんまり強がると殿方は不安だそうですよ」
魔王「へ?」
725 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 21:55:31.94 ID:5kaffl9OP
メイド長「まぁ、それはいいですわ」ひらひら
魔王「あしらうな」
メイド長「そろそろでしょうか」
メイド妹「お客様を客間にお通ししました〜。
いまお姉ちゃんがお茶を入れてます〜」
メイド長「語尾を不必要に伸ばさない」
メイド妹「はーい♪」
メイド長「まおー様? 準備はよろしいですか?」
魔王「ああ。このボタンをはめてはダメなのか?
メイド長「そのボタンは飾りボタンです。
はめる目的ではありません」
魔王「上から実験用の白衣を羽織るとか! 学者らしく!」
メイド長「お笑い芸人じゃないんですから」
メイド妹「当主様、おっぱい格好いいよ♪」
メイド長「まったくこの娘は。さぁ、まおー様」
魔王「ああ、しかたない。出陣だ!」
727 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:02:32.75 ID:5kaffl9OP
――冬越しの村、客間
かちゃり
青年商人「やぁ、これは!」
辣腕会計「ほほう」
魔王「お待たせして済まないな。私がこの館の当主
といっても無位無冠の学士だ。紅の学士と呼んでくれ」
青年商人「はじめまして。私は『同盟』の南氷海西方を
担当しております青年商人です」
辣腕会計「今回のご挨拶に動向させていただいた
会計でございます。以後、お見知りおきを」
魔王「いや、ご丁寧なご挨拶、痛みいる」
青年商人「正直驚きが隠せません! 学士にして発明家
農業への造詣も深いとのことで、
言葉は悪いですが、ご高齢の老師かと想像していたのですが
こんなに麗しいご婦人にお目にかかる事ができるとは!」
730 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:08:18.18 ID:5kaffl9OP
魔王「そんなに褒められては何を話して良いのか、
言葉を失ってしまいますな」
青年商人「いえいえ、学士様はその英知だけでなく
美しさでも我らに光を与えてくれるようですよ」にこにこ
メイド長(商人のお世辞とはいえ、すごい威力ですね)
魔王「交渉を有利に進めようと思う女の浅知恵だ
どうか笑って許して欲しい」
メイド長(おお。まおー様。気合いの入った防御ですねー)
青年商人「いえいえ。……あのような羅針盤を送られては
駆けつけないわけには参りませんよ」
魔王「それにしては一月もの時間がかかったのは?」
青年商人「ははは。これはお恥ずかしい。
私のような駆け出しの商人が、『同盟』において
今回のような大規模な案件をこなすにあたっては
様々に根回しが必要でして」
辣腕会計「お待たせして申し訳ありません」
732 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:14:09.35 ID:5kaffl9OP
魔王「さて、では交渉に入りたいと思うのだが
まずはこれを見て欲しい」
青年商人「これは……?」
辣腕会計「穀物ですか? 見たことはありませんが」
魔王「これは玉蜀黍という植物だ」
青年商人「ほほう」
辣腕会計「玉蜀黍、ですか」
魔王「この食物の特性については、
こちらの書類にまとめてある。
これはお持ち帰りいただいて結構だ。
いまとりあえず、この場では口頭にて説明させて
いただこう」
青年商人「窺いましょう、学士様」
魔王「この玉蜀黍は一年草でな。最大の特性は水が
少なくとも順調な生育が望めることだ。むしろ水が多い
場合は生育に悪影響がある。もちろん最低限の水分は
必要だがな。発芽の温度として30度が必要となる」
青年商人「30度、ですか」
辣腕会計「かなり高い温度ですね」
734 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:19:17.89 ID:5kaffl9OP
魔王「ああ、そうだ。小麦とはまったく栽培の思考を
切り替える必要がある」
青年商人「ふむ」
魔王「つまり、この玉蜀黍は、いままで植物の耕作に
適さないとされていた大陸中央部の荒れ地に
ふさわしい作物なのだ」
青年商人「……」
魔王「食用として利用する場合は、完全に完熟させて
乾燥させた粒を製粉してパンのようにすることも出来るし、
饅頭のようにすることも出来よう。
この粉には香ばしくてわずかな甘みがある。
乾燥させることにより、貯蔵、保管にも優れている。
畜産のための飼料としては、
大麦やカブの数倍の効率が見込める」
魔王「また、食用外への利用も幅広い。
油分の多いこの食物は、油を取り出すことが可能だ」
青年商人「……油ですか」
辣腕会計「……」
魔王「うむ。玉蜀黍馬車一台あたり、ビン二本ほどだがな。
しかも、この油は製粉するのと同時にとることが出来る。
つまり、両方取れると云うことだ。
油は食用に用いることはもちろん、様々な用途で使えよう」
736 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:25:56.13 ID:5kaffl9OP
青年商人「たしかに……。油の需要は年々増える
傾向があります。『同盟』でもとりあつかっていますが」
魔王「商人どの、これは新しい商売の形だと考えて欲しい」
青年商人「……」
魔王「確かに巨大な資本が必要だ。
その資本をもちいて、いまは全く役に立っていない荒野に
人を送り、バックアップすることにより開拓を行なう。
玉蜀黍を栽培するための開拓村だ。
まったく開拓されていない場所は確かに開拓に
手間も資本もかかろうが、その分、計画的に物事を
行なうことが可能だ。整地して区画整理を行なった
農地での大規模栽培は、現在中央大陸の各所で見られる
ような小さな農地でモザイクになってしまったような
農場による農業より遙かに集約的な体制での
栽培を可能にするだろう」
魔王「しかも、そこで新しくできた開拓村は
完全に『同盟』の影響下にある巨大な市場になるだろう。
玉蜀黍以外の作物を始め、木材や塩、鉄、布、
ありとあらゆる消費物を購入する新しい顧客となる」
青年商人「……」
739 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:31:01.22 ID:5kaffl9OP
青年商人「それは、つまり……」
辣腕会計「……」
青年商人「商品でも、栽培方法でもなく
『同盟』に、新しい『概念』を売る、と?」
魔王「そうだ」
青年商人「判ります。私には。
……いまの話を聞きましたから、その価値が判ります。
貴女の言葉は……。
この中央大陸の都市の全てより……。
いや、既知世界の全てよりも金になる」
魔王「あははは。良い顔だな」
青年商人「はい?」
魔王「女におべんちゃらを言っておる時より数段良い」
青年商人「そうですか? まぁ、しかし。
いまの話を聞いては真面目にならざるを得ませんよ。
しかし良いのですか?」
魔王「なにがだ?」
741 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:35:38.45 ID:5kaffl9OP
青年商人「いまの言葉、そして送っていただいた羅針盤。
すべて『考え方』を基本にしたものです。
技術でも品物でもない。
つまり、複製できない物ではない」
魔王「そうだな」
青年商人「私たちがそれらを複製して、貴方とは無関係に
計画を進めるとは考えないのですか? 貴方の利益は?
貴方の権利をどうやって守るつもりなのですか?」
魔王「それについては諦めておる」
青年商人「はい?」
魔王「技術も品物も素晴らしい。利益も結構。
私もお金はあれば欲しい。
研究したいことがたくさんあるからな。
しかし、単一技術や独占可能な品物では、
この世界に与える影響は限定されざるを得ない。
必要なのは転換と突破だ」
辣腕会計「それは神学的な話でしょうか?
複雑すぎて、判らないのですが」
青年商人「……」
742 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:39:04.44 ID:5kaffl9OP
魔王「そちらの商人の方は判っているようだ」
青年商人「……」
魔王「どうした?」 青年商人「だとすれば……貴女は……」
魔王「……」
青年商人「選ぶ必要が、あると?」
魔王「選びに来たのだろう?
交渉という言葉の意味はそれだと心得ている」
青年商人「しかし、それは。貴女は何を望んでいるんですか?」
魔王「戦争の早期終結」
青年商人「……」
魔王「しかも、その形は勝利でも敗北でもない
形態でなければならない」
青年商人「……それは」
魔王「『同盟』が魔族との大戦における、中央大陸最大の
スポンサーだと云うことは心得ている」
744 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:43:56.82 ID:5kaffl9OP
青年商人「魔族は人類の敵です。魔族との戦いに
人類陣営の一翼である我らが全てをなげうって
協力するのは至極当たり前のことではありませんか」
魔王「それは公的な見解であろう」
青年商人「正式見解です」
魔王「高きと低きを、北と南を、炎と氷を、
相容れない光と影を仲介し、妥協し、取引することで
利益を上げるのがお主ら商人ではないか?」
青年商人「あ、貴女は……」
魔王「なんだろう?」
青年商人「『同盟』の味方ですか、敵ですか?」
魔王「取引相手だ」
青年商人「……っ」
メイド長(まおー様〜っ! がんばって!)
749 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:51:37.42 ID:5kaffl9OP
青年商人「私は二つの道のあいだで悩んでいます」ぎりっ
魔王「なにを?」
青年商人「人間として、貴女の先ほどの発言は
裏切り行為です。教会の方針においても異端だ。
私は貴女をこの場で断罪し、告発すべきかもしれない」
メイド長(まおー様、まおー様っ。森の中に
黒装束に黒塗りの剣を持った傭兵団がっ)
魔王(控えておれっ)
魔王「敵と味方の2分割では、
この世界はあまりにも惨めに過ぎよう」
辣腕会計「……部隊の配置が」
青年商人「良い。……試されてるんだね、僕らは」
魔王「……」
青年商人「この先もあると?」
魔王「もちろんだ。大陸中央部の乾燥地帯において
水車の代わりに利用できる『風車』というものも
開発してある。森林資源を消費してしまうが
羊皮紙に変わる新しい筆記資材もめどは立った」
青年商人「貴女は何を見ているんですか?」
753 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 22:57:23.24 ID:5kaffl9OP
魔王「私は学者だが、専門は経済学でな」
青年商人「経済……?」
魔王「耳慣れぬ言葉だろうな。
物と金の流れ、利益と損害、
魂持つものが生み出す社会において
たゆまず流れる交流の歴史と未来がその専門だ」
青年商人「利益と損害、ですか」
魔王「そうだ、商人殿。
商人殿とおなじものを見ているだけだよ」
青年商人「それをもって、人類全てを裏切れと?
この戦争を終結させようとする
貴女の見る夢がどのような色をしているか
判らないわたしではないっ」
魔王「信じている」
青年商人「わたしの。……『同盟』の。
我ら人間の、何を信じると言うのです?」
魔王「損得勘定は我らの共通の言葉であることを。
それはこの天と地の間で二番目に強い絆だ」
756 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 23:00:56.56 ID:5kaffl9OP
青年商人「あはははははは!」
辣腕会計「……商人っ」
青年商人「いや、いいんだ。
そうだ。まさにその通りだ!
人間である前に商人たれ。
教会の敬虔な信徒である前に商人たれ。
まさに『同盟』の訓辞通りじゃないかっ」
辣腕会計「それは……」
魔王「わたしは純粋な契約主義者なのだ」
青年商人「奇遇ですね、わたしもなんですよ。
作りましょう。我らが未来を照らす光となる
契約書を」
辣腕会計「……それでは」
青年商人「ああ、退かせてかまわない」
魔王「冷や汗が吹き出る思いであったよ。商人殿」
青年商人「いやはや。本場の東方商人と渡り合っても、
これほどの緊張感を味わった事はありません。
貴女が学士であり、商人でなくて本当に良かった」
758 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/05(土) 23:07:17.43 ID:5kaffl9OP
魔王「私は無力で腰抜けの存在だよ」
青年商人「いえいえ、王侯貴族だってあそこまでの
迫力はなかなかにある物じゃない」
メイド長(あったり前ですよ。まおー様は
これでも王族なんですからねっ!)
青年商人「それにしても……二番目に強い絆、ね」
魔王「……」
青年商人「玉蜀黍の件はいつうごけます?」
魔王「すまないが、いくつかの実験と、苗の
栽培を残している。動けて次の春から、だろう」
青年商人「充分に早いでしょう。私もこの計画を
聞いたからには『同盟』内部での地盤を
固めなくてはならない。
この巨大利益です、動かすことはたやすいが
コントロールが聞いてこその権力ですからね」
魔王「あの羅針盤が役に立ってくれれば良いな」
青年商人「せいぜい、利用させていただきましょう」