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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part88


210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/05(月) 23:42:15.72 ID:O8aL4rAP
獣人軍人「われら衛門の一族は自由を尊ぶ一族であるか」
副官「そうですね」
人間職人長「それはそれで仕方ないでしょう」
火竜公女「出来れば今すこし余裕を持った
 やり方を選択したくはありましたが、詮方ありませぬ」
副官 ぐるり 「各々がた、よろしいな」
人間職人長「……」 人魔商人「……」
獣人軍人「……」 人間長老「……」
副官「では、我々自治委員会はこの事実をつつみ隠さず
 全ての市民に公表したく思います。
 その上で、抗戦か、降伏か、交渉か、その意見を募りたい。
  議論の期限は三日としましょう。
 その議論の中で逃げ出すものも、人間の軍に降るものも
 いるかも知れませんが、それはそれで、仕方がない」
獣人軍人「とうてい賢いとは云えませんが、仕方ないでしょうね」
人魔商人「魔族には、それぞれ氏族ごとに流儀という物がある。
 流儀を失って賢くあるよりは、衛門の流儀に従おう」
人間長老「異存はありません」
火竜公女 こくり
副官「各々がたも近しい方と十分の論議をして頂くことを
 望みます。どのような結果になってもそれは自分たちが
 選んだと思えるように」
人間職人長「今度は口が裂けても“選択の余地が無く
 捨てられた”などとは言いたくないものだ。
 捨てるにせよ、護るにせよ、それは我らが決めることなのだから」
火竜公女「願わくば、我らが行く手に、碧の光のあらんことを」

227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 00:10:46.78 ID:bGZgmCoP
――遠征軍、奇岩荒野、野営地中央、豪奢な天幕
王弟元帥「では、勇者の無事の帰還と、その武勇を称えて!
 またこたびの遠征の輝かしい勝利と我らが凱旋を願い、乾杯」
参謀軍師「乾杯!」 聖王国将官「乾杯!」
灰青王「乾杯!」 百合騎士団隊長「乾杯!」
大主教「……精霊の恵みを」 従軍司祭長「我らに光を」
勇者「これ美味いな!」もぐもぐ
王弟元帥「勇者は本当に健啖だな」
灰青王「うむ、一人前の英雄とはかくあるべしだ」
勇者「いや。すまないな。こんなに大食いで。
 思うに魔力の上限が高いと、その補充のために
 食うようになる気がする」
王弟元帥「ふむ、興味深いな」
参謀軍師「勇者殿。これは霧の国産の葡萄酒ですぞ」
勇者「いただきまっすっ!」
聖王国将官「勇者が見てくれている大隊は、他の大隊と比べて
 底なし沼にはまり込んだり、魔物に襲われたりして出る被害が
 二桁も少ないのですよ。本当にありがとうございます」
勇者「いやいや。みんなを護るのも勇者の役目」
大主教「……」
従軍司祭長「……猊下、あの青年はもしや……」
大主教「……」
勇者「あったりまえのことですから」えへん
王弟元帥 ちらっ
大主教「――」

228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 00:12:41.34 ID:bGZgmCoP
灰青王「それに、感心したのはあれだ」
参謀軍師「おお!」
聖王国将官「あれですな」
灰青王「うむ。あれだけの野生馬の大群、
 どのように呼び寄せたのだ? まるで魔法のようだったが
 あのような技は知られてはおらぬだろう」
勇者「あー。あれは、夢魔鶫がね」
参謀軍師「つぐみ?」
勇者「いや。あー。たまたまあのあたりに
 野生馬の群がいたのを知っていたのと、あとは勇者魔法だよ。
 あそこの馬は野生で小型だから軍馬には向かないけれど
 荷馬にするには十分だろう?」
王弟元帥「うむ、早速感謝の言葉が諸侯から届いている」
参謀軍師「ええ、これで荷運びが随分と楽になりますからね」
聖王国将官「傷病者の運送もだ」
勇者「はっはっはっ。大したことはないのだぜ」
王弟元帥「大主教猊下。ぜひ猊下からも、この光の子に
 暖かきお言葉を賜れないでしょうか」
大主教「……百合の」
百合騎士団隊長「はっ、猊下」
大主教「勇者に杯を取らせよ」
百合騎士団隊長「畏まりましたっ」

229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 00:14:01.95 ID:bGZgmCoP
百合騎士団隊長「勇者殿、猊下からの杯です」すっ
勇者「えーっと」どぎまぎ
百合騎士団隊長「さぁ」
王弟元帥「照れているのか、勇者?」
聖王国将官「百合騎士団の団長は、大陸でも有名な美姫ですからね」
勇者「いや、そういうわけではないですよ?」
百合騎士団隊長「さぁ」にこり
王弟元帥「ふっ。隅に置けぬな」
勇者「いえいえ、では頂きます。ははっ」
百合騎士団隊長「お注ぎしましょう」
大主教「……」
王弟元帥(なんだ、この重苦しさ……)
勇者「いや、綺麗な色ですね! これはどこのお酒ですか?」
従軍司祭長「教会直轄領において、乙女が一粒づつ手詰みを
 して作る最高級の琥珀葡萄酒ですな」
勇者「貴重な物なんですねっ!」
百合騎士団隊長「猊下のおこころざしです、さぁ」
王弟元帥(……何か、あるのか?)
勇者「いっただっきまーす!         “消毒呪”」
大主教「……」じぃっ
勇者 ごっきゅんごっきゅん 「美味いっす!」

230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 00:15:56.66 ID:bGZgmCoP
ばさり
料理人「閣下、お持ちしても宜しいでしょうか?」
参謀軍師「うむ、持ってきてくれ」
勇者「お!」
がたり!
料理人「さぁ、どうぞ! 勇者様! こいつはとびきりですよ」
勇者「ありがとうな、料理人! それから牛追いの皆にも礼を」
料理人「いえいえ、とんでもない。光栄なことです!
 こんがり焼き上げた仔牛の丸焼きですよ、
 こいつを作るのにはたっぷり丸一日かかるんでさぁ。
 腕によりをかけたんで、美味しく食って下さい!」
王弟元帥「ん? 料理人と知り合いなのか?」
勇者「いや、数日前に」もぐもぐ 「河のところで、
 香辛料が濡れちまうって云ってたから、少し助けただけ」
参謀軍師「そうでしたか。ああ! 湖面が凍り付いて
 渡河が非常に早く終わったことがあったというのは」
聖王国将官「勇者殿の器の大きさを感じさせますな」
灰青王「ふぅん」にやり
大主教「……勇者」
勇者「はいな?」 もぎゅもぎゅ

233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 00:17:28.99 ID:bGZgmCoP
大主教「そなたの武勇と献身を光の精霊はご寵愛下さる」
勇者「……そうかなぁ。
 いつも泣きそうな顔してない? あのひと」
百合騎士団隊長「……っ!?」
従軍司祭長「……っ!!」
勇者「いえ、すいません。で?」
大主教「どうだろう、そなたに聖別を施したいのだが」
  勇者(小声)「すまん。聖別って何?」
  参謀軍師(小声)「この場合は聖職者として
   迎えたいという意味ですね」
勇者「あー。無理」ぱたぱた
従軍司祭長「……っ!」
百合騎士団隊長「勇者殿、猊下のお誘いをっ」
勇者「いや、それは、その。すごく有り難いのですが。
 猊下ともいらっしゃいますとね、ほら。
 恐れ多いというか、なんというか。
 神々しくて近寄りがたいというか、なんというか
        ……実際はもう売約済みだしね、うん」
従軍司祭長「では、こうされてはいかがでしょう?
 聖別を受けるかどうかはともかく、勇者殿はしばらく
 聖百合騎士団の、天幕で暮らして頂いては。
 身も心も清らかな乙女との暮らしは
 俗界の汚れが落ちると申しますよ」
勇者「うわー」
王弟元帥(どこまで押すつもりなのだ。教会は)

237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 00:20:34.42 ID:bGZgmCoP
勇者「それはその。めくるめく誘惑ですね。えー」
百合騎士団隊長「歓迎いたしますよ?」にこり
勇者「でも遠慮します」
従軍司祭長「なにゆえに?」
勇者「いや、ほら。ね。……勇者なんてやっていると、
 肘までどっぷり血にまみれているでしょう?
 これが俗界の汚れなら、今までの俺の為した所行
 これ全て汚れですしね」
従軍司祭長「それゆえ、清らかな光で贖罪を……」
勇者「それに、なんだかんだ理屈こねたところで、
 これからここにいるみんなで“汚れ”を
 大量生産しに行くのでしょ?
 今から清めたところで、また血を浴びるなら、
 それこそ二度手間じゃないですか。
  口清く“罪は洗い清められた”などと云ったところで
 胸の重しが取れるわけで無し。
 それならいっそ、あの生暖かい、ぬるぬると滑る、
 鉄の香りの後悔と痛みを自覚していたほうが
 まだ両足で立てるかと」ひょい、ぱくっ
百合騎士団隊長「……」
王弟元帥(ふふんっ。小気味の良いことを)
勇者「まぁ、それ以外にも。ほら、自分、今回は
 王弟元帥のところの食客ですからね。
 ずいぶん飯を食わせて貰った義理があるわけで」
王弟元帥「いやいや」

244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 00:23:13.29 ID:bGZgmCoP
勇者「そんなわけで、聖別は遠慮しますが、
 王弟元帥がしばらく教会の生活も味わってみろと
 いうのならばおじゃましますよ。
  俺個人は、職人さんやら料理人のおっちゃんと一緒に
 馬車でゴロ寝旅が良いんですけれどね。
  ですので、俺の寝床については、王弟元帥と相談して
 決めて下されば、それで結構ですよ」
王弟元帥「いやいや、義理堅いな。流石民の規範」
参謀軍師(義理堅い? ……ちがう。狡猾なのだ。
 大主教と王弟元帥閣下の間に自分をぶら下げて
 “欲しいほうが力尽くで取れ”と宣言したに等しいぞ。
 ……閣下は判っているだろうが)
灰青王「ははは。騎士隊長。ふられてしまいましたね」にやっ
百合騎士団隊長「これも、全て精霊の御心。しかたありません」
聖王国将官「勇者ともなりますと、貫禄ですな」
勇者「いやー。旨い飯さえあればどこででも働く男ですよ、俺は。
 世界の平和のために戦っている聖鍵遠征軍の中枢なんて
 こちらが申し訳ないくらいですよ」
王弟元帥「では、この話は我らと猊下で詰めておくとしよう。
 まぁ、そのようなことは些末時。
 勇者、子牛肉が冷めてしまうぞ?」
勇者「お。そうだった。やっぱり王弟元帥は物がわかっているな!」
灰青王「ではわたしもご相伴させて貰おうかな」
勇者「うん、食べよう食べよう。皮のところが美味しいと思うぞ!」
従軍司祭長「……ちっ」

278 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 01:44:18.30 ID:bGZgmCoP
――冬の国、首都冬の都、商人街
のっしのっしのっし
大きな衛兵「ここか?」
ちび羽妖精「ココー」
大きな衛兵「すまん。はいるぞ?」
ガラス職人「いらっしゃいませー」
ちび羽妖精 きょろきょろ
大きな衛兵「主人はいるか?」
ガラス職人「私がそうでございますよ」
ちび羽妖精「ココ、がらすノ瓶ハアリマスカ?」
ガラス職人「わぁっ!?」がたんっ
ちび羽妖精「ワァッ」びくっ
大きな衛兵「驚かせて済まない。しかし、話は聞いているだろう。
 この小さき物は、街の南の領事館に住む、職員。
 妖精族のちび羽妖精だ」
ガラス職人「はっ、はいっ。は、始めておめ、おめ、おめに」
ちび羽妖精「初メマシテ」ふわふわぺこり
ガラス職人「初めまして」ぺこり
ちび羽妖精「がらす瓶アリマスカ?」
ガラス職人「ご、ございますよ」

280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 01:46:01.06 ID:bGZgmCoP
ちび羽妖精「コレ?」
ガラス職人「こちらは全てでございます。どのような用途に
 おつかいでしょうか?」
ちび羽妖精「ヨウト?」
大きな衛兵「使い道だな」
ガラス職人「はい」
ちび羽妖精「がらす瓶ヲ作レル人ヲ買イタイデス」
大きな衛兵「ああ……」
ガラス職人「は?」
ちび羽妖精「ソウイウ人ヲ欲シイ氏族ガイマス」
大きな衛兵「うーむ」
ガラス職人「ふぅむ、職人の募集ですか」
ちび羽妖精「ダメデスカ?」
ガラス職人「そう言うわけではありません。
 新しい街へ職人を募集するなどと云うことは開拓村では
 良くあることですから。ただし、行く先はそのぅ、
 魔界なんですよね?」
ちび羽妖精「ハイ」
ガラス職人「では、ギルド会館にご案内しましょう」
ちび羽妖精「ぎるど?」
ガラス職人「ええ。職人はみなそこに登録をしているのですよ。
 若くてチャンスを待っている僕の後輩や、まだ徒弟の年季が
 開けたばかりの者もいます。何が出来るか見てみましょう」

282 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 01:50:20.33 ID:bGZgmCoP
――遠征軍、奇岩荒野、野営地、開門都市まで12里
従軍司祭長「残すところあと12里まで迫りましたな」
百合騎士団隊長「はっ」
王弟元帥「もはや一息。開門都市へは斥候をだしています」
灰青王「そうですな」
大主教「……精霊の御心のままに。
 このまま速度を上げ、到着と同時に一斉攻撃を仕掛けよ
 光の教徒の全力をもって陶片のような魔族の抵抗を打ち破り
 あの都市に教会の旗を立てるのだ」
王弟元帥「それについては」
従軍司祭長「我ら、最強の聖鍵遠征軍は、
 三日後の夜を待つことなくあの都市を平らげるでしょう。
 各々がたも、よろしいな?」
王弟元帥「お待ち下さい」
従軍司祭長「何か異論でも?」
百合騎士団隊長「これは託宣ですぞっ!」
王弟元帥「しばしおまちを。報告を」
参謀軍師「はっ。我らは魔界へと侵攻を果たしてから
 約10日の行程を踏破して参りました。
 ここまでの行軍にて兵の疲労は頂点に達しています。
 また思ったよりも時間がかかりましたゆえに、
 糧食の控えは後一月分もございません。
 また今回の戦、敵地へ限りなく
 奥深く入り込んでいることを片時も忘れるわけには行きません」

285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 01:52:49.90 ID:bGZgmCoP
参謀軍師「ここまでの行軍路の途中には幾つか陣営地を残し
 糧食の保管および警備にあたらせて、
 輜重隊の動きを助けさせていますが、
 補給線は限りなく伸びきりとっさの動きには
 対応しづらいのが現実です。
  もちろん最初の一撃で戦を決めることが出来れば……
 いいえ、一撃とは言いません。
 二週間で決めることが出来れば問題はないかと存じます。
 あの都市には大量の食料もあるでしょうから。
 しかし、それ以上かかりますと、
 追い詰められるのはこちらかと」
従軍司祭長「遠征軍は最強ではなかったのかっ?」
王弟元帥「それは適切な準備を行ない、
 油断も慢心もなく戦った場合のこと。
 九分九厘勝てるであろう、などという甘えは戦場では禁物です」
聖王国将官「この件では、戦場の意見にも耳を
 傾けて欲しく思います」
灰青王「ふぅむ……」 ちらっ
大主教「申してみよ」
王弟元帥「本隊をもう10里進めて、本格的な宿営地を作ります。
 出来れば、木材を切り出して見張り塔程度は作り上げたいところ。
 付近の地形を測量し、カノーネの威力を最大限に生かせる
 布陣を作りつつ、兵には十分な休息を取らせますな。
 断続的な砲撃にて、防壁は数日で崩れ始めるでしょう。
  またその一方、マスケット兵および騎馬部隊を中心に編制した
 遊撃部隊15万にて西進。旧蒼魔族領地を強襲します」
従軍司祭長「……旧蒼魔族領地?」
百合騎士団隊長「なにゆえに?」

287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 01:56:25.55 ID:bGZgmCoP
王弟元帥「魔族どもは一族ごとに暮らしているというのは
 すでにお聞き及びかと思います。
 旧蒼魔族領地はここから往復で20日程度の距離ですが
 その領地に侵攻、全土制圧を行ないます。
 蒼魔族の軍勢は地上にて討ちやぶり
 我々が独自に入手した情報によれば、
 かの領地は今は少数の混成軍で護られているとのこと。
  開門都市に砲撃を加えつつであればそれが牽制となり、
 魔族は連携を取ることすら出来ず、
 旧蒼魔族領地を見捨てる決断となってそれは現われましょう。
  軍は失いましたが、蒼魔族の農奴たちは
 自らの領地に残り耕作しているはず。そこで食料を入手します。
 また、蒼魔族は多くの鉱山を持ち、その中には硝石を
 算出するものもあります」
百合騎士団隊長「硝石……?」
参謀軍師「聖鍵遠征軍の主力、銃兵がもちいる火薬の原料です」
灰青王「それは是が非でも入手の必要があるね」
大主教「火薬は少ないのか?」
参謀軍師「聖鍵遠征軍30万が全力で戦った場合、
 8日分が現在確保している量です」
大主教「なんの問題もない。それだけあれば開門都市を
 落とすことは可能だ」
従軍司祭長「8日あれば魔族を一網打尽に出来ましょう」
百合騎士団隊長「確かに」
王弟元帥「しかし、完全に、ではない」
従軍司祭長「くどい。これは猊下のご意向。
 ひいては精霊のご意志ですぞっ!」

288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 01:59:26.22 ID:bGZgmCoP
王弟元帥「しかしお考え下さい。
 開門都市を落としてもまだ終わりではないのです。
 ここはまだ魔界の玄関口に過ぎません。
 この後魔界の全土を転戦するためには、
 旧蒼魔属領の豊富な鉱物資源、とりわけ硝石が必須です」
灰青王「ふむ」ぽりぽり
百合騎士団隊長「そこまで硝石とやらが重要でしょうか?
 われらは猊下のご意志に従う光の戦士です。
 兵の疲労? そのような甘えは純然たる信仰と
 陛下の祝福に吹き飛びましょう」
大主教「ふふふ。……判っていないのはそなただ。
 ――目の前には開門都市。“門”たる祭壇と“鍵”たる勇者は
 我らが手の内にある。魔界全土で戦う必要などどこにある」
王弟元帥「は?」
参謀軍師「斥候の報告によれば、開門都市は長大な防壁を築き
 近隣諸氏族の軍をも率いれ、我が軍との激突姿勢」
従軍司祭長「それこそ好都合。会戦にてけりをつければ
 遙かに簡単に魔族の心根を砕くことができましょうぞ」
参謀軍師「っ」
聖王国将官「――それです」
従軍司祭長「は?」
聖王国将官「我ら聖鍵遠征軍は、
 確かに強大な戦力と兵力を有しますが
 それだけに兵の末端にまで指令を行き渡らせるのは至難の業。
 一斉攻撃は確実に巨大な攻撃力を有しましょうが
 いまだかつて10万を超えるような兵力を投入した戦場は
 歴史上存在しません。
 その混乱ぶりは想像を絶するでしょう。
 もとは農奴の兵士がどのような行動を取るかどうかも判りません。
 最悪、遠征軍は瓦解する可能性もあるのです」

292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 02:02:57.07 ID:bGZgmCoP
従軍司祭長「……っく」
百合騎士団隊長「灰青王さま?」
灰青王「はい」
百合騎士団隊長「兵については、掌握が出来るのでしょう?」
灰青王「それは、そのための前線司令官ですからね」
聖王国将官「灰青王陛下っ!」
百合騎士団隊長「昨日ゆっくりと話してくださいましたよね?
 マスケット銃の運用の仕方について……。
 期待させてくださっても構いませんわよね?」くすり
灰青王「まぁ。お任せ下さい。としか云えんでしょうね」
参謀軍師(取り込まれたかっ)
大主教「これでもまだ不安か、王弟元帥」
王弟元帥「ええ。不安ですね」
大主教「ふっ。ふははははっ。臆病ではないか? 王弟元帥」
王弟元帥「我が身の使命は猊下および中央大陸の権益と
 その体制を保ち永遠を護ることだと考えております。
 そのためには、臆病で丁度良いかとも思いますが?」
参謀軍師「……閣下」
灰青王「いやいや。硝石が必要というのも判ります。
 そもそも魔族の軍の陣容や人数だって判ってはいない。
 しかしね、あの都市の駐留軍を併せても5万を大きく
 越えると云うことはないでしょう。
 それにたしかに20万は多すぎです」

294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/06(火) 02:06:32.82 ID:bGZgmCoP
大主教「……」
灰青王「ここは軍を二分しましょう。
 二正面作戦は定石から云えば悪手ですが、
 幸い聖鍵遠征軍にはそれを可能にするだけの兵力がある。
 いままでの駐屯地や補給線の防衛に回した分を
 差し引いても未だ18万の兵力は温存している訳ですよ。
  王弟元帥には5万の兵力を率いて、蒼魔族の領地を落として頂く。
 王弟元帥の仰るとおり手薄な領地であれば、
 5万の兵力であっても十分でしょう?
  そして開門都市攻略千には15万の軍を率いて当たる。
 カノーネをこちらに残して頂ければなお結構。
 それであってもおそらく魔族の4倍。悪くて3倍。
 蹂躙するには不足がない。……いかがです?」
大主教「よかろう。開門都市を落とせば光は見えるのだ」
従軍司祭長「……宜しいでしょう」
百合騎士団隊長「期待していますわ。灰青王さま」
王弟元帥「……」
従軍司祭長「宜しいですな、王弟元帥閣下」
王弟元帥「承知した」
参謀軍師「……」
灰青王「明朝には?」
大主教「明朝には出発だ。兵には行進速度を速めさせるよう」
従軍司祭長「精霊は欲したもう」
百合騎士団隊長「全ては精霊の御心のままに」