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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part83


727 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:03:10.27 ID:F.ztGjEP
――魔界、開門都市、仮設作業所
 「よいせっ!」「おっこらせっ!」
  人魔族作業員「おーい! コロもうひとつ」
  人間技術者「いいぞー回せー!」
  巨人の作業員「ほうい……! よっせ やっせ!」
中年商人「これはこれは!」
土木子弟「やあ! 商人さん」
中年商人「結構な人出じゃないですか!」
土木子弟「そうですね」
中年商人「どうやってあつめたんです?
 とてもこれだけの人数を集めるほどの資金は
 お渡しできていないでしょう?」
土木子弟「ええ、まぁ」
火竜公女「妾の手柄ゆえ」
中年商人「これは姫さま」
火竜公女「それはいうな」
中年商人「ははははは。で、どうやって?」
土木子弟「この方が、街の人を紹介してくださってね」
火竜公女「いやいや。土塁や防壁を作ると言っても
 それは予算や自治委員会が動かないと、なかなかに
 資金も集まらぬゆえ。
 神殿の修復と言うことで街の衆には手助けを頼んだのだ」
中年商人「神殿の?」

728 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:04:24.44 ID:F.ztGjEP
土木子弟「元々開門都市は片目の神や無名の神を始め
 いくつもの神殿やほこらがあります。
 ことに都市を囲む九つの丘に建てられた神殿は作りも強固で
 要塞と言っても通用するほどですよ。
 さいわい、例の街道を通すはずだった山の切り通しから
 石材はいくらでも出てきますからね。
 まずは神殿の補修です」
中年商人「しかし、そんなことをしていて間に合うのですか」
土木子弟「この図を見てください」
火竜公女「ふむ」
中年商人「この近辺ですな?」
土木子弟「この九つの神殿とその敷地を防壁で囲み、
 それらの防壁を重ねるように、都市そのものの防壁を
 伸ばしていくのです。
 確かに距離は多少長くなり、作業量も増えますが
 元から有る神殿の壁を利用できるために全体での
 作業量は減るはずです。
 神殿の補修と言うことであれば、それぞれを信じている
 氏族の方にも手伝っていただけますしね。
 寄付もあつめやすい。
 いただいた資金は、全て食料を買ってしまいましたよ。
 働いていただいた方には、日当よりも、
 食事を腹一杯食べてもらう。そう言う方式にしました」
火竜公女「働いている方も、楽しそうだ」
中年商人「何とか動き始めましたか……」
土木子弟「ええ。自治委員会を説得するにしろ
 ある程度形や現場がないと難しいようですしね」
火竜公女「見通しが立たぬと計画書も提出できぬゆえ」

729 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:06:29.40 ID:F.ztGjEP
中年商人「それにしても、この図だと神殿を
 抱き込むような構造ですね」
土木子弟「神殿を鐘楼代わりに用いる事になりますから」
火竜公女「ふぅむ。この部分は?」
土木子弟「掘ります」
火竜公女「なにゆえ?」
土木子弟「空堀ですよ。見かけ上防壁の高さを
 増すためのものですね。この地方はさほど水が
 豊かではありませんし」
中年商人「随分壁が厚くはありませんか?」
土木子弟「ええ」
中年商人「個々までの厚さが必要ですか?
 石にしろ土にしろ、これだけ積み上げるには
 相当の手間がかかるのでは無いかと思いますが……」
土木子弟「これは、まぁ。うん」
火竜公女「?」
土木子弟「必要になるでしょう。
 この世代でも、次の世代でも。
 そもそも相手は魔族じゃないのでしょう?
 ……で、あればこの防壁が意味を持つこともあるでしょう。
 聞いている話が真実であれば、なおさらに」

731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:28:43.43 ID:F.ztGjEP
――冬越しの村、魔王の屋敷、勇者の部屋
ガチャ、ポイッ
勇者「うーん」
ガチョン! キュィィンっ!
勇者「ちげぇ、これじゃねぇや。……どこやったかなぁ」
ギュイイイン!!
勇者「刃の鎧とか、今考えると迷惑装備だよなぁ」
ポイッ。ポイッ
勇者「水鏡でもなくて……」
「おーい」
勇者「こっちだぞー。なんだー?」
がちゃ
女騎士「……何をやってるんだ?」
勇者「装備の整理をな」
女騎士「整理どころか、ぐちゃぐちゃじゃないか」
勇者「いくつか捜し物があってさー。祈りの指輪とか
 エルフの飲み薬とか」
女騎士「ふむ……」

733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:30:03.68 ID:F.ztGjEP
勇者「それよりどうしたんだ? めし出来たか?」はうはう
女騎士「そればっかりか。勇者は」
勇者「いや、べつに。そんなに卑しくはないぞ」
女騎士「ほんとうかー?」
勇者「本当だ」
女騎士「いずれにせよ、あと二時間は煮込まないとだめ。
 それから、今日はわたしは、
 修道院で大事なミサがあるから。
 夜ご飯は作りに来れないんだ。悪いな」
勇者「そうなのか?」
女騎士「そんなに困った顔をしてはだめだ。
 シチューをいっぱい作ったのはそのためだし。
 夜になったら、温めなおして食べればいい。
 チーズもパンも足りてるだろう?」
勇者「おう。そのくらいなら任せておけ!」
女騎士「勇者」
勇者「なんだ?」
女騎士「どうどう」なでなで
勇者「どうしたんだ? 女騎士」
女騎士「ふむ。撫でても平気か」
勇者「?」
女騎士「頃合いや良しっ!」 すくっ!

737 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:33:13.90 ID:F.ztGjEP
勇者「なっ。何がどうしたっ!?」
女騎士「勇者」ビシッ
勇者「はいっ」正座
女騎士「この件に関しては、いささか乙女としての
 恥じらいに疑問を覚えないでもないのだけれど
 話が錯綜するのも、混乱するのも、
 誤解を受けるのも、曖昧になるのも困る。
 故にはっきりという」
勇者「あ、ああ」
女騎士「魔王が戻り次第、勇者と褥を共にしたい」
勇者「……」ぴきっ
女騎士「大丈夫だ。勇者は心配することはない。
 私たちだって初心者だが
 その辺はうまく乗り越えてみせるさ」
勇者「あー」
女騎士「冗談ではないぞ?
 それから夜のおしゃべり会とか言う
 びっくりどっきりでもない。
 私たちは、勇者と、しとねを共にしたい。
 ――お互い判らない年齢でもないよな?」
勇者「う、うん」
女騎士「そ、それからなっ。
 いやだったら事前に断るのがマナーだからな?」
勇者「そうではないんですけれど」
女騎士「うん……」 なでなで
勇者「なにこれ?」
女騎士「いや、作戦行動の一環だ」

740 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:37:47.06 ID:F.ztGjEP
勇者「えーっと、さ。その、さ」
女騎士「無理にコメントしなくていい」
勇者「……うう」
女騎士「っていうか、しないで欲しい」
勇者「……」
女騎士「こっちだって顔から火が出そうだ。
 無理矢理押さえつけてるんだぞ」
勇者「う、うん」
女騎士「この件は一応魔王も了承済みだからなっ」
勇者「そうなのか」
女騎士 こくり
勇者「すっげー口がへの字じゃない?」
女騎士「い、要らない突っ込みだ」
勇者「……」
女騎士「どうしてもだめなのか? その……。
 こんな事言いたくないけれど、やっぱり。
 “次”は大勝負というか、
 すごく大きな戦争になってしまう気がするし。
 そう言うつもりではけしてないのだけれど……」
勇者「いや。……うん。判った」
女騎士「良いか?」 ぱぁっ
勇者「判った。ばっちりだ。覚悟完了だ!」
女騎士「それでこそ勇者だ!」にこっ

748 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:54:54.75 ID:F.ztGjEP
――聖王国某所、秘密大鉄工所
ガァン! ゴォン!!
労働者「おうっ! あぅっ!」
作業監督「どうした! 炉の動きが重いぞぉ!
 木炭を持ってこぉい!!」
ガァン! ゴォン!!
作業監督「ガンガン炊くんだ!!」
ガァン! ゴォン!!
職人の長「なんだって?」
技術者「いえ、ですから、木炭の備蓄が
 底をついてしまったのでして……」
職人の長「どうしてこうなったのだ?
 会計、会計はおらぬか!」
会計官「ギルド長、こちらにおります」ぱたぱたぱた
職人の長「木炭が足りぬではないかっ!」
会計官「はぁ。しかし、ギルド長の許可された分は
 全て購入し倉庫に入れておきましたが」
職人の長「そうなのか?」
技術者「このところの増産ペースで、
 備蓄分を使い切ってしまったようなのです」

750 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:57:43.51 ID:F.ztGjEP
熟練技師「木炭は元々鉄鉱石ほどの大きさの倉庫では
 ありませんから、本気で使えば一週間と持ちませんよ」
会計官「そうでしたなぁ。ふぅ、熱い」
職人の長「では新たに商人に運ばせよ」
会計官「それが、少々難しい雲行きでして」
職人の長「ん?」
会計官「連日の木炭買い付けで、
 木炭の価格が急騰しているのです。
 先週の三倍にも達しようかというほどに。
 さらに今までは夏でしたが、今や季節は秋も半ば。
 どの村でも、冬越しのために木炭を貯め込む季節となり
 なかなかたやすく買い付けも……」
職人の長「しかしそれでは、王弟閣下の望むだけの
 マスケットも過ノー根も、弾薬も送れないではないか。
 うぅむ。そうだ! この間話してていた策はどうだ?
 石炭から取れるコウクスなるものは?」
熟練技師「あれは、長の方で一回却下なさったでは
 ありませんか。林業ギルドとの関係が悪化する、とかで」
職人の長「だがしかし、情勢が変わったのだ。
 木炭がなければ仕方有るまい。
 今ひとつ信頼しきれぬ新方式だが、試す価値はあるだろう」
熟練技師「であれば、試すにやぶさかではないのですが
 砂丘の国も、礒岩の国も石炭の採鉱権は譲渡したと
 聞きました」
職人の長「どういうことだ?」

751 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 21:59:44.98 ID:F.ztGjEP
熟練技師「商人が高額で権利を押さえたとの話です」
職人の長「なぜそのような! いや、それ以前になぜ阻まぬ!」
熟練技師「お忘れなのですか? 長よ。
 我々は当分石炭を使用しない決定を下したんですよっ。
 購入しない、金も払わないで
 どうして権利だけを押さえることなど出来ますっ!!」
会計官「まぁまぁ」
技術者「だがしかし。と、なれば木炭を買うしかないでしょう。
 国家備蓄を進めている国はどうですか?
 我々は王弟閣下の口添えをいただいているわけですし。
 貴族や領主に木炭を出させる、というのは」
会計官「それならば出来るやも知れません」
職人の長「よかろう! ではわたしが早速手紙を出す。
 会計官は使者を用意させろ。隊商を作り、近隣の
 領主や王国から、木炭を送ってもらうのだ」
技術者「ええ、梢の王国などは、以前から林業に
 置いて大きな実績があります」
熟練技師「梢の王国の木炭であれば、きっと立派な
 鉄を作り出すことが出来るでしょう!」
会計官「早速手配して参ります」
たったったった
職人の長「フリントロックの方はどうだ?」
熟練技師「やはり精度が高いですが、
 何とか月産50丁のラインには乗って参りました」
職人の長「よし、今月の荷として、港から船で運ばせよ!」

763 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 22:31:04.32 ID:F.ztGjEP
――白夜の国、港
メイド姉「やはり、気が緩んでいる感じですね。
 警備もろくにしていませんし、これだけの軍が集まると
 敵が来るはずはないと言うことなのでしょうか?」
生き残り傭兵「元々はどうあっても農民だ。
 夜になったら寝るって言う暮らしをしてきた。
 そこまで敵の怖さってものが骨身にしみていないんだろうぜ」
ちび助傭兵「しっ!」
かつん、かつん、かつん……
    「ふわーぁ。早く宿舎で寝てぇよ」
    「ぼやくなよ。酒を持ってきてあるんだ」
    「いいね、身体が温まる」
……かつん、かつん、かつん
若造傭兵「……いったみたいだ」
傭兵弓士「よし」
貴族子弟「流石にドキドキしますね」
メイド姉「ええ、聖王都の大聖堂に忍び込んだ時以来です」
生き残り傭兵「このお嬢ちゃんはどういう
 経歴の持ち主なんだ?」
貴族子弟「この度胸と思い切りの良さは、生まれつきかなぁ」
メイド姉「そんなことはありませんよ」むぅっ

764 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 22:32:49.34 ID:F.ztGjEP
生き残り傭兵「で、どうすんだ?」
メイド姉「はい。貴族子弟さんは、
 打ち合わせ通り本隊80人を率いて船を接収してください。
 出来れば荷下ろし前の食料が載っている船がよいです。
 私たちは操船技術がないので、
 当直含め船乗りさんが乗っている船を選んでくださいね」
貴族子弟「人使い、荒いなぁ」
メイド姉「おねがいします」ぺこり
貴族子弟「やりますけどね」
メイド姉「で、私たちの部隊は、
 あちらの税関に忍び込みます。
 ここ数日調べた感じでは、この時間あの建物の中には
 5〜8人が寝泊まりして居るのみ。
 可能な限り血は流さない方法で無力化してください」
生き残り傭兵「ふむ」
ちび助傭兵「判った」
生き残り傭兵「俺はそっちでいいか?」
メイド姉「はい、お願いします」
ちび助傭兵「じゃぁ、さっさと済ませるとしようか」
若造傭兵「おう」

765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 22:33:53.48 ID:F.ztGjEP
――白夜の国、港、税関の建物
がちゃがちゃ
生き残り傭兵「鍵がかかってるな、流石に」
メイド姉「出番ですよー」つんつん
器用な少年「俺かよっ!?」
メイド姉「はい、お願いします」
器用な少年「何で俺がこんな事を……」
ちび助傭兵「さっさとやれ」こんっ!
器用な少年「くっそう。こんな鍵がなんだってんだよ」
ぴんっ!
器用な少年「おら、出来たぞっ!」
メイド姉「お見事です。良くできました」にこり
器用な少年「朝飯前のこんこんちきだ。ちきしょう」
かちゃり
生き残り傭兵「入るぞ」
ちび助傭兵「後方確認、担当する」
若造傭兵「前方制圧行く」
傭兵弓士「援護了解」
器用な少年「むちゃくちゃプロじゃねぇか」

766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 22:35:15.20 ID:F.ztGjEP
  光の衛兵「うぐっ!!」
  どさっ
生き残り傭兵「ふぅ」
ちび助傭兵「こっちの部屋もふんじばったぞ」
  光の衛兵「だれだ、きさまらっ!」
ひゅばっ!
  光の衛兵「ぐぅっ!」
若造傭兵「よし。こっちも問題ない」
傭兵弓士「周辺の建物に気付いた様子はない。
 この税関に何の用事があるんだ?」
器用な少年「とっととずらかろうよ」びくびく
メイド姉「少し待ってくださいね。
 このあとは船をお借りして移動する予定なのですが
 あいにく、わたし持ち合わせが少なくて……」
器用な少年「わかった! 聖王国からぶんどろうって腹だな!」
メイド姉「とんでもない。それは非道ですよ。
 まぁ、危急の事態なので多少犯罪的な手法を
 とる覚悟はあるのですが、そこまで悪辣なことは
 出来ません。盗みは良くないことです」
生き残り傭兵「じゃぁ、何でこんな所に」
メイド姉「借ります」

767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 22:36:42.40 ID:F.ztGjEP
器用な少年「はぁ?」
メイド姉「ですから、資金を少々お借りしようかと」
生き残り傭兵「……」
ちび助傭兵「……?」
器用な少年「盗みと何が違うんだ?」
メイド姉「借用書を書きます」
サラサラサラ、サラサラサラ
生き残り傭兵「……」
若造傭兵「……」
  器用な少年「なぁ、この姉ちゃんまじなのかなぁ?」
  生き残り傭兵「貴族の旦那が言うには本気なんだろうな」
  ちび助傭兵「良いのかなぁ。こんなのが代行で」
  若造傭兵「乗りかかった船だ。諦めるしかない」
メイド姉「出来ました。この借用書を、机の上に置いて。
 えーっと、金貨を運び出しましょう。
 数えている暇はないので、その箱五つで良いでしょう。
 重いのにしましょうね。軽いのは使っている最中かも
 知れませんし、二度手間もいやですし」
生き残り傭兵「やることは結構豪快だな」
ちび助傭兵「うんうん」
メイド姉「この資金で、船員さん達へせめてものお詫びに
 支払いをします。食料も買い上げて、極大陸へ」
生き残り傭兵「え? 極……!?」
メイド姉「混雑しないうちに魔界へと行きましょう。
 あちらでやるべき事が山積みですから」

783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 23:07:02.11 ID:F.ztGjEP
――鉄の国、職人街、ギルド会館前
しゅわんっ!
魔王「っふぅ」
メイド長「くらくらしますね」
勇者「3連続転移はきついか」
魔王「うむ、ちょっと頭が痛くなるな」
メイド長「わたしは目が回っています」
勇者「慣れの問題なんだけどな〜」
魔王「悪いな。迎えに来させた上に、足代わりに使って」
勇者「気にするなって。急ぎなんだろう?」
魔王「ああ、今回、大量生産するつもりはない。
 おそらく、充分な硬度の刃さえ作れれば、
 一ヶ月もあれば試作品は出来るはずなんだが……」
勇者「それもこれも職人に話さなきゃ始まらないぞ」
魔王「う、うん。行ってくる。行くぞ、メイド長っ」
メイド長「はい、まおー様っ」
勇者「いってこーい!」

785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/03(土) 23:10:01.95 ID:F.ztGjEP
魔王「ああ、勇者っ!」てってってっ
勇者「なんだ?」
魔王「今日は、鉄鋼工房の職人と打ち合わせがあるだけだ。
 夕方までには終わる。そこらの酒場で食事でもしているか、
 見物でもしていてくれ。今日こそ屋敷に戻りたい」
勇者「わかった」
メイド長「あまり沢山は食べちゃだめですよ? 勇者様。
 今日は腕によりをかけてご馳走を作りますからね。
 留守番のご褒美と、送迎の埋め合わせです」
勇者「わかったよ! ひゃっほう!」
魔王「じゃぁ、いってくる。待っていてくれ!」
たったったったっ
勇者「ふぅ……」
勇者「それにしても……」
――魔王が戻り次第、勇者と褥を共にしたい。
勇者「もしかして……。それって今夜か?」
勇者「ってなんかすげぇ焦ってきたぞ。
 やばいな。変な汗が出てきた。
 刻印王とやった時でもこんなに戦慄はしなかったぜ。
 ど、どうするんだ。どうすればいいんだ?
 ――落ち着け?
 ですよね。そうですよね。まずは落ち着くべきですよねー」
女魔法使い こくり