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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part81


564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 21:49:17.76 ID:iOYUExkP
軍人子弟「今日の所は、差し入れにきたでござる」
メイド妹「うん、そうそう!」
東の砦将「差し入れ?」
獣牙戦士「すごく美味いぞ」
軍人子弟「この娘は、なんというか、
 料理の妙を心得てござってなぁ」
メイド妹「どんどん食べて!」
  「美味いぞう」「おう、たいしたもんだ!」
人間傭兵「もういっぱいくれや」
東の砦将「ほほう」
軍人子弟「本人の希望もあって今日は一緒にきたでござるよ」
メイド妹「ですです。魔界のお料理の話も聞きたかったから」
東の砦将「そうかそうか。嬢ちゃんは料理人かい」
メイド妹「未来の宮廷料理人ですっ」
ばさっ
銀虎公「何事か?」
軍人子弟「本日もお邪魔させていただいたでござる」
銀虎公「ふむ」
軍人子弟「もうそろそろご出立だとか」

565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 21:52:06.96 ID:iOYUExkP
銀虎公「今朝知らせが入った。
 偵察部隊と合流の上、明後日には出立する」
軍人子弟「ならば、それまでには是非、一献なりと
 さしあげないと、帰すに帰せないでござる」
銀虎公「……」
軍人子弟「人間界の酒も、決して悪くないでござるよ。
 これは、鉄の国で取れた強い酒でござる。
 雅な華やかさはないでござるが、この大地の酒でござる」
銀虎公 ちらっ「料理を振る舞ってくれたのか?」
メイド妹「美味しいので一杯どうぞっ」
銀虎公「物怖じしないのだな」
軍人子弟「拙者の妹分は特別でござるよ」
メイド妹「ささ。熱いうちに!」
銀虎公「いただこう」
軍人子弟「酒もつぐでござるよ」
銀虎公「うむ」
とくとくとく……
軍人子弟「魔界には月がないと聞いたでござる」
東の砦将「ああ」ごっくごっくごっく
銀虎公「あの、白いものか」
軍人子弟「今宵は月が沈むまで飲むでござるよ」

572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 22:18:10.44 ID:iOYUExkP
――蔓穂ヶ原にほど近い廃砦
ガサガサッ!!
傭兵斥候「おい。まずいぞっ!」
ガサガサッ!
傭兵弓士「どうしたんだ?」
傭兵斥候「遠征軍の部隊が、こちらに向かってくる。
 マスケットとか言うヤツも一緒だ」
ちび助傭兵「どれくらいなんだ?」
傭兵斥候「随分横に大きく広がってて判らない。
 一つの部隊は20人〜50人くらいだが、
 そんな部隊がわんさとある。
 どうやら、硝石を持ち逃げしたのがばれたらしい」
傭兵弓士「そりゃぁ、あんだけ難民にも見られているしな」
器用な少年「や、やばいじゃないか! 逃げようぜ」
生き残り傭兵「そうも行かない」
ちび助傭兵「ああ、逃げてはだめだ」
若造傭兵 こくり

574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/02(金) 22:19:31.61 ID:iOYUExkP
器用な少年「なんでだよ。相手はあの火を噴く杖を
 持っているんだぞっ! 俺っちたち、殺されちまう」
生き残り傭兵「だが、俺たちはもう傭兵じゃないしな」
ちび助傭兵「うん」
器用な少年「傭兵じゃないか!」
生き残り傭兵「いいや。隊長が残した約束と、
 貴族の旦那の約束を信じれば、俺たちは冬の国の、
 そして白夜の国の騎士なんだぜ?」
ちび助傭兵「そうだ。騎士は逃げない」
器用な少年「なに馬鹿言ってるんだよっ!
 あんちゃんなんか逃げまくりだぞ!?
 あの人貴族だけど、相当逃げ足のプロだぞっ!」
生き残り傭兵「お前は騎士じゃないから逃げろ」
ちび助傭兵「そうだな」
若造傭兵「まだ距離がある。お前は逃げられる」
傭兵弓士「どれくらいあるんだ?」
傭兵斥候「多分、一日二日は平気だ」
器用な少年「そんな……。だってさ」

575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 22:20:33.34 ID:iOYUExkP
生き残り傭兵「さて、どうする?」
ちび助傭兵「……」
若造傭兵「討って出て戦うか、この砦で待ち構えるか」
傭兵弓士「相手が集まる前に、
 少しずつ削っていくしかないだろう」
生き残り傭兵「だが、相手の数を考えれば
 到底削りきれる数じゃないな」
ちび助傭兵「その時はその時だ。
 隊長みたいに勇敢に歌いながら戦えばいい」
器用な少年「ばっ。ばっかじゃねぇの!?
 ばっかじゃねぇの。
 3回言っちまうぜ。お前らばっかじゃねぇの!?」
ちび助傭兵「おまえ、隊長を馬鹿にするなっ」
器用な少年「するよ、しちゃうね、しちゃうとも!
 こんなところで戦ったって、別に誰も喜ばないし、
 ただの犬死にじゃねぇ。
 そんなの格好悪い騎士だっての。
 もっかいいうけど、ばっかじゃねぇの?」
生き残り傭兵「騎士は逃げない」
器用な少年「なに守るんだよっ。
 もう白夜王国なんて終わっちゃってるんだぞ。
 守るモノ無しで戦おうなんてかっこつけだっての!!」

577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 22:24:17.28 ID:iOYUExkP
若造傭兵「……」
傭兵弓士「だからといって、逃げてこいつを
 奪われてしまったら困ったことになるのではないか?」
生き残り傭兵「そうだな。貴族の旦那が隠した理由も
 それだろう。この硝石というのは、敵の火を噴く筒の
 秘密に関係があるんだ」
器用な少年「多分、関係あるけどさ。そりゃ……」
生き残り傭兵「だったら、これを奪われるわけには行かない」
ちび助傭兵「そうだな」
若造傭兵「やはり闘うしか、ないか」
ガサッ
傭兵弓士「だれだっ!!」
貴族子弟「やぁ」
メイド姉 ぺこり
器用な少年「あんちゃん!! 帰ってきたのか!!
 ……こっちの人は誰?」
生き残り傭兵「貴族の旦那!」
貴族子弟「こんな事になるんじゃないかとはうすうす
 思っていたけれど。
 済まないね、こんな場所で見張りをさせて」
ちび助傭兵「いや、これは仕事だ」
若造傭兵 こくり

578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 22:27:26.81 ID:iOYUExkP
傭兵弓士「旦那、どうやら遠征軍が嗅ぎつけた。
 連中はここを目指しているし、これだけの荷物は
 今から馬車を調達しても簡単には運べない」
生き残り傭兵「運び出せても、後ろから追われてしまう」
器用な少年「だから逃げろって云ってやってくれよ。
 あんちゃん頼むよ、後生だからさっ!」
貴族子弟「どうします? 二代目」
メイド姉「……」
ちび助傭兵「二代目?」
若造傭兵「?」
貴族子弟「ああ、この部隊もいつまでも隊長無しでは
 困ると思ってね。で、苦労して探し出してきたんだ。
 ……新隊長だよ」
ちび助傭兵「え? でも。……女じゃないですか」
若造傭兵「冗談だろう?」
貴族子弟「いやいや、冗談じゃないよ」
メイド姉「はい。お誘いを受けました」こくり
ちび助傭兵「俺たちの隊長は1人だけだっ」
傭兵弓士「隊長が居なくても、俺たちはやっていけるっ」
メイド姉「判っています。事情も聞きました。
 しかし、氷の国は、連絡用の名目であっても
 隊長に当たる人物が居ないと困ると言うことなんです。
 たとえそれが肩書きだけであっても」

582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 22:32:50.39 ID:iOYUExkP
貴族子弟「そして、君たちを預かっている
 このぼくが推薦するのが彼女だ。云っとくがとびっきりだぞ?」
メイド姉「……」ぎゅ
ちび助傭兵「頼りになるのかよ」
若造傭兵「……」
傭兵弓士「そんなことより、いまはこの場の戦闘を
 どうするかの方が先だ」
器用な少年「逃げるってば!」
生き残り傭兵「それこそ隊長の腹一つだろうよ」
貴族子弟「だ、そうだよ?」
メイド姉「まず第一にわたしは隊長になるつもりはないです。
 ――代行、とでも呼んでください。
 時期が来たらこの騎士団生え抜きの人の中から
 新しい隊長が決めればそれで良いと思います。
 それから、わたしは戦闘は苦手です。
 剣の振り方は多少習いましたが、戦闘指揮なんて
 やったこともありませんし、出来るとも思えません」
傭兵弓士「それじゃなんの役にも立たないじゃないか」
生き残り傭兵「なんのための司令代行なんだよ」
メイド姉「わたしは民間人ですから、騎士団の……。
 ここにいる皆さんが護ってくれると信じています」

583 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 22:35:35.10 ID:iOYUExkP
ちび助傭兵「へ?」
若造傭兵「……」
メイド姉「次に、わたしは皆さんを
 戦闘以外のものから護ります。
 戦闘で護ってもらうのとおあいこですね。
 それからわたしは今から行かなければ
 ならない場所がありますし、どうしても護衛が必要なんです」
ちび助傭兵「訳がわからないぞ」
若造傭兵「……」
傭兵弓士「頭は大丈夫なのか? なぁ、貴族の旦那」
貴族子弟「ああ、保証する。
 保証はするんだが、この娘さんは僕らの兄妹弟子でも
 相当にとびっきりでね。真面目になればなるほど、
 頭がおかしい人と思われてしまうんだ。
 後から考えるとなるほど、と言った具合なんだけどね。
 それ側が師匠の教えを受けた生徒の悪癖なんだなぁ。
 出来れば温かく見守って欲しいな」
メイド姉「お願いします」
ちび助傭兵「そんなこと言われてもなぁ」
傭兵弓士「逃げるか闘うか、それを聞かせてくれ。
 逃げるって言うなら、俺はあんたを認めないぜ」
器用な少年「逃げなきゃ死んじまうよ!!」
メイド姉「なぜ択一なのですか?」
傭兵弓士「……はぁ?」
メイド姉「逃げるけれど闘う。あるいは逃げない上に
 闘わない。そう言った選択肢を選びたいと思います」

588 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 22:59:48.76 ID:iOYUExkP
――人間界、極大陸、凍てつく大地
光の斥候「目視では付近に人影有りません」
光の兵士「あんまり遠くを見るなよ。
 白すぎて目がつぶれちまうぞ」
光の銃兵「そうだな。斥候に任せよう」
光の船乗り「ふぅ。そりの方も大丈夫だ」
光の斥候「思ったよりも、寒さも雪もないな」
光の兵士「足下の凍土だけか」
光の銃兵「この凍土の中を進むんですか?」
光の船乗り「もちろんだ」
光の斥候「ほんの150里ほどです」
光の兵士「ほんの、で済むか。こんななんにもない大地を」
光の銃兵「だが、商人達の使う通商道が近くにあるはずだ」
光の船乗り「それを探すのが先決だな」
光の斥候「もし商人の部隊に遭遇したら?」
光の兵士「俺たちがここに居るのは軍事機密なんだ。
 知られるわけにはいかないさ」
光の銃兵「お前だって久しぶりに、
 あばら肉のたっぷり入ったスープが飲みたいだろう?」

590 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 23:15:04.09 ID:iOYUExkP
――――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、仮設会議場
巨人伯「今日は……最初、おれ……」
碧鋼大将「うむ」
巨人伯「山の穴を三つ……作った……俺たちは……
 工事は……得意だ……」
鬼呼の姫巫女「設計から拳五つの幅のずれもなく
 両側から掘り抜き連結されたそうだな」
火竜大公「ほう! それは見事な」
巨人伯「わが……巨人族……高く、買ってくれ……」
鬼呼の姫巫女「鬼呼の土木組もよろしく願いたい」
火竜大公「ふぅむ。取り急ぎ、我が領地と開門都市のあいだ。
 そして開門都市と旧蒼魔族の領地のあいだの道の補修を
 頼みたい所だな」
副官「それらの資金については、例の札および
 我が開門都市自治員回の補助金でまかなうことが
 可能だと思っております」
巨人伯「……よかった」
鬼呼の姫巫女「うむっ」
火竜大公「よろしく頼むぞ」
碧鋼大将「こちらもそれはありがたい。
 旧蒼魔族の領地の統治には大きな助けになるだろう」

591 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/02(金) 23:16:53.76 ID:iOYUExkP
紋様の長「そうだ。その蒼魔族の様子はどうなのだ?」
鬼呼の姫巫女「うむ」
碧鋼大将「問題は多い。まずは物資面だ」
紋様の長「ふむ」
碧鋼大将「特に衣料品と食糧が不足している。
 蒼魔軍はこれらの品に関しては
 かなり大規模に持って行ってしまったようだ」
副官「食料に関しては、我が都市の備蓄から
 当面必要な分は移送しましたが、
 おそらくはまだ足りないかと」
鬼呼の姫巫女「鬼呼の地は豊作だったゆえ、
 今年の食糧備蓄は潤っておる。送ろう。
 代金は、金属でかまわぬ。なに、来年以降でな」
碧鋼大将「感謝する」
紋様の長「ほかには?」
碧鋼大将「その他物資面では殆ど不足がない。
 蒼魔の軍は略奪などは行なわなかったので、
 住居や施設が壊されたということもない。
 鉱山などもそのまま残っているので、
 すでに採掘は再開されている。
  だが……」

592 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 23:18:20.22 ID:iOYUExkP
火竜大公「だが?」
碧鋼大将「精神面では、非情に問題がある。
 元々蒼魔族は厳格な身分制をもつ階級社会だった。
 その身分制度の上位陣は軍人が占めていたと言っても良い。
 残された民間の労働者は、身分制度の下半分を構成していた。
 そう言った社会に慣れきっている彼らは、
 指導階級が居なくなり……」
紋様の長「まさか暴動が!?」
碧鋼大将「いや、暴動ですらなく、呆然としてしまったのだ。
 自分たちが“遺棄された”と言う現実を受け入れることが
 出来ないらしい。
 年老いた労働者の中には、精神が弛緩し、空中を見つめた
 ままになってしまう者もいる」
紋様の長「なんと……」
鬼呼の姫巫女「そのようなことになろうとはな」
火竜大公「ふむ……」
巨人伯「こまった……な……」
碧鋼大将「彼らは命令には従順で、
 特に何らかの武器を用いて脅すと、
 勤勉な勤労姿勢を見せるが、そのような管理は
 我らが魔王殿から与えられた任務に背くし
 もちろん、われら機怪族の好む所でもない」
副官「ふむ……」
碧鋼大将「このような事態には、いささか手を焼いている」

593 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/02(金) 23:20:29.29 ID:iOYUExkP
鬼呼の姫巫女「しかし、それは一朝一夕には
 なかなか解決しなさそうですな」
火竜大公「うむ」
碧鋼大将「何か良い知恵はないだろうか?」
紋様の長「……」
火竜大公「おそらく、何か、かき混ぜるような
 手段が必要じゃろうな」
巨人伯「かき……まぜ、る?」
碧鋼大将「とは?」
火竜大公「厳格な身分制度とは、思考の硬直化を生むのだろう。
 つまり自分の範囲、自分の周辺だけを見させられることにより
 考え方や知識も凝り固まってしまうのだ。
 効率は多少落ちるだろうが、たとえば鉱山労働者に
 農作業をやらせるであるとか、その逆であるとか。
 人材をかき回して、見聞を広げさせるのがきっかけと
 なるだろう」
副官「良いアイデアだと思います。どうでしょう?
 定期的に、隊商を組織して我が都市に品物をお売りに
 なりにこられては?」
巨人伯「そうだ……道路敷設の……参加も……歓迎だ」
紋様の長「そういえば、着任当初に魔王殿が大学を
 建てるなどと云うことを云っていましたね。
 あれも今考えてみると、これを見越してのことだったのかと」

594 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 23:22:57.04 ID:iOYUExkP
鬼呼の姫巫女「あの魔王殿なら、そう言うこともあろうな」
副官「ところで、その魔王様はどうなんです?
 それからうちの宿六族長は」
巨人伯「どうだろう……」
火竜大公「うぉっほん! それについては、
 会議宛に報告が届いておる」
碧鋼大将「聞きましょう。蒼魔族については、さきほどの
 ご協力を各族長にお願いすれば、目処が立ちそうだ」
紋様の長「うむ」
火竜大公「まず、地上における第一の目標、
 蒼魔族の討伐に関してはこれを成し遂げたとのこと」
副官「おお!」
巨人伯「よかった……」
火竜大公「そして、その争いの際、
 共闘することになった、地上における国家連合の一つ、
 南部連合とは停戦条約を含む合意に至ったとある」
副官「南部連合……」
巨人伯「南部連合……とは、なんだ……」
火竜大公「この報告によれば、地上の大陸なる場所では
 30以上にもわたる国家が乱立しているとのこと」

595 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 23:25:05.18 ID:iOYUExkP
副官「国家とは魔界で云う氏族のようなモノです。
 ただし、生まれや出自よりは住んでいる場所を
 基準にした集まりですね。
 たいていはひとつながりの領地をもち、1人の王
 ……族長の指導のもと、領地で暮らしています」
巨人伯「西巨人族と北巨人族のように……
 わかれては……いないの……だな……」
火竜大公「南部連合とは、その中で7つの国といくつかの
 都市を抱え込んだ第2の連合と云うことだ」
副官(三ヶ国通商はそこに着地したのか)
碧鋼大将「そこと停戦条約を結んだのか」
紋様の長「ふむ」
火竜大公「しかし、中央諸国と聖なる光教団はどうやら
 魔界へ三度目の侵攻を企んでいる模様、
 十分な注意が必要である……。こう結んである」
副官(……やはり一筋縄ではいかないようですね)
巨人伯「中央諸国? ……聖なる光教団?」
副官「それは地上の大陸で最も勢力のある教会と国家群ですね」

596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 23:26:09.47 ID:iOYUExkP
碧鋼大将「勢力とは?」
副官「20あまりに国が参加した巨大な軍でしょう。
 南部連合ですか。それが成立するまでは、
 唯一にして無二の勢力だったわけです。
 魔族会議に少し似ていますね。
  その会議が、第二回の……つまり、我が開門都市が
 人間に攻められた時のような聖鍵遠征軍を組織して
 魔界に攻め込むという決定を下したと。
  その辺のことは詳しくは書いてないのですか?」
火竜大公「そなたの所の族長から、そなたあてに
 書状が同封されておるぞ。ほれ」
ペラッ
副官「ふむふむ……。おい。……あちゃぁ」
ペラッ
副官「……」
紋様の長「何が書いてあるのです?」
副官「えーっと、こちらは数字入りの詳しい戦況解説です。
 まず、先ほど解説した、聖鍵遠征軍ですね。
 これは中央諸国が聖なる光教団の指示のもと招集した
 軍なわけですが、すでに成立して出発しています。
 かれらは、白夜の国」
碧鋼大将「蒼魔族が占領したという?」
副官「そうです。その白夜の国を蒼魔族から奪い返し、
 自分たちの領土としてしまったようです」

597 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/02(金) 23:28:01.25 ID:iOYUExkP
碧鋼大将「それは、人間の世界では良くあることなのか?」
紋様の長「他の氏族の領土を奪うという」
副官「あまりあることではありませんが、
 全く聞かないと云うほどのことでもありませんね。
 しかし問題なのはむしろ、これらの行動はどうやら
 意図的だったということのようです。
 白夜の国は、極大陸へ航海する場合への
 玄関口になり得ます。
  どうもうちの大将は、聖鍵遠征軍は港を欲しいがために
 白夜国を落としたのじゃないかって勘ぐっているようですね。
  軍の規模は、約20万。さらに増えていますが……。
 その全軍を持って魔界へ侵攻するというのが
 彼らの目的であろうとのことです。
 20万は、第二次の倍ですよ」
巨人伯「……人間が……くるのか」
碧鋼大将「攻めてくる人間と停戦条約をするとは
 魔王殿も解せぬことを」
鬼呼の姫巫女「人間とひとくくりには出来ぬ。
 そう言うことだろう。我らと蒼魔族のようなものよ」
副官「そうですね。その南部連合に含まれている国々は
 この書状にもありますが、冬、氷、鉄、湖、葦、梢、赤馬。
 数こそ七つと少ないですが、どれも特産品があったり
 面積が広かったりとなかなかに強力な国々です。
  もしこの停戦協定がなかったとしたら、
 魔界に攻め込んでくる軍勢は30万になったかも知れない」