Part77
225 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 00:01:11.17 ID:chcZF3wP
魔王「そんなことはないのになぁ」ぐてん
勇者「おい、夜露で濡れるぞ」
魔王「ひんやりして気持ちがよい」
勇者「まったく」
魔王「メイド長がいないから怒られないのだ」
勇者「そうだけどさ」
魔王「勇者勇者」
勇者「ん?」 ぷす
魔王「ふふふ。ひっかかった頬つっかい棒〜」
勇者「子供か、魔王は」
魔王「やけに愉快な気分だ」
勇者「子供ではなく酔っぱらいだった」
魔王「だって美味しかった」
勇者「美味かったな」
魔王「それに、乾杯してもらえた」
勇者「うん、そうだな」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「ふふふふふっ」
226 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 00:02:29.12 ID:chcZF3wP
勇者「どうした、突然」
魔王「無敵感満タンだ!」
勇者「機嫌治ったのか? 煮詰まり治ったか?」
魔王「うん、どっかにいってしまった」
勇者「そりゃ良かった」
魔王「あとはもふもふで完璧だ」
勇者「それは今度な」
魔王「けち」
勇者「濡れちゃうだろう」
魔王「けちけち勇者」
勇者「やっぱ、酔っぱらいだな」
魔王「あれを見ろ、勇者っ」びしっ
勇者「そんなのに引っかかるかよ。そういうのは
百万回くらい爺に騙されてるんだっての」
魔王「いいからっ」
勇者「なんだってんだよ」
魔王「虹が、降っているよ?」
勇者「ああ……」
魔王「綺麗だろう?」にこり
勇者「ああ」
227 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 00:04:13.15 ID:chcZF3wP
魔王「やっぱり負けるのはダメらしい」
勇者「うん」
魔王「わたしはこれから、計画の練り直しだ。
マスケットを敵に与えてしまったのはわたしのミスだ。
本来であれば、わたしは責任をとるために、
もっと強い武器を南部連合に提供しなければいけないと思う。
でも、それをすれば、死者の数はもっともっと増えてしまう」
勇者「ああ」
魔王「でも、わたしのそんな躊躇い……。
火薬を広めて良いのか悪いのかという躊躇いが、
マスケットを敵に量産させる結果を招いてしまったんだな」
勇者「……うん、そうだな」
魔王「なんのことはない。勇者に偉そうに講釈しておきながら
一番覚悟が出来ていなかったのがわたしだったというわけだ」
勇者「……」
魔王「何度でも思い知る。
やはりわたしは1人じゃ何も出来ない。
この件に関しても、もっと早くに相談すべきだったんだ。
彼女であれば、それを用いても被害を増やさない方法を
思いついたかも知れないのに」
勇者「うん」
魔王「吹っ切れた。
わたしもこの件から逃げ回るのはやめよう。
女騎士と話し合うべき時期が、来たのだと思う」
269 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 18:37:08.36 ID:chcZF3wP
――鉄の国南部、辺境の森の中
ガササッ。ガササッ。
鉄国少尉「もう少し先ですね」
衛門案内兵「そうです」
鉄腕王「……」
軍人子弟「王よ、そんなに気むずかしい顔はしないでござるよ」
鉄国少尉「そうですよ」
鉄腕王「うむ。しかし……」
ガササッ。ガササッ。
衛門案内兵「この谷をお借りしています」
鉄腕王「ふむ」
ザッザッザッ
衛門案内兵「鉄の国の王をご案内しました」
ガサッ
東の砦将「ご苦労さん」
軍人子弟「ふむ」
鉄国少尉(随分出来る気配の人だな……)
東の砦将「色々お礼を述べなければなりませんが、
あちらに天幕が張ってあります。ご案内しましょう」
271 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 18:40:16.01 ID:chcZF3wP
――鉄の国南部、辺境の森、獣人族の大天幕
バサッ
鉄国少尉(ふむ……)
東の砦将「こちらにどうぞ。……あー。
すいませんね、根ががさつなやつらばかりなもので。
おい、飲み物をお持ちしろ」
獣牙戦士「はっ」
軍人子弟「いや、お気になさらず、楽に。
拙者達も軍人でござるから。
礼儀作法にこだわりはないでござるよ」
東の砦将「そう言っていただけると助るな。
いや、生まれが悪いもんで言葉遣いは勘弁してくれ。
俺は、東の砦将。もとは第二回聖鍵遠征軍参加の
傭兵で、そのあとは長い間開門都市の駐留部隊の
分隊長をやっていた。
運命の変転だか数奇な偶然だかに巻き込まれて、
いまでは開門都市自治委員会のとりまとめ、
九氏族の一つ、衛門族の長をやっている。
今回の蒼魔討伐作戦では、左府将軍を仰せつかった」
銀虎公「我の名は銀虎公。
魔界の九氏族の一つ、獣牙一族の長。
今回の戦いでは、右府将軍を務めるものだ」
鉄国少尉(……こっちの将軍は、すごい闘気だな)
273 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 18:41:49.99 ID:chcZF3wP
軍人子弟「拙者は鉄の国の護民
卿を拝命している
軍人子弟と申す者でござる。 先だっての蔓穂ヶ原の戦いでは副司令官を
つとめてござった。
こちらにいらっしゃるのが、鉄腕王。
この鉄の国の王にして、南部連合首脳でござる。
本日は、南部連合の代表としてこの会見に
参加しているでござるよ」
鉄腕王 こくり
銀虎公「まずは、この場を借りてお礼を申し上げる。
蒼魔族は我ら魔族にとっても魔王殿に弓引く逆賊。
その討伐のために軍の通行を許可いただいた。
我らは恩義を感じている」
東の砦将「魔族の勢力争い、いわば内輪もめの
とばっちりを人間界にかけたことに関しても
氏族は謝意をもっている」
鉄腕王「……」
軍人子弟「王。鉄腕王。……意地張っている場合
じゃないでござるってば」
鉄国少尉「そ、そうですよっ」
鉄腕王「……」じぃっ
銀虎公「……」じっ
276 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 18:44:25.10 ID:chcZF3wP
鉄腕王「……今回の戦いでは、獣牙一族も
大きな犠牲を出したと聞くが」
銀虎公「たしかに。人間の乱入軍のもつ
得体の知れない武器に傷つき倒れた者もいる。
しかしいずれの獣牙の勇者達。雄々しく散ったのだ」
鉄腕王「心中お察しする」
銀虎公「……」
東の砦将(ふぅ……)
軍人子弟(何とかなったでござるか)
鉄腕王「この森は深い。未開の原生林だ。不便はないかね」
銀虎公「ない。我らは山野の民だ。ここは空気が美しく
過ごすのによい場所だ。提供してくれたことを感謝しよう」
軍人子弟「食料はどうですか?」
東の砦将「あっちから持ってきたものがある。
あと箱森で、猪だの鹿だのを多少とらせてもらえば
それで間に合うはずだ。なんにせよ、長居するつもりもない」
鉄腕王「では、後ほど、いくつかの物資と酒を届けさせよう」
銀虎公「かたじけない」
鉄腕王「では、行くぞ」がたり
278 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 18:45:38.97 ID:chcZF3wP
東の砦将「いやいやっ。せっかく来ていただいたんだ」
軍人子弟「そうでござるよ。この機会に詰めておくべき事も」
鉄腕王「互いにともがらを失ったのだ。
それを送るには、今少しの時間と酒がいるだろう。
われら鉄の国は武の国だ。武には武の礼節がある」
銀虎公「……」
東の砦将「……」
軍人子弟「そう……で、ござるね」
東の砦将「お気遣い、感謝いたす」
鉄腕王「それに細々しい外向的な用向きは
冬の女王と、そちらの外交使節団が片付けるだろうよ。
まだ魔族と急に握手をする気にはなれん。
多くの国民もそうだろ。
しかし今度逢う時は、もうちょっと
わだかまり無く酒が飲める。そんな時代になるといいな」
銀虎公 こくり
東の砦将「……」
鉄腕王「では、行く」
ざっ
銀虎公「獣牙の戦士を、槍を掲げてお送りしろ」
獣牙戦士「はっ」
獣牙戦士「戦士の一族の魂に慰めあれっ」
282 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 19:17:36.57 ID:chcZF3wP
――冬越しの村、湖畔修道院、院長の私室
女騎士「ふむ……」
魔王「覚悟は決めた」
メイド長「まおー様も立派になられて」うるっ
女騎士「で、どうするつもりなの?」
魔王「それが全く判らない」
女騎士「……おいおい」
魔王「いや、私たちの一族は誰でもそうだが
基本的には自分の研究ジャンル以外には疎いのだ。
わたしは経済と言うことで、技術史や社会学にも
多少の知識はあるが、それでも専門からはほど遠い。
ましてや軍事学など専門外なのだ」
女騎士「そうか……。
魔王だからてっきりそっちの専門家かと」
魔王「とんでもない」
女騎士「だがしかし、マスケットとかは
魔王がアイデアをスケッチして、
鉄の国の技術者に施策を依頼したのだろう?」
魔王「そうだ。その情報が漏れて、
中央に伝わったとしか考えられない。
わたしは異端騒ぎで掴まっていたりしたからな。
そんなときに怖くなった職人の誰かから
聖教会へと漏れたのだろう」
メイド長「……そうですね」
283 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 19:19:59.35 ID:chcZF3wP
女騎士「これか」 かちゃり
メイド長「あら、手に入れたのですか?」
女騎士「戦場を捜索して何個かはな。
だが、やはり良く判らない。
説明をしてみてくれないか?」
ガチャガチャ
魔王「ふむ、思ったよりも軽いな。
工作精度の問題か……。
乱暴に説明をするとこのマスケットは、鉄の筒だ。
筒の中に、丸い金属の玉と、火薬を詰める」
女騎士「火薬というのは昔話していたあれ?」
魔王「そうだ。ガンパウダーだ。
この火薬という物質は、火を付けると激しい勢いで爆発する。
密閉された容器での爆発力は開放部分に集中するので、
高速で玉が飛び出す。言ってしまえばそれだけの仕掛けだ」
女騎士「聞いてみると随分単純な武器なんだね」
魔王「単純だが、要するに刃のついた棒を
振り回しているだけの剣や槍よりは複雑だな」
女騎士「それもそうか……。
で、このマスケットは武器としての性能は
どのようなものなの?」
魔王「正確なものは実験しなくては判らない。
と、いうものの、基本構造は今言ったように単純だが、
精度や工夫には様々な課題があるからだ」
284 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 19:21:25.50 ID:chcZF3wP
女騎士「……そうか」
魔王「だが、見た感じで言うと、
射程距離はおおよそ100歩くらいで、
威力は板金鎧を打ち抜くほどではないだろうか」
女騎士「たいしたものだ。石弓を上回るんだね」
魔王「そうだ。発射間隔は5分に一度から、
1分に一度程度まで、これは射手の練習度に大きく依存する。
命中精度もまた同じく射手次第だな」
女騎士「ふむふむ」
魔王「ただし、この長い筒を玉が駆け抜けていって
殆ど直線上に飛ぶし、矢よりも風の影響は受けづらい。
だから、素人が使うのならば、矢よりも命中率はいいはずだ」
女騎士「……」
魔王「それに、説明でうすうす想像もついているかと思うが
弓の反発力で矢を飛ばす長弓は、弓の大きさ素材が威力を
決める。つまり、引く力が威力に直結する。
石弓も同じ機構だが、クランクやギアなどで引く力を
肩代わりできる点が違うわけだな。
そこへゆくと、このマスケットは火薬の爆発力が
威力を決める。
力が強いものが使っても威力は増えないが、
逆に力が弱いものが使っても威力は減らない。
どんな痩せた小男であろうと、板金鎧を貫く力が手に入る」
285 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 19:22:45.86 ID:chcZF3wP
女騎士「だいたい、判った」
魔王「ふむ」
女騎士「この武器自体は問題じゃない」
魔王「そうなのか?」
女騎士「やっかいな武器ではあるけれど、所詮武器。
戦術を適切に立てれば、勝つことは難しくない。
だいたい射程の百歩だって、そこまではないと思う。
50歩もはなれたら、鎧で止まるのじゃないかな。
それに、命中精度は相当に低い。
司令官を狙うのなら熟練の長弓兵の方が期待できる」
魔王「そうなのか?」
女騎士「しかし、それは人数が等しい場合だ。
この武器がやっかいなのは、いや、そうじゃないな。
こんどの聖鍵遠征軍がやっかいなのは、
このマスケットの持つ考え方に正しく気がついて
運用してきた所にある。
つまり、“この発明は人間同士の力の差を小さくする”
って言う部分なんだろうな。
おそらくこのマスケットを配った10人の農夫と
10人の騎士が闘えば、10人の騎士が勝つだろう。
でも、30人の農夫ならば、農夫が勝つ。
騎馬の持つ力や重装甲の絶対的有利が
崩れてしまう武器なんだな」
魔王「……」
メイド長「……」
286 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 19:24:41.55 ID:chcZF3wP
女騎士「おそらくこの武器を最も有効に活用する方法は
平原における会戦で、歩兵の密集隊形からの射撃だろうな」
魔王「ふむ」
女騎士「……さて」
魔王「どうだ?」
女騎士「魔王が思いつく、この武器の弱点は?」
魔王「簡単な所では、着火機構だな。
火のついた縄を用いるせいで信頼度が低い。
つまり、発射しない時があるのだ。
それに射撃姿勢の自由度も失われる。
水平射撃が最も安定するな。
また、当然火を使うために水気に弱い。雨は大敵だ。
火縄を用いる構造上、完全な密集隊形はとりづらいと
言うこと点ある。
補給にも問題があるな。
火薬がないと無用の長物になるし、火薬は、たとえば
予備の矢の用に戦場で作るわけには行かないから」
女騎士「……そう言った機構上の弱点を改良する
方法はあるのだろう?」
魔王「うむ。それはフリントロックと言われている、
このマスケットの一段階進歩したタイプでな。
着火機構に火打ち石を使うことによりいくつかの
弱点を克服できることになる。密集率をより上げるとか」
女騎士「うーん。その情報も漏れている可能性は?」
魔王「否定は出来ない。けれど、量産はまだなんだろうな。
もし量産が成功していたら、
こんな旧式が沢山配備されているのはおかしい」
289 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 19:27:29.73 ID:chcZF3wP
女騎士「……まず、このマスケットを我が
南部連合でも大量に生産するというアイデアは却下だ」
魔王「そうか」ぱっ
女騎士「別に魔王の良心におもんばかっている訳じゃない。
けれど、このマスケットの一番の特徴は
“人数を戦闘力に置き換える”と言う部分だと思う。
だとすれば、同じマスケットと同じ戦法でぶつかり合えば
人数が多い方が勝ってしまう。
もちろん現場での用兵で寡兵が多数に勝つこともあるが
その場合でも、少数の側の被害を押さえることは難しい。
その“人数を戦闘力に置き換える”というのは
おそらく専門の軍人ではない、短期間の訓練を施した
即席兵を戦場にかり出すことで実現されるはずだ。
聖鍵遠征軍なんて、まさにそのためのお題目なんだから。
相手の得意な戦場で戦ってはだめだ。
三ヶ国は人工ではまだまだ中央国家に及ばないんだからな。
わたしは馬鹿だけど、それくらいは戦場の常識だ」えへん
魔王「そうだな。それでは意味がない」
女騎士「一番良いのは、兵糧攻めだ。
闘わずして勝つことが出来る。相手は数も多いしな」
魔王「それならば専門分野にも近い。多少は協力できるはずだ」
女騎士「だが、そうなると、今度は暴走が怖いんだ。
飢えて凶暴になった20万の軍が、自暴自棄になって
襲いかかってきたら、どんな国の軍だって
引き裂かれてしまう」
魔王「うん」
290 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 19:29:04.87 ID:chcZF3wP
女騎士「それに戦場では常に想定していないことが起きる。
それをわたしは今回高い代価を払って学んだ。
兵糧攻めだけでどうにかなるなんて
甘い考えはよした方がいいな」
魔王「うん……」
メイド長「でも、マスケットの集団と闘うのは
どうやっても犠牲が大きくなりすぎますよね……」
女騎士「……」
魔王「……」
メイド長「……」
女騎士「魔王、威力は力には依存しないと言ったけれど
では火薬の量には依存するのか?」
魔王「おおむねそうだな。
火薬を増やし、火薬に耐えうるだけの筒の強度を保証し
玉の大きさを大きくすれば、当然威力は上がる」
女騎士「威力が上がれば射程も伸びるか?」
魔王「当然な。だが、まぁ、玉も重くなるから
火薬を二倍にすれば二倍、と言うわけにはならない」
女騎士「射程だけを増やす方法はないのか?」
魔王「射程……」
女騎士「相手と同じ戦場で戦うのは、
無意味であるばかりか有害だ。
で、あるならば、同じ戦場にいるべきではない。
そうだろう? 射程があれば、それが可能だ」
魔王「射程……か」
314 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 20:38:23.39 ID:chcZF3wP
――開門都市、『同盟』の商館
がやがや
辣腕会計「ふぅ」
同盟職員「一通りの手紙の処理は終わりましたかね?」
火竜公女「あとは、私的なものだけですゆえ」
辣腕会計「転移魔法ももうちょっと気楽に
使えればいいんですけれどね。
週一回で、小包程度じゃ貿易には使えない」
同盟職員「それでも、無ければ連絡だけで
大変な手間になってしまっていましたよ」
火竜公女「その辺は追々工夫してゆかぬといけませぬね」
辣腕会計「委員からの手紙は無かったんですか?」
同盟職員「へぇー」にやにや
火竜公女「私的に手紙をもらうような関係では
ありませぬゆえ、当たり前です」ぷいっ
辣腕会計「そう言うことにしておきましょうか」
同盟職員「あれ、じゃぁこれは?」
火竜公女「ああ。これは妾の文通相手です」
316 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/01(木) 20:40:05.48 ID:chcZF3wP
辣腕会計「へ? 文通?」
火竜公女「ええ。妾の大事な薔薇水晶の角を触らせた
おのこですゆえ。慕ってきて可愛いのです」
辣腕会計「えーっと」
同盟職員「内緒にしておきます?」
辣腕会計「記憶にあるような無いような」
同盟職員「進んでいるなぁ」
火竜公女「ふぅむ」
「こんにちは!
火竜の公女さま。お仕事いかがですか?
冬の国では、いま、一年で一番良い季節を迎えています。
夏なので馬鈴薯が沢山取れて、毎日王宮にも運ばれてきますし
食卓も彩り豊かです。ことしは、カブがとても豊作でした。
だから、豚さんもいっぱい食べて元気です。
この間。鉄の国で痛ましい戦争がありました。
商人先生は毎日難しい顔をしています。
ぼくは毎日帳簿の整理と清書をしています。
最近では、6桁の暗算も出来るようになりました。
毎日やるとすごく早くできるようになりますね。
でも、まだ先生には内緒です。
公女さまは、また冬の国に来ませんか?
はちみつのお菓子の新しいのがとても美味しいのです」