Part73
675 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 23:57:31.04 ID:L1AOl7sP
衛門騎士「こっちにも歩兵がっ」
東の砦将「騎兵はいないのか、こいつらっ」
魔王「東はダメだっ」
東の砦将「そんな事言ったって、その西がっ」
ガサガサッ! ジャブジャブッ
光のマスケット兵「ひっ! い、いたぞっ!!」
光のマスケット兵「死ねっ!! 異端めぇ!」
光のマスケット兵「我ら信徒以外の南部の民は皆異端だっ!!」
光のマスケット兵「ば、化け物と一緒にっ。っ! 死ね魔女!!」
ゴウゥゥン!! ゴォォン!
ゴウゥゥン!! ゴォォン!
魔王「〜っ!」
メイド長 ぎゅぅっ!
ザシュ! ザパァッ!!
光のマスケット兵「ガハァァッ!!」
銀虎公「遅くなったな、魔王殿っ!」
魔王「銀虎公っ!!」
東の砦将「無事だったか!!」
メイド長「こんなに血を流しているではありませんかっ」
銀虎公「なんのこの銀虎公っ。三度魔王殿の命を
守るまでは死なぬと約束したっ!
いま、わが獣牙の者が西への活路を切り開いている。
蒼魔はまだしも、あの奇妙な筒は得体が知れぬ。
我が手の者もかなりの数やられた」
魔王「っ!」ぎゅぅっ
東の砦将「一刻も早く退却すべきだ。行こうっ!!」
704 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:37:51.23 ID:1eGbtUQP
――白夜の国近郊、原生林
ドグワシャーン!!
執事「っ!!」
勇者「な、んで爺さんっ」
蒼魔の刻印王「ゴボワッ!! グブゥッ」
執事「ふふふっ」
勇者「爺さんっ! 爺さんっ!! 何やってんだよっ」
執事「なかなか格好良い登場だったでしょ。にょほ……ほ」
勇者「穴だらけじゃねぇかよっ!!
何で俺かばってんだよ!
あんた年寄りじゃねぇか!
最近風邪の治り遅いとか愚痴言ってたじゃねぇかっ!!」
執事「風通しがよい紳士でございます」
勇者「馬鹿云ってんじゃねぇよっ!! “治癒呪”っ」
執事「向こう側が見えるシースルー。なんちゃって。
げぶっ、ごぼっ。……かはっ!!」
勇者「な、なんで。なんでこんなとこ……っ」ぼたぼた
執事「蒼魔族を探っていまして。……けふっ。
昔取った杵柄、無音潜入術でございます……。
戦の気配で、勇者の元へと……」
勇者「なんでだよぅ、なんで呪文が発動しないんだよっ」」
執事「……勇者こそ、血を流しすぎです。けふっ。
こんなにぼろぼろではないですか」
大丈夫、これしきでは死にません。
それより、早く、トドメを。そやつは、大きな障害」
蒼魔の刻印王「げぶうっ。ごはっ。げふっ……に、んげん、めぇ」
勇者「そんなこたぁどうでも良いんだよっ!!」
705 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:39:13.15 ID:1eGbtUQP
執事「にょほ……。そやつを暗殺する……機会を
狙っていましたが……とうとう、得られず……」
蒼魔の刻印王「このようなところで……、
終わってたま……る……か……っ」
ガサッガサガサ
勇者「っ!」
執事「このような……時にっ……」
ガサッガサガサ
傭兵隊長「睨むなよ。あんたの戦いは地面から見てた。
おい、とりあえず、酒ぶっかけて、包帯を巻け」
傭兵槍騎兵「はっ」
執事「……すみませぬ」
勇者「ぐっ。誰だ、お前っ」
傭兵隊長「爺さんももちろんだが
あんたも限界みたいだな。こっちの魔族も虫の息だ。
仲間割れなのか、魔族も?」
執事「こちらの方は魔族ではありません」
勇者「大差はねぇよ」
傭兵隊長「……」
執事「……」じぃっ
傭兵隊長「おい爺さん、助けて欲しいか?」
執事「ぜひっ。この方だけでもっ」
707 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:40:28.95 ID:1eGbtUQP
ガサッガサガサ
傭兵弓兵「隊長。さっきの変な筒を持った奴らと重武装兵士が
散開して森の探索に入っています。
どうも連中、中央の教会と貴族らしいですね」
傭兵隊長「はん。おい、勇者さんとやら」
勇者「くっ! こんな傷ぐらいでっ。げふっ」
執事「勇者、いけませんっ。私が参ります」
勇者「何だよ、爺さん。俺より重傷のくせにっ!!」
執事「そう言うことを言ってるのではありません。
勇者。あなたは……あの弾丸を受けてはいけませんっ。
あの悪意も、祈りも、受けてはいけません」
勇者「何云ってるんだか判らねぇよっ」
執事「人間を敵に回してはいけませんよ。
わたしが行きますから、勇者は逃げてください。
……にょほ、ほほっ」
勇者「ぜんぜんっ判らないぞ、爺っ!」
傭兵隊長「おい、兄ちゃん」
勇者「黙ってろっ!」
傭兵隊長「うるせぇっ! こっちだって命がけなんだ、
すぐ答えろっ! おめぇよ、誰かを助けて“ありがとう”って
云って貰ったこと、あんのかよっ!」
709 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:41:44.96 ID:1eGbtUQP
勇者「あるよ。どうだって良いだろ、そんなのっ」
傭兵隊長「何回だよっ」
勇者「んなの覚えちゃいねぇよ。いっぱいだよ」
傭兵隊長「そっか。ちっ。羨ましく……は、ねぇか。
1回こっきりだって、俺は負けちゃ、いねぇ」
傭兵槍騎兵「隊長……」
傭兵隊長「爺さん、こっちは良いんだな?」
執事「もちろん」
傭兵隊長「ふんっ。悪いな、こっちも余裕はねぇんだ」
蒼魔の刻印王「に、んげん、めぇ。許さぬ、許さぬぞぉ
このわたしに手を挙げるとは……身の程をっ」
傭兵隊長「戦場のことだ。許しておけ」
ザシュ
傭兵隊長「おい、若造、ちっけーの。
この爺さんと兄ちゃんを馬に乗せろっ」
傭兵槍騎兵「急げっ」
執事「ぐっ。げぶっ!」
勇者「何するんだよっ」
傭兵隊長「黙ってろっ! お前らみてぇに
身体中から噴水みたいに血をビュービューだしてる
連中見るとしらけるんだよっ!」
傭兵達「あはははは」「ちげぇねぇ」「まったくだ!」
714 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:43:14.85 ID:1eGbtUQP
傭兵隊長「おい、若造。ちびすけ。お前らはここで帰宅組だ。
二人を無事に届けろっ。
この指輪を持っていけ! コイツラは多分必要な人間だ。
氷の宮殿の貴族子弟の旦那に届けるんだっ。
こいつは重要な任務だぜ。ただのヒヨッコには任せねぇ」
若造・ちび助「はい、隊長っ!」
執事「……くふっ」くたっ
勇者「馬鹿云うな、俺はまだいけるっ!
勝手なこと云うなよっ! おれは、まだまだっ。ぎぃっ!!」
傭兵隊長「わかんねぇ兄ちゃんだな。
おめぇが頑張りすぎると
そこの爺さんが道連れで死んじまうんだよ。
そこの爺さんがかばったのは、おめぇの身体じゃなくて
魂なんだよっ! 分かれよ、この馬鹿ちんがっ!!」
勇者「っ!」
傭兵隊長「よーし、おまえら! 騎乗だ!
これからあの貴族連中に突っ込んでかき回すぞ!
陽気な歌を歌え!
野郎どもっ! おれたちゃ、未来の騎士様だぜっ!」
傭兵達「よっしゃぁ」 「ばっか野郎! 大将は白夜の王だ!」
傭兵隊長「あーっはっはっは!
ちげぇねぇや! お前らが騎士なら
俺は王様にしてもらわなきゃな!
さぁ、いくぞ! 馬鹿野郎ども!!」
715 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:44:32.64 ID:1eGbtUQP
勇者「ちょっとまてよっ!!」
ダカダッ
勇者「おい、馬を止めろっ。死ぬぞっ、あいつ死んじまうぞっ」
若造「生意気を云ってはダメだ」
勇者「ぐふっ……。っくぅ」
若造「ぼろぼろだ。生きているだけでおかしい」
ちび助「それに」
ダカダッ
ちび助「隊長の命令は絶対だ。じゃなきゃ、みんなが死ぬ」
勇者「俺が助ける役なんだぞっ。なんでだよっ。
なんでだよっ。なんでなんだよっ!!」
若造「……」
ちび助「隊長は、勇者だ。ヒーローなんだぞ?
俺を助けてくれた。沢山の孤児もだ。
あの街で、小さな女の子に“ありがとう”って云われたんだ。
お前みたいな得体の知れないちんぴらに
心配されるほどおちぶれちゃいない」
若造「そうだ。一人前の男は。立派な男は。
自分の死に場所は自分で選べる。
一人前の男は、自分一人の勇者なんだぞ」
勇者「なんでこんなに……っ。ごふっ、ごふっ……」
721 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:47:30.30 ID:1eGbtUQP
――青い光がくるぶしを洗う砂浜
ゴウゥゥン!! ゴォォン!
ぎゃぁっ!
手がぁっ!
異端だ! 異端は死ねっ!
ちきしょうっ! ちきしょうっ!
消してくれぇ! 焼けるぅ、俺の足がぁ!
誰か、手を貸してくれっ! 大木にはさまれてっ
ゴォォン! ザシュゥッ!
見えない、真っ暗だっ。助けて……
お前達はみんな精霊の敵だっ!
人間の分際でっ! ここから消えろっ!!
光の精霊よっ! お慈悲をっ!!
何だ、何が起きたんだっ!!
うわぁぁっ!
ドゴォォン!! ゴォォン!!
女魔法使い「……」
メイド姉「……判りました」
女魔法使い「……」
メイド姉「判りましたっ」ぼたぼたっ
723 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:49:11.65 ID:1eGbtUQP
女魔法使い「……」
メイド姉「なんで、こうなるんですか?」
女魔法使い「……成り行き」
メイド姉「成り行きっ!? 成り行きでこんなにっ、
こんなに人が死ぬんですかっ。そんな事許されるんですかっ!」
女魔法使い「では、成り行き以外の何なら赦せるの?」
メイド姉「……っ」
女魔法使い「……」
メイド姉「……それは。そんなのは」
女魔法使い「異なる二つの存在があり、
複層化されたレイヤにおけるベクトル量が違う場合
概念的なレベルにおいて速度差が生じる。
もしその二つが接近しており、影響を与える場合、
その相対的な速度差によって、
より高速な側が外側となって巻き込むことになる。
これを散文的に表現すると、時代の回転という」
メイド姉「……」きっ
女魔法使い「時代が回転する時、その軋轢は血を要求する。
血塗られた曲がり角を経て、時代は回転する」
メイド姉「そうでなきゃならないんですかっ!?
嘘ですっ! 平和に曲がることだってあるはずですっ」
女魔法使い「例外はない。
仮に血が流れていないように見えても
それは知覚できないだけ。
肉体の血ではなく、精神の、魂の血が流れただけ」
メイド姉「……嘘、です。そんなのっ」
724 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:52:31.32 ID:1eGbtUQP
女魔法使い「嘘ではない」
メイド姉「……っ」
女魔法使い「ときに、人より多くの血を流せる個人が現われる。
何によってかそうなった彼らは、
数千人分。時によっては数万、数十万人分の血を流して
回転の要求する血量を一人で肩代わりする。
彼ら個人によっても、時代の要求した血量は隠蔽される。
まるで犠牲など、無かったかのように」
メイド姉「……」
女魔法使い「嘘ではない。なぜならその証拠に
――貴方は、それを知っている。ううん、感じている」
メイド姉「……」
女魔法使い「今ならば判る。学んだ今ならば、
……魔界を征服するのは。それはそれで、回転だった。
しかし、その回転の必要とした血量は
(魔王+勇者)と多少の+αでまかなえたはずだった」
メイド姉「何を言っているか判りません」
女魔法使い「……判る必要はない。貴方は知っているのだから」
メイド姉「っ」
女魔法使い「だから道を探していた。ちがう?」
メイド姉「だからって。だからって」
女魔法使い「“勇者は報われない仕事だ。
特にこの世界ではそうなのだろう。
救うまでは神のごとく崇められるかもしれないが、
去れば記憶に残らない。
魔物を倒せば目的に近づくが、
魔物をすべて倒せば存在意義が無くなる。
勇者とはまるで自分を消滅させるために
輝いている星のようだ”」
725 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 00:54:40.87 ID:1eGbtUQP
メイド姉「あなたは……まさか……」
女魔法使い「それも真実だ」
メイド姉「だとすれば、貴方は悪魔ですっ」
女魔法使い「自覚のある罪と自覚のない罪では罪科が代わると?」
メイド姉「そうですっ!」
女魔法使い「……だとすれば、無知は得だ。
知らなければ知らないほど、罪が減るのだろう?」
メイド姉「だって、あなたはっ」
女魔法使い「……」
メイド姉「血を、血の量をっ。誰かを生かすために、
こんなにも沢山の血をっ、見殺しにしているんですかっ」
女魔法使い「……それも一面の事実といえる」
メイド姉「……っ」
女魔法使い「気に入らないのか?」
メイド姉「当たり前ですっ」
女魔法使い「ならば、貴方は貴方の道で救えばいい」
メイド姉「……っ!」
女魔法使い「忘れるべきではない。貴方も同じ船に乗っている。
貴方もあの血の流れに救われている。血のながれる河の船の上で」
メイド姉「それでもっ! それでもっ!」
女魔法使い「……送ろう」
メイド姉「……っ」
女魔法使い「……貴方には、やはりこの図書館は、似合わない」
815 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 16:40:41.77 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地
ゴウゥゥン!!
ガウゥゥン!!
「う、うわぁぁぁ!!」「う、うしろにもっ!!」
女騎士(これは……なんだっ!?)
冬国仕官「堪えろっ! 南の勇士よっ!
騎兵隊、左翼の敵突出部隊を叩けっ」
ゴウゥゥン!!
ガウゥゥン!!
冬国槍兵士「姫騎士将軍のためにっ!」
冬国弓兵士「我らが故郷のためにっ!」
蒼魔歩兵「助けてっ、何かがっ!」
ゴウゥゥン!!
ガウゥゥン!!
うわぁぁあ!! 見えない槍だっ、見えない槍なんだ!
女騎士「――っ! 仕官っ!!」
冬国仕官「はっ!」
女騎士「色狼煙をあげろっ! 合図だ! 前線を80歩後退っ!」
冬国仕官「何が起きているんですかっ!?」
女騎士「蒼魔族後方より無数の新たなる敵が現われた。
――おそらく、教会の遠征軍、その本隊だ。
ここまで早いとは。
それに、あの音は何だ……。嫌な予感がする。
狼煙を三本あげろっ!!」
816 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 16:41:45.49 ID:1eGbtUQP
斥候「騎士将軍っ! 敵はどうやら聖教会兵、その数数万っ!」
冬国仕官「数万!?」
斥候「未知の武具で武装し、魔族、我々関係なく、
行き会う全てに攻撃を加えておりますっ!!
冬国仕官「そんなっ。蒼魔族だけでも2万からの軍勢がいるのに
さらに数万だとっ!? こっ、ここまでなのかっ」
ゴウゥゥン!!
ガウゥゥン!!
女騎士「いいやっ。まだ生きている。
まだ負けてはいないっ。
防衛ラインを崩すな、湿地帯へは近寄らせずに、堅持しろ!
午後も深くなった、気温が下がるっ。霧が出るぞっ」
冬国仕官「……くっ。了解っ!」
女騎士「傷病者搬送を急げ!!
戦場図記載の深紅のルート以外
今後一切の使用を禁止する!! 全軍に通達っ!」
冬国槍兵士「押せっ! 押しかえせぇ!」
冬国弓兵士「ここは俺たちの国だっ!」
女騎士(使う相手が変わる、か。
……どこまで行けるか判らないが師弟合作だ。
蒼魔も教会も、付き合ってもらうぞっ)
817 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 16:43:43.43 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、森林部、待機場所
鉄国少尉「あれはっ」
鉄国歩兵「色狼煙ですっ! 少尉っ! 数は三本!
“全テノ関ヲ空ケテ放流セヨ”ですっ!」
鉄国少尉「判った。森の中の開拓兵に啄木で合図を送れっ!」
鉄国歩兵「はっ!!」
コーッン!! コーッン!! コーッン!!
鉄国少尉「すぐにでも来るぞ」
鉄国歩兵「はい。いや、……来ました」
鉄国開拓兵「水位が上がっていく……」
鉄国少尉「いいや、例年どおりに戻っていくだけだ」
鉄国歩兵「水路の様子はどうだ?」
鉄国開拓兵「はい……。大丈夫です!
湿地帯に流れ込んでいきます。
ものの20分もあれば、湿地帯はもとどおり
ぐちょぐちょになりますよ!」
鉄国少尉「混合具合は?」
鉄国歩兵「良好。水面に浮いています」
鉄国少尉「こっちは任務を果たしましたよ。
護民卿、騎士将軍……どうかご無事で」
820 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 17:05:51.23 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、混乱の蒼魔軍
蒼魔上級将軍「一時的撤退だっ!」
蒼魔近衛兵「ですがどちらへっ」
ゴウゥゥン!!
ガウゥゥン!!
蒼魔上級将軍「北だっ! 歩兵部隊を円陣とし、
しんがりを持たせる。騎馬部隊から先に北方へと移動をしろ!」
蒼魔近衛兵「これはっ……」
蒼魔上級将軍「どうした! こんどはなんだっ!」
蒼魔近衛兵「湿地帯がいつの間にか水量を増しています。
これではこの平地が、水路で造られた迷路のように……」
蒼魔上級将軍「迷路? 水量が増したとは言え、
膝までではないか。恐れるな! 場合によっては
馬から下りて手綱を取るのだっ!」
ゴウゥゥン!!
ガウゥゥン!!
蒼魔近衛兵「はっ! 行くぞ! 騎馬部隊!
先行して、敵の遊撃部隊を切り開くのだっ!」
821 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 17:08:03.86 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地
女騎士「火矢を放てっ!!」
ビュンビュンビュン!!
ビュンビュンビュン!!
冬国仕官「どうだっ」
ゴゴオオオオオオォォォォォォォォ!!!!
冬国槍兵士「っ!?」
冬国弓兵士「なっ!」
女騎士「全軍撤退!!」
冬国仕官「なんて光景だっ」
女騎士「設計された水路による半径五里四方の炎の迷宮だ。
蒼魔族の布陣が確定できなくて、
広めに範囲を取っていたけれど
それが退却を助けてくれることになるとは……」
冬国仕官「これで我が軍の勝利……ですか……?」
女騎士「いいや。おそらく、峠道に教会軍の本隊は存在する。
これで倒せるのは先遣隊でしかないと思うけれど……。
とにかく退却するまでの時間稼ぎは可能だ。
急げっ!! 傷病者には付き添え!」
冬国槍兵士「はっ!!」
冬国弓兵士「おい、行くぞ。帰るんだっ!」
女騎士「炎が回る。……指定の地域からは離れるなっ!」
823 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/29(火) 17:21:16.65 ID:1eGbtUQP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、乱戦地帯
聖鍵兵士「はぁっ! はぁっ!!」
聖鍵槍兵「こっちにはいない、進もう」
聖鍵銃兵「いや、まってくれ。装填しないと撃てない」ごそごそ
聖鍵中隊長「何をやっている、急げっ!」
聖鍵兵士「慎重に計量しないと……」
聖鍵槍兵「槍兵はそんな格好悪いことはねぇですよ」
聖鍵銃兵「うるさいっ。
……マスケットを支給されない落ちこぼれが」
聖鍵中隊長「静かにしろっ」
ガウゥゥン!!
聖鍵銃兵「あれは……」
聖鍵中隊長「我々の右翼だ。129部隊だな」
聖鍵兵士「て、てっ、敵が近くにいるのか」きょろきょろっ
聖鍵槍兵「く、くるなら来いっ」ばっ
聖鍵銃兵「あと少し、もう少しで装填が。あっ」
がちゃがちゃ。ずるっ
聖鍵兵士「腰抜けっ」
聖鍵中隊長「早く起きろ、マスケットを濡らすんじゃない」
聖鍵銃兵「お、俺は選ばれたんだ。選ばれたんだぞっ!
マスケットを持つ兵士として……。あれ?」
聖鍵中隊長「どうした?」
聖鍵銃兵「水に、ぬるぬるしたものが浮いてる……ひっ!!」
聖鍵兵士「炎がっ! 焔が駆けてっ!! ぎゃぁぁぁぁぁああ!!」