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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part72


533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:04:07.98 ID:L1AOl7sP
――白夜王国首都、荒れ果てた街路
 ビュンビュンビュン!!
   ビュンビュンビュン!!
  蒼魔警備隊「てっ! 敵襲っ!」
  蒼魔防御隊「敵だ、てっくふっ!? ぎゃぁ」
  傭兵弓士「鐘楼制圧っ!!」
  傭兵剣士「続いて兵舎に向かう。この鐘楼から援護頼む」
  傭兵弓士「任せておけっ」
傭兵隊長「野郎どもっ! 行くぜっ!」
傭兵槍騎兵「はいやっ!! せいや!」
ダカダッダカダッダカダッ!
傭兵隊長「防備柵をぶっ壊せ!!」
傭兵槍騎兵「おおおおっ!」
 がっしゃーん!!
飢えた市民「ああっ!!」
飢えた難民「あ、あんたがたはっ!」
傭兵隊長「おい! あんたらこの国の人間かっ!?」
飢えた市民「そうです、奴らが! あの蒼い魔族が」
傭兵隊長「わぁってるって! あんたらの長はどこだィ!?
 他に捕まっている連中はどこだ?」
飢えた難民「わ、わかりません。おそらくあちこちの
 屋敷に閉じ込められて、大きな建物に沢山押し込められて
 無理矢理鞭で働かされて……」
傭兵槍騎兵「大きな屋敷……」

534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:05:29.37 ID:L1AOl7sP
蒼魔駐留仕官「貴様らっ!! と、突撃ぃ!!」
蒼魔警備隊「うわぁぁ!!」
傭兵隊長「しゃらくせぇ!!」
ガギィン!!
傭兵槍騎兵「隊長のお話中だっ! 行儀良く死にやがれ!!」
ザッシュ!!
傭兵剣士「隊長っ!! 兵舎を制圧! 兵士は殆ど
 いやがりませんでしたっ。奴らはいったい……」
傭兵隊長「わかったぞ! 魔族の兵は殆ど城だ。
 って事はそこらの貴族の館や豪邸を調べろ!
  難民や市民が閉じ込められていたら即座に解放して、
 食料と衣服だけもって逃げ出せって云え!!
 方角は北西の森だ。
 いいか、財産や荷物を持っていこうとしたらやめさせろ。
  動きが遅くちゃ話しにならねぇ!!
 とにかく逃げさせるんだっ!」
傭兵槍騎兵「判りやした。おい、五、六人ついてこいっ。
 他の隊長にも連絡だっ!」
傭兵隊長「本隊は城へと派遣しろっ!」
傭兵剣士「はっ!」

536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:06:55.82 ID:L1AOl7sP
傭兵隊長「弓兵部隊を編制。全ての鐘楼を制圧するんだ。
 その後城壁に取りかかれ。相手の人数は少ない。
 揺動して兵を偏らせて、弱点を突け!」
傭兵弓士「了解っ!」
痩せこけた娘「隊長さん、これ……」
傭兵隊長「は?」
痩せこけた娘「おみず……」
傭兵隊長「おう、あんがとよっ。嬢ちゃん。
 だがよ、おめえさんも顔を拭くこった。真っ黒だぜ?」
痩せこけた娘「おかさんが、襲われないように。
 きたなくしなさいて……」
傭兵隊長「そっか。……賢いな。
 じゃぁ、賢いついでだ。母ちゃんと一緒に西北を目指せ!
 他のみんなにも触れて回るんだ。
 この辺にはもう魔族の連中はいねぇ。
 わかるな?」
痩せこけた娘「できる」こくり
傭兵隊長「よっしゃ、急げ! どうやら俺の鼻が
 まだむずむずしやがる」
痩せこけた娘「ありがと、ね?」
傭兵隊長「うるせぇや。……急ぎなっ!」

551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:24:22.04 ID:L1AOl7sP
――白夜王国首都、荒れ果てた市街
ギン! キィンっ!!
蒼魔駐留仕官「退くな! ここで退けば刻印王に罰せられるぞ!」
蒼魔警備隊「人間めぇ! 下等な生物のくせに、死ねぇっ!!」
傭兵剣士「下等も上等もあるか、このボケがぁっ!!」
    傭兵弓士「斉射っ!!」
      ビュンビュンビュン!!
       ビュンビュンビュン!!
蒼魔駐留仕官「なっ!」
蒼魔警備隊「後ろっ!?」
蒼魔防御隊「ぎゃぁぁぁあ!!」
傭兵隊長「どうだっ?」
傭兵槍騎兵「市街地の制圧、ほぼ完了。
 南東を除いて市民への通達も終了。ただいま小隊に編制した
 200人で個別に家々を当たらせています」
傭兵隊長「急がせろっ」
傭兵槍騎兵「城ですか?」
傭兵隊長「この感じは、違うな。もっときな臭ぇ」
傭兵槍騎兵「?」
傭兵弓士「隊長っ!! 隊長っ!!」
傭兵隊長「どうしたっ?」

552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:25:18.08 ID:L1AOl7sP
傭兵弓士「北部街道に、軍勢ありっ。
 この白夜国首都に向かっていますっ!!」
傭兵隊長「規模、軍装、速度報告っ!」
傭兵弓士「速度は徒歩更新、距離はおそらく5時間っ!
 夕暮れには到着っ! 軍装は歩兵装備と思われる物が
 中心なれど、遠距離のために未確認っ。規模はっ」
傭兵隊長「規模はっ?」
傭兵弓士「見渡す限りっ。最低で数万っ!!」
傭兵隊長「っ!」
傭兵槍騎兵「ど、どうします、隊長っ!?」
傭兵剣士「城門前広場に、残留部隊の結集終了っ!」
傭兵隊長「市民の避難にどれくらい掛かる?」
傭兵槍騎兵「おそらく半日弱は」
傭兵隊長「急がせろ。片刃団の旦那に話しをつけるんだ。
 支給馬車部隊をでっち上げるて難民の中でも傷病者や
 老人どもは有無を云わさず乗っけちまえ。避難を急がせろ!」
傭兵槍騎兵「人間ですよね、その軍勢は。援軍ですか?」
傭兵隊長「敵だ」
傭兵槍騎兵「そんなっ!?」
傭兵隊長「このタイミングで援軍なんてあるもんかっ。
 そんなぬるい話世の中にありゃしねぇ。
 おい、命しらずの馬鹿野郎どもッ!!」
傭兵たち「おうっ」 「はっ!」 「何だよ大将っ!」
傭兵隊長「騎馬で20騎ほど着いてこいっ! 斥候に行くぞ。
 残った連中は市民の避難を最優先させろ!
 城の中の魔族は威嚇射撃で固めておけば問題はねぇっ!!」

559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:44:33.93 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、蒼魔軍
蒼魔近衛兵「なっ!」
  ガァァァ! グワッシャ! ザシュゥ!
  「なっ! な……なんでっ!」「敵襲っ!」「敵襲っ!!」
蒼魔軍軽騎兵「後方、後方だっ!」
蒼魔軍歩兵団長「いや、左翼だっ!!
蒼魔上級将軍「何が起きたっ!? 報告せよっ!!」
蒼魔近衛兵「敵襲ですっ」
  ザシュゥ! ドシュ! ザシュ! ヒュバッ!
  「敵襲っ!」 「獣人だ、すごい数の獣人がっ」
獣牙双剣兵「獣牙の一族、森狼族見参ッ!!」
獣牙斧兵「同じく、黒猪族っ、蒼魔族に天誅を加える!」
獣牙短槍兵「雪豹が一族の戦士、参戦いたすっ!」
蒼魔上級将軍「何故獣人どもがっ!?」
蒼魔近衛兵「反転っ! 重装歩兵団を反転させよっ!」
蒼魔上級将軍「無能者がっ!」
 どかっ!
蒼魔上級将軍「前方丘陵地帯に脇腹を見せるつもりかっ!?
 軽騎兵団、重騎兵団っ。歩兵の展開余地を確保するのだ!!
 迂回して獣人の一軍を突けっ!!」
蒼魔軍軽騎兵「ははーっ!」

560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:47:15.11 ID:L1AOl7sP
獣牙双剣兵「はははっ! そのような物かっ」
ひゅばっ!
獣牙斧兵「騎馬がなにをするものぞっ!!」
ドガァン!
蒼魔上級将軍「何をしているっ!?」
蒼魔近衛兵「敵の数は予想よりも多く、その数五千以上っ」
蒼魔上級将軍「予備兵力を投入せよっ」
蒼魔近衛兵「展開できるだけのスペースがありませんっ。
 そのうえ、獣人の一族はわざわざ湿地帯を選び戦い、
 こちらの騎馬部隊の機動力がいかせませぬっ」
蒼魔軍歩兵団長「獣臭い、土着の民めがっ!」
  ザシュゥ! ドシュ! ザシュ! ヒュバッ!
 「蒼魔族を討てっ!!」 「我ら獣牙の勇士っ!」
 「魔族の正義を天に知らしめよっ!」 「我らが勇気をっ!」
蒼魔上級将軍「歩兵団長っ!!」
蒼魔軍歩兵団長「はっ!!」
蒼魔上級将軍「歩兵団から精鋭を抽出し、橋頭堡を500歩分
 おしあげよっ!! 決死の覚悟で行なうのだ。
 それだけの余裕があれば、現在遊兵となっている
 歩兵部隊を獣人に向けることが出来るっ」
蒼魔軍歩兵団長「承りましたっ!!」

561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:48:16.80 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地
 わぁぁ! ガキン! ガシャン!
  うわぁぁ!! 進めぇ! 進めぇ! 人間を皆殺しにせよっ!
冬国槍兵士「圧力が上がったっ!?」
冬国弓兵士「なにを、一歩も、退くなっ!!」
 ビュンビュンビュン!!
   ビュンビュンビュン!!
女騎士「違うっ!! これは好機だっ!! 後衛槍兵部隊っ!!」
混成槍兵士「はっ!」
女騎士「今こそ出番だ。前線へと移動!
 中央槍兵は入れ違いに後退っ! 騎馬部隊の退却を助けると共に
 敵の圧力を押し戻せっ! わたしも出るっ」
冬国仕官「そんなっ」
女騎士「南の凍土の勇士達よっ!! 聞けっ!!
 この一戦の持つ意味をっ。その魂にきざめっ。
 故郷を守るために一歩も退くな!
 敵が魔族だからではないっ。
 ここは諸君と諸君の父祖が開拓した故郷だからだっ!
  思い出せっ!! 背丈を超えるほどの大岩を動かし
 ひび割れた手で苗を植えっ、凍り付いた大地に桑を撃ち込み
 そしてこの大地は実りを約束する諸君らが故郷となったのだ!
  眼前を見据えろっ! 敵は魔族ではないっ!!
 やつらは侵略者なのだっ。敵は、侵略をしてくる存在だっ!
 戦えっ!! 故郷を守るためにっ。後1時間だけ持たせろっ!」

566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:55:10.09 ID:L1AOl7sP
――白夜の国近郊、原生林上空からの落下
ヒュゴォォォー!!
勇者「やめろぉ」
蒼魔の刻印王「未だかつてその言葉で
 手をゆるめるような相手がいたのかね?」
ヒュゴォォォー!!
勇者「そいつらは、関係がないって」
蒼魔の刻印王「関係がないだと!? この世界全ては
 やがて我、魔王の物となるのだ。関係のない物など、
 存在しないわっ!」
勇者「逃げろっ! どこの軍勢だか判らないけどっ。
 逃げろおおおおお!!!」
蒼魔の刻印王「構う物か、灼熱の海に沈めっ!
 集えよ焔っ! 煉獄を焼き付くした七つの剣の名にかけて」
キイイイーン!!
勇者「っ!?」
蒼魔の刻印王「なっ! こ、これはっ!!」
キイイイーン!!
勇者「大規模集団法術……っ」
蒼魔の刻印王「身体がっ、じゅ、ばくされるっ」
キイイイーン!!
勇者「……こんな場所で、何でこんな大人数儀式をっ」
蒼魔の刻印王「なぜだっ。何故これほどっ」

568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:56:36.51 ID:L1AOl7sP
――白夜の国近郊、勇者を見上げる街道
宝石飾りの馬車の影「……光を……強めよ」
百合騎士団隊長「はっ! 司祭長! 呪縛するのだっ」
従軍司祭長「司祭よ! 声を合わせて祈りなさい!
 あれなるは魔族の将軍っ、敵の首魁のうち二人。
 構うことはありません、祈りの心を合わせて、
 光の縛鎖を構成するのですっ!」
従軍司祭「「「「はいっ!」」」」
宝石飾りの馬車の影「……」
百合騎士団隊長「250人の高位司祭の祈り、
 どのような魔族とはいえ逃れられるものではないだろう」
従軍司祭長「祈りなさい! 精霊の光を求めて。
 締め付け、絞り上げ、砕け散るほどにっ!!
 あれは敵! 我らが人間族の敵っ!!
 敵の破滅を祈るのです。あの存在は、精霊の敵だっ!!」
宝石飾りの馬車の影「……ふふふっ……好機とは……」
百合騎士団隊長「いかがなさいます?」
従軍司祭長「聖別された月桂樹をふるのです」
従軍司祭「「はいっ!」」
 しゃらん…… しゃらん…… しゃらん……
宝石飾りの馬車の影「……銃に、祈りを、集めよ」
百合騎士団隊長「はっ! マスケット隊っ!!」

569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 21:58:35.07 ID:L1AOl7sP
――白夜の国近郊、原生林上空
キイイイーン!!
勇者「鎧に、ひびがっ……っ」
蒼魔の刻印王「身が、千切れそうだっ……」
勇者「はんっ。ざまぁ、ないっ」
蒼魔の刻印王「下らぬ事をっ。動けぬとは言え、
 貴様を消し炭にすること位できぬと思うているのかっ」
勇者「……っ!」
蒼魔の刻印王「“広域殲滅”……」
勇者「こんなところで広域殲滅呪文使うなっ! 糞野郎っ!」
蒼魔の刻印王「下らぬ静止を。自分が誰の攻撃を受けているのか
 考えても見るのだな。……人間族からも見捨てられたか」
勇者「違うっ! おれは、違うっ!!」
蒼魔の刻印王「違わぬっ! 所詮この世界はっ」
   ゴォォォーン!!
勇者「ガハッ」
蒼魔の刻印王「グフッ」
勇者「なん……だ、これ……」
蒼魔の刻印王「……傷口が、灼ける。……鉄の、玉?」
   ゴォォォーン!!
   ゴォォォーン!!
   ゴォォォーン!!

578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 22:03:04.96 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、蔓穂ヶ原、南部
魔王「気にくわないな」
メイド長「どうしたんですか?」
魔王「いや……。女騎士は、何をするつもりだったんだ」
メイド長「?」
衛門騎士「あの中央丘陵の徹底死守では?」
魔王「なぜ?」
メイド長「……」
東の砦長「ふぅむ。あの姉ちゃんは、あんだけの用兵家だ。
 じり貧なのは見えていただろう。
 こっちの援軍を当てにしていたのか?」
魔王「で、あればいいのだが」
メイド長「まおー様、そんな風に考え事をしていると、
 泥が跳ねて汚れてしまいますよ」
東の砦長「戦場だ。仕方ねぇよ、目くじら立てるなって」
魔王「泥――」
メイド長「?」
魔王「砦長、銀虎公に至急伝令っ!
 西方に向けて退却っ。全速だっ!!」
衛門騎士「我が軍は優勢ですぞっ」
東の砦長「いいや判った。伝令だなっ!!
 急げっ!! 最重要だっ!! 退却を始めるぞっ!!」

580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 22:04:26.07 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、蒼魔軍
蒼魔近衛兵「将軍っ!! 上級将軍っ!!」
蒼魔上級将軍「どうしたっ!」
蒼魔近衛兵「獣人が撤退してゆきますっ!」
蒼魔上級将軍「なんだとっ? ……奴らは優勢に戦を
 展開していたはず。我が軍の回頭はっ!?」
蒼魔近衛兵「未だ半ばです。騎馬隊の追撃をさせますか?」
蒼魔上級将軍「馬鹿を云うな。この湿地帯でどのような
 事になるかも判らんのかっ。だが好都合だ。
 今のうちの獣人の一族方面に重奏騎兵部隊を配置せよ。
 日が落ちる前に前方の人間の部隊を一網打尽にするぞ!!」
蒼魔近衛兵「はっ!」
蒼魔軍歩兵団長「全軍前進っ!!」
ダカダッダカダッダカダッ
斥候「報告っ! 報告でございますっ!
 将軍、上級将軍っ!! 後方に敵部隊出現っ!」
蒼魔上級将軍「何を慌てているっ」
斥候「後方に聖王国の軍が出現しましたっ。辺境国境地帯を
 通ってきたらしく監視から漏れて、その……」
蒼魔上級将軍「聖王国だと? それは援軍だ。
 ふっ。どうやら待ちきれなかったと見える。
 あの硝石とやらが喉から手が出るほど欲しかったのだな。
 くっくっくっく」

582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 22:05:29.55 ID:L1AOl7sP
蒼魔近衛兵「距離は? 数と装備は?」
斥候「最後尾はほんの30分ほどで接近します。
 数は、無数。最低でも三万」
              ……ウン
蒼魔上級将軍「三万とはなっ。はんっ!
 参謀殿も気が早い。この際、三ヶ国を一気に平らげるおつもりか。
 まぁいい。今は目前の敵に集中せよ!
 どうした!
 獣人の一族の脅威は去った、まだ押しやれぬのかっ!!
  これ以上の時間をかけるようならば、歩兵隊を処罰するぞっ」
              ……ォゥン
斥候騎兵「将軍っ!! 将軍っ! 報告でありますっ!!」
 ズル、グシャ
蒼魔上級将軍「落ち着けっ」
斥候騎兵「後方に聖王国なる軍数万がっ」
蒼魔上級将軍「愚か者っ。そのような報告、すでに聞いたわっ!」
              ……ドォゥン
斥候騎兵「その軍が、未知の武装により我が軍を攻撃っ!!
 我が軍後衛部隊、および輜重防衛部隊は、すでに全滅っ!!」
蒼魔上級将軍「なっ。なん……だと……ッ!!」

666 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 23:50:40.46 ID:L1AOl7sP
――白夜の国近郊、街道
宝石飾りの馬車の影「……かの二人、蒼魔の王と、堕ちし者」
百合騎士団隊長「はっ」
宝石飾りの馬車の影「……なんとしても、仕留めよ。
 ……あれは、あのものは……人間を攻撃……できぬ……
 呪い、悪罵を持て、包囲せよ……あざけり、拒絶するのだ
 それだけで……あれは……ちからを、うしなう……
 祈りを込めた……鉛で……
 かの者の……命は……断てる……」
百合騎士団隊長「承りましたっ」
従軍司祭長「大主教さまっ」
従軍司祭「奴らは落ちました! あの高さ、助かるはずもなくっ」
百合騎士団隊長「油断するな! 必ずや死骸を見つけ出せ
 いいや、必ず生きているぞっ! マスケット隊と
 従軍司祭の部隊をもって方位探索の上、殲滅するのだ!」
従軍司祭長「はっ!」
マスケット兵「探索部隊、用意っ!」
宝石飾りの馬車の影「……機会は多くない。かならずや……」
百合騎士団隊長「必ずや見つけ出し、草の根分けても殺すのだ!」

671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 23:54:23.70 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、蔓穂ヶ原、中央部付近
ゴウゥゥン!!
魔王「はぁっ! はぁっ!」メイド長「まおー様っ! まおー様っ!」
ガウゥゥン!!
衛門騎士「何だ、この音はっ」
魔王 ガクガクっ
メイド長「まおー様。しっかりしてくださいっ」
東の砦将「大丈夫かよ。真っ青だぜ」
魔王「――な、なぜだ。
 何故ここにあれがあるっ。な、なんでっ」
ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!
メイド長「まおー様っ」
魔王「誰が、何故っ。――こ、これほどの量をっ」
東の砦将「何か知っているのか、魔王様ようっ!」
魔王「だ、だめだっ! 女騎士が死ぬっ。
 あ、あれは蒼魔族などよりもずっと恐ろしいものだっ。
 女騎士がっ!! このままでは、それはいやだっ!」
メイド長「まおー様っ」
パシンッ!!

673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 23:55:11.58 ID:L1AOl7sP
ゴウゥゥン!!
   ガウゥゥン!!
メイド長「しゃんとしてくださいっ!」
魔王「あ……」
メイド長「こんなところで足をすくませて死ぬおつもりですかっ!」
ゴウゥゥン!! ゴォォン!
衛門騎士「近いっ! 東、尾根っ!」
東の砦将「来やがった、逃げるぞ!!」
魔王「……くっ」
メイド長「こちらへっ」
衛門騎士「切り開きます。続いてくださいっ!!」
東の砦将「どこにこれだけの歩兵がっ。なんだあの杖はっ!?」
魔王「銃……。マスケットだ」
衛門騎士「ぐっ!」
ゴウゥゥン!! ゴォォン!
  「ぎゃぁっ!」 「手がぁっ!」 「見えない、真っ暗だっ」
  「何だ、何が起きたんだっ!!」 「うわぁぁっ!」
東の砦将「ちきしょうっ。なんて数だ!
 こいつらなんだってんだ!!」
メイド長「っ!」