Part71
452 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 18:52:30.89 ID:L1AOl7sP
鉄腕王「氏族? 氏族ってのは生まれが一緒の
一族じゃなかったのか?」
勇者「多くの場合そうだが、
そうじゃなきゃならないと云う法律はないらしいんだ。
だから連中は強引に宣言して、忽鄰塔に殴り込んだ。
俺たちは戦争には反対だ、ってね。
――それが一つの切っ掛けになって、
会議全体はいまで停戦の意志に傾いている。
もちろん人間に対する疑いや反感は根強い。
停戦なんて実現できるのかどうか疑問視しているのも事実だ。
だが、戦争は失うものが大きく、もし開始したら
どちらかの世界が、もしくは両方の世界が破壊寸前まで
疲弊するだろうという認識は、一致した」
鉄腕王「破壊か……」
冬寂王「うむ」
妖精女王「わたしは忽鄰塔、
新生八氏族および魔王の意志の代弁者としてこちらに伺いました。
もちろん人間世界が一枚岩で無いことは判っております。
魔界にしてからが、蒼魔族の暴走を
食い止められなかったわけですから……。
まず、第一に我らは蒼魔族を討ち取るべきだと考えます。
蒼魔族の暴走を許したのはわたし達の責任。
魔界の軍を蒼魔族の元へと向ける許可を頂きたい。
さらには、わたし達は、三ヶ国通商との停戦を求めます。
本当は人間世界全てとの停戦を求めているのですが
一部であっても、一つづつ解決するのが大事だと考えています」
羽妖精侍女 ぱたぱた
454 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/28(月) 18:54:05.40 ID:L1AOl7sP
鉄腕王「……」
冬寂王「どう考える?」
氷雪の女王「そう、ですね……」
妖精女王「……」
羽妖精侍女「……ウー」
鉄腕王「魔族の軍を侵入させるとして数は?」
妖精女王「約一万です」
鉄腕王「いまの話が全て嘘で、蒼魔族に増援を送り、
人間の世界侵略を進める謀略ではないという証拠は?」
氷雪の女王「その可能性は否定できませんね」
妖精女王「大空洞から進み、この国の国境付近に
我が妖精族の乙女、千人をまたせております」
羽妖精侍女「ハイ……」
鉄腕王「乙女?」
妖精女王「魔界の軍が撤収するまで、
それら乙女と共にわたしがこの城で人質になると云うことで
信じてはいただけないでしょうか?」
鉄腕王「……」
冬寂王「謀略の有無は判らないが、この三年間の経緯や
魔界での勢力関係などは、冬の国の調査隊が送ってきた報告と
どれも符合する。その部分までは信じても良かろう」
457 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 18:56:14.27 ID:L1AOl7sP
鉄腕王「勇者殿」
勇者「ん?」
鉄腕王「勇者殿はどういうおつもりで、お引き合わせなのか?」
勇者「こっちにはつもりも思惑もあるけれど、
いまはそれよりも、損得の話をすべきかと思うが?」
鉄腕王「……むぅ」
冬寂王「そうですな。勇者殿は何も南部諸王国の臣下ではない」
氷雪の女王 こくり
勇者「あー。誤解してそうだから言っておく」
冬寂王「は?」
勇者「俺は人間世界の守護者でもない。
俺は勇者――“救いを求める世界全てを救う者”だ」
羽妖精侍女「……」ぎゅぅっ
鉄腕王「我らの味方ではない、と」
勇者「敵味方なんて話しはしていない」
冬寂王「我らが望めば、我らも救ってくださると?」
勇者「この力の及ぶ限り」
氷雪の女王「では、この報せが……」
勇者「そう。この邂逅がいま現在、南部諸王国の救いだと信じる」
481 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 19:31:54.65 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地
女騎士「ひるむな! 目をそらすなっ! 撃てぇっ!」
冬国仕官「ぅ、撃てぇ!!」
冬国槍兵士「し、しかしっ!」
冬国弓兵士「相手は白夜国のっ!」
女騎士「躊躇うなっ! 全ての責はわたしが負うっ!
彼らを見よっ! まっすぐに見よっ!
彼らは武器を持って立ち向かって来る兵士なのだっ。
彼らは兵士だっ。奴隷などではないっ。
彼らを背中からの矢傷で死なせるなっ。
もし諸君らが傷つき、後悔と痛苦に苛まれるならば
その夜はわたしが諸君らに責められよう。
虐殺の汚名があるのならばわたしが受けようっ。
――いまは考えるなっ。持ちこたえよっ!」
冬国仕官「我らが後方には20万人の三ヶ国開拓民が
いるのだっ! 一歩退けば崩れるぞっ!」
冬国槍兵士「おお……。おおっ!!」
冬国弓兵士「う、撃てぇ!!」
びゅんびゅん! びゅんびゅん!
びゅんびゅんびゅん! びゅんびゅんびゅんっ!
女騎士「右翼騎兵騎乗っ!」
冬国仕官「はっ!」
騎兵団隊長「準備よしっ!」
女騎士「一撃離脱! 三連攻撃準備っ。行けっ!!」
483 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 19:34:08.97 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、蒼魔軍
蒼魔上級将軍「ふむ。崩れないな」
蒼魔近衛兵「敵も良く持たせておりますようで」
蒼魔上級将軍「だがこちらの犠牲者はほぼ全て奴隷。
どこまでその意志が続くか見物だと云えような。
……歩兵大隊!!」
蒼魔軍歩兵団長「はっ!」
蒼魔上級将軍「督戦隊に代わって奴隷どものケツを炙れ。
侵攻ラインを後方から押し上げよ。
人間族の奴隷を盾として、中央丘陵地帯に橋頭堡を築くのだ!」
蒼魔軍歩兵団長「はっ! 重装歩兵団っ!」
うぉぉーっ!
ザガチャ!!
ザガチャ!!
蒼魔軍歩兵団長「進軍開始! 頸鎧をあげよ!
五列縦隊三条をもって中央部に突撃っ!
ザジャ、ザジャ、ザジャッ!
蒼魔上級将軍「軽騎兵!」
蒼魔軍軽騎兵隊長「はっ!」
蒼魔上級将軍「歩兵団の突撃を右翼より側面支援せよ!
被害を増やすな。戦列の押し上げは歩兵に任せて、
後方攪乱を狙え!」
蒼魔軍軽騎兵隊長「御命、了解っ!!」バッ
484 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 19:35:57.72 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地
女騎士「くっ! 第三弓隊、100歩後退っ! 槍中隊後退支援!」
冬国仕官「矢の補充を急げっ!」
わぁぁ! ガキン! ガシャン!
「蒼魔の力を見せよっ!」 「刻印王のためにっ!」
冬国槍兵士「なんて圧力だっ!」
冬国槍兵士「姫将軍のためにっ!!」
女騎士「この程度でひるむ南の勇士ではないぞっ!」
冬国仕官「奮い立て!!」
冬国槍兵士「おおーっ!!」
兵士達「我らが姫将軍のためにっ!!」
兵士達「我が故郷たる大地のためにっ!!」
冬国槍兵士「早く下がれっ! 補給をして戦列に戻るんだ」
冬国弓兵士「判った、任せたぞっ」
わぁぁ! ガキン! ガシャン!
「押せぇ! 押せぇ!」 「奴隷は下がっていろ! 長剣兵!」
女騎士「いまだっ!! 騎兵突撃っ!!」
冬国騎士「「「「オオオオーッ!!」」」」
ダカダッ! ダカダッ! ダカダッ!
ガキィィーンッ!!
女騎士「敵の重装歩兵の脇腹を突け! 混乱させよっ!!」
487 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 19:44:54.80 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、森林部、待機場所
鉄国少尉「何が起きたっ!?」
鉄国歩兵「相手は、相手は人間ですっ! おそらく……」
軍人子弟「騎馬隊騎乗っ!」
ザザッ!!
軍人子弟「少尉っ!!」
鉄国少尉「はっ」
軍人子弟「当部隊歩兵全ての指揮権を委譲する。
この場所を死守せよっ! 砲声からして敵は少数っ。
拙者が後背を守るでござるよ」
鉄国少尉「はっ。……ほ、砲声?」
軍人子弟「いまは良い。おのれの任務を果たすでござるっ!」
鉄国少尉「しかしっ! この待機場所には騎兵は
100しかは位置されていませんっ!
それでは護民卿の守りがっ!」
軍人子弟「数の問題ではござらぬ」にこっ
ドゥゥゥーーン!!!
軍人子弟「騎馬隊、我に続けっ! 後方の敵を討つっ!!」
鉄国少尉「護民卿っ! 護民卿っ!!」
軍人子弟(マスケットが何故っ!?
あれは紅の師が鉄の国の工房に試作を依頼し、
その後の異端騒動でとうとう実用化へとは
至らなかったはずでござる……。
まさか、まさかっ、鉄の国の者がっ!?)
488 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 19:45:52.49 ID:L1AOl7sP
ダカダッ、ダカダッ、
軍人子弟「騎馬隊隊長っ! こちらの数はっ!? 続いているかっ」
騎馬隊隊長「全騎続いておりますっ。数100っ!」
鉄国騎馬隊「はいやっ!」「せやっ!」
ダカダッ、ダカダッ、
軍人子弟「聞けっ! 敵はおそらくマスケット部隊っ!
石弓に似た鉄製の武器でござる。当たれば鎧は意味を持たぬ。
防御を考えていては後れを取るっ! しかし射程は短く
1回発射を行なえば数分は再発射が出来ぬと思って良い」
騎馬隊隊長「はっ!!」
ダカダッ、ダカダッ、
軍人子弟「我らはその部隊の側面より奇襲、
中央部で乱戦することにより友軍を救うでござるっ!
敵方に槍兵の準備があった場合は、
高速でスレ違いざまに攻撃を加えよっ! 事は一刻を争うっ」
騎馬隊隊長「はっ!」
鉄国騎馬隊「了解っ」「承知っ!!」
軍人子弟「現在森林部では鉄の国の工兵達が作業中でござる。
彼らは兵とは云っても名ばかりの開拓民のあつまり。
わずかばかりの土地と自由を求め、
長い旅に耐え抜いた我らが同胞っ。
決して見捨てるわけにはいかないでござるっ。
また、湿地帯中央で戦っている我が軍の総指揮官
女騎士殿も我らが工作を当てにしておられるっ。
身命を賭して、強行突撃を行なうでござるっ!!」
鉄国騎馬隊「「「我ら鉄国の衛士っ。この命大地のためにっ」」」
493 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 19:56:34.26 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、王宮、大広間
勇者「なぁ」
鉄腕王「……」
氷雪の女王「……」
勇者「おれは、魔界の中心に突っ込んでいった暗殺者だったよ。
魔王を殺せば、その側近を殺せば、魔界の強いやつを殺せば。
それで平和になるってな。そんな事を考えていたよ。
戦うことの意味も考えず
平和の意味さえ考えずに、ただがむしゃらに
その実無責任に、ただ暴力を振るっていたよ。
でもな、もう、そういうのはやめた。
そういうので新しい世界へいけるだなんて夢はもう見ない」
妖精女王「黒騎士殿……」
羽妖精侍女「黒騎士……来タ……ッ!!」
勇者「ああ。判っている。
――どうやら俺の出番みたいだなっ」
ズズズズズ!
妖精女王「どうかご武運を」
鉄腕王「な、なんだ!?」
ゴゴゴゴゴ!
冬寂王「何だ、この振動はっ!?」
勇者「俺は俺の役目を果たしに行く。
冬寂王、鉄腕王、冬の国の女王っ。あなた方に頼むっ。
そしてあなた方に続く幾多の王と、その民草に
間違った道を指し示さないでくれっ。
……俺は、俺だって丘の向こうが見たいんだ」
しゅわんっ!!
496 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 19:59:57.69 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、王宮、上空40里
ヒュバァァーッ!
勇者「来たなっ」
蒼魔の刻印王「それはこちらの台詞だ」
勇者「……」ぎりっ
蒼魔の刻印王「この間のわたしだとは思わぬ事だ。
瞑想により我が魔力は格段の鍛錬を経ている」
勇者「だろうな」
蒼魔の刻印王「ふっ」
勇者「何がおかしい?」
蒼魔の刻印王「哀れなものだ。以前の“勇者”で
あれば今よりも遙かに強かったであろうに」
勇者「……」
蒼魔の刻印王「――“落葉火炎術”」
ヒュバンッ!!
勇者「なっ! おい、つっけぇっ!! “氷結天蓋呪っ!”」
蒼魔の刻印王「はっ。防御が隙だらけだっ!」
ドゴォーンッ!!
勇者「ぐはぁぁっ!!」
蒼魔の刻印王「これで判っただろう?」
498 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 20:03:30.10 ID:L1AOl7sP
勇者「ぜぇっ……ぜぇっ……」
蒼魔の刻印王「能力が同じであらば攻撃側が有利なのだ。
攻撃側は自分の好きなタイミングで好きな場所に攻撃が出来る。
防御とはその本質からして、事後処理にならざるを得ない。
つまり、手遅れ。
手遅れであると云うことが救済の真実。
そう、それはこの世界の真理。
摂理なのだっ!
そうだろう? 勇者っ! “天始爆炎術”っ!!」
勇者「お前っ!? わざと街をっ。
うわぁぁああああ! “氷結天蓋呪っ!”」
蒼魔の刻印王「だから遅いと云って! いるのだっ!!」
ズバシャァッ!!
勇者「ぐはぁっ!!」
蒼魔の刻印王「お前の体も心も弱点だらけだっ。
お前はこうして街の被害を見過ごすことすら出来ない。
確かに勇者。流石に勇者だけのことはある。
我が刻印が教える最大の宿敵よっ。
……その戦闘能力は我を超えることもいまや素直に認めよう。
だが、だからといって勝敗は、それとはっ」
勇者「くそおっ!」
蒼魔の刻印王「別だっ!!」
ガギィィン!!!
勇者「はっ。そうかよっ!」
蒼魔の刻印王「減らず口をっ」
勇者「吹っ切れたぜ。どんなに人間離れしてようとな
それでみんなに嫌われようと、ひとりぼっちになっちまおうと
それでも“お前なんか”に負けるより、よっぽどましだっ!」
501 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 20:07:01.39 ID:L1AOl7sP
蒼魔の刻印王「っ!?」
勇者「おおおっ!! “招嵐颶風呪”っ!」
蒼魔の刻印王「こ、れはっ!?」
びゅごぉぉぉっ!
勇者「はっ。お前程度の飛行魔法で制御できるかっ。
こいつはごきげん直伝の気象制御呪文の強化版だっ。
俺とお前ごとふっとばす嵐の結界っ。
まずはもっとましな場所へいこうやっ」
蒼魔の刻印王「“飛脚術”っ! “火炎鳴動術”っ!
“天眼察知術”っ! “剛力使役術”っ!」
勇者「“神速呪”っ! “雷剣呪”っ! “鏡像呪”っ!」
ゴオオオオッ!!!
ガギィィン!!
勇者「いい加減に諦めろっ!」
蒼魔の刻印王「諦めたともっ! 無傷で勝つことはなっ!」
ギィン! ガギィン!! ビギィン!!
勇者「応えろ!! 黒の鎧っ! そなたは何ぞっ!!」
“我は鎧っ。汝を守り、汝が敵の刃を悉く弾く物なり”
蒼魔の刻印王「何故それを使いこなせるっ」
勇者「知ったことかぁっ!!
誰かが誰かを助けようとするのが全部手遅れだとっ!?
それが摂理だとっ!?
したり顔で語ってんじゃねぇっ!!」
ギィーーーーンッ!!!
513 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 20:22:46.62 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、蒼魔軍
蒼魔上級将軍「どうだ?」
蒼魔近衛兵「我が軍が押していますな。
波状攻撃が功を奏しています。時間の問題です」
蒼魔軍軽騎兵「攪乱に成功しましたっ」
びゅんびゅんびゅん!! びゅんびゅん!!
蒼魔上級将軍「状況を報告せよっ!」
蒼魔軍歩兵団長「丘陵地帯の高さ15歩まで前進。
現在約1500の歩兵大隊が激しい戦闘中っ!!」
わぁぁ! ガキン! ガシャン!
「蒼魔の力を見せよっ!」 「刻印王のためにっ!」
蒼魔上級将軍「敵ながらあっぱれなものよ。
ふっ。女騎士だと? あの研いだ刃のように美麗な娘か。
若の好みに照らせば未成熟だろうが、清冽な蕾も美というもだ。
ここで一気に押しつぶし、司令官を生け捕りにするぞっ! 敵司令官を捉えた兵には、二階級特進を約束する。
温存兵力5000を投入せよっ! 重装騎兵準備っ!!」
ザガシュ! ザシュ!
蒼魔軍重騎兵「御身が前にっ!!」
蒼魔上級将軍「敵の戦線はぎりぎりで持っている
張り詰めすぎた糸ににすぎぬっ!
汝らが突進力と突破力で一気に片をつけよ!!
我らが数的有利は、これで敵の二倍に達する!
こざかしい抵抗はここまでだ! 一気に片をつけよっ!」
515 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 20:23:30.56 ID:L1AOl7sP
――蔓穂ヶ原、中央部丘陵地帯、前衛陣地
女騎士「右翼槍兵は50歩前進っ! 陣形を維持せよっ!
最右翼より弓兵で援護っ!
連携により間断を与えずに攻撃せよっ!!」
冬国仕官「中央に槍兵中隊を追加っ! 押せっ! 押せっ!!」
女騎士「傷病兵の後方搬送にかかれっ!
軽傷の弓兵は搬送班へと動けっ!! 頭を下げろっ」
冬国仕官「左翼騎兵隊、戻りましたっ!!」
女騎士「ご苦労! 諸君らのお陰で一五の中隊が退却に成功した。
感謝と共にゆっくりと休憩を与えたいのだが」
混成騎馬部隊「なにをおっしゃるか! 姫将軍!!
我ら敵中突破から戻りましたが未だに意気軒昂っ!
次なる下命をお待ちいたしますっ」びしっ!
女騎士「……すまぬ」
わぁぁ! ガキン! ガシャン!
「押せぇ! 押せぇ!」 「蒼魔の刻印王のために!!」
「押しつぶせ! この丘を奪い取れ! 進めぇ! 進めぇ!!」
混成騎馬部隊「将軍っ!」
女騎士「よぉし!! その意気だ、騎馬の勇士よっ!
わたしはお前達を誇らしく思うぞっ!
今槍兵を整理して、戦線を一瞬あける。
陣形の中央やや左翼から飛び出して、蒼魔軍後方を攪乱せよ!」
混成騎馬部隊「ものどもっ! 姫将軍のご命令だっ!
蒼魔とか云う奴らに一泡吹かせてやるぞっ!」
「「「おおおおっ!!」」」
527 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 20:35:49.34 ID:L1AOl7sP
――鉄の国と白夜の国国境地帯、森林、大破砕
ズガンッ!! ガンガンガンガンッ! ドゴォォン!!
勇者「“雷撃呪”っ!!」
蒼魔の刻印王「“黒焔術”っ!!」
ビリビビビリボウッ!!
勇者「――ッ!!」
蒼魔の刻印王「はぁぁぁっ! せやッ!」
ギンッ! ギギンッ!
勇者「……はぁっ! はぁっ! どうした?」
蒼魔の刻印王「くっ」
勇者「人質取れなきゃ、まぁそんなもんだよな」
蒼魔の刻印王「化け物めっ」
ギン! キンギン、キガッ!!
勇者「お前には言われたくない。“候補止まり”くん」
蒼魔の刻印王「その名でわたしを呼ぶなぁっ!!」
ギガンッ! バシャァァン!
勇者「っ!? あれはっ」
蒼魔の刻印王「人間の部隊!? しめたっ」
勇者「行くなっ!! “雷光捕縛呪っ”!!」
蒼魔の刻印王「ははっ! 遅いっ!! これで逆転だっ!!」
528 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/28(月) 20:38:09.57 ID:L1AOl7sP
――鉄の国、蔓穂ヶ原、南部
魔王「状況は判った」
メイド長「魔王様。未だに妖精女王からの連絡は……」
魔王「判っている。しかし、これ以上は待てぬ」
メイド長「……」
魔王「東の砦長、もう一度地勢の確認を」
東の砦長「ここから中央部にかけては、殆どが浅い湿地帯だ。
騎馬による行動は速度が落ち、著しく制限される。
蒼魔族は西方から中央の丘陵地帯へ激しい突撃を繰り返している。
中央の丘陵地帯に陣取った女騎士将軍の軍は、
俺から見てもほれぼれするような用兵だが
兵の疲労度は限界だ。落ちるのも、遠くはない」
魔王「銀虎公、ゆけるか?」
銀虎公「あたりまえだ。我らは野山をその住まいとする
獣牙の勇士、その精鋭8000! この程度の湿地帯に足を
取られるような弱兵は一人たりとも連れてきてはいないっ!」
魔王「全ての兵に、深紅の布をつけさせ、確認させよ」
銀虎公「準備万端整っている」
魔王「では、この蔓穂ヶ原外周部を高速で進軍っ!
銀虎公麾下の全軍をもって蒼魔族の側面から、
本陣へと食らいつけっ!! 遠慮は無用、逆賊を討つのだっ!」
銀虎公「心得たっ!」くるりっ
銀虎公「誇り高き獣牙の勇士よっ! 魔王の命が下されたっ!
これより我ら、一陣の風となり、一振りの剣となり
蒼魔族本陣を切り裂くっ! 我に続けっ!」