Part67
66 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 23:49:41.54 ID:pLtZgbkP
銀虎公「我が一族は、戦闘の一族だ。
だから……人間と戦うのならば、ためらいはない。
100年続くと云ったが、別に悪くないではないか?
100年が1000年でも同じ事。
栄誉と酒の中、雄々しく戦えばよい。
だが、しかし。
その角笛を蒼魔族が吹くのは、釈然とせぬ。
今の話を聞いていると、我らはどうも……。
蒼魔族に騙されて人間と戦うようではないか」
火竜大公「ふぅむ、そうとも云えるな」
東の砦将「……ふむ」
銀虎公「我が獣牙の一族は、
戦う順番としては蒼魔が先だ。そう言いたい」
妖精女王「だがそうなると人間界に攻め込むことに」
碧鋼大将「余計に事態を悪化させるではないか」
東の砦将「いーや、その意見は漢の意見だ!
俺たち衛門一族は、虎の大将に乗っかるぜっ。
叩くのなら、蒼魔族が先だろうよ。
そいつが筋ってもんだ。なぁ! 大将!」
副官「将軍っ!?」
銀虎公「おおっ! 衛門の長もそう言ってくれるかっ!!」
紋様の長「人間世界と100年の全面戦争を始めるおつもりかっ!?」
巨人伯「人間……こわい……」
銀虎公「だが、これは義の問題だっ。
逆に云えば、我らが魔界の裏切り者が人間世界で暴れているのだ。
それを叩くに何の遠慮を必要とするっ」
73 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:05:56.75 ID:34eUyEEP
魔王「鬼呼の姫、竜の長。お二人の意見は如何に?」
火竜大公 ちらっ
鬼呼の姫巫女 こくり
火竜大公「我ら二人は、魔王殿に賛意を投じます」
鬼呼の姫巫女「無法を討つ。この理は人界でも通用すると考える。
もしそれさえ通じぬとあらば、もはや人間と
我ら魔族は判り合うことはないのだ。戦争も致し方あるまい」
紋様の長「巫女殿っ! ご老公っ!」
魔王「長がたよ。何事もせずに手をこまねいていても、
自体は刻一刻と悪化を続けているのだ。
で、あれば銀虎公に賭けてみるのも一つの方策であろう?」
碧鋼大将「……仕方あるまい」
銀虎公「魔王殿っ! それではっ!?」
魔王「長がたに異存なくば、魔王軍初の遠征とする」
火竜大公「そして初の親征となりますな」
魔王「だがしかし、遠征としてはあまりにも遠い地ゆえ
大軍を率いて行くわけにも行かぬ。銀虎公っ」
銀虎公「はっ!」がばっ
魔王「精鋭八千を率いて我が傍らで右軍将軍として
我が意に従い指揮を行え」
銀虎公「ははぁっ!!」
76 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:08:03.60 ID:34eUyEEP
魔王「碧鋼大将」
碧鋼大将「はっ」
魔王「難しいことを頼むが、長ならば必ずや
やり遂げるものと思う。
旧蒼魔族領地に入り、その金山、鉱山、工房を封鎖し凍結せよ。
また、その領民を掌握し、安堵せしめよ。
これより旧蒼魔族領地の鉱物資源の管理は
機怪一族に任せる。
機怪一族がその異形ゆえ迫害されてきた歴史は知っている。
その一族の悲しみを他者に味合わせてはならぬ。
長と軍に見捨てられた蒼魔族を救えるのは
同じ悲しみを知る長の一族だけだ。頼む」
碧鋼大将「承りましたっ。必ずや」
魔王「巨人伯、鬼呼の姫巫女、紋様の長」
巨人伯・鬼呼の姫巫女・紋様の長「はっ」
魔王「長がたの下した決断をわたしは重んじたい。
この魔界を栄えさせるためには、三氏族の力がどうしても必要だ。
世界が戦になろうと平和になろうと、街道と開墾は
必ずやその力になる。建設に総力を挙げてくれ」
鬼呼の姫巫女「はい、必ずや」
紋様の長「承りましてございます」
巨人伯「……まかせろ」
79 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:09:28.26 ID:34eUyEEP
魔王「火竜大公」
火竜大公「判っております」
魔王「うむ。この会議が魔界の束ねとなろう。
わたしが人間界に行っても、代わらず皆を導いてくれ」
火竜大公「この老骨が砕けぬ限りはお約束いたしましょう」
魔王「砦将殿。人間の世界が舞台となる。
開門都市に兵の蓄えが少ないことは承知だ。
好きなだけの手勢を率いてわが左軍将軍となり
その知謀を貸してくれ」
東の砦将「判った。まかしとけや」
妖精女王「あ、あの……わが一族は?」
魔王「妖精の女王よ」にこっ
妖精女王「はいっ!」
魔王「あなたが今回の遠征の要だ」
妖精女王「とは?」
魔王「わたし達は蒼魔族を討ちに行く。
そのためには人間世界、つまりは人間の国々を
通り抜けなければならないだろう。魔界でも同じだが
武装した集団が氏族の領土に侵入してきたら戦争と
取られても仕方ない」
妖精女王「はい……」
魔王「女王には特使として、
人間の国々からの許可を取って頂きたい」
92 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:26:29.16 ID:34eUyEEP
――聖王国、深夜の大教会、聖堂地下
コツン、コツン、コツン
奏楽子弟「ん。……いいよ」
メイド姉「はい」
コツン、コツン
奏楽子弟「この匂いは……」
メイド姉「古くなった羊皮紙ですね」
奏楽子弟「ここはどうやら、あまり人の出入りがないみたい」
メイド姉「今は有り難いです」
コツン、コツン
奏楽子弟「……しっ」
メイド姉「っ」
しーん
奏楽子弟「大丈夫。あけるよ?」
メイド姉 こくり
ぎぃいいぃ……
奏楽子弟「あ……油くらい差そうよ。心臓止まるかとおもったよ」
メイド姉「まったく」
奏楽子弟「どっちかな」
メイド姉「多分、下です」
94 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:27:53.40 ID:34eUyEEP
コツン、コツン、コツン
奏楽子弟「ここが書庫だね」
メイド姉「はい」
奏楽子弟「どうする?」
メイド姉「え?」
奏楽子弟「ここまで来たんだ。『聖骸』は後回しでもいいや。
何か探したいものがあるんでしょう? 付き合うよ」
メイド姉「では、この間の物語を」
奏楽子弟「あれ?」
メイド姉「ここになら、もっと詳細な物があると思うんです」
奏楽子弟「ふむ。わかった」
メイド姉「ここに明かりを置きますね」
コトっ
奏楽子弟「朝までは……」
メイド姉「あと6時間ほど」
ペラッ。しゅるん……
奏楽子弟「時間はないね」
メイド姉「はい」
しゅるるん……ぺら……
奏楽子弟(この娘……。たぶん、特別なんだ。
意志を持って歩いている。わたしもそうだけど……。
わたしが音楽を選んだように、何かを選んだ娘なんだ)
98 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:32:05.68 ID:34eUyEEP
――宝珠の伝説
見よ炎に生まれし娘有り。
かつて無きその聡き額に見えない王冠はかがやき
幼き頃からその慈愛遍く万物を照らす。
見よ大地に生まれし少年有り。
異境より訪れし女と精霊の間に生まれた忌み子。
大地の魔峰を黒く汚し災いをもたらさん。
幼き恋は精錬の炎により鍛え上げられ、誓いは胸を焦がす。
願うは翼。風に乗り大空を舞う。
大いなる神鳥に愛されし少年は、人間の血ゆえ
精霊にとっては罪となる宝をその胸に秘める。
罪の名は――。
魂の翼にして希望の言葉。時に自らを縛る鎖。
砕けたるは黒き大地のオーブ。
贖罪の子にして黒き羊の少年は、その禁じられし恋ゆえに
その従兄弟にして大地の精霊王と
呪われし魔峰にて互いを滅ぼし合う。
落ちるはその身体。
死せるはその命。
しかしその悲哀、砕けし宝珠の威力もて、大地は引き裂かれる。
精霊は相争い、五家の結束は永遠に失われ、和合すること無し。
互いに争い激しい戦火を交え滅びの闇に沈む。
救世を願うは少女。
炎に生まれし、いと聡き娘なり。
少女の選びし答えは世界。
愛しき少年の指先を離し、全ての命の守り手となることを願い
残る全てのオーブをかき抱き、その身を光に変える。
生きとし生けるものの守り手、我らが恩寵の主なり。
99 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:33:42.59 ID:34eUyEEP
――聖王国、聖堂地下、古代の文書保存庫
奏楽子弟「これ……かな?」
メイド姉「ええ」
奏楽子弟「なんだか、悲しい話だね。
恋をしたのが禁じられた掟のために選べない相手で、
それでも結ばれたいと願ったら世界が壊れちゃうなんて」
メイド姉「……」
奏楽子弟「こんな伝説があるのなら、あんな乱世でも
仕方がないのかな……。
世界を滅ぼした少年の子孫はいつまでもいつまでも
迫害を受けるのかも知れないね……」
メイド姉「本当にそうなんでしょうか?」
奏楽子弟「え?」
メイド姉「少年と少女が掟破りをしたくらいで、
精霊様の五つの家が仲違いなんて初めて
戦争になんかなるんでしょうか?
この話って本当なんでしょうか?」
奏楽子弟「それは判らないけれど……。伝説だし」
メイド姉「そもそも、精霊様は一人です。
少なくともわたしが教わってきた精霊様は光の精霊様一人で」
奏楽子弟「それは、この炎の精霊が最後に光になって……」
カツン、コロコロ
メイド姉「あ」
奏楽子弟「同じ筒に撒いてあったみたいだね。それは?」
101 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:36:39.42 ID:34eUyEEP
メイド姉「いえ、何でしょう。
古い受領書? 契約、でしょうか」
奏楽子弟「神殿かな」
メイド姉「建築みたいですね。四代目“琥珀の焔”と
大主教の……転移門?」
さぁぁぁぁあ!!
奏楽子弟「なっ」
メイド姉「青い……水っ!?」
奏楽子弟「うううん、濡れてない。これ、何っ!?」
メイド姉「わたしにも何が何だか」
さぁぁぁぁあ!!
奏楽子弟(やだっ。真っ青で……。溺れそうっ)
メイド姉「こんなっ……」
さぁぁぁぁあ!!
奏楽子弟「金色の砂……海鳴りの降る……」
メイド姉(……なんだろう、この光っ)
奏楽子弟「メイド姉さん、手をっ」
メイド姉「え? はっ、はいっ」
チリン……
103 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:47:59.25 ID:34eUyEEP
――光に満たされた夢
光の精霊「……よ」
女魔法使い「……ん」
光の精霊「……ゆ……よ」
女魔法使い「……やっと呼ばれた」
光の精霊「……ゃよ」
女魔法使い「……手、ある。足、ある。……身体は揃ってる。
勇者から聞いていたとおり。これが精霊の夢」
光の精霊「……しゃよ」
女魔法使い「……なに?」
光の精霊「……勇者よ」
女魔法使い「違う」
光の精霊「……勇者よ。……救ってください」
女魔法使い「……」
光の精霊「……勇者よ。……この世界を……」
女魔法使い「……」
光の精霊「……勇者よ。……この」
女魔法使い「いいかげんにせぇよっ」
光の精霊「……勇者よ」
女魔法使い「じゃかしいわぁっ!!」
ドグワッシャァーーン!!!
106 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 00:50:35.91 ID:34eUyEEP
光の精霊「……ゆ……ゆ……ゆ」
女魔法使い「哀れを誘う声でぴぃぴぃ泣きくさって
勇者の優しさにつけ込んだかぁ、このへたれっ!
お前のその執着がっ。
勇者を苦しめていると何故思わんっ!」
光の精霊「……この世界……を
か弱き……罪なき……人々……を……」
女魔法使い「万巻の伝承をひもとき、
ようやくたどり着いたこの光の夢で
よもやこんな泣き言を聞かされようとは思わなかったっ。
精霊――っ!!
確かに世界はあんたに救われたけど、
それって本当に救うべきだったんかっ!?
救うべきでないものを救ったん違うかっ!?
あんたの愛は正しいと保証できるんかっ。
あたしは……。
多分勇者の隣に立つことはないけれど
勇者を想う気持ちで、――っ。
あんたに負けるなんて夢にも思いつかんっ。
来るだけ無駄だったけれど、一個だけ云っておく。
この天地が砕け散ろうと、絶対にっ。
絶対にあんたの思い通りにはさせんからなっ」
光の精霊「……救って……この……昏い世界を……」
女魔法使い「……それが」ふぅ
女魔法使い「……お節介だというのです」
201 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 19:20:39.77 ID:34eUyEEP
――氷の国、外れの交易村
開拓民「止まれ〜!! 誰かそいつを止めてくれぇ!!
器用な少年「止まれと云われて止まる馬鹿がいるかよぅ」
開拓民「そいつは泥棒だぁ!! 誰かぁ!」
器用な少年「ははっ! 追いつけるもんなら追いついてみなぁ!
へっへーんだ。こちとら食ってないんだ最軽量だぜぇ!」
メイド妹「えい」ひょい
器用な少年「え?」
グルグルグル、ズッデーーン!!
器用な少年「何しやがるんだ、この雌ガキっ!!」
メイド妹「泥棒はいけないことだよっ?」
器用な少年「うるせぇ!!
だったら死ねって云うのかよっ!
こっちは命がけで食ってるんだよっ!」
タッタッタッ
開拓民「捕まえてくれぇ〜」
器用な少年「来やがったな! 邪魔すんな、あっち行けドブスっ!」
貴族子弟「おやおや。淑女――の卵になんて口を聞くんですか」
202 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 19:23:39.95 ID:34eUyEEP
器用な少年「邪魔すんなよ、洒落者の旦那。
ってか、あんたも財布をおいていくか?」チャキッ
貴族子弟「そんなちっぽけなナイフで何をするんです?」
メイド妹「ううっ。貴族のお兄ちゃん」
器用な少年「はんっ! でかい口聞くなよっ」
貴族子弟「エレガントさが足りませんよ、君」
ヒュバッ!!
器用な少年「え?」
メイド妹「ひゃっ!!」
器用な少年「あ、あ、ああっ!!」じたばたっ
貴族子弟「早くその下半身を隠しなさい。むさ苦しい」
器用な少年「お、お前が切ったんじゃねぇか」
貴族子弟「えい」
ぼくっ
器用な少年「#’〒☆♭()ッ!!!」
貴族子弟「つまらぬ物を蹴ってしまった」
メイド妹「泡吐いてるよ? この子」
開拓民「はぁっ! はぁっ! き、貴族様でしたか。
ありがとうございます!! こいつは泥棒なんですよっ!」
貴族子弟「いえいえ、こっちの都合もありますからね。
このあたりに詳しそうな道案内が一人欲しかったんです」
206 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/27(日) 19:46:18.11 ID:34eUyEEP
――鉄の国、王宮、大広間
鉄腕王「……そんな訳で、魔族との一端の交戦は
我が国守備部隊により、峠道において回避された。
だが、我が鉄の国と白夜の国は山と大河を隔てて
長い国境線を接している。
人も通わぬような辺境地帯を抜けて、
今も魔族の侵攻が進んでいると見て間違いないだろう」
氷雪の女王「……」
女騎士「鉄の国の軍備はどうなのだ?」
鉄腕王「数字だけで云えば6万に迫る数だが、
その多くは開拓民や難民など、名ばかりの軍人に
過ぎないし、訓練らしい訓練など、まだやっと手をつけたばかり。
戦場に出せる数は、全てかき集めても1万がやっとだろうな」
氷雪の女王「我が氷の国は3000と云ったところ」
冬国士官「冬の国は7500が良いところでしょう」
冬寂王「それでも、三年前に比べれば倍にも増えているが」
鉄腕王「だが、どの国も急激にふくれあがった人口の治安維持や
国境警備に必要な部隊もあろう。
それらを差し引くならば、動員したとしても三ヶ国合わせて
半数の1万に届くか、届かぬか」
氷雪の女王「問題は、魔族の軍勢がどの程度いるかですが……」
冬寂王「我が手の者の情報に寄れば、
今回魔界から突如侵攻してきた魔族は、
蒼魔族と呼ばれる魔界でも随一の過激派、
好戦派と云える部族だそうだ。
率いるは刻印王とよばれる若き王で前王を抹殺の上、
軍を掌握し、その精鋭を率いて人間界へ流れ込んできた。
その数は2万と5千」
207 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/27(日) 19:47:19.61 ID:34eUyEEP
鉄腕王「ふむ」
氷雪の女王「蒼魔族……」
女騎士(その報告精度は爺さんか……)
冬国士官「しかし、それでも2万からの軍勢。
このままでは我らが三ヶ国存亡の危機であります」
鉄腕王「まさにな」
氷雪の女王「……」
冬寂王「いや、滅亡の危機よりなお悪いかもしれぬ。
三ヶ国の人口全てを合わせれば、約20万。
いくら訓練されていないとは言え、
最終的な消耗戦になれば三ヶ国の民が生き残っているうちに、
魔族2万を撃退できる可能戦は十二分にある」
冬国士官「……」
女騎士「それは、焦土作戦と呼ばれている。
少なくともわたしが学士に聞いた話ではな。
……焦土作戦とは交戦下において、不利な立場にある防御側が
攻撃側に奪われる地域の利用価値のある建物や食料を焼き払い、
その地の利用価値をなくして攻撃側に利便性を残さない戦術だ。
自国領土に侵攻する敵軍に食料を初めとする物資の補給を
許さず、消耗を強いることにより、戦闘を小規模、限定化し、
徐々にその戦力をそぐことを要訣とする」
鉄腕王「自国の領土を……」
氷雪の女王「焼き……払う……?」
女騎士「そうだ。この人数比率は、
そこまでやれば勝利は容易い比率であると云える」
208 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/27(日) 19:49:16.48 ID:34eUyEEP
冬国士官「しかしそれではっ」
女騎士「当然だ、ようやく開墾が進み緑豊かになってきた
この南の地を十年、いやそれ以上人も住めない不毛の
荒野へと戻すことになる。
そのようなことは、我が湖畔修道会としても
見過ごすわけには行かないっ」
冬寂王「……」
鉄腕王「なんとしてでも、魔族を退けなくてはならぬ」
氷雪の女王「魔族に支配された白夜の国の罪も無き民草は
今はどのような暮らしを強いられていることか……」
女騎士「あまりにも兵の数が足りぬか……」
冬国士官「やはりここは半数などとは言わず、
国境線の防御を薄くしてでも、
まずは魔族との開戦を優先させるべきかと思うのですが」
鉄腕王「そうだの」
氷雪の女王「……」
女騎士「しかし、中央諸国の三ヶ国通商に対する
批判や風当たりには依然厳しい物がある」
冬国士官「だがしかし、魔族が現われている
このタイミングでの軍事行動があり得る物でしょうか?」
冬寂王「……」
氷雪の女王「このようなことになってしまうとは……」
209 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/27(日) 19:50:46.95 ID:34eUyEEP
冬寂王「氷雪の女王。諸国の委任状やとりまとめの状況は?」
氷雪の女王「湖の国、梢の国、葦風の国、赤馬の国。
他には幾つかの自由貿易都市の領主が賛意を示してくれています。
委任状の取り付けも、ほぼ全て」
女騎士「……?」
冬寂王「このタイミングしか、あるまい」
鉄腕王「立ち上げるのか」
氷雪の女王「では」
冬寂王「うむ。三ヶ国通商同盟はその名を南部連合と改める。
と同時に、湖の国、梢の国、葦風の国、赤馬の国の諸国には
参加を表明していただき、いくつかの政策の合意を行う。
最終的には、南部連合は全国での農奴解放と通商協定の
元の自由貿易を目指し、国家の連合として活動を
始めようと思う」
鉄腕王「うむっ」
氷雪の女王「そう言うことにしかならぬと思っていました」
女騎士「それで援軍を当てに出来るのか?」
冬国士官「どうでしょう……」
冬寂王「長期戦ともなれば援軍以上に物資の補給が有り難くも
なるだろう。また、義勇兵の募集も期待できる。
天然痘の予防体制、種痘はこの春にやっと第一段階の
実用化を迎えた。
今後はこの技術を伝播し、湖畔修道会を中心に連合諸国、
ひいてはこの大陸全てに広めてゆかなければならない。
ここで連合が潰え去ることだけは、我ら三ヶ国ならず
人間世界に取ってあってはならぬことだ。
もし国々が正しい判断力を持つのならば
きっと我らに対する支援を送ってくれる」