2chまとめサイトモバイル
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part65


932 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 14:41:43.33 ID:pLtZgbkP
さくっ、さくっ
メイド姉「済みません、この教会の方ですか?」
助祭「はい、そうですが」
メイド姉「わたしは旅の学者でして。はじめまして。
 この教会で礼拝させて頂くと共に、
 心細くなった路銀を稼ぐために、
 今から夕刻までの間、しばらくここの敷地で
 代書をさせて頂きたいと考えています。
 こちらはわたしの連れで、旅の吟遊詩人」
奏楽子弟 ぺこり
助祭「これはお美しい二人連れですね。
 わかりました、精霊の庭はいつも開かれています」
メイド姉「ありがとうございます。これは少ないですが
 心ばかりの喜捨、感謝の印です」
チャリンチャリン……
助祭「ほほう。感心ですね!
 あちらに古いですが頑丈な木挽きテーブルがあります。
 そちらでなさられると良いでしょう」
メイド姉「ありがとうございます」ぺこり
助祭「そちらの方は……」
奏楽子弟「はい?」
助祭「見かけない髪の色ですね。それにどことなく……」

934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 14:51:56.63 ID:pLtZgbkP
メイド姉「彼女は遠く東南から旅をしてきたんですよ。
 深い森の中で歌と踊りをこよなく愛する民の出身なんです。
 えっと……森ガ族でしたよね?」
奏楽子弟 こくこく
助祭「そうですか。……ふむ」
メイド姉「旅の途中で彷徨う我らは、信仰に迷った子羊と同じ。
 精霊様の慈悲は、遠方の者であるほどに暖かく
 照らしてくださると信じます」ぺこり
助祭「……まぁ、良いでしょう。しっかり励んでくださいね」
メイド姉「重ねてお礼を申し上げます」
さくっ、さくっ
奏楽子弟「えっと、その……さ」
メイド姉「はい?」
奏楽子弟「よくまぁ、あれだけと都合良い言葉がつるつると。
 役者に向いてるかも知れないよ? メイド姉は」
メイド姉「あはっ。……わたしの兄弟子の一人が
 ものすごい洒落者でして。彼に教えて貰ったんですよ」
奏楽子弟「ふぅん。弟子?」
メイド姉「ああ。当主様は、教師をしていたんです。
 拾って頂いたお屋敷ではたらきながら、ほんのちょっぴり
 色んな事を教わったんですよ」
奏楽子弟「そっか……。どこかで聞いたような話」
メイド姉「そうなんですか?」

933 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 14:45:47.85 ID:pLtZgbkP
奏楽子弟「さっきの、森ガ族って……」
メイド姉「ああ。ちょっぴり嘘をついてしまいました。
 後で精霊様にお詫びしなければなりませんね。
 でも、ひとを出身地で判断したり、
 見かけで決めつけたりするのは良くないことですよ。
 精霊様だって判ってくれます。
  詩人さんは、髪の毛の色が素敵な金枯れ葉色だし
 お耳がちょっぴり長くて異国風ですからね。
 きっとビックリしてしまっただけですよ。
  気にすることはありません」
奏楽子弟「あのさ。もしかして、メイド姉は……
 わたしが……その」
ザクっ
老婆の市民「代書を頼んでもよいかね?」
メイド姉「あ。早速お客さんです」
奏楽子弟「わたしは何をすればいい?」
メイド姉「お客さんの呼び込みです。静かで、落ち着いて
 リラックスできるような楽曲を
 そちらで休みながら奏でてくれれば」
奏楽子弟「わかったよ」
メイド姉「頑張りましょう!」

938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 15:08:25.00 ID:pLtZgbkP
――大空洞建築現場、作業所
土木子弟「現場はどうだ?」
人魔族作業員「6番までは無事です!」
人夫「7番の橋は、手すりが一部破損」
巨人の作業員「石橋は……予備石が……くずされた」
土木子弟「けが人とかは?」
人魔族作業員「今、宿舎で手当をしているけれど、
 転んで頭を打ったり、手を切ったり程度で問題はなさそうです」
人夫「ありがたかったな」
巨人の作業員「おう……」
土木子弟「うん、報せに飛んできてくれた妖精族のお陰だ」
人魔族作業員「でも、橋は無事ですけれど、
 現場はめちゃくちゃですね」
人夫「これだけの軍団が通る想定の道じゃないから」
巨人の作業員「まだ……完成もして……なかった」
土木子弟「よーし! 全員撤収だ!!」
人魔族作業員「え?」
人夫「まだまだ陽は高いですよ!?」

939 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/26(土) 15:11:31.67 ID:pLtZgbkP
土木子弟「作業は明日からだ!
 どっちにしろ、多分この報せは街にも届いている。
 中年商人さんは飛んでくる。
 飯も持ってきてくれるさ。
 こう言う時には、腐った気分が敵だ!」
人魔族作業員「は、はいっ」
土木子弟「宿舎に戻るぞ。今日の夜飯は外で食おう。
 大鍋一杯に、馬鈴薯汁を作ろう。肉も野菜もたっぷり入れてな。
 今日は一人三杯までの酒を支給するぞー」
人夫「おおー! 太っ腹だ、大将!」
巨人の作業員「わかった……おら、うれしぃな!」
土木子弟「よーし。手分けをして、そこらの手荷物だけ
 持って帰ろう。怪我した連中へ見舞いもするぞ」
人魔族作業員「わかりました!」
人夫「がってんだ!」
巨人の作業員「おらぁ、荷車……もってくる」
タッタッタ、ダッダッダ、ドスドス
土木子弟(ふぅ……。気持ちが落ち込まなきゃ、
 身体はまだまだ動く。明日は一日片付けにあてて、
 それから作業再開だ。一気に石橋をかけ終えるぞ)
土木子弟(それにしても。宴会か……。
 なぁ、奏楽子弟。お前、今何をしてるんだ?)

941 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 15:34:04.60 ID:pLtZgbkP
――冬の王宮、執務室
冬寂王「なんだとっ!? まさか、一夜にして……っ」
将官「そんなっ……」
伝令「白夜城、陥落との報せですっ」
どさっ
冬寂王「判った、下がれ」
伝令「はっ!」
だっだっだっ
冬寂王「……」
将官「冬寂王、至急鉄の国、氷の国へ連絡を。
 三ヶ国通商の守りを固めなければっ」
冬寂王「それでは遅い」
将官「え?」
冬寂王「軍使っ! 早馬を引けっ!」
軍使「はっ!」
冬寂王「冬越し村へ使者を派遣! 当主にお伝えしてくれ。
 白夜の国、その城が魔族の攻撃により陥落、と。
 それだけであの方は理解し、動いてくれる」
冬寂王「将官っ!」

942 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 15:35:59.30 ID:pLtZgbkP
将官「はっ!」
冬寂王「わたしは騎兵150を率いて出るっ。
 行き先は鉄の国、王宮っ。
 以降、三ヶ国通商会議の本部は鉄の国に移す。
 この状況下で、戦場と本部の距離を開けすぎるのは致命的だ。
 時間のロスがそのまま敗北につながりかねん。
 その方は至急軍をとりまとめよ、領内の巡回衛視を再編成し、
 監視と巡回をなるべく減らさずに、歩兵1500を抽出せよ」
将官「はっ!」
冬寂王「抽出、集合が終わり次第、鉄の国へと向けて出発。
 どれくらい掛かるっ?」
将官「三日後には出発できるかと」
冬寂王「急げよ。季節は春だ。装備は軽くなるだろう。
 輜重部隊の編制を商人子弟に一任せよ。
 歩兵部隊は最低限の糧食を携帯し速度重視で鉄の国へと入れ。
 伝令を目的として少数の騎馬部隊を編制するのも忘れるな」
将官「承りましたっ」
冬寂王「我は鉄の国へと向かう。
 連絡、編制、万事抜かるなっ!」
将官「はっ!」
軍使「了解いたしましたっ!」
冬寂王「魔族……。どのような符号なのだ、これは」

961 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 17:29:03.70 ID:pLtZgbkP
――湖の国、首都、『同盟』作戦本部
同盟職員「作戦開始、ですか?」
同盟職員娘「本部職員揃っています」
留守部長「ああ」
同盟職員「次なる目標は」
留守部長「今度は静粛さが必要だ」
同盟職員娘「鉄、ですか」
同盟職員「最近相場が上がっていますね」
留守部長「おそらく中央、聖王国が戦争準備として
 武器の買い付けを始めている。その動脈を押さえる」
同盟職員娘「そうなると、資金が……」
留守部長「委員会から予算が出ているよ。
 ……おおよそ4500万を予算とする」
同盟職員娘「麦に比べれば小規模ですね」
同盟職員「そもそも鉄自体が効果で流通量が少ないからな」
留守部長「それと同時に石炭を押さえる」
同盟職員娘「あんな代替え燃料ですか? 木炭じゃないんですか?」

963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 17:30:18.37 ID:pLtZgbkP
留守部長「いや、これも委員会からの指示だ」
同盟職員娘「どうやら何か嗅ぎつけてるみたいですね」
同盟職員「情報、取ってみます」
留守部長「早馬を使えよ」
同盟職員「はいっ」
留守部長「石炭につけては採鉱権を勅書の形で押さえ
 足止めをかけてゆけ。交渉担当を北方に回せ」
同盟職員娘「了解」
ガチャッ。タッタッタッ
同盟職員「戦争、起きますかね」ポツリ
留守部長「だろうな」
同盟職員「俺たちには止めることは出来ないすか」
留守部長「戦争ってのは、同意が必要ない。
 つまり、片方が、自分以外を殴りつければ戦争だ。
 参加者の中に一人でも戦争をしたいやつが存在すれば
 戦争は起きる。元から非対称な行為なんだよ」
同盟職員「はい」
留守部長「俺としちゃあ、あの若い委員様は結構気に入ってる。
 無理なのは判った上で、それでも諦めないで進むからな。
 戦争を止めることそのものよりも
 止めようとしてみる、って事はあるいは重要かも知れないぜ」

967 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 17:55:41.17 ID:pLtZgbkP
――楡の国、地方都市、貴族領
弱小貴族「今年の分の税を速やかに納めよっ」
中年騎士「……」
有力地主「それはこちらも云いたいっ。
 このような収穫税をとられては、
 全ての農奴が飢えて死んでしまうっ」
弱小貴族「不当な税を取り立てたわけではない」
有力地主「しかし、今年のような不作では温情を……」
弱小貴族「だまれっ! 何が不作だ! どの所領でも
 多くの小麦、大麦が稲穂をたれていたではないかっ」
有力地主「我が領地にはおいては井戸が涸れ……」
弱小貴族「誰がそのような言葉を信じるっ。」
中年騎士「ははっ」
有力地主「……事実でございますっ」
弱小貴族「何を戯れ言を。
 貴様は去年の冬にはすでにこの春の小麦を売り払い、
 多額の金貨を得ていたのであろう」
有力地主「それは……」
弱小貴族「それを不作であるとはごまかしをするなっ」
有力地主「それでは、先ほどから申し上げるとおり……」

968 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 17:56:38.04 ID:pLtZgbkP
弱小貴族「なんだ? ん」
有力地主「今年分の納税は、作物ではなく金貨で……」
弱小貴族「まぁ、よかろう」
有力地主「そうであるならお支払いできます。
 早速金貨1500枚を手配しまして」
弱小貴族「何を言っているのだ? 租税は金貨4700枚であろう?」
有力地主「は?」
弱小貴族「4700枚だろう? この書状にあるとおり」
有力地主「しかし、それは旧金貨ではありませんか。
 新金貨はご存じの通り、旧金貨3枚分の価値があり……」
弱小貴族「そのようなことは話しておらぬ。
 新旧など、どこの証書に書いてある。
 布告どおりお前の持つ土地の面積における租税は
 “金貨にして4700枚”だ」
有力地主「領主殿は我らが農民に死ねと仰るかっ!」
弱小貴族「都合の良い時だけ弱者面するでないわっ!」ダムンッ
有力地主「そのようなことを仰られても、
 税が足りなければ中央に送るまいないにも事欠きますぞ?
 我らは結局一蓮托生。払う意志はあるのです、
 ただその額を再考願いたいと……」
弱小貴族「くどいっ」 ジャキッ!!
有力地主「ヒィッ!」

969 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 17:59:10.84 ID:pLtZgbkP
中年騎士「領主どの、お待ちあれ」
弱小貴族「ちっ」
中年騎士「このような輩、斬り殺したところで何にもなりませぬ」
有力地主「ひぃっ。騎士殿、お助けをっ!」
弱小貴族「ならばなんとするっ」
中年騎士「このような状況は、友領でも聞くところ。
 解決する方法は、もはや一つしかないと存じます」
弱小貴族「……それは?」
中年騎士「侵攻です。海岸線沿いに冬の国へと入り略奪を行う」
弱小貴族「それでは野盗ではないかっ!」
中年騎士「野盗にやらせれば宜しい。
 我々はそれを黙認して、上がりを得る。
 これは盗みではない。私掠です。
 野盗ではなく、私掠団と名付けるべきかと考えます」
有力地主「それならば……」
弱小貴族「ふむ」
有力地主「わたし達の土地にも、多くはありませんが野盗が
 出没します。彼らを手懐け、その騎馬が背教者の国へ向き
 その上なお儲かるということであれば……。
 彼らの武装などに関しては援助しても良いかと」
弱小貴族「ふむ。一考の価値がありそうだな。
 話をつけられそうか?」
中年騎士「早速、無法者の一団に渡りをつけましょう」

979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 18:44:17.34 ID:pLtZgbkP
――聖王都、辺境の村、村はずれの小屋、深夜
メイド姉「……」
奏楽子弟「ん……ぅ……」
奏楽子弟(ううっ。うにゅ……。まだ……深夜?)
メイド姉「……」
奏楽子弟(メイド姉さんってば起きてるのかな……)
メイド姉「……くっ」ぽろり
奏楽子弟(泣いてるの……?
メイド姉「……。っく……。……ううっ」ぽろぽろ
奏楽子弟(なんで……?)
メイド姉「……ごめん……なさ。……わたしも……おなじなのに」
奏楽子弟(……)
メイド姉「……っく。……むしは、だめ。足で、手で……。
 這ってでも……。だって、止まっちゃだめだから……」
奏楽子弟(……メイド姉さん)

980 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 18:46:10.20 ID:pLtZgbkP
――聖王国辺境、秘密の場所、光の子の村
光の軍兵少尉「行軍はじめっ!」
 ザッザッザッ!!
光の軍兵少尉「構えっ!」
 ジャギッ!
壮年農奴兵士「……ん」
少年農奴兵士「よしっ」
光の軍兵少尉「撃てぇ!」
スダン! ダン! ズダダーン!!
光の軍兵少尉「下がれっ! 清掃と、装填急げっ!」
聖王国将官「どうだ?」
光の軍兵少尉「はっ。順調に訓練は進めておりますっ」
聖王国将官「結果は出ているか?」
光の軍兵少尉「行軍訓練では、一日4里を目標にしております」
聖王国将官「ふむ」
光の軍兵少尉「いかがでしょう」
聖王国将官「もう少し鍛えてみよう。
 通常速度としては問題ないが、
 戦場では速度が死命を決することもある。
 重装備をさせて8里を二日連続で課してみよ」

981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 18:49:22.69 ID:pLtZgbkP
光の軍兵少尉「はっ。達成できない場合は死罰を?」
聖王国将官「いいや、これは訓練だ。
 しかし、中隊編制において目標を達成できた隊には
 2日の休暇を与えよ。
 一度最大距離記録を作らせておけば、
 いざという時のよりどころにもなるだろうさ」
光の軍兵少尉「拝命いたしましたっ」
聖王国将官「射撃訓練のほうはどうだ」
光の軍兵少尉「はっ。こちらはそのぅ」
聖王国将官「問題でもあるのか」
光の軍兵少尉「支給されるブラックパウダーの量がきびしく」
聖王国将官「予想はされていたが……」
光の軍兵少尉「整備訓練などの時間は取れるのですが、
 実際の整備もやはり発砲直後に行われるわけですし、
 今少しのパウダー支給を上申したく思います」
聖王国将官「わかった。約束は出来ぬが、諮ってみよう」
光の軍兵少尉「ご厚情に感謝いたしますっ」
聖王国将官「おい」
光の軍兵少尉「はっ?」
聖王国将官「この村はこの近郊では、一番の成績を上げている。
 そう言って、夕食に少し色をつけてやれ。実際成績は良い。
 農奴達に光の使徒としてのプライドを持たせないとな」
光の軍兵少尉「はっ! ますます一層励むでありましょう」ビシッ

986 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 19:24:18.51 ID:pLtZgbkP
――鉄の国国境付近峠
斥候「接近中! 騎兵約2000!」
軍人子弟「2000……」
鉄国少尉「少ないですね」
軍人子弟「情報に寄れば、白夜城を攻略した魔族は総数約3万弱。
 目撃に寄れば十分な騎兵を備えていたとも聞くでござる。
 2000とはいかにも少ないでござるが……」
鉄国少尉「しかし、我らにとっては好都合ではないですか」
軍人子弟「……」
鉄国少尉「どうされました?」
軍人子弟「距離は? どれくらいで会敵するでござる?」
斥候「峠二つをはさんでいます。およそ5時間後には!」
軍人子弟「他の防衛戦にも変事、襲撃の確認をっ!」
鉄国伝令「はっ!」
斥候「斥候に戻りますっ」
軍人子弟「頼んだでござるよ」
鉄国少尉「……」
軍人子弟「これは、おそらく威力偵察でござるね」
鉄国少尉「威力偵察?」
軍人子弟「意図的に小規模な交戦を行い、
 敵の能力や装備、戦術の情報を収集する手法でござるよ。
 一晩で白夜城を陥落させたとの情報でござったが、
 どうやら油断や思い上がりはしてくれていないようでござるね」

987 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 19:25:57.84 ID:pLtZgbkP
鉄国少尉「と、なるとあの部隊は被害を押さえて?」
軍人子弟「退くでござろうね。
 もっとも魔族の云うところの“被害を押さえる”が
 我らで云うところの殲滅戦に匹敵する可能性も、
 ないではないでござるが」
鉄国少尉「5時間ですか……」
軍人子弟「そこまでの時はないでござろう」
鉄国少尉「……」
軍人子弟「投石機は?」
鉄国少尉「そりゃ、一個二個は持ってきてあるはずですが」
軍人子弟「投石機準備っ!」鉄国少尉「こんな峠でつかったら崖崩れの恐れもありますよ!?」
軍人子弟「かまわんでござるよ。我が国の軍は
 世界一道路を作り馴れているでござろう?」
鉄国少尉「そんなところばっかり優れていてもなぁ」
鉄国兵士「準備できましたっ。どちらへ運びますか?」
軍人子弟「前へ押し出すでござる。目標は右の崖!
 崩しても構わんでござる。林ごと埋め立ててしまうつもりで
 準備でき次第投石開始!」
鉄国兵士「はっ!」
鉄国少尉「荒っぽい守りですね」
軍人子弟「こちらの覚悟をみせるでござる。
 今回の戦、白夜国の全土が魔族の手に落ちた以上、
 このような国境では決着がつく事はあり得ないでござる。
 小競り合いで兵力を消耗するは愚策でござるよ」

35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/26(土) 21:56:21.35 ID:pLtZgbkP
――聖王都、場末の宿屋
奏楽子弟「やぁ、当たって砕けたねぇ」
メイド姉「そうですねぇ」
奏楽子弟「でも、教会ってこういうものなの?」
メイド姉「え?」
奏楽子弟「いや、この大陸も今まであちこち旅してきたけれど
 教会ってどこにもある割には、結構いろいろだよね」
メイド姉「ああ、それはそうですね」
奏楽子弟「光の精霊だっけ? 神だっけ?
 同じ者を信じているのに、結構バラエティがあるなって」
メイド姉「同じ教えを根にしていても、
 その解釈や実践方法において差があって、
 だんだんと色んな流れに分かれていったんですよ。
 それらは修道院、修道会と云った形で表面化しています。
 大まかなところでは一緒ですけれど、細かい部分では
 かなり違いがありますね。
 たとえば聖日ごとのミサを重要視する修道会もあれば、
 地域での助け合いを重視する修道会もあります。
 教会って云うと信仰の場のようですけれど、
 実際には、学問や医療や人々の生活の難問を
 解決する、公共の場所のような意味合いもありますからね」
奏楽子弟「それでみんな教会を大事にしてるんだ」
メイド姉「そうですね」
奏楽子弟「でも、なんか。……ここの教会は、大きい割にはね」