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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part61


589 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:04:47.72 ID:jeE4iYgP
メイド姉「いえ……」
魔王「ん?」
メイド姉「焦っているわけではありません。――当主様」
魔王「……?」
メイド長 こくり
メイド姉「当主様にお願いがございます」
魔王「どうした?」
メイド姉「お暇を頂きたく思います」
魔王「……」
メイド長「――」
魔王「どこへゆくのだ?」
メイド姉「わかりません。けれど
 ――ここではないどこかへ」
魔王「妹には?」
メイド姉「話してあります。
 あの娘には、ここでかなえる夢がありますから。
 ……すみません、こんな我が儘を。
 当主様やメイド長様に救って頂いた身でありながら。
 本当に申し訳ありません」
魔王「そう……か……」
メイド長「まおー様」

590 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:07:27.61 ID:jeE4iYgP
魔王「判っている」
メイド長 こくり
魔王「……」ふわり
メイド姉「あ……」
魔王「何を見るのだろうな、その二つの瞳で。
 ……これがお別れではあるまい?」
メイド姉「はい、きっと……きっと戻って参ります」
魔王「では行くが良い。そなたには翼にはその力があるのだ。
 おのれの運命と巡り会いに行くのであろう?」
メイド姉 こくり
魔王「ここを嫌って出て行くのでは、無かろうな?」
メイド姉「いいえっ。
 この家は、わたしの生きてきた全部のっ
 全ての中で、一番暖かくて、一番優しくて……
 い、ちばんっ。……大事な、場所ですっ。
 本当は出て行きたくなんて無かった、ですっ。
  でも、そうしないと。
 きっと、わたしは許せなくなります。
 わたしは沢山の人に。……沢山の責を負っているから。
  わたしが。――わたしが自分で歩くのを止めるのは、
 ひどく不実なことに思えるんです……。
  あの日、あの広場で叫んだから。
  わたしには“叫んだもの”として、
 やらなければならないことがあるように思うんです」

591 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:09:06.84 ID:jeE4iYgP
魔王「そなたが負うべき事などなにもない」
メイド姉「では、わたしが選びたいんです」
魔王「……」
メイド長「お行きなさい」
メイド姉「はいっ」
魔王「わたし達の教えを受けたものとして旅立ってくれるな?」
メイド姉「はい。ご厚情も、ご恩も忘れません。
 きっと何かを見つけて帰ってきます」
魔王「何を」
メイド姉「たぶん――戦いの意味を見つけに」
魔王「……っ」
メイド長「――」
メイド姉「他の誰でもなく
 わたし自身が見いださないといけないのだと思います」
魔王「……止める言葉を持たないな」
メイド長「はい……」
メイド姉「大丈夫ですっ。
 わたしは結局メイドにはなれなかったのかもしれませんが、
 メイド長の授けて下さったものはメイドを超えると信じます。
 当主様、勇者様、女騎士様、子弟の皆さん方……。
 授かった数多の教えは、どんな黄金より勝る宝ですから」

592 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:10:48.81 ID:jeE4iYgP
魔王「……判った」
メイド姉「当主様、ここにある二年分全ての帳簿の整理は
 終わっております。目録は全てこちらの小棚へと
 まとめておきました。諸表はこちらの引き出しです」
魔王「うむ」
メイド姉「えっと、僭越なお節介なのですが、
 もし、他の方が作業されることも考えて、
 仕事を引き継げるように覚え書きの帳がこちらにあります」
魔王「……ん」
メイド長「よくぞ、ここまでものにしましたね」
メイド姉「先生が優秀でした」
魔王「何時、発つのだ?」
メイド姉「夜明けと共に」
魔王「少しでも眠ると良い」
メイド姉「はい。失礼します。あの……」
メイド長「――」
メイド姉「お二人が、大好きです」
かちゃん。とっとっとっと
魔王「止められなかった」
メイド長「それが正しいのです」
魔王「メイド長……。手放させてしまったな」
メイド長「――いえ。何の問題があるでしょう。
 どこにいても、何をしていても
 彼女はわたしの自慢であることに何の代わりもないのですから」

610 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:49:39.53 ID:jeE4iYgP
――――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、仮設会議場
ギィッ
銀虎公「遅れたか? すまぬな」
火竜大公「いやいや、気にすることはない。
 まだ時間ではないのだ。我らは妖精女王土産の茶を
 飲んでおったのみだ」
妖精女王「はい」
巨人伯「……うま……い」
勇者「なかなかいけるぞー?」
銀虎公「ではわしも一杯貰おうかな」
ギィッ
碧鋼大将「失礼いたす」
東の砦長「待たせて申し訳ねぇ」
紋様の長「おお、お二人も」
鬼呼族の姫巫女「これで揃ったようだな」
火竜大公「では、おほんっ。第二回の会議を始めるとするか」
妖精女王「今日のお話は?」
巨人伯「……まずは、前回の、続き」
紋様の長「そうだな、蒼魔族の件からとしよう」
東の砦長「どんな案配なんだ?」
鬼呼族の姫巫女「妖精族から報告して貰おうか」

611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:50:46.72 ID:jeE4iYgP
妖精女王「はい。……まず、大きな動きはありません。
 蒼魔族の少なくとも50名を越える規模での部隊は
 その領土から一回も出ておりません」
紋様の長「ふぅむ」
妖精女王「あの後、蒼魔の新王が都にたどり着いてから
 しばらくの間、蒼魔の領土には高い緊張感がありました。
 蒼魔の新王の軍は蒼魔の領土全体を巡回していましたが、
 現在は多少落ち着きを取り戻したようです。
 もちろん各所にはかなり大人数の警邏が行われていますが」
東の砦長「つまり、戦時下って云う雰囲気かい?」
妖精女王「ええ、そうです。
 少なくとも蒼魔一族は現在を交戦状態、つまり何時
 奇襲をかけられてもおかしくない状態だと認識していることは
 確かなことです」
巨人伯「おれたち、奇襲なんて……しないのに」
銀虎公「戦の準備とか軍備増強の様子はないのか?」
妖精女王「それは判りません。
 いえ、偵察の妖精が訓練の様子などは見ていますし、
 武装もしているようですが……なんといいますか。
 蒼魔族ではそれが“日常”である可能性も否定できなくて」
鬼呼族の姫巫女「ふふっ。まさにそうだな」
妖精女王「今でも警戒は続けておりますが
 そのほかに特別な報告はないのです。申し訳ありませんが」
東の砦長「いやいや、動きがないのも重要な情報だろう」

612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:51:40.66 ID:jeE4iYgP
紋様の長「と、なると、前回の続き。蒼魔族の処遇の問題か」
勇者「……」
銀虎公「俺から口火を切って良いか?」
火竜大公「うむ」
紋様の長「よろしく頼む」
銀虎公「我ら獣牙の一族は戦に生きる一族。
 とはいえ、この世界の内側で暮らしていて、
 事の理非程度は弁えているつもりだ。
 戦で打ち破るならばともかく、
 “蒼魔族を皆殺し”と云うのがいくら何でも
 行き過ぎで無法な行いであると云うことは、判る」
火竜大公「しかり」
妖精女王「その通りです」
銀虎公「あー。我らは、上手ではないが、手紙を出すのだ。
 どうだろう、手紙を出すというのは?」
妖精女王「手紙?」
巨人伯「……だれに?」
東の砦長「ああ、降伏勧告のことか?」
銀虎公「そうだ! そのカンコクだ。それが言いたかったのだ」

613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:53:00.20 ID:jeE4iYgP
碧鋼大将「ふぅむ、それは考えてみなかった」
火竜大公「なるほど……」
銀虎公「その手紙には書くつもりだ。
 お主達は、卑怯者だぞ、とな。
 敵を討ちたければ戦場で堂々とすればよい。
 文句があるのならはっきりと言えばよい。
 それを影からこそこそと、それは武人のやる事ではない。
 そのようなひねくれた態度では、もはやどこの一族からも
 蒼魔族は、威厳のある一流の氏族とは認められぬだろう。
 申し開きがあらば、即座にするが良い。
 もしそれが望みであれば
 戦場でお相手いたす。
 ――そんな具合だ」
東の砦長「ふぅむ。考えたな。全面降伏しろって云う話
 じゃないわけだ」
鬼呼族の姫巫女「ほほぅ」
銀虎公「全面降伏しろって云う話にするならば、
 前回云っていた“蒼魔族全てが意固地になる”
 ってやつがあるのだろう?
 領地を押し包んで総攻撃する! とか云うと、
 蒼魔族は“自暴自棄”になるかもしれぬ」
碧鋼大将「うむ」
銀虎公「そこで、申し開きをさせてやろうというのだ。
 ただ、申し開きは、ここでやらせる」
火竜大公「ほほぉ!」

614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:53:55.26 ID:jeE4iYgP
銀虎公「そうしたら、奴らももう一度会議に
 出てこざるを得ないだろう?
 この会議は忽鄰塔に似ているが、そのものではない。
 奴らの奇妙な前例を用いた策略は通用しない」
碧鋼大将「それはそうだな」
火竜大公「そして会議に出てきたら、奴らにはっきりと告げる。
 お前達のやり方は無法で不愉快だ、とな。
 もし詫びる気があるのならば、証明させる」
妖精女王「証明とは?」
銀虎公「まずは、親王と将軍クラスの首全てだろうな」
妖精女王「殺す……のですか?」
東の砦長「いや、それは仕方ないだろう。
 ここは銀虎公殿が正しいと俺は思う」
鬼呼族の姫巫女「そうじゃな」
銀虎公「その上で、しばらくの間は、蒼魔族の領地に
 我らのどの氏族か、混成でも良いが軍団を置いて様子を
 見させるべきだろう。賠償金も取るべきかも知れないが
 金の細かいことは俺には判らぬ」
碧鋼大将「悪くない案のように思えるな」
火竜大公「そうだな」
妖精女王「……ええ」
巨人伯「……のってくる……かな」
鬼呼族の姫巫女「そこが一番の問題であろうな」

623 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 22:26:49.01 ID:jeE4iYgP
銀虎公「いやいや、そこはそれで考えてあるのだ!」
碧鋼大将「とは?」
銀虎公「前回、衛門族の長が言っておられただろう?
 事が終わった後に理非の大事さが聞いてくると。
 一回の警告もせずに攻撃をしたらそれは不意打ち。
 ある意味、蒼魔族と同じだ。
  この手紙を出すことにより、いわば“申し開きのチャンス”を
 あたえてやるのだ。その上で無視をするなり、
 ご託を述べるようならば、
 それは、奴らが戦争をしたいと云っているも同じだ。
 その時はまさに合戦にて決着をつけるしかない。
  もしかりに、蒼魔族の軍勢を戦場で滅ぼした後でも
 蒼魔の都に戻り、その民に云うことが出来るだろう?
  お前達の長と軍は、斯く如くこのように無法を行った。
 ゆえに氏族会議はこれを処断したが、
 これはけして私心からではない。とな」
東の砦長(随分よく考えてきたじゃないか。虎の旦那。
 俺はあんたをちっとは見直したよ)
鬼呼族の姫巫女「よく考えられた案であるな! 銀虎公どの」
銀虎公「はははっ! なんてことはない。
 俺は考え事は苦手だしな。
 そこで獣牙の長老会に知恵を求めたのだ。
 久しぶりに頼られた爺どもは鼻血を流して喜んでな!
 三日三晩議論をして考えてくれたのだ。
 あやつらは腰抜けではあるのだが、こういう時には役に立つ」

625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 22:28:18.80 ID:jeE4iYgP
碧鋼大将「ははははっ! そうでありましたか」
銀虎公「やはり、いまひとつか?
 爺の考えた手だからなぁ。
 俺としてはもっとはっきりした策も好みなのだが
 今回はこのような手段が良いとも思ったのだ」
火竜大公「いえいえ、立派な作戦でしょう」
妖精女王「はい」
紋様の長「よい部の民を抱えるのも、長の資質、器量です」
東の砦長(まったくだ)
鬼呼族の姫巫女「いかがだろう。ご老公どの、皆の衆。
 このような対応がもっとも当面は妥当だと考えるが」
勇者 こくり
碧鋼大将「異議はない」
紋様の長「まったくもって」
火竜大公「では、そのような手紙を届けるとしよう。
 書面については、そうだな……。
 人魔の族長、紋様殿に頼むとしよう」
紋様の長「心得た」
東の砦長(それもよく考えた対応だ)
鬼呼族の姫巫女「鬼呼族からの書状だといらぬ感情を
 かきたててしまうでしょうしな」
碧鋼大将「さて、他にもあるかな」

626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 22:29:11.27 ID:jeE4iYgP
東の砦長「今回は、申し訳ないが衛門一族から
 願いたいことがある」
鬼呼族の姫巫女「ほほぉ、どのようなことだ?」
東の砦長「その前に、我が街で重要な仕事を
 行なっている担当者を一人を呼んでもかまわぬか?
 今回の願いに関係があるのだ」
鬼呼族の姫巫女「かまわぬだろう?」
銀虎公「うむ」
火竜大公「よろしい認めよう」
東の砦長「よし、入ってくれ」
がちゃり
鬼呼族の姫巫女「ほほう」にやり
勇者「あー」
火竜大公「……このような場所にっ」
火竜公女「お召し頂き感謝しまする。
 衛門一族の長よりのお招きに頂き参上いたしました。
 我、火竜一族を出身とする火竜公女と申すもの。
 いごおみしりおきくださいますよう」ふかぶか
勇者「うー」
銀虎公「これはこれは。……子煩悩で誰にも見せないって云う
 話だったのではなかったのか」
火竜大公「うぉっほん!!」 ぼうっ

628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 22:31:06.00 ID:jeE4iYgP
妖精女王「して、お話とは」
東の砦長「まずは、わが衛門一族の本拠地、
 開門都市の現状から述べさせて貰う。
 まず我が街は……人間どもに荒らされてな。
 俺もその軍の中にいたから、
 このような言い方は好きではないし本来は出来ないのだが、
 街はともかく周囲の農地や街道は
 めちゃくちゃになってしまった」
鬼呼族の姫巫女「うむ」
銀虎公「あのあたりは大規模な攻防戦が何ヶ月持つづいたからな」
碧鋼大将「さもありなん」
東の砦長「もっとも今では人の行き来も復活して、
 もとより沼地やら山奥にあるわけでもない、
 平野の都市だから、随分復興もしてきた。
 そこは心配には及ばない。皆、明るく働いてくれている。
  しかし、ここまで復興してくると、
 今度は交易が盛んになってきてな。
 元々交易の要衝であった街だ、無理もないのだが
 そうなると、踏み固めた程度の街道では馬車の旅に不足がある」
鬼呼族の姫巫女「ふむ」
火竜大公「で、あろうな」
東の砦長「もちろん我が氏族の領地のことであれば
 我が氏族が総力を持って整えればよいのだが
 事が交易となるとそうも行かない」

631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 22:35:13.35 ID:jeE4iYgP
鬼呼族の姫巫女「衛門一族の領地は確か……」
火竜大公「魔王どの直轄宣言だから、開門都市および
 その周辺馬で2日、くらいであろうな」
妖精女王「そのくらいでしょうね」
東の砦長「で、調べてみたところ、長い戦乱でこの世界の
 街道という街道は荒れ果てて、
 橋はあちこちで焼け落ちているそうじゃないか。
 それを修理したり、何とかしたいという話だ」
鬼呼族の姫巫女「ふむ」
碧鋼大将「それは我が一族の願いでもあった、しかし」
妖精女王「そう、莫大な労力が掛かりますよ」
東の砦長「その辺は、専門家を連れてきたので聞いてくれ」
鬼呼族の姫巫女「ほほう」
火竜公女「はい。
 今回開門都市自治委員会の依頼を受けて調査をしました。
 この街道敷設は十分に利益をあげる、と思われまする」
碧鋼大将「は?」
銀虎公「おいおい、道を造るだけで何で利益が上がる」
火竜大公「話してみよ」

645 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/24(木) 23:14:48.53 ID:jeE4iYgP
火竜公女「まず、我らは長い長い戦乱を過ごして参りました。
 前魔王殿はそう言った戦乱を傍観したばかりか
 奨励すらなさいましたゆえ。
 また今魔王どのはご病気が続きました」
妖精女王「そう……ですね……」
火竜公女「第一に示すべき事は、
 戦をする人手があって、道を造る人手がない
 などと云うことはあり得ぬ、と云うことです」
鬼呼族の姫巫女「それはそれで、道理よな」
火竜公女「新しい街道を造れば、人も物も流れまする。
 物の流れは、豊かさへの第一歩。
 何か足りない物があれば隣国から買えばよいのです。
 あまりたる物があれば、隣国へ売ればよいのです。
 そして、売り買いを行えば、税が入りまする」
紋様の長「税か」
勇者「……ふむ」
火竜公女「こたびの計画では、こちらの地図に示したとおり」
ばさりっ!
火竜公女「9本の本街道を考えまする。
 これらは現在の旧街道を利用しますゆえ、
 その長大さと比較して短期間で作れる見通し。
 これを九族大路と称しまする。
 さらには、今後の展開として、この九街道を補佐する
 18の街道も視野にいれまする」
碧鋼大将「なんと壮大な!」

646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 23:16:03.98 ID:jeE4iYgP
火竜公女「これら街道は、必要があれば土を盛り上げ
 谷を削り、可能な限り石畳で作りまする」
銀虎公「何故か?」
火竜公女「この世界を悩ませてきた、
 大規模な河川の氾濫に対する備えとしてゆえです。
 道の左右には一定の間隔で槐の木を植え、
 この根を持って大地を抱き、土の流れを防ぎまする。
 また、この九族大路の要所には水路を平行して作り
 水利をはかりまする」
紋様の長「水利とは?」
火竜公女「これは受け売りでございまするが、
 この地下世界、我らが故郷には、
 水のある場所と無い場所の差が激しすぎまする。
 ある場所は大河の氾濫に怯え、
 無い場所では実りのない赤茶けた大地。
 これでは豊かな場所を奪い合い、戦乱が生じるも必定。
 水のある地域からは水を抜き安全を確保し、
 無い地域へと水を少しでも運ぶ方策を練るべきかと」
火竜大公「……これだけの計画をどれだけの期間で
 行おうというのだ」
火竜公女「九族大路を9年。
 その後18枝道をもって18年」
鬼呼族の姫巫女「それだけの人手、金をどうする?」
火竜公女「今回のお願いはそれでございまする」

648 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 23:17:23.16 ID:jeE4iYgP
銀虎公「とは?」
火竜公女「債符を興しまする」
碧鋼大将「債符?」
火竜公女「はい。債符は木の札のような物で、
 番号が振ってあり登録が必要でありまする。
 これを大量に作りますゆえ、買って頂きたい。
 債符を持った商人は、債符ひとつにつき一台の馬車を
 あたらしく作った九族大路において税を払うことなく
 通行させる、とすればいかがでしょう」
鬼呼族の姫巫女「ふぅむ、つまりは事前に税を集める訳か」
火竜公女「御意」
紋様の長「その債符は高いのか?
 普通の商人では買えなくなってしまうのではないか」
火竜公女「あまりにも高い、つまり後で税を払った方が
 安くつくというのであれば本末転倒。
 ですがその場合、その判断も商人の才覚ゆえ
 あとから税を払おうと考える方は、それで宜しいでしょう。
 しかし、税なり債なるものは
 その重さ軽さよりも、
 不公平であることにがもっとも民の反感を買うと思いまする。
  説明をし、街路の有用性を説き、上位に当たる者から
 積極的に債符を買えば必ずや上手く行くと考えまする」