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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part60


554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 18:35:07.64 ID:jeE4iYgP
商人子弟「やることが増えたというのもある。
 冬の国は数年前まで、
 中央からの資金および食料を提供されて
 戦うような傭兵国家だったんだ。
 開拓民は多かったけれどそれは中央の圧政や重税を嫌って
 南の果てまでやってきた冒険者のような人たちが主体だった。
 当時この国でちゃんと生き抜いていけるかなんて云うのは
 賭けに近かったわけだからね。
 でもいまは馬鈴薯がある。
 馬鈴薯のお陰で支えられる人口が増えて、
 中央の経済的な呪縛から脱出した南部諸王国は、
 独自の予算を組む時期なんだ。
 今まで困れば困ったタイミングで、
 中央のお財布に泣きついていれば良かった様々なことを、
 これからは自分たちでやらなければならないからね」
従僕「えっと、お兄さんが家を出てお父さんになった感じ?」
商人子弟「そういうことだ」
従僕「えへへ〜」
商人子弟「三ヶ国通商のおかげで冬の国一国では
 どうにもならなかった製品が手に入るのは素晴らしい。
 けれど、やはり三ヶ国合わせても限界がある。
 鉄製品は鉄の国から購入することも出来るけれど
 年々需要が増しているのは、木材だ。
 我らの国には手つかずの原生林があるけれど、
 それだって無限ではないしね。
 それから馬も必要だし、真鍮なんかも欲しい。
 香辛料や衣料品も必要だろうね」
従僕「んぅ……」メモメモ

555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 18:36:50.29 ID:jeE4iYgP
商人子弟「まぁ、こういったものはなにも国が
 あれこれ手配する必要はない。
 商人が運んできて売ってくれる」
従僕「じゃぁ、僕たちは何をすれば良いんですか?」
商人子弟「“何をすればいいか考える”のが最初の仕事だ」
従僕「うーん、うーん」
商人子弟「一番大事なのは?」
従僕「……ごあいさつ?」
商人子弟「それは、一番最初にするのだ」ごちん
従僕「はぅぅ」
商人子弟「さぁ、なんだ?」
従僕「ごはん?」
商人子弟「だな。食料だ。
 こいつについては馬鈴薯がある。
 それから、輪作指導による家畜もだんだんと殖えてきた。
 特に豚は農民の口にまで十分に回るようになったな。
  小麦や大麦もバランスを考えて作っているようだ。
 後のことを考えると、乳製品や果物なんかも欲しい。
 さて、どうする?」
従僕「えっと、欲しいものは、
 作るか買うかしないと、手に入りません」
商人子弟「そうだな。もっともだ。冴えてるな」
従僕「えへへ〜」

556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 18:39:07.78 ID:jeE4iYgP
商人子弟「お金を出して買うのは簡単だ。
 特に今から予算を組もうとする時にはそうだな。
 でも、簡単なことばかりをしていると、
 どんどんお金が無くなって行く。
 重要なのは“費用対効果”だ。
 たとえば、“乳製品を買うべきだ!”なんて云う声は
 疑って掛かるべきだ」
従僕「そうなんですか?」
商人子弟「まぁ、会計や金を扱い場合は
 何でも疑って掛かった方が良いというのは基本だが、
 この場合はもうちょっと色々考えなければならない。
 まず“必要”と云う言葉についてだ」
従僕「必要は、ひつよーですよ?」
商人子弟「必要ってのは、無いと死んじゃうことを云うんだぞ?
 そう考えると、“本当の意味で必要”ってのは多くはない。
 気をつけなければならないのは、それがどれくらい必要で、
 どれくらいのお金がかかるか。これが一つ目」
従僕「はい」めもめも
商人子弟「そして、二点目が重要だ。
 “同じお金があったら他に何が出来るか?”」
従僕「……?」きょとん

558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 18:41:21.83 ID:jeE4iYgP
商人子弟「だってそうだろう?
 たとえば従僕の家には何にもご飯がないとする」
従僕「哀しいです」じわぁ
商人子弟「で、パンを買うべきだ!」
従僕「パンは美味しいですね! 買うべきです!」
商人子弟「そうだな、美味しい以前に食べないと
 お腹が減って死んでしまうかも知れない。
 だから“パンが必要”だ」
従僕「必要です」
商人子弟「で、パンを買った。二個買えた!」
従僕「はいっ!」
商人子弟「でも、同じ値段で馬鈴薯だったら
 二袋買えたかも知れないんだぞ?」
従僕「……え」
商人子弟「な? “パンを買うべきだ!”と云う声に対して
 パンのことだけを考えちゃ駄目だ。お金には限りがあるからね。
 予算という一つの財布でやりくりするには、
 ありとあらゆる事に詳しくなければ間違ってしまう。
 馬鈴薯が二袋あったら、パン二個よりもおなかいっぱいだろう?
  だから“パンを買うべきだ”とか
 “パンを買わないなんておかしい”とか
 “お金は食べられない。お金の問題じゃない。パンを
 買わないなんて人殺しと一緒だ!”なんて言葉に
 騙されちゃいけない。同じ金額で別の救い方も出来るからね」
従僕「はいっ」

560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 18:48:32.92 ID:jeE4iYgP
商人子弟「そう考えれば、そもそも“パンを買うべきか否か?”
 なんて云う考え方自体がすでに引っかけ問題なんだ。
 大事なのは“色んな欲しいものの中で優先順位をつける事”と
 “欲しいものを出来るだけ安く、沢山手に入れられる方法を
 考える”事だ。
 そのためには、いろんな事を勉強しなければならない」
従僕「大変そうです……」
商人子弟「まぁ、ゆっくりでいいさ。
 判らないことは詳しい人に聞けば良いんだ」
従僕「はい……」
商人子弟「さっきの話で云えば“パンを買うか、それとも
 買わないか”じゃなくて“食料を買うなら何が良いか?”とか
 “同じ金額で健康でお腹いっぱいにになるためにはどうしよう”
 っていう考えをするべきなんだな」
従僕「……うーん。判ってきました」
商人子弟「ってところで、宿題だ」
従僕「えぇ!?」
商人子弟「我が冬の国では、もうちょっと乳製品に出回って欲しい。
 具体的に云うと、ミルクよりはチーズだ。
 保存食の問題でもあるし、一種類の食品に比重が偏ると
 凶作が恐ろしいからね。
 チーズはたべたことあるだろう?」
従僕「あります!」

561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 18:51:24.50 ID:jeE4iYgP
商人子弟「なので、チーズの勉強をすること。
 チーズをみんなに一杯食べて貰って、
 なおかつお金がかからない。
 そういう方法を考えること」
従僕「ふぇぇぇー」
商人子弟「何事も目的があればよく考えるようになるのっ」
従僕「ヒントっ。ヒント下さいよぅ」
商人子弟「ヒントなんてないよ。正解なんて無いんだから」
従僕「じゃぁ、子弟様だったらどうするんですか?」
商人子弟「考えてないから判らないよ。
 でもまぁ、そうだなぁ。沢山チーズを
 外国から買ってきて、そいつを冬の国のみんなに売る」
従僕「じゃぁ、その方法で!」
商人子弟「な〜んて方法は失格だな。
 少なくともその1/10くらいの
 予算でどうにかする方法を考えないと」
従僕「うー……」
商人子弟「さって、じゃ。課題を出し終わったところで、
 本日の書類整理に移るか、従僕くん」
従僕「はぁい、子弟様っ!」

566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 19:31:13.62 ID:jeE4iYgP
――冬越しの村、魔王の屋敷、執務室
魔王「修道院から送ってもらった年度別の輪作障害研究は
 どこだったかな」
メイド姉「こちらになります」
ばさばさばさっ!
魔王「ううっ」
メイド長「あらあら、まぁまぁ。大丈夫ですか?」
魔王「すまぬ、書類を崩してしまった」
メイド姉「すぐに整理しますから、大丈夫ですよ」
魔王「左腕が不自由なだけでこんなにもふらつくとは」
メイド長「もうじき包帯も取れます。それまでですよ」
メイド姉「こちらが今日届いたお手紙です」
魔王「む、そうか。確認しなくてはな」
メイド長「これは冬寂王からのお給金」
メイド姉「ええ」
魔王「なんだ。貴族とか云って名誉爵位ではなかったのか?」
メイド長「文官の一種ですからね。
 まおー様は、顧問的な立場だということですよ。
 律儀に毎年四回送って下さっているんです」
メイド姉「金庫に入れてありますよ?」
魔王「そうだったのか。気が付かなかった」
メイド長「まぁ、まおー様は経済学者ですけれど、
 金銭への執着はかなり薄いですからね」

567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 19:32:17.77 ID:jeE4iYgP
魔王「執着するには、貨幣というのはあやふやすぎるのだ」
メイド長「あらあら。研究対象ですのに」
魔王「わたしが研究しているのは経済を通した
 魂持つ者の相互関係および社会形成であって、
 そこから独立した金融の資産価値なんて無いも同然だ。
 えーっと……」
がさごそ
メイド長「どうされました?」
魔王「いや、その……。おかしいな」
メイド姉「ふふふっ。氏族会議の議事録と、
 九族大路の計画書ですよね? こちらですよ」
魔王「それだそれだ!」
メイド長「ふふふっ」
魔王「ほら。わたしがいなくても、魔族は魔族で上手く
 行っているじゃないか」
ぺらっ
メイド長「ふぅん。道路の再建、か。前の乱世で
 随分橋が壊されてしまったからなぁ」
メイド姉「……」
メイド長「橋ですか」

568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 19:34:16.77 ID:jeE4iYgP
魔王「橋は戦略重要な拠点になることが多い。
 交通の要所だからな。
 場合によっては行軍の速度をも左右する。
 そのため、石で作った方が良い場所でも
 わざと木造で作り、いざという時は燃やせるように
 しておくこともあるくらいだ」
メイド長「再建と云うことは、とりあえずの平和を
 みんなが認めた、と云うことでしょうね」
魔王「そうだな。蒼魔族の問題は残っているが……」
メイド長「時間が掛かるかも知れませんね……」
メイド姉「あの……」
魔王「ん、なんだ? メイド姉」
メイド長「……?」
メイド姉「いえ、その」
魔王「どうしたんだ? 身体の調子でも悪いのか?」
メイド長「――」
メイド姉「いえ、その。あの、お茶を沸かして参ります」
魔王「ああ、頼んだだぞ」
がちゃん。とてて……
メイド長「――」

575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 20:28:04.64 ID:jeE4iYgP
――聖王国某所、秘密大鉄工所
ガァン! ゴォン!!
作業監督「温度を上げろ! 薪をくべろっ!」
労働者「おうっ! あぅっ!」
作業監督「ちんたらするなっ! メシを抜かれたいのかっ!!」
ガァン! ゴォン!!
作業監督「高炉を休ませるな! ガンガン炊くんだ!!」
労働者「はぁっ……はぁ……」
労働者「熱い……水を……」
作業監督「もう少しで休憩だ! さぁ、働けっ! 働けっ!」
かつん
かつん、かつん……
職人の長「作業は進んでいるな。
 よしよし、純度の高い鉄で鋳造を行えばそれだけ精度も上がる」
技術者「そうですね」
王弟元帥「どうなのだ? 量産の方は?」

576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 20:29:50.48 ID:jeE4iYgP
職人の長「はぁ。マスケット銃は今月にでも追加で800丁が
 お渡しできるかと思います」
聖王国将官「合わせれば、そろそろ5000を越えますな」
王弟元帥「遅いな。もっと早く作れんのか?」
職人の長「やはり精度の問題がありまして、その……」
王弟元帥「ふむっ。カノーネのほうはどうだ?」
職人の長「そちらのほうが、肉厚に作れる分
 歩留まりはよいですな。毎月二個のペースで鋳造できます」
王弟元帥「カノーネは問題なさそうだな」
職人の長「はぁ、ただいま『The genius's Manuscript』に
 当たらせている者を呼んでおりますので」
コンコンッ
職人の長「入るが良い」
技術者「お呼びでしょうか?」
熟練技師「やって参りました」
王弟元帥「この者達か?」
職人の長「はっ。
 お渡し下さった『The genius's Manuscript』には
 様々なスケッチや覚え書きがございました。
 マスケットやカノーネは試作品がありましたから
 複製を作るのは早かったのですが、それ以外についても
 調査せよとの御指図でしたゆえ」
王弟元帥「判っている。指示したのはわたしだ」

577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 20:32:00.41 ID:jeE4iYgP
職人の長「はっ。恐縮でございます」
王弟元帥「で、どうなのだ」
技術者「その……」ちらちら
王弟元帥「構わない。余は能力ある者に敬意を感じる。
 直答を許すから、詳しく聞かせよ」
技術者「では、その」
熟練技師「まずは、この『The genius's Manuscript』は
 素晴らしいですね。まさに精霊様の下された天恵の書!
 詳しい仕組みは判らずとも、残されたスケッチを見るだけで
 どんどんと新しいアイデアがわいて参ります!」
技術者「はい。このマスケットを中心に実に様々な考察が
 描かれています」
熟練技師「たとえば、この石炭なるものは、
 大地から掘れる石でありながら、燃えまする」
王弟元帥「ふむ、北の地で取れるというものか」
技術者「『The genius's Manuscript』には、この石炭を
 蒸し焼きにして純度を高め、コウクスなるさらなる燃料を
 作る方法が記されています。このコウクスをつかえば、
 より強力な鉄を作ることが出来ます」
熟練技師「また『The genius's Manuscript』にはこのような
 スケッチがあり……これはわたしが大きく描き写し、
 整理したものでございますが」
王弟元帥「これは……撃鉄周辺の構造か?」
熟練技師「殿下におかれましては、銃のことが判りますので!?」

578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 20:34:49.79 ID:jeE4iYgP
王弟元帥「おのれの指揮する軍の武器ぞ。判らぬでどうする」
熟練技師「はっ! 恐れ入ります。
 では説明させて頂きますと、これはおそらく
 マスケットの改良と申しますか、
 いわば後継にあたるものかと考えられます」
王弟元帥「ふむ」
熟練技師「撃鉄によって打ち付けられたこの部分には、
 火打ち石がはめ込まれていまして、
 これがそのすぐ下に作られた小さな部屋の蓋を破り、
 打ち付けられます」
王弟元帥「この部屋はどれくらいのサイズなのだ?」
熟練技師「図では大きく描かれていますが、
 実際には指先でつまめるほどのものです。
 しかし、打ち破った蓋は開閉式に作られ、
 直後にバネ仕掛けにより閉まります。
 これにより、火うち石の火花が部屋に
 閉じ込められることになるのです。
 この仕掛けにより、火縄のないマスケットが開発できるわけです」
王弟元帥「ふむ」
熟練技師「えー……。お解りになられましたでしょうか?」
王弟元帥「理解した。運用と生産の問題点は?」
熟練技師「運用においては、私どもには今ひとつ
 理解しかねますが、まず火口、火縄の必要がなくなり
 発射の際の姿勢が自由になります。
 さらには雨などの悪天候に強く、火縄がないせいで、
 狭い場所での射撃が可能です」
王弟元帥「狭い場所……。密集隊形か」

579 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 20:38:03.39 ID:jeE4iYgP
熟練技師「命中精度は多少下がると予想されます。というのも」
王弟元帥「時間差で引火するからだろう?」
熟練技師「その通りでございます。
 生産においてはマスケットに比べてやはり精密な作業が
 必要とされるために、一部の高度な技術を持つ職人を
 導入する必要があり」
王弟元帥「つまりは、数多くは作れぬ、と」
熟練技師「はい」
王弟元帥「長」
職人の長「はいっ」
王弟元帥「量産する方法を考えよ」
職人の長「ええっ!?」
技術者「……」
王弟元帥「それが長の役割であろう」
職人の長「は、はぁ」
技術者「恐れながら、陛下」
王弟元帥「申すが良い」
技術者「これらの武器は様々な部品で作られております。
 新しいアイデアの武器もそうですが、
 全ての部品が全て高度な技術を要するわけではございませぬ」
王弟元帥「ふむ」

580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 20:40:46.40 ID:jeE4iYgP
技術者「そこで、現在のように職人が一丁一丁仕上げるのではなく、
 たとえばある部品だけを作り続ける職人、別の部品を作る職人
 と云うように仕事を分けるのはいかがでしょう?」
王弟元帥「おお!」
技術者「そうすれば、一人の職人が覚える仕事の量は
 少なくても構わないと云うことになります。
 中級程度の技術は必要ですが、
 彼らも部品一個だけであるのならば、
 腕利きの職人に比肩する速度で
 仕事をこなせるようになるわけです。
 また新しい職人の育成も早くなります」
職人の長「しかし、それではギルドの立場はどうなるっ!
 長い間、技術の保全に努めてきた我らの立場は。
 職人を育成して親方として束ねてきたギルドの利益を
 害する考えだっ!」
技術者「はぁ……」
王弟元帥「ふっ。長殿。その件についてはわたしから
 提案しようではないか。
 この件で技術が仮に漏洩したとしても
 聖王国の影響範囲内であれば、
 全てのマスケット、およびその関連技術を取り扱うためには、
 銅の国の鉄工ギルドの許可、もしくは親方証が必要だという
 法律を作れば良かろう? 勅書でもよい」
職人の長「ほ、本当でございますかっ!?」
王弟元帥「ああ、この『The genius's Manuscript』は
 鉄の国からもたらされたもの。
 このままでは銅の国の技術は鉄の国に置いて行かれよう?
 ……それを考えれば、悪い話ではあるまい」

582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 20:43:35.58 ID:jeE4iYgP
王弟元帥「よし、では話は決まったな。
 熟練技師、技術者、だったな?」
技術者「はいっ!」
熟練技師「はっ!」
王弟元帥「余は汝らの若い力に期待しておる。
 これからも長を助け、改革し、作業にいそしんでくれよ」
技術者「こ、光栄でありますっ!」
熟練技師「身命にかえましてっ!」
王弟元帥「うむ。では、余は忙しい。残る話は次の機会としよう」
職人の長「お送りいたします、殿下っ!」
バタバタッ
王弟元帥「よい。作業があるであろう? 余は期待しているのだ」
聖王国将官「長どの、ここでよいですよ。
 あとは技師達や作業者達と話をお詰め下さい」
ガチャン。
――ザッザッザ、ザッザッザ
王弟元帥「将官」
聖王国将官「はっ」
王弟元帥「時期を見て、あの長は切れ。
 若手に権力を握らせて工房の運転速度を最大化するのだ」
聖王国将官「心得ました」

587 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/24(木) 21:01:50.88 ID:jeE4iYgP
――冬越しの村、魔王の屋敷、夜の執務室
さらさらさら……
メイド姉「……」
さらさらさら……
とさっ。
メイド姉(これで、二年分の整理はお仕舞い。
 ……後は、今月の財務諸表の写しを)
さらさらさら……
魔王「……」
さらさらさら……
魔王「メイド姉」
メイド姉 びくっ 「あっ。当主様!」
魔王「根を詰めすぎだ」
メイド長「ええ、身体をこわしてしまいますよ?」
メイド姉「それにメイド長様も……。すみません。えっと
 何かご用でしたでしょうか?」
魔王「何を焦っておるのだ?」
メイド姉「……」