Part49
482 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 20:38:12.02 ID:GDf918.P
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、魔王の天幕
勇者「あ゛〜」 へたぁ
魔王「ううう……」 くたぁ
メイド長「あらあら、二人ともだらしない」
魔王「そんなことは云っても」 へろぉ
勇者「なんだ。会議だの根回しだのってのは
こんなにも疲れるのか。合戦並みの疲労だぞ」 よぼよぼ
メイド長「神経を消耗するという意味では同じですからね」
魔王「で、どうだったのだー勇者」
勇者「そっちこそどうだったんだよー魔王」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「せーので、云うか」
勇者「わぁった」
魔王「せーの」
勇者「蒼魔族はだめだめ」 魔王「獣人族は話通じない」
魔王「……」 がくっ
勇者「……」 ぽてっ
メイド長「あらあら」
483 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 20:39:53.69 ID:GDf918.P
魔王「獣人族の奴ら、はなっから話を聞かないのだ。
どうもうさんくさい感じはするのだが、
挨拶をした次の瞬間から帰れと言われる始末。
挙げ句の果てには、女が魔王になっても
ろくな事にはならないなどと陰口を叩かれる。
あそこまで女性蔑視が強い氏族であったとは思わなかった」
勇者「蒼魔族は、なんていうか、表面上は最敬礼だぞ。
よく判らんが、黒騎士ってのは強い戦士なんだろう?
戦士部族らしい下にも置かないもてなしを受けたぜ。
ただ、話はさっぱり通じてる雰囲気がない。
“平和? 戦士である我らがそんな冗談を言ってはいけませんよ”
くらいの温度感だ。あいつらどっかいかれてるよ」
魔王「はぁ……」
勇者「ふぅ……」
魔王「なかなか先行き厳しそうだなぁ」
勇者「もーあれだよ。なんだっけ? 昔の魔王みたいに
ぱかーんとトップをやっちまうか?」
魔王「綺麗事を言うつもりはない。だからそれで氏族の意志が
変わるならやむを得ないとも思うのだが、そうでないならば
ただの押さえつけだ。いずれ噴出することになるだろう」
勇者「そうなー」
メイド長「お茶ですよ」
とぽとぽとぽ
魔王「ありがたい……」もそもそ
484 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 20:41:25.64 ID:GDf918.P
勇者「話すにしても交渉するにしても、もうちょっと
情報というか、背景みたいなのが判ってこないと
何にも見えてこない感じだ。
蒼魔族ってのは、あれかな。教会なのか?」
メイド長「?」
魔王「いや、違うと思うが」
勇者「なんだろうな。うまくは言えないけれど、
信仰みたいな匂いを感じたぞ。
信仰と云うよりは、確信なのかな。
疑いのない強さみたいな」
魔王「ふむ……。氏族に特定の宗教的な教えはなかったと思うが」
勇者「そうか……」
魔王「まぁ調べてみよう。
獣人族の方はもっとあからさまな女性蔑視を感じたな。
これはなぜだろう。新たな長と、その取り巻きのせいなのか……」
勇者「どんどん時間がたっていくな」
メイド長「ええ……」
魔王「そろそろ本腰を入れて交渉を開始せねばならぬのだが」
勇者「切っ掛けが欲しい」
魔王「軍人子弟と商人子弟、それに貴族子弟にまかせてある」
勇者「大丈夫なのかよ、あいつら」
魔王「信用するしか有るまい。信用できなかったら
そもそも共存の道など探る意味がない」
523 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 14:47:51.85 ID:pOGbuk6o
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、鬼呼族の天幕
鬼呼執政「では、停戦派にまわると?」
鬼呼の姫巫女「そうだ」
鬼呼執政「ご決断賜りまして」
鬼呼の姫巫女「我が鬼呼の地は極とは遠い。
ゲートが無くなったとは言え、地上界への道のりは
ずいぶんな距離になろう。
戦を傍観すれば被害も少なかろうが、
うまみも少ない」
鬼呼執政「人界への領土は作らぬ、とお考えで?」
鬼呼の姫巫女「領土が増えれば民は潤うだろうが、
その間の線を保つ労力は潤いととんとん、だと。そう踏んだ」
鬼呼執政「それも道理でしょうな」
鬼呼の姫巫女「蒼魔族の専制地を迂回するのならば、
竜族や人魔族の土地を踏み越えねば極へは至れぬ。
交易をするにしても、何らかの方法を考えねば
利を挙げることは叶わぬ。
最悪、魔族を挙げての大戦争に兵を取られて、
うまみは蒼魔族や竜族に全て持って行かれる
などと云うことにもなりかねない」
鬼呼執政「と、なるとまた形勢が変わりますな」
524 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 14:50:40.78 ID:pOGbuk6o
鬼呼の姫巫女「そもそも、今の魔王は停戦を望んでいるようだ」
鬼呼執政「ええ、はっきりとは申されませんでしたが」
鬼呼の姫巫女「……ふむ」
鬼呼執政「魔王様も、得体が知れない方ですな」
鬼呼の姫巫女「先代は考えの判りやすい方だったからな」
鬼呼執政「ええ」こくり
鬼呼の姫巫女「そもそも今回の魔王殿は、
聞いたこともない小氏族の出身だ。
確固とした自分の領土も、支援を誓う氏族も持たずに
しかも、見せしめの処刑や戦争もせずに
よくぞ20年も持ったものよな」
鬼呼執政「そろそろ、命脈尽きると?」
鬼呼の姫巫女「占術官の言葉によれば、あと一月」
鬼呼執政「……ほう。病ですかな、それとも討たれるのか」
鬼呼の姫巫女「しょせん、占術。気力と意志であろうな」
鬼呼執政「いやいや、しかし。馬鹿にしたものでもありませぬ」
鬼呼の姫巫女「わたしはあの頼りなくて危なっかしい
魔王が嫌いではないのだが……。他人ごととも思えぬゆえ」
鬼呼執政「しかし、まつりごとは自ずと別でございましょう」
鬼呼の姫巫女「心得ておる」
鬼呼執政「では、停戦。ということで」
鬼呼の姫巫女「その方向で、枝族の族長達への
内々に説明を頼む。親書の草稿を文官に書かせよう」
526 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 14:52:58.30 ID:pOGbuk6o
――冬越しの村、魔王の館、厨房
メイド妹「いいの、お姉ちゃん?」
メイド姉「いいのいいの。
皆様ちゃんと頑張って働いたんですからね。
美味しい料理をどんどんお願いね」
メイド妹「うん♪ んっとね、次はベーコンと
アスパラガスのパイ、それから肝臓の煮込みだよ。
それにクレソンのサラダ」
メイド姉「上出来よ」にこっ
商人子弟「で、そっちはどうなんです?」
軍人子弟「拙者もう、へろへろでござるよぉ」 ぱたり
貴族子弟「エレガントさが足りないね。君たちは」
商人子弟「いや、そういう君も弱ってない?」
貴族子弟「曇りの日だって時にはあるさ」
軍人子弟「書類が。書類がぁ」
商人子弟「そんなこと喚いたって武勲を立てて出世したんだろ?」
貴族子弟「聞いているよ。なんでも護国卿だっていうじゃないか
僕たちの中じゃ一番の出世頭だと思うよ」
軍人子弟「騙されたんでござるよ……」
メイド妹「はーい! 新作のパイだよぉ♪」
メイド姉「ワインもありますよ?」
商人子弟「おお、ありがとう!」
貴族子弟「お二人はいつも可愛らしいですな」
軍人子弟「飲まないとやってられないでござる」
527 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 14:54:25.23 ID:pOGbuk6o
メイド妹「あのねー。軍人のお兄ちゃんは、鉄の国で
私たちを助けてくれたんだよ? 格好良かったよ」
メイド姉「ええ、凛々しかったです」
商人子弟「なんだお前。見せ場あったんじゃないか」
貴族子弟「そうだそうだ。
女性を助けるなんて僕にふるべき役所だろう?
君は自分の顔をわきまえたまえよ」
軍人子弟「軍人は民間人を助けてなんぼでござるっ」むぅ
メイド妹「喧嘩はダメだよー?」
メイド姉「そうですよ。注いであげませんよ?」
商人子弟「いやいや。これは喧嘩って云うか。なぁ?」
貴族子弟「そうそう。仲間内の愚痴ですよ」
とくっ、とくっ、とくっ
軍人子弟「騙されたんでござる……」
商人子弟「それに、なんだ。貴族子弟も……。もぐもぐ」
貴族子弟「?」
商人子弟「湖の国と赤馬の国での話は聞いているぞ?」
貴族子弟「まぁね」
軍人子弟「拙者も聞いたでござるよ!」
メイド妹「なになに、なーにぃ?」ちょこん
メイド姉「どんなお話ですの?」
貴族子弟「たいした話じゃないんですよ、淑女がた」
軍人子弟「いーや! たいした話でござる」
530 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:02:19.01 ID:pOGbuk6o
商人子弟「修道院で働いていた湖の王族の外戚がいましてね。
まぁ、色んな事情で恵まれない環境でしたが、
それでも王族の一人。
歳は花も色づく16歳、美しく貞淑なること百合のごとし少女」
軍人子弟「おぬし語りが上手いでござるなぁ。
このパイも絶品でござるが……。もしゃもしゃ」
商人子弟「なぁに、僕のは吟遊詩人の受け売りさ。
で、この事情が事情なら、王宮で暮らしているはずの王女。
この王女と、遊歴の身の上で修行中の赤馬の国の王子と
知り合った。――修道院の光さす庭で、
互いにそうとは知らぬまま」
メイド妹「わぁ。お話みたい!」
商人子弟「一目で恋に落ちる二人!
しかしお互いの名も知らず身分も知らず、
何度かの逢瀬を繰り返すもすれ違うばかり。
時は風雲急を告げ、中央の国家に降りかかる未曾有の国難。
物価の高騰に、なにやら戦の気配。
赤馬の王子は国元へ呼び戻され、
おり悪くその外戚の王女も宮殿へと力尽くで移されることに」
メイド姉「……王族の方も、自分の意志では生きられないのですか」
商人子弟「王族であらばこそ。って云うのもあるんでしょうね」
軍人子弟「きっと騙されたんでござるよ……」
商人子弟「もはや巡り会うことのない星の定めの二人。
かたや湖の国の淑女としてゆくゆくは政略結婚の道具。
かたや赤馬の国の王子として、いずれは長兄を王にいただき
戦場へと赴く身。どう考えても二人の運命は
離れて行かざるを得ない」
531 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:03:10.14 ID:pOGbuk6o
貴族子弟「……」
商人子弟「そこで我らが貴族子弟の登場だ。
赤馬の王子と夜盗と化していた盗賊団と戦い
酒を酌み交わしたと思えば、馬術大会で競いあう。
かたや湖の国の宮殿にて、市井の卑しい生活を送っていたと
陰口を叩かれ、友の一人もいなかった孤独な王女の
話し相手となり、ダンスの手ほどきをする。
やがて彼女は生まれながらの典雅さを備えたとも思える
優美で清楚な姫君へと変わる」
メイド妹「かぁっこいい!」
商人子弟「舞踏会で再会をした二人。
気が付かないままに赤馬の王子は二回目の恋に落ち、
群舞曲の調べのままに、花のような娘と踊る。
意を決した王子が赤馬の王へと出奔を願い出て
二人でどこか他国へと駆け落ちするかと思えたその夜に
貴族子弟が知恵を貸し、父王を鮮やかに説得。
四方丸く収めて王子と王女の早春の恋も成就と聞けば
――これはもう、歌物語のようではないですか?」
メイド姉「素敵なお話じゃないですか」
メイド妹「うんうんっ!」
軍人子弟「なんでお前にだけ格好良い役が
回ってくるでござるかっ」
貴族子弟「別に格好良くはないだろう?
僕の役回りなんて、聞いての通り、徹頭徹尾脇役じゃないか」
商人子弟「いやいやいや。なかなか出来る事じゃないと思うぞ」
軍人子弟「夜盗の一団と戦ったのでござるか?」
貴族子弟「まぁ、やりあったけれど」
532 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:05:03.50 ID:pOGbuk6o
貴族子弟「あんな街角で歌われているような
派手な戦いではなかったよ。
傭兵崩れだったけれど、100人なんて嘘っぱち。
本当は15人ほどしか居なかったし、酔っていたんだって。
その殆どだって王子が格好良く切り伏せてしまったのさ。
首領との一騎打ちは、それは流石に見応えがあったけどね。
僕がやったのは、斥候して見張りを倒して。
……まぁ、僕が出来るのは、そんなものさ」
メイド妹「ねぇねぇ。お姫様は本当にそんなに綺麗だったの?」
貴族子弟「それはぁ。
――うん。
でも、お話よりもずっとおてんばでね。
穀竿なんて振り回したりして、勇ましかったよ。
明るかったし聡明だったし、なによりも気品があったね。
修道院勤めで、繕いだらけの古着を着ていた時にさえ、
月の移る湖面みたいな美しくて、優しい娘だった。
……笑うと子供みたいなんだけどね」
メイド姉「……」
軍人子弟「何でこいつばかりが……ううう」
533 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:07:23.47 ID:pOGbuk6o
メイド妹「わぁ、美人さんなんだねぇ」
貴族子弟「メイド妹だって、十分キュートだよ?
あと5、6年も立てば男の子が放っておかない
淑女になること、間違いなしさ」
メイド妹「えへへへ〜♪」
商人子弟「何にせよ大活躍だ」
軍人子弟「だいたい、そんな可愛い娘にダンスだの
教えて、おぬしの方はなーんにも無かったんでござるか?」
貴族子弟「ははははっ。ないない、全然さ。
そもそも相手は、慕ってる男がいるんだよ?
そこに僕が登場するなんて野暮も良いところじゃないか。
僕はちょっぴり話し相手になって
宮廷生活に付きものの細かい仕来りやマナーを教え、
ダンスを1、2曲手ほどきしただけさ。
なんていうのかな……。
あんまりにも、彼女が必死なものだからさ。
手助けしてやらずにはいられないほど健気で
諦めを知らないものだから。つい、だよ。
それに、花のような笑顔とでもいうんだろうね。
あんな風に微笑まれたら、手助けせずにはいられないよ。
ぼかぁこれでも貴族だからね」
メイド姉・商人子弟「……」
535 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:10:13.09 ID:pOGbuk6o
軍人子弟「さようでござるかぁ……。
拙者も可愛い娘と知り合いたいでござるなぁ」
メイド妹「じゃぁ、貴族のお兄ちゃんは、がんばったんだね!
えらいよぅ。もう一個パイをあげる!」
貴族子弟「これはこれは、レディ。光栄でございます」にこっ
商人子弟「まぁ、まだこの先色んな機会があるさ」
メイド姉「はい」
貴族子弟「そうさ、軍人君? 君にだって出会いがね」
軍人子弟「有るんでござるかなぁ……」
メイド妹「軍人のお兄ちゃんには、この馬鈴薯をあげます。
たすけてもらったもんね!」
軍人子弟「なんかこのしょっぱい馬鈴薯だけで、
拙者いきていける勇気がわいてくるでござるよ」
メイド姉「立派な仕事を為されているのですわ」くすくすっ
貴族子弟「税収と通商の方はどうなんだい?」
商人子弟「忙しいねっ」
軍人子弟「まったくでござるよ」
貴族子弟「おいおい、それが仕事なのだろう?」
536 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:12:55.05 ID:pOGbuk6o
商人子弟「追われてるよ。……でもまぁ、おかげさまで。
この半期は前期と比べて、馬鈴薯の収穫量は倍だ。
戸籍と里家制の効果が出始めてきた」
軍人子弟「その辺の制度、鉄の国でも運用できないでござるかね」
商人子弟「里家制はともかく、戸籍は早期に把握すべきだろうな」
貴族子弟「うちのほうで、紙の生産工房をふたつ増やしたそうだよ」
商人子弟「丁度良いじゃないか。過去の羊皮紙の記録も
紙に移し替えた方が断然便利だぞ。かさばらないし」
軍人子弟「そこも手をつけるべきでござるかねぇ」
商人子弟「記録から手をつけなきゃだめだろう。
記録、保存、参照は経験を蓄積するための基本だって
授業でも何度も出てきたじゃないか」
軍人子弟「いやしかし、そこに手をつけるとなると、
高官の皆様方に話を通す必要があってでござるなぁ。
面倒くさい仕事がねずみ算式に……」
商人子弟「まーその悩みは判るけどね。
……となると、冬の国は王が若く変わったタイミングで、
僕が士官したんだな。それで、結構やりたい放題やっても
老臣さん達はあんまり文句を言ってこないのか。
何事も都合が良かったんだな」
貴族子弟「エレガントにこなすためには、
付き合いや根回しは重要なのだよ。諸君。
……それが社交という言葉の意味だよ?」
537 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:14:06.77 ID:pOGbuk6o
軍人子弟「いやはや」
商人子弟「で、我らが妹弟子の方はどうなんだい?」
貴族子弟「そいつは、是非聞かないとね」くるっ
メイド妹「美味ひぃね……。もきゅもきゅ」
メイド妹「はい?」
軍人子弟「お二人でござるよ」
メイド妹「??」
メイド姉「弟子って……」
商人子弟「おいおい。同じ師匠に教わったじゃないか」
メイド姉「でも、わたし達、そんな授業なんて」
貴族子弟「授業だけが学ぶ場ではないでしょう。
ぼくたちが授かったモノはそんな小さくはないはずですよ」
軍人子弟「授業だけで学んだのなら、
あんなにお尻が腫れ上がることもなかったでござる」
メイド妹「わたしはぁ、去年は40個新作のレシピを
作りました! みんな美味しいと大好評でしたっ♪」
貴族子弟「それは素晴らしい。この煮込みなんて宮廷でも
ちょっと食べられないくらい柔らかくて美味しいですよ」
軍人子弟「まったくでござる。鉄の国の酒場は量が多いばかりで、
味付けはどんな料理でも一緒でござるよ」
商人子弟「うんうん。妹くんはどこに勤めるにしても
我々三人の推薦状つきでコックになれるよ」にこにこ
538 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:16:19.56 ID:pOGbuk6o
メイド姉「わたしは……」
貴族子弟「ん?」
メイド姉「わたしは何もしてないです……」
商人子弟「おいおい、そんなことを云っちゃダメだよ」
貴族子弟「僕たちは、あの演説の学士が
本当は君だって知っているんだし」
軍人子弟「そうでござるよ」 むしゃむしゃ
メイド姉「でもあれは、何かしたというわけでもないです。
みんなに迷惑ばかり掛けて、戦争になりかけていうるわけで。
正しいことなのか、間違ってはいないかって
ずっとずっと思い悩んでいるのに」
商人子弟「それは結果だよ」
メイド姉「……っ」
貴族子弟「君は僕らの妹弟子なんだから、
もうちょっとしゃんとして欲しいね。
自信のなさは女性の麗質を曇らせるんじゃないかと僕は思うよ?」
軍人子弟「でも、子女はこのくらいがたおやかで良いでござるよ」
メイド妹「お姉ちゃん……?」
商人子弟「お節介かも知れないけれど、
“そこ”にいつまでも隠れているわけにも行かないだろう?」
貴族子弟「……」
軍人子弟 こくり
539 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 15:17:48.18 ID:pOGbuk6o
商人子弟「まあね」にこっ
メイド妹「?」
商人子弟「まだ時間はあるさ!」
メイド姉「……」
貴族子弟「今日のところは、別件がありますしね」
軍人子弟「あ! そうでござった!」
商人子弟「たまに頼ってきてくれたかと思えば
師匠の人使いの荒さってのは言語に絶するな」
貴族子弟「まったく。僕が一番の重労働だと思うね」
軍人子弟「こっちでござろう?」
商人子弟「懐が痛いのはこっちだよ。各種貴石を金貨で
5万枚分だぜ? 痛いじゃ済まない」
貴族子弟「こっちは、12地方の土壌サンプルだ」
軍人子弟「拙者は純度別の鉄鉱石、馬車一台相当でござる」
メイド姉「あっ。はい。話は聞いています」
商人子弟「ここに預けるで構わないのかな?」
メイド姉「ええ、後で取りに来るって仰ってました」
商人子弟「師匠は何をやっているのだか」
貴族子弟「師匠のことだから、何かとてつもなく迂遠なことを
天才的な手腕でやってるのではないかな」
軍人子弟「井戸の底から月を射貫くような人でござるからなぁ」
メイド妹「当主のお姉ちゃん達も、
一緒にご飯食べられればいいのにねー」
545 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/20(日) 16:24:18.28 ID:2wq60CIP
――地下世界(魔界)、天幕で作られた街、広場
おおおお! すっげぇ! 六人抜きだっ!
ドガシャァー!
勇者「俺の勝ちだ」
銀虎公「くっそぉぉぉぉ! 次だっ!
誰かおらぬのか!? 我ら獣牙の勇士はっ!」
白狼勇士「わたしが相手だっ!」くるくるくるっ! すたっ!
勇者「銀虎公、魔王を侮辱した件。10人抜きで謝罪して貰うぞ」
銀虎公「良かろう、黒騎士よっ!」
白狼勇士「その戦、見事! しかしここまでだっ!」
ガギィィンっ!
勇者「お。強いな」
白狼勇士「何を抜かす! 我と打ち合ったが最後、
狼族の脚力から繰り出す必殺のっ!」
勇者「ヤクザキック」
ぼぐぅ
白狼勇士「かはっ!? ……腹が。俺の腹が……
無くなったようだぁっ!」
す、すげぇ。あの猛者、白狼が泡を吹いて……
悶絶してるよ……。起き上がらないぞ……
勇者「悪い、あんまり加減できなかった」