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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part47


401 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 15:07:41.43 ID:GDf918.P
――冬越しの村、冬の終わり、メイド妹の日記
「三度目の冬の終わりです。
 この冬は使える香辛料が増えました。
 肉荳蔀や胡椒、蕃紅花などです。こういうのは、
 お兄ちゃんが魔界から持ってきてくれて、とっても便利です。
 おにいちゃん万歳!
 当主のお姉ちゃんは色々忙しいみたいです。
 お兄ちゃんと一緒に、冬のお城に行くんだっていって
 今日も出掛けています。
 交易とか、通商とか、受け入れとかいっています。
 お土産を沢山用意しないといけないんだって。
 当主のお姉ちゃんは、魔界の王様もしているので
 お土産が沢山必要なそうです。
 お土産で貧乏になるんだって。
 大変だね。
 本日は、ソーセージの平焼きパイを作ります。
 胡椒が手に入ったので、胡椒味です。
 お兄ちゃんはこれが大好きです。
 血入りのソーセージのも作ろうっと。
 村長さんへ届けると、喜んでくれるから。
  もうすぐ、春です」

404 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 15:53:28.16 ID:GDf918.P
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、天幕で作られた街
勇者「おいおい、すげぇな」
メイド長「そんな風に覗かれると、不審に思われますよ」
勇者「それにしたってこれは。……街みたいだぞ」
魔王「まぁ、小さな街程度の人は集まっているだろうな」
メイド長「各氏族の主立った実力者、小さな氏族の者たち、
 そういった忽鄰塔の参加者を目的に集まる商人や芸人、
 売り込みに来た戦士達。
 忽鄰塔には忽鄰塔に参加する何倍もの人数が詰めかけるのが
 常のことですから」
勇者「……いよいよか」
魔王「ああ、いよいよだ」
勇者「勝算はどんなものだろうな」
魔王「決して良いとは云えぬ。が、時間はある」
勇者「そんなことを云っていたな」
魔王「全会一致が原則だからな。
 わたしが首を振らなければ最悪引き延ばしは出来るわけだ」
勇者「ふむふむ」
魔王「とは云っても、無限の時間をかけられるわけでもない。
 いくら長いとは言え、二月が限度だろう。
 忽鄰塔においては前例が重視されるからな。
 時には魔王の言葉よりもだ」
勇者「そうなのか」
魔王「ああ。だから二ヶ月。
 その間に探り、交渉して事態を打開せねばならぬ」

405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 15:54:52.26 ID:GDf918.P
メイド長「本日の所は、開催宣言と挨拶程度ですね」
勇者「開催宣言は、魔王がするのか?」
魔王「そうだ」
勇者「俺はどうすればいい?」
魔王「どうするんだった? メイド長」
メイド長「えーっと、守護騎士の扱いですよね……。
 魔王様が挨拶している間には、剣を抜いて地面に突き立て
 右後ろあたりでぼーっと立ってればよいのではないかと」
勇者「なんだかえらく地味だな」
魔王「魔王直属の最強騎士、かつ将軍というシロモノだからな」
メイド長「ええ。ある種の権威付けと脅しですから。
 ときたま“ギラッ!”とか無意味に殺気を放って
 参加者連中に“こいつ、出来る!”とか思わせれば
 いいんじゃないでしょーか」
勇者「不安になってきたぞ」
魔王「初っぱなから不安になってはダメだ」
メイド長「そうですよ。体力消費しますよー」
勇者「それもそうだけど」
魔王「我らの天幕はこれと周囲の八つだ」
メイド長「そんなに必要ないんですけれどね」
勇者「俺らだけだしな」
魔王「とはいえ、後で貢ぎ物を届けられたり、
 客人を待たせたりすることもある。
 そもそも魔王の天幕がちんけでは示しが付かぬ」

406 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 15:56:20.26 ID:GDf918.P
魔王「さぁて、そろそろか?」 すくっ
メイド長「お待ちください」
魔王「へ?」
メイド長「まさかその綿のシャツと巻きスカートに白衣
 なんて出で立ちで開幕の演説に向かうおつもりでは
 ないでしょうね?」
魔王「だ、だめか? やっぱり」おどおど
メイド長「何で小声になるんですか」
勇者「あはははっ。びびってやんの」
メイド長「勇者様」
勇者「はい?」
メイド長「しばらく背中を向けていてください」
魔王「だ、だめだっ! 勇者は外に出ているべきだっ」
メイド長「勇者様がいないと魔王様が抵抗するでしょっ!」
勇者「えー、はい。仰せの通りに」
   魔王「だ、だめだというのにっ! わ、わかった。
    脱ぐっ! 自分で脱ぐっ! ちゃんとするっ」
   メイド長「まぁたこんな地味な下着を着けてっ」
   魔王「暖かいのだ、良いではないかっ!」
   メイド長「色の取り合わせをお考えください。
    ほら黒ですよっ。ちゃんとつけて」
   魔王「やっ。ど、どこに触るっ。苦、苦しいっ」
   メイド長「脇から肉を持ってくるんですよ。
    こんな時こそ駄肉でも活用しないとっ」
勇者 ……ぽたっぽたっ。

407 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 15:57:48.85 ID:GDf918.P
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、中央大広場
魔王「我が同胞(はらから)よっ! 我が臣民よっ!」
おおおおお! 魔王様だっ! 魔王様が演台にあがられたぞ!
魔王「まずは我が呼びかけにかくも多くの同胞が応えてくれたこと
 この魔王嬉しく思う。魔族の繁栄よ、とこしえなれっ!」
おおおおっ!
魔王「我が治世もはや二十年に達する。
 人間族の強襲により突破されたゲートは、
 長らく活動状態にあった。
 起動されたゲートは魔力や法力により制御され、
 我らが住むこの内側なる大地と、
 人間族の住まう外側なる大地の間を隔て、
 またつなげる関門としての役目を果たしてきた。
 しかし、ゲートはその役目を終えた。
 我が右腕にして守護の剣、
 黒騎士によりついにゲートは消滅したのであるっ!」
  メイド長「ほら、勇者様。一歩前へ。やり過ぎ禁止ですよ」
  勇者「お、おうっ」
勇者 ザッザッザ、ガシャン!!
く、黒騎士だ! あれが黒騎士……。魔王麾下の最強騎士。
光るらしいぞ? いや、俺は回るって聞いた。音も出るらしい……。
勇者 ギラッ☆
す、すごい殺気だっ! なんて恐ろしい気迫なんだ……。

409 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 15:58:34.99 ID:GDf918.P
魔王「我が同胞(はらから)よっ! 我が臣民よっ!
 ゲートは消滅したっ。
 これにより、内なる大地と外なる大地は、
 今ひとつの大地となったのである!
 我らの前に広がるのはもはや旧き日の我らが世界ではない。
 新しい一つの世界であるっ!」
おおおお! 魔王! 魔王様! 魔界に栄光あれっ!
魔王「我が臣民よっ! 今こそ我らは岐路に立つっ。
 この内なる大地に山積した諸問題にもけりをつける時が来た。
 あまたある氏族の長なるものよっ。
 参集に応えてくれて礼を言おうっ。
 だがしかし、今はそのような儀礼に時を費やすことなく
 我らが明日への道を探らねばならぬ」
おおおお!
  おおおおお!
魔王「我、三十四代魔王なる“紅玉の瞳”は
 ここに忽鄰塔の開催を宣言するものであるっ!」
おおおお!
  おおおおお!
 魔王様! 魔王様〜! 魔王様ーっ!! 魔王様!!
 
 魔界万歳! 忽鄰塔万歳! 魔族の繁栄よとこしえなれっ!!
   メイド長「……ふぅ」
   魔王「とりあえずはこのような物でよかろう
   勇者「なんか、もう、えらい人数だなぁ」

423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 16:39:02.47 ID:GDf918.P
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、魔王の天幕
――その夜
勇者「はぁぁぁ」 ぐってり
魔王「ううう。しんどかったな」 くたり
メイド長「あらあら、まぁまぁ」
勇者「何でメイド長はそんなにタフなんだ」
魔王「ば、ばけものか」
メイド長「わたしがご挨拶に付き合った訳じゃありませんから」
勇者「あれから何人にあったんだ?」
魔王「さぁ……? 15組くらいまでは覚えていたが」
メイド長「48氏族でございますよ」
勇者「48!? よんじゅうはちって云ったか」
魔王「数千人はいたかと思ったのに」
メイド長「まぁ、一組の氏族さまが挨拶に見えられると
 族長に何人かの有力な枝族のひとに、王子や王女や
 なんやかやにお付きの人なんかも来て、
 結構な大人数ですからね」
勇者「それが一斉に喋ると、なんかこー。
 うわーんと耳鳴りがするような……。すげぇな」
魔王「メイド長。茶を頼む。甘いやつ」
勇者「俺もだ。すげー甘いやつ」
メイド長「はいはい、お待ちくださいね」

424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 16:39:58.04 ID:GDf918.P
勇者「なんだっけ、魔王」 くて
魔王「なんだ勇者」ずるずる
勇者「えーっと。八大なんちゃらってのは、挨拶来てたのか」
魔王「来てたぞ。真っ先に来てた」
勇者「よく判らなかった」
魔王「そうか。馴れないとなかなかピンとは
 来ないのかも知れないな。どこの氏族も立派な挨拶をしていたぞ」
勇者「そうか。悪いけれど、今後のためにもざっくり解説
 してくれないか? 今日の様子も含めてさ」
魔王「うむ、かまわんが。……メイド長、もう一杯たのむ」
メイド長「はい。畏まりました」
 とぽとぽとぽ……
魔王「まず、真っ先に来た使節は人魔族だな。
 人魔族はもっとも数の多い魔族だ。
 姿形は、人間族に似ているな。もちろん瞳の形や身体の各部分に
 特徴のあるものもいるが、ちょっとした変装で人間社会で
 暮らすことが出来るものが殆どだろう。
 人魔族は数が多い上に、混交や、他の種族からの流入も多い。
 生粋の人魔族は、紋様族や秘眼族くらいだろうな。獣人族や
 鬼呼族のものが、人魔族と交わり、一員になっているケースは
 珍しいことではない」
勇者「ああ、わかった。あの威厳のある貴族風のおじさんだな」
魔王「そうだな。あれでも斧を使わせると強いらしいぞ?」

425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 16:41:19.41 ID:GDf918.P
魔王「彼らは人間界侵攻については、賛成でも反対でもないんだ。
 というか、数も多いし、枝族も多いから
 そこまで統一された意見を持ちずらいというのが本音だ。
 人間界侵攻に限らず、多くの問題に中庸の姿勢を取る。
 まぁ、氏族としては煮えきれないんだが
 個人個人は好奇心も強く、その場その場の状況に悪く云えば迎合、
 よく言えば臨機応変に対応してゆける連中だ」
メイド長「都市居住の魔族は、特に人魔族が多いですね」
勇者「ああ。開門都市で出会う、ちょっと猫目だったり
 腕が長かったりする連中は人魔族なのか」
魔王「そうだな。彼らは氏族としては、
 良くも悪くも保守的で堅実だ。
 と云うのも数が多くて、内部での
 意見調整が付かないせいなのだがな」
勇者「ふぅん。……まぁ、会議では敵でも味方でもない感じだな」
魔王「そうだ」
勇者「ふむ」
魔王「次に来ていたのが、蒼魔族の連中だ。
 肌が蒼くて、記章をいっぱいつけていた……判るか?」
勇者「ああ、判る。すっごいきびきびしてた連中だろう?
 蒼魔族は知ってるぜ。何度か剣をあわせたこともあるし。
 なんだろうな、エリートって感じだよなー。
 実際弱い蒼魔族にはあったことがない」
魔王「そうだな。蒼魔族は強力な部族だ。
 数としては人魔の半分もいないだろうが、
 身体能力と魔力に秀でていて、個体能力が高い。
 魔族の中でも優秀と云えば、優秀だ。
 彼らもいくつかの枝族に分かれているが、
 共通しているのは蒼い肌だな。瞳の色は金色から赤まで様々だ」

427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 16:43:18.32 ID:GDf918.P
勇者「ふぅん」
魔王「彼らは結束力の強い氏族で、
 氏族内部では完全な階級社会を築いているな。
 蒼魔族の族長は、他部族の族長とは別次元の権限を持っている。
 また戦士が尊ばれる軍人国家的な性格を持っているな。
 彼らは純潔を重んじるために、他種族と交わることは
 殆ど無い。親戚での結婚が奨励されるほどだ」
勇者「魔族もいろいろだな。共存についてはどうなんだ?」
魔王「彼らは人間界侵攻論の急先鋒だ。
 もちろん領土的だったり経済的な野心も持っているが、
 一番強いのはエリート意識だな。
 その意識が発展に向かううちはよいが、
 戦争に向かうとなかなか物騒な一族なんだ」
メイド長「実際、大きな軍事力も持っているから始末に負えません。
 八大氏族の中ではもっとも多くの魔王を輩出しているという
 自負心もあるでしょうしね……」
勇者「やっかいそうだなぁ」
魔王「やっかいついでに、開戦論のもう一方の雄が獣人族だ。
 獣人族は、これまた様々な氏族に分かれているな。
 獣の身体の一部を身体の特徴として持っている氏族だ。
 いまの族長は銀虎公と呼ばれている。
 彼らはあまり都市には住まない。山野に城塞などを作り、
 そこに住むことが多いな。
 森の中や自然の中で起居するものも多いようだ。
文明程度では遅れた氏族だが、その分戦士としては強靱だ」
勇者「あー。んー……。魔狼元帥とかやっちゃった……」
魔王「それは先代の大将軍だ……。やっぱり勇者がやったのか」
メイド長「まぁ、あの将軍も開戦論派でしたから……」

428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 16:45:27.72 ID:GDf918.P
魔王「この獣人族も、開戦論派だな。
 元々血気にはやった連中だし、地下世界では、
 最近耕作面積が増えて、原生林の伐採や開墾が進んでいる。
 新しい居住空間を求めて、地上世界を縄張りにしようという、
 いわば偏向した領土欲求だな」
勇者「偏向してるのか?」
魔王「獣人族の概念では、縄張りというか領土は重複可能なんだ。
 そもそも彼らの多く、まぁ肉食獣的な性向を持つ氏族は、
 1人あたりに要求する空間が桁違いに大きい。
 人間や農耕を行う魔族は、せいぜい一人が耕せる広さしか
 要求してこないが、彼ら獣人族が要求するのは、
 1人あたり数km四方の“狩り場”なんだ。
 その上、彼らは彼らと文化の違う氏族、
 つまり農耕をする氏族の縄張りと、自分たちの縄張りは
 重なっていても構わないと考えてる。
 なぜなら自分たちが行っているのは、
 農耕ではなくて“狩り”だから、だとね。
 これではいくら人数が少なくとも
 他の氏族との関係はぎくしゃくするよ」
勇者「そりゃそうだ」
魔王「まぁ、そんな獣人族も最近は内部で穏健派が
 育っていたはずなんだが……。
 今は強硬派が息を吹き返しているらしいな」
メイド長「そうですねぇ」
魔王「さて、次は機怪族だ。魔族の中でも相当に
 変わった連中だな。機械仕掛けの鎧みたいな連中だ」
勇者「ああ。うん、判った。いたな、そういうの」
魔王「彼らはからくりと魔力機関を育てている氏族でな。
 時に技術者を輩出することでも有名だ。
 もっとも彼らのからくりは、機怪族の身体と接合される
 前提なので、魔界全土に広まることは滅多にないのだが」

429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 16:47:23.47 ID:GDf918.P
魔王「彼らもまた開戦論支持者だ。
 もっとも機怪族は前の二氏族よりは随分冷静というか、
 利己的で目的ははっきりしている。
 彼らが欲しいのは金属資源なのだな。
 それも希少土類が欲しいらしい。
 彼らの研究欲を満たすためには新しい金属サンプルが必要で
 そのためには地上はもってこいの鉱山なのだろう。
 また、彼らの領土の鉄鉱山は枯渇しつつある。
 それも開戦論を支持する理由の一つだな」
勇者「やっと説得できそうな相手が来たよ」
メイド長「そうですね」
魔王「まぁ、だからといって油断は出来ん。
 かれらは、八大氏族の中ではもっとも数が少なかったように思う。
 そのため謎が多くてな。わたしにも実態は知れない。
 どのような隠された目的や意図があるやも判らないのだ。
  そもそも、彼らがどのようにして生まれて、
 本当はどのような姿なのかも判らぬ。
 あの大鎧のような外見が本物なのか
 からくりなのかも今ひとつ判然とせぬのだ」
勇者「ああ、あれはからくりだよ?
 鎧の中には、クリーム色とピンクの、
 何かどろっとした果肉みたいなのがつまってて、
 その中に女の子が入ってるんだ。
 中から魔力伝達糸と圧力シリンダで動かしてるって云ってた」
メイド長「……」
魔王「……」
勇者「え? どうしたの?」

437 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 17:39:25.50 ID:GDf918.P
――地下世界(魔界)、鵬水湖の畔、魔王の天幕
勇者「らからなんれもないのり……」
魔王「わたしも女騎士もいるのに、なんでそう
 女子に好意を振りまいて生活するのだっ」
勇者「いや、あれは好意じゃなくて勇者の義務で……」
魔王「問答無用ぞっ」
メイド長「はぁ……」
魔王「連れ帰って紹介するくらいの覚悟があるならともかく、
 それだけの覚悟もなく婦女子の裸体だけを見るとは何事か」
勇者「はひすひません」
魔王「まったく!」
メイド長「ほんとですよ。傷物にする順番を考えてください」
勇者「えらいすひまへんれひた」
魔王「……」ぷんすか
勇者「……」
魔王「……えーっと、どこまで解説したのだったか?」
メイド長「人魔族、蒼魔族、獣人族、機怪族までですね」
勇者「のこりは……4っつか?」
魔王「と、なると……竜族か」
勇者「ううう。竜なら少しは判るぞ」
魔王「そう言えば火竜大公とは面識があるのであったな」
勇者「開門都市の時に賭けをしたからな」

439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 17:41:58.71 ID:GDf918.P
魔王「竜族もまた高い戦闘力と英知を秘めた氏族だ。
 現在の長は火竜大公だな。
 竜の姿と人の姿を行き来できると云われているが、
 実際行うには高い魔力が必要とされるので
 限られた血筋の才能有るものが可能にする秘術だ。
  多くの竜族は、竜の角や鱗を秘めた人型の氏族だな。
 彼らもまた山中に住み、あまり他の氏族と関わろうとはしない
 孤高の氏族だ。だが決して愚かではないため、先々の
 展開を読もうとするところは買えるな。
  わたしとしては、今日火竜大公と話した感じでは
 そこまで馬鹿ではないと思った。
 だがしかし、ひいき目に見ても氏族としての態度は保留、
 中立であろうなぁ」
メイド長「そうですね」
勇者「まぁ、氏族を率いるなんて云う立場に成ると、
 どんな決断でも軽々しくは下せないのかも知れないな」
魔王「次は巨人族か」
勇者「おお、あのでかい連中だな?」
魔王「うん、そうだ。とは云っても、
 身長はわたしの3倍程度から倍程度の者が多い。
 彼らはこの地下世界でも中央部から北方にかけて住んでいる。
 多分に漏れず枝族にわかれていて、
 山に住まう者、森に住まう者、丘に住まう者などがいて
 性質も様々だ。
 中には乱暴者もいるが、それも“乱暴”程度であってな。
 凶暴とまではとても云えぬ。
 話してみれば素朴で素直な連中だと云えよう」
勇者「じゃぁ、味方になってくれそうか?」

440 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/19(土) 17:43:32.48 ID:GDf918.P
魔王「それはそれで、ちょっと難しい。
 彼らの先祖は、どうやら地上世界に
 何回か出た事があるらしくてな」
勇者「そういえば、巨人のおとぎ話は地上にもあるな」
魔王「どうも、人間には良い感情を持っていない。
 “巨人を騙して無理矢理働かせる意地の悪い人間”というのは
 巨人族全体で語り継がれている、
 それこそ子供でも知っている物語なのだ。
 彼らは地上世界に関わることを望んではいない。
 どちらかと云えば放っておいて欲しい派閥だ。
 しかし、あえてどちらかを選べ、と迫るならば
 人間と共存するよりは戦争をすることを選ぶと思う」
勇者「人間のご先祖様何やってるんだよ……」
魔王「まぁ、仕方有るまい」
勇者「見るからにでっかくて気の良い連中っぽいのだけどな」
魔王「付き合ってみると、酒好きの良い奴らだ」
勇者「残りは?」
魔王「鬼呼族は角を持った氏族だ。
 なかなか複雑な氏族だが地下世界の東側を領域としている。
 魔族の中でも器用な連中で、法力を使いこなす者もいるな。
 妖力を持ち、姿を消したり変えたりするのもお手の物だ。
 ……魔物の中にも、動物とは言え、それなりに知恵を
 持つ存在がいるのは知っているであろう?」
勇者「ん? ああ」