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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part44


80 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 22:18:44.99 ID:z6GJxeoP
メイド姉「すぅ……。すぅ……」
メイド妹「ど、ど、どうしよう?
 作ってないのに朝ご飯があるよっ。
 どうすればいい?
 お姉ちゃん、朝ご飯だよぅ」
メイド姉「……んぅ。……なかったらおなか減る癖にぅぅ」くて
メイド妹「そっか」
メイド姉「……くぅ」
メイド妹「そういえばそうだよね」
メイド姉「すぅ……。すぅ……」
 ほわぁ
メイド妹「良い匂い」じゅるっ
メイド妹「ど、どんなかなぁ……。わ。わ。黒いパンと、
 白いパンと、ベーコンエッグと、黄色い果物と、
 これなにかな。……ジャガイモのポタージュだぁ♪」
メイド姉「んっぅ」のびっ
メイド妹「お姉ちゃん。起きた?
 ご飯だよ! ご飯できてたよっ!」
メイド姉「すごいね」にこっ
メイド妹「食べて良い?」
メイド姉「二人で顔を洗ってからね」

81 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 22:20:18.27 ID:z6GJxeoP
――魔王城東翼、別館、古城民宿“まおー荘”午前の岩風呂
ザパーン、ザプーン
東の砦将「おうっ」
勇者「おっす。おはよう」
東の砦将「何だ、顔色悪いな。眠れなかったのか」
勇者「いや、いろいろ……」
東の砦将「そうか。まぁ、色々あらぁな」
勇者「……主に自分が敵だったんだけど」
東の砦将「戦場では良くある事さ。しゃぁねぇな!」
勇者「なんだそれ?」
東の砦将「酒だ。用意してくれたんだ」
勇者「昼から飲んでるのか?」
東の砦将「昼からだから美味いんだろう」
勇者「うーん。一理あるな」
東の砦将「よし、いこうぜ」
トットット……トク、トクッ
勇者「うっす。では一献」
東の砦将「乾杯!」
勇者・東の砦将「ぷはぁっ!」
勇者「肴は何なんだ?」

82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 22:21:16.04 ID:z6GJxeoP
東の砦将「ああ、焼いた小魚と、野菜の塩もみだ」
勇者「美味そうだな」
東の砦将「どんどん行こうぜ」 トク、トクッ
勇者「ああ……。ぷはぁ」
東の砦将「で、どうなんだ?」
勇者「なにがさ」
東の砦将「どれが本妻なんだよ」
勇者「へ? 何の話だ?」
東の砦将「おいおいおい。家族旅行だって云っただろう?」
勇者「“みたいなもん”だよっ」
東の砦将「ほぉ」にやり
勇者「ど、どうだっていいだろっ!」
東の砦将「隠すなって」
勇者「隠してないって」
女魔法使い「……興味津々」
勇者「うわっ!?」
東の砦将「ど、どこにいたんだっ」
女魔法使い「……潜っていた」
東の砦将「魔、魔、魔法使いの嬢ちゃん」

83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 22:22:28.09 ID:z6GJxeoP
東の砦将「どういう人間なんだ」
勇者「こういうやつなんだ。
 とらえどころはないけど、悪いやつじゃない」
女魔法使い「……本妻争奪戦勃発。実録極道物語」
東の砦将「えー」
勇者「……」
東の砦将「嬢ちゃんが本妻なのか?」
勇者「そんなわけがあるかっ!」
女魔法使い「……本妻なんかよりも深い仲?」くたっ
勇者「だいたいなんで魔法使いがここにいるんだ。男湯だぞ」
女魔法使い「……混浴」
勇者「混浴でも何でも問題有るだろう。ううう、なんとかしろ」
女魔法使い「……迷彩魔法で問題なし」
東の砦将「何か肌色をした四角が一杯ちらちらしてるが」
勇者「どこが迷彩なんだっ」
女魔法使い「……最先端の薄いぼかし」
東の砦将「本当にとらえどころがないなぁ」
勇者「これで魔法使いとしての腕は特級なんだ。
 導師クラスだろうが小指でひねれる」
東の砦将「そいつはすげぇな」
女魔法使い「ごきげん」

109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 22:57:19.79 ID:z6GJxeoP
東の砦将「こうして昼から風呂の使って酒を飲んでると
 浮き世のしがらみが、すーっと抜けていくな」
勇者「うーん」
女魔法使い「……勇者はぬけないの? お尻が青いから?」
勇者「もう青かねぇよっ」
女魔法使い「……赤かったらお猿」
東の砦将「どうした? なんかあるのかい?」
勇者「あー。まぁ」
東の砦将「なんだい」
勇者「忽鄰塔って判るか?」
東の砦将「ああ、大族長会議だろう。
 魔王……って昨晩のあの美人が招集したって云う。
 その話は、今じゃ魔族なら四つの子供でも知ってるぜ」
勇者「そっか」
東の砦将「忽鄰塔がどうかしたのか?」
勇者「出来れば、その族長会議で、人間との共存の道を
 探りたいんだけれど、どうなるか判らないんだよなぁ」
東の砦将「そいつぁ、無理ってもんだろう?」
勇者「へ?」

112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 22:59:43.56 ID:z6GJxeoP
東の砦将「いや、だからよ。今度の忽鄰塔は人間世界への
 遠征の規模を決めるもんなんだろう?」
勇者「誰がそんな話を?」
東の砦将「世間じゃもっぱらそういう話だ」
勇者「それは誤解だ。魔王はそんなことは望んじゃいない。
 永久和平条約とは行かなくても、何とか停戦というか
 少なくとも荒っぽくない結末を望んでいるんだ」
東の砦将「いや、そいつは昨日話を聞いたから判るけれど。
 今度の忽鄰塔じゃ無理だろう?」
勇者「なんでだ?」
東の砦将「だって、魔族の間に“今度はどこまで攻め込む”
 なんて話がある時点で意識が
 そっちに向かっちまっているってことじゃないか。
 みんなが戦争を望んでいるとは思わねぇが、
 うわさ話がこう流れてるって事は
 戦争したい誰かさんにとっては好都合なんだ。
 そいつはきっとこの流れを利用している」
勇者「……っ」
東の砦将「戦ってのは、武器だの人数だの練度も大事だけど
 こういう数字には出せないような“雰囲気”ってのも
 大事なんだよ。
 雰囲気を持ってかれちまった軍は大抵負けるな。
 傭兵生活が長いと、この匂いをかぎ分けるようになる。
 負け戦の軍に傭兵が居着かないのはそのせいさ」
勇者「……うん」

113 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 23:01:08.91 ID:z6GJxeoP
東の砦将「その上、八大氏族だ」
勇者「ん?」
東の砦将「人魔族、蒼魔族、巨人族、竜族」
女魔法使い「……獣人族、鬼呼族、妖精族、機怪族」
勇者「それが八大氏族なのか?」
東の砦将「知らなかったのか?
 まぁ、とにもかくにも。
 この八大氏族のうち、人間との和平……というか、
 共存を望んでいるのは妖精族だけだ」
勇者「へ?」
東の砦将「妖精族だけなんだよ。共存を望んでいるのは」
勇者「だって開門都市には色んな氏族の人たちがいる
 じゃないか。それをいうなら火竜公女だって」
東の砦将「それは時勢、ってやつだ。
 もし共存と決まれば、そりゃ共存するしかないだろう?
 開門都市では少なくとも、当面共存と決まった。
 だとすればその中でどう生きるかって話だよ。
 俺たちは本当は共存なんて望んじゃいなかったんだ、
 なーんて泣き言を言っても始まりゃしない。
 それと同じように、共存を望んでいない派閥だって
 もし共存になったらと考えて、色々手は打ってるさ」
勇者「そうなのか……」

114 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 23:02:18.16 ID:z6GJxeoP
東の砦将「公女の嬢ちゃんの話によれば、
 火竜の一族は頭は固いが馬鹿じゃないって事らしい。
 竜族は大体のところ山岳部に住んで、
 あまり他の魔族とも関わらない孤高の種族なんだ。
 共存に反対って云うよりは放っておいて欲しいって事だな。
 だが、竜族の住む山にはえてして鉱山物資が眠っている。
 魔界では少ない純度の高い鋼の取れる山も竜族のものだ。
 そういう場所に住んでいて、トラブル無しとは行かない。
 だから、娘の一人には、出来る限りの学をつけて
 人里に送り出したんだ。
 もちろん公女の嬢ちゃん本人の性格もあるけどな」
勇者「そうだったんだ」
女魔法使い「……それぞれの氏族も内側は複雑」
東の砦将「まぁ、そうゆうこともある」
勇者「そうなのか?」
東の砦将「枝族といってな。
 氏族の中も小さな氏族に分かれているんだよ。
 たとえば公女の嬢ちゃんは竜族のなかの、火竜族、
 その名門大公家の娘だ。
 竜族はほかにも飛竜族だの土竜族だのがいる」
勇者「複雑なんだなぁ」
東の砦将「まぁ、生きてるんだから仕方ない」

117 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 23:05:10.01 ID:z6GJxeoP
勇者「……」
東の砦将「どうした」
勇者「でも、どうにかしなきゃ」
女魔法使い「……」
東の砦将「ふぅむ」
勇者「……」
東の砦将「黒騎士だの魔王の力でどかんと……やっちゃまずいか」
勇者「ああ」
東の砦将「そいつは親父のげんこつと一緒だもんな」
勇者「そうだ。出来れば俺たちは手を出さないで事が
 うまく運べばいいのに」
女魔法使い「……」
東の砦将「俺にもなんて云って良いのかは判らないが
 例えばさっきの竜族みたいに“共存にしたい訳ではないが
 あえて云えば中立”みたいな氏族も他に探せばいるかも知れない。
 あいにく公女みたいな知り合いは俺には他にいないから、
 詳しい事情はわからんがよ」
勇者「ああ」
東の砦将「そういう氏族をきちんと調べてみるのが
 手がかりかも知れねぇな」
勇者「そうだな」

119 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/17(木) 23:07:24.85 ID:z6GJxeoP
女魔法使い「……典範」
東の砦将「ん?」
勇者「なんだ、魔法使い」
女魔法使い「……」
東の砦将「は?」
勇者「……調べればいいのか?」
女魔法使い こくり
勇者「よく判らないけど、
 テンパンってのを探せば良いんだな?
 たはぁ。捜し物ってのは苦手なんだよな」
東の砦将「ふはははっ。お互いな」
女魔法使い「……」
東の砦将「まぁ、いいさ。そいつは俺の副官にでも言いつける」
勇者「悪いな」
東の砦将「いや、良いってことよ。
 戦争は避けられないかも知れないが、
 そうやって努力しておけば無駄にはならないさ。
 出兵する氏族が一つでも減るかも知れないし
 もし戦争になっても、
 いざという時に情けが刃に乗るかも知れない。
 俺だって、てめぇがいつか助かるために
 あがいてるにすぎないんだからな」

180 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/18(金) 17:56:18.27 ID:LAEzTxgP
――魔王城東翼、別館、古城民宿“まおー荘”テラス
メイド姉「お茶を入れました」
メイド長「ありがとう」
メイド姉「いえ……。静かですね」
メイド長「ええ」
メイド姉「……」こくっ
メイド妹「〜♪」
メイド長「メイド妹は何をしているのです?」
メイド妹「日記を書いてますー」
メイド長「日記?」
メイド姉「最近は良く書くんですよ」
メイド妹「へへ〜」
メイド長「それは感心です。文字は毎日書くにつれ
 理解が深まると云いますからね」
メイド姉「……えーっと」
メイド長「?」
メイド姉「絵が入ってても良いんでしょうか……」
メイド妹「これは、無いと、ダメなのっ」
メイド長「絵が入ってるんですか?」

181 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/18(金) 17:58:19.26 ID:LAEzTxgP
メイド妹「じゃぁん♪ これは昨日食べたスープ!」
メイド長「あらあら」
メイド姉「そんなに気に入ったの?」
メイド妹「うん、美味しかった! 酪が入ってまーす」
メイド長「あら。レシピまで? 誰に聞いたのかしら」
メイド妹「黒っぽいもやもやのおねーさんに教わりましたー♪」
メイド長「……」
メイド姉「え? え?」
メイド妹「ほかにも、酪を塗って漬け込んだお肉を焼いたの
 の作り方はこれでーす」 かきかき
メイド長「……はぁ。時々この子には驚かされます」
メイド姉「わたしなんて毎日ひやひやです……」
メイド妹「できたー!」
メイド長「ふふふっ。美味しい料理の研究ですか?」
メイド妹「はいっ。美味しいものは毎日書くの」
メイド長「料理以外のことも書くと良いですよ」
メイド妹「そうなのですか?」
メイド長「味の記憶は、印象ですからね。
 その日起きた印象深い事を書いておけば、
 後で味の記憶を思い出す時に役に立ちます」
メイド妹「そっかー! じゃぁ、女騎士のお姉ちゃんが
 謳ったことも書いておこう♪」
メイド姉「あれは忘れたいんじゃないかしら……」

194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/18(金) 18:19:17.44 ID:LAEzTxgP
――魔王城東翼、別館、古城民宿“まおー荘”広間
メイド妹「これ、牛さんなのっ?」
メイド長「ええ」
東の砦将「牛なんて固くてまずくて食えたものじゃないと
 思っていたけど、これは美味いな」
副官「ええ、豚よりも歯ごたえがあって、爽やかですね」
メイド妹「ね、どーしてっ? どーして柔らかいの?」
メイド長「普通の牛の肉が固くなるのは、
 一杯働いているせいですよ。これは仔牛ですから」
勇者「へぇ、それで違うのかぁ」
女騎士「ふむ、こんな味だとはなぁ」
東の砦将「俺は気に入ったな。
 これ、串焼きにしたら美味いんじゃねぇのか? 岩塩かけて」
副官「いいですね、わたしはこっちの団子が好きですよ。
 スープに浮かべたり、ああ、煮込むのも良いかもしれません」
メイド姉「でも、あまり食べた事がないのはなぜかしら?」
魔王「それは生産性と関係がある。
 馬と比べて気性が大人しい牛は、
 農作業の大切なパートナーなのだ。
 畑を耕したり、牛車で樽を運んだりとな。
 馬車より遅いが、扱いは難しくない。
 それに肉を食べるよりも、乳を搾る方が多くの農民に
 取っては魅力的なのだろう。
 豚に比べて子供の数も多くはないから、一家に乳を提供する
 牛は家族の一員として扱われることもある」
勇者「そっかぁ」
女騎士「何にでも、子細はあるのだなぁ」

196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/18(金) 18:20:59.62 ID:LAEzTxgP
東の砦将「しかし、魔界は地上と比べれば豊かだよな」
副官「そうですね〜」
メイド姉「魔界?」
魔王「しまった」
   東の砦将「云っちゃダメだったのか?」
   勇者「まだ内緒にしてたんだよ」
   メイド長「困りましたね」
   女騎士「そんなことか」
   勇者「女騎士。そんなことって云うけれど、
    なかなかこれはデリケートでさ」
   女騎士「わたしに任せろ」ズシャァ
   勇者「上手くごまかしてくれ」
メイド姉「魔界って、あの魔界ですか?」
女騎士「そうだ」えへん
   メイド長「……」
   魔王「まんま認めてるではないかっ!?」
女騎士「ここは魔界ので一番の高級リゾートでな」
   メイド長「たしかに一番高級、はあってますね」
女騎士「あちらにいる君たちの主人はこのリゾートの持ち主でもある」

198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/18(金) 18:23:40.39 ID:LAEzTxgP
メイド姉「ご当主さまが!?」
魔王「ま、まぁな」
女騎士「そんなわけで格安利用できたのだ」
メイド姉「そうだったんですか。ご当主様はどこかの
 貴族だと思っていましたが、こんな領地をお持ちとは」
メイド妹「うんうん、美味しかった」
   メイド長「微妙なずれが気に掛かりますね」
   東の砦将「いや、いくらなんでも魔界だぞ」
   副官「あんなにけろっと受け入れられるものですか?」
メイド姉「では、魔界の貴族様なんですね?」
魔王「あ。ああ……貴族というか、なんというか……」
女騎士「有り体に言えば王族なのだ」
メイド姉「それで魔王様ですか。やっと得心しました。
 以前から、まおー様とか魔王様などの呼びかけを受けて
 らっしゃいましたから、不思議には思ってたんです」
メイド妹「お姉ちゃん、どうゆう事?」
メイド姉「えーっと。うーん……」
メイド妹「?」
メイド姉「ご当主様は、美味しい料理のたくさん出てくる
 お城をもってるんだって。で、地元には今の屋敷とは
 別の領地もお持ちなのですって」
メイド妹「そっか! お金持ちなんだっ♪」
   勇者「大物だっ!?」

199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/18(金) 18:25:40.80 ID:LAEzTxgP
魔王「いや、お金はあんまり無いのだが……。
 城も代々のお下がりで維持費も馬鹿にならないし。
 直轄領からの税収はインフラと領地運営でかつかつだし……」
メイド姉「没落した偉い貴族様なんですって」
メイド妹「没落はどっちでも良いよぉ。美味しい料理が重要だよ」
メイド姉「それでも、ご飯は美味しいのじゃないかしら」
メイド妹「美味しい?」
メイド長「昨日でた宴席料理のような物が基本です」
メイド妹「すっごいねぇ! お金持ちだよ、お姉ちゃん!
 ご馳走も出てくるし、料理も上手だよ〜♪」
魔王「いやっ。そのっ。なにもわたしが作ってる訳じゃ……」
   東の砦将「これはこれで逸材だな。ちびの嬢ちゃん」
メイド姉「そうね」にこにこ
メイド妹「当主のお姉ちゃんは偉いと思ってたけれど
 本当に偉かったんだね〜。すごいよぉ、また料理教えて貰おう!」
女騎士「……ぷっ。くくくくっ」
   副官「あはははっ」
メイド姉「あんまり邪魔をしたらダメですよ。忙しいのですから」
メイド妹「うんっ♪」
メイド長「あらあら、まぁまぁ」
魔王「わたしは料理なんてまったく……」
勇者「魔族ってあたりは何のショックもないんだなぁ」

200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/18(金) 18:55:13.04 ID:LAEzTxgP
――魔王城東翼、別館、古城民宿“まおー荘”滝の温泉
ザザァ、カポーン
女騎士「それにしても……。はぅぅぅん」
女魔法使い「……」
女騎士「食べて温泉、ごろごろして温泉、そして宴会だなぁ」
女魔法使い「……それが温泉宿」
魔王「慰労であるからな」きゅっきゅ
女騎士「うん……。あ゛あ゛」
魔王「なんて声を出すのだ」
女騎士「熱い湯に入ると自然に漏れるのだ。仕方ない」
女魔法使い「……はぅぅ」
魔王「……ふぅぅ」
女騎士「……平和だなぁ」
女魔法使い「……」
魔王「魔王城だからな」
女騎士「やはり、あれか?」
魔王「?」
女騎士「こういう生活を続けていると……肉がつくのか?」
女魔法使い「……なるほど」
魔王「そんなことはないぞ。
 わたしだってこんなに温泉三昧なのは初めてなくらいだ。
 幼少の時からこっち、研究生活一筋だったからな」

201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/18(金) 18:56:37.42 ID:LAEzTxgP
女騎士「研究かぁ……はぅぅ」
魔王「言っておくが肉を増やす研究ではないぞ」
女騎士「自慢なのか」
女魔法使い「……コンプレックスとナルシズムの軋む音がする」
魔王「いっ、いいではないか。事実だっ」
女騎士「ろくな運動もせずに不摂生をしているから贅肉がつくのだ」
魔王「わたしのは駄肉だっ。まだ贅肉ではないっ」
女騎士「どういう区別で使ってるんだ?」
魔王「そ、それはメイド長が……」
女騎士「?」
魔王「“男を捕まえられない肉は宝の持ち腐れだから駄肉”
 だって云っていたんだ。魔族の女性として恥ずかしいと」
女騎士「どうも魔族のそのあたりの文化は直接的すぎると思う」
女魔法使い「……同意」
魔王「わたしが創った文化ではないっ」
女騎士「もっと他にも色々あるだろう。細やかさとか、
 気配りとか、家のことを細々と整える能力とかっ」
女魔法使い「……女騎士には一つもない」
女騎士「それ以外にもあるっ。突進力とか剣技とか武勇とか
 堅固な守りとか、詠唱能力とかっ」
魔王「魔族の文化だって、破壊力で異性を物にしようというほど
 無骨で野蛮ではないぞ」