Part40
747 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/16(水) 20:06:22.25 ID:BJlDi/AP
犬頭の商人「そんなこんなで、支配者や、
そん時ついてる勢力が変わるたびに治安が乱れるんだよ」
歴戦傭兵「なるほどな」
中年商人「いまは?」
犬頭の商人「今やってるのは随分と評判が良いね。
税も安いし、交易はだいぶ自由だ。
毎月のように広場を開放してくれるし、
毎週月の曜と木の曜には市場を開いてくれる。
俺たち旅商人には有り難いし、治安も悪くはないね。
でも、だからって、このあたりが物騒になりやすい地域だって
事には何の代わりもない。
俺たちは決して油断をしないんだ」
歴戦傭兵「ああ、それが一番だよ」
犬頭の商人「あんたらは随分と大きなキャラバンだもんな」
中年商人「そうか?」
犬頭の商人「ああ、ここらを歩く商売人の殆どは
らくだ一頭に荷を左右にぶら下げて引き歩く行商人だよ」
中年商人「馬車や、らくだ車は流行らないのか?」
犬頭の商人「砂やぬかるみに弱いからね。
手を集めて引っ張り出せるあんた達のような十人以上の
一行なら扱えるんだろうが、独り者の商人の手には負えない」
中年商人「なるほど。俺も若い自分にはポニー一頭をひっぱって
旅暮らしをしていたことがあるよ」
748 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/16(水) 20:07:44.19 ID:BJlDi/AP
犬頭の商人「何を扱っていたんだ?」
中年商人「その頃は麦、香辛料、それに割れ物だな」
犬頭の商人「麦か。このあたりでは、取れるには取れるんだが、
あまり質は良くねぇな。殆どを酒にする」
歴戦傭兵「良い酒なのか?」
犬頭の商人「いやぁ、全然さ。酒と云えば、妖精族のが一番だ。
竜族の醸す強い酒も上等だな。鬼呼族の作る米の酒も値段は
張るが乙なものだ。なかなかお目にかかれないけどね」
歴戦傭兵「酒は、やはり難しいか」
中年商人「割れたりするトラブルがつきものだからなぁ」
犬頭の商人「そうだなぁ、だが、良い値段で売れた時には
美味しい商売だ。何よりも、何処でもそれなりに商品を
さばける」
歴戦傭兵「ちがいない。はっはっはっ」
中年商人「都に着いたら、何処を根城にすると良いかね」
犬頭の商人「まぁ、まずは庁舎に行って商札をもらわねぇと」
中年商人「許可か」
犬頭の商人「そうだ。そのあとは、茶館にいって一服するといい」
750 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/16(水) 20:10:07.70 ID:BJlDi/AP
中年商人「茶館?」
犬頭の商人「ああ。そうだ。……人間達の街では違うのか?
茶館っていうのは、茶を出す建物のことなんだよ。
茶ってあるのか?」
歴戦傭兵「もちろんあるさ。馬鹿にするな。
まぁ、言葉で何となく判るがよ」
中年商人「商人が集まるのか?」
犬頭の商人「ああ、そうだな。
茶館は都市の商人が集まる、情報の集積地だ。
高級な茶館には高いものを売り買いしたい
金を持った商人があつまる。
まぁ、茶館のランクがそのまま商人の懐具合になってる感じだな。
もちろんこれは何の保証もないから、
目星をつけた後は、嗅覚とコネを使って相手を見定める必要が
あるのは、何処で知り合っても一緒だ。
茶館によっては個室で茶を供するところもある。
商談には便利な場所だよ」
歴戦傭兵「そういうことか」
中年商人「酒場と似たようなものだな」
犬頭の商人「酒場は朝早くは開いていなかったりするだろう?
茶館は小鳥の鳴き声がする前から開いている。
小鳥をかごに入れて飾っている建物が茶館なんだ」
中年商人「良いことを教えて貰ったよ」
犬頭の商人「そら、そろそろ見えてきたぞ」
歴戦傭兵「おお、あれかぁ。……はるばるとした街じゃないか」
犬頭の商人「あれが『開門都市』。このあたりじゃ一番の都だ」
753 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 20:33:08.45 ID:BJlDi/AP
――魔王城、東館展望部
メイド長「……ふっ。集いなさいっ!」
メイドゴースト ――
メイド長「ふむふむ。判りました。12番は腹痛で欠席ですね。
他には体調を崩した子はいませんか?」
メイドゴースト ――
メイド長「わかりました。では、本日の業務内容です。
今週はこの東館を集中的に。
いいですか? 集中的に清掃を行います」
メイド長「リネンのセット、生花の準備、
庭の手入れを行ってください」
メイドゴースト ――
メイド長「厨房ですか? 当然です。今週は食糧倉庫の
全品入れ替えも行いますからね、手抜きはしないこと」
メイドゴースト ――
メイド長「は? ゴキブリ? 許可します。殺りなさい」
メイドゴースト ――
メイド長「怖い? それくらいどうにかなさいっ!。
場合によっては初級魔術の使用も許可します。
いいですね、当魔王城のメイド部隊の名にかけて
遺漏は許しませんよっ!」
758 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 20:54:13.67 ID:BJlDi/AP
――地下世界(魔界)、開門都市、中央庁舎
副官「砦将、お客人です」
東の砦将「おお、入ってもらってくれ」
ガチャ
中年商人「お邪魔しますよ」
東の砦将「いらっしゃい。俺がこの都市の自治政府、
執行委員なんてものを仰せつかっている砦将というものだ。
あー、すまないが……」
中年商人「わたしは中年商人というものですよ。
お初にお目に掛かります。
いや、人間の方が仕切りをやっているとは聞いていましたが
長い旅をしてきてみると感無量ですな」にこにこ
東の砦将「ははは。逃げ出す時に転んで取り残されただけだ」
がしっ
中年商人「このような薄汚れた格好で申し訳ない。
しかし、取り急ぎ報告をした方が良さそうだと思って」
東の砦将「どのようなご用件だろう?」
中年商人「塩の輸入を依頼されて運んできたんです」
759 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 20:55:22.25 ID:BJlDi/AP
東の砦将「火竜公女かっ? はははっ! やりやがった!」
中年商人「そう、随分気合いの入ったお嬢さんでしたよ。
手紙も預かっている、これですな」にこにこ
東の砦将「かたじけない! 彼女は?」
中年商人「手紙にも書いてあると思いますが、
まだあっちにいますよ。そうだ、紹介しましょう。
こっちは今回のキャラバンの副長兼、護衛隊長の歴戦傭兵」
歴戦傭兵「よろしく」
東の砦将「おお、よろしく。これはわたしの副官だ」
副官「副官です。以後お見知りおきを」
中年商人「荷物は荷馬車に十八台。確認してみてくれませんか?」
東の砦将「よし、副官。見てきてくれ」
歴戦傭兵「俺も立ち会いましょう」すくっ
中年商人「頼んだぞ」
歴戦傭兵「一働きしてきますさ」
がちゃ、とっとっとっと
東の砦将「……ふぅ、これで一つ心配事が減った」
中年商人「こっちも長旅の肩の荷が降りた想いです」
760 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 20:57:03.56 ID:BJlDi/AP
東の砦将「彼女はところでどうだった、どうしている?」
中年商人「わたしは、じつは『同盟』というあっちでは
名の知られた商人のギルドに所属しているんですが」
東の砦将「ほう」
中年商人「彼女はそこに接触して、わたしの上司とでも
云うべき商人に渡りをつけまして。
その手配で今回の荷運びをしたってわけなんですよ」
東の砦将「そうだったのか。支払いの件など
どうすればよいのだろう?」
中年商人 ふるふる
中年商人「私はすでに『同盟』のほうから手当を
受けているんです。
『同盟』のほうはお嬢さんと協力してもっと大きな仕事に
手をつけてって云う話でしてね」
東の砦将「大きな仕事?」
中年商人「こういった塩をもっと潤沢に
輸入するための仕事だそうですよ。
今回のキャラバンは当面の塩不足をどうにかするための
手始めらしくてね。わたしはそのために雇われたんです」
東の砦将「……ふむ」
中年商人「そちらの儲けからたっぷり手当は頂いているから
代金などは頂く必要がないんですよ」
東の砦将「そうか。……では、中年商人殿は、この街への
視察をかねていると思って良いのだな?」
762 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 21:02:47.10 ID:BJlDi/AP
中年商人「いや、それはどうだか。わたしは小物ですから」
東の砦将「ふっ。では、接待などしなくてはならないだろうな。
だがこの街の政府は自治政府で、台所事情が厳しいのだ。
わたしの馴染みの場末の酒場と云うことになってしまうが」
中年商人「いや、それはありがたい。
かえってそう言う場所の方が気兼ねないというものです。
わたしはこの街は初めてなんですよ。
しかも長い旅をしてきた。
長い旅の後に、都に詳しい人について酒場に入り、
冷えた酒を一杯やる。これに勝る幸せなんてどんな宴に
だってありはしませんよ」にこにこっ
東の砦将「はははは! 宿舎のでよかったら、
水を浴びてくれ。日が暮れたら繰り出そうじゃないか。
その頃には塩の検品も終わっているだろう」
中年商人「ああ、品質だけは保証できますよ。
西ノ海で取れたまじりっけなしの雪花石膏のような花の塩です」
東の砦将「して、帰りは何か荷物でも仕入れるつもりなのかな?」
中年商人「いや、しばらくはこの街を根城に、
色々話を聞いていこうかと思っているんですよ。
良かったら紹介して欲しい職種もいくつかあるのですが」
東の砦将「ほう? どのような?」
中年商人「魔族の職人や傭兵というのは、
どうすれば雇えるのでしょうね。
ゲート後に開いた大穴、あそこに安全な街道を造るのは
なかなかなにやりがいのありそうな仕事だ」
765 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/16(水) 21:47:46.32 ID:BJlDi/AP
――冬越し村、魔王の屋敷、執務室
魔王「すさまじい激変だったようだな」
メイド長「ええ、レポートを見るだけでも、大騒ぎですね」
魔王「異端審問から始まり、天然痘の撲滅までか」
メイド長「はい」
魔王「青年商人の企てた策は、まさに“売り浴びせ”だ。
資産の全てを投げ打つ戦略にはわたしでさえ背筋が氷る。
さらには原始的な先物さえ創造しているんだ。
銀行システムが流布していない世界において、
半ば強引に信用創造を行い“見かけ上の現金”を
増やしてのけた。
その長いロープは中央諸国の首を軒先にぶら下げるに
十分だったろうな」
メイド長「ええ」
魔王「それに、そのオチの付け方が洒落ているではないか」
メイド長「そうですか?」
魔王「ああ。ジャガイモに変える、とはな」
メイド長「はい」
魔王「青年商人は、あの位置から聖王国最大のスポンサーに
なることも出来た。
そうしなかった理由が、わたしとの約束という義理なのか
それとも商人の嗅覚なのかは判らないが
彼は二大経済圏の成立という賭けに討って出たんだ。
その方が明日があると信じて」
766 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 21:51:24.73 ID:BJlDi/AP
魔王「彼の判断は、理論としては正しい。
経済の発展のためには、多数の国家や多数の貨幣、
それらの衝突や摩擦が必要だ。
いずれやってくる魔族との交渉のためにも、
それらの経験値は必要不可欠」
メイド長「ゲートは、壊れてしまったのですからね」
魔王「ああ」
メイド長「早かったですね」
魔王「だが、だからといって伝統や慣習に
こだわる守旧派勢力が勝たないとも限らない。
いや、事実それらの勢力は今まで勝ち続けてきたはずだ。
それなのに、その賭に出た。
一回も見たことがない勝利に賭けた。
その商人の魂に、深い敬意を抱くよ」
メイド長「あとは、勝負ですか」
魔王「そうだろうか。時間との、相手の覚悟との、
押しとどめようとする勢力との勝負だろう。
でも、いずれ同じ事。二つの世界は“異世界”など
ではなかったのだ。
いずれ誰かが気が付いて、二つの世界の垣根は
ぐっと引き下げられていただろう。
それがゲート破壊と云う手段かどうかは判らないけれど
魔力や法力による操作をしなければ行き来できない
ゲートがなくなったことで地上と地下世界はいっそうの
接近を迎えた」
767 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 21:53:37.40 ID:BJlDi/AP
メイド長「この波は、止めることは出来ない」
魔王「そうだ」
メイド長「準備が出来ていればいいのですが」
魔王「何時の場合も“十分な準備”などというものは
存在しない。現場の工夫で乗り越えられるか否かだけだ。
そのための支度だけは、出来うる限りしてきたはずだ。
それに……」
魔王「見たか? メイド長?」きらきら
メイド長「はい」
魔王「すごいじゃないか! 素晴らしいじゃないか!
これは……これだけはわたしが残していったものじゃない。
生命、財産、自由の三つを自然権として謳っている。
まだ旧来の信仰や神学と融合した形だが、これは明らかに
人間性の自立や他者への友愛を含んだ、lumen naturale。
啓蒙主義的な発想だ。
……この言葉は、この世界にいきている
彼女個人が傷と痛みと精神の血の中から必死でもがき、
探り出した自由主義の萌芽だ。
わたしが教えたものじゃない。
いや、教えたとしても“知識”では越えられない壁が
存在するはずだ。教えることでどうにかなるものじゃない。
彼女はその壁を魂の輝きで乗り越えたんだと思う」
メイド長「はい」
768 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/16(水) 21:57:54.39 ID:BJlDi/AP
魔王「嬉しくないのか?
この報告の言葉には、書いてあるよ。
“二度と虫にはならない”、
“それがどんなに辛く厳しくても”と」
メイド長「……いえ」
魔王「?」
メイド長「わたしは、彼女に……」
魔王「うん……」
メイド長「……なにか」
魔王「……」
メイド長「何ほどのことが出来たかと」
魔王「うん……」
メイド長「だめですね。……これは、言葉にはなりません」
魔王「……ふふ。彼女だけじゃない。見てみろ」
魔王「他にも有りとあらることが起きているようだ。
紙を利用した記録の有用性の再発見。
試験制度や報酬制度を含んだ官僚主義の成立。
関税による輸入障壁に、原始的な本位制度。
それにしても馬鈴薯本位とはね。
なかなか上手く切り抜けたようじゃないか。商人子弟」
772 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 22:03:02.14 ID:BJlDi/AP
魔王「軍事にしてもそうだ。
わたしは詳しくはないけれど
野戦陣地や斜線陣形はこの時代の発想にはない戦術だろうな。
戦場医療の充実、か。
医療については確かに発想が抜けていたな。
どれもこれも確かに教えたのはわたしだけど、
すべてに工夫の跡がある。
この世界に生きる人間が、この世界なりのやり方で、
ちょっとでも何かを手にするために
自分たちの知恵を凝らした創意の跡が見える」
メイド長「はい」
魔王「人間は、すごいな。
世界は、すごい……。
魔族だって負けていない。沢山の風車が回っていた。
為替の機構だって軌道に乗ったそうだ。
郵便の話を聞いた時には、わたしだってびっくりした。
公共工事で病院を設立もすごい。
獣人族、鬼呼族は互いの利益を保護するために
共通の憲法に署名をするそうだ」
メイド長「はい」
魔王「図書館の外の世界が、
こんなに騒がしくて
こんなに無秩序な世界が、こんなに愛しく思える」
メイド長「まおー様?」
魔王「ん?」
774 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 22:06:56.60 ID:BJlDi/AP
メイド長「泣いて、いるんですか?」
魔王「え?」
メイド長「まおー様」
魔王 こしこしっ
メイド長「……レディはハンカチを使うものですわ」
魔王「ん」
メイド長「辛いのですか?」
魔王「いや、違う。たぶん」
メイド長「はい」
魔王「ちがうよ。これは。
涙だけど、おそらく泣いている訳じゃない。
良かった。そう思っている
多分、わたしは、ちょっとだけ
誇らしいんだ。
わたしの手柄じゃないけれど
この世界が、好きなんだ」
メイド長「――わたしもそう思っています。
出会って、良かったと」
780 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 22:26:08.63 ID:BJlDi/AP
――冬越し村、修道院裏手の広場
ギィンッ!
勇者「……はぁっ、はぁっ」
女騎士「はっ、はぁっ……はぁっ、はぁっ」
ギンッ! ギンッ! ザシュッ!
勇者「せいっ!」
女騎士「やぁっ!」
ギィンッ!
勇者「気合い入ってるな」
女騎士「まだまだぁっ! はっ!」
勇者「こっちだっ!」
ヒュバンっ!!
勇者「〜っ! “加速呪”っ!」
女騎士「“瞬動祈祷”っ」
ギン!ギン! ガギン! ギッ! ギガッ! ガガっ!
キンキンキンキン! ザシュ! ヒュバッ!
勇者「や、るなぁっ! せやっ!!」
女騎士「ま、だだぁっ!」
ジャギンッ!!
783 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 22:29:31.81 ID:BJlDi/AP
勇者「すごいな、腕が上がったのか、気合いか」
女騎士「両方だ」
じりじりっ
勇者「んじゃ、こいつで、仕舞いだっ! はぁぁ!」
女騎士「っ! “光壁三連”っ!」
ヒュバウッ!! シュバァァァーーッ!!
女騎士「〜っ!! って、うわぁぁぁっ」
勇者「で、おっしまい」 ぴたり
女騎士「……っ」
勇者「俺の勝ち〜」 だばだば♪ だばだば♪
女騎士「くっ……」ぷいっ
勇者「女騎士から稽古しようって云ったんじゃん」
女騎士「それはそうだが、悔しいものは悔しい。
この悔しさを無くしたら、わたしは弱くなる。
だからこの場合、悔しいのは正しんだ」
勇者「そっかそっか」 とさっ
女騎士「どうした?」
勇者「俺もちょっと休憩」
784 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 22:31:32.79 ID:BJlDi/AP
女騎士「髪は、切ったんだな」
勇者「うん。切って貰ったぞ」
女騎士「その方が良い。似合うぞ」
勇者「そうかな。頭が軽いと調子が良いな」
女騎士「じゃ、勇者は不調にならないな」
勇者「ああ、そうな」
勇者「……」
女騎士「……」
勇者「ちょっと待て、それどういう意味だ!」
女騎士「いや、他意はないんだ。軽口だ。ほんとだ」わたわた
勇者「……そ、そか? お、おう」
女騎士「……」
女騎士(ど、どうする。勇者の態度も不審だぞ。
こっちまでドキドキしてきた。剣を捧げてから
二人きりなんて無かったしな。ってか、顔おかしいか?
わたしはもしかして赤面しているんじゃないのか!?)
勇者「……あー」女騎士「なんだ勇者っ」
勇者「なんでもない」
女騎士(な、なんであんな口調で返事してしまうのだっ
わたしの脳みそのほうが最軽量かっ!?)
786 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/16(水) 22:34:03.74 ID:BJlDi/AP
勇者「まぁ、女騎士は防御が固いけど」
女騎士「う、うん」
勇者「大きな技ほど光壁で止めようとするからな。
自分の力量と停止力に自信があるんだろうけど」
女騎士「そうかな?」
勇者「わりとな」
女騎士「そうか……」
勇者「……あ、えーと」
女騎士「?」
勇者「けなしてるんじゃないからな?」
女騎士「そんなことは判ってる」ぷいっ
勇者「……」
女騎士「……」
勇者・女騎士「その」
勇者「あ、どうぞ。」
女騎士「そか……その、だな。勇者」
勇者「ん?」
女騎士「さっきも使ってた、剣がふわってぶれて、
霞んで消える技な。気配も消えてしまう技」