Part36
418 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 00:50:19.13 ID:498vELIP
中央騎兵「いや、数日前から馬の調子が優れないんだ……」
歩兵隊長「なんだって?」
従士「本当です」
中央騎兵「それに、どうやら司令部の間でも意見が
割れているらしい。湖の国が魔法騎士団を撤退させる、とか」
傭兵弓士「はん。あんな軟弱な学者野郎どもに戦争が出来るか」
中央騎兵「その他にも、いざ南部諸王国を前にして、
南部諸王国を攻め落とした後の、
領土分割についてもめ事が起きているんだ。
どの貴族も、王族も自分の取り分を増やそうと
派閥を組んでは睨み合っている」
傭兵弓士「ふざけるんじゃねぇっ!」
歩兵隊長「……っ」
傭兵弓士「俺達は戦うために来たんだぞっ。
戦場で戦って、戦って、戦って。
真っ赤に染まった剣の血を洗い流して生き残って、
それで大串に刺した肉をあぶってしこたま強い酒を飲む。
それが傭兵の戦いだ。
女の腐ったみてぇに、奪ってもいやしねぇお宝の分け前で
ぴぃちくぱぁちくするなんざまっぴらごめんだ。
分け前に文句がありゃぁ簡単だ。
剣で決めりゃぁいいんだ」
421 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 00:51:42.80 ID:498vELIP
歩兵隊長「……」
中央騎兵「……」
傭兵弓士「あぁん!? 俺が言ったことが間違っているって
云うのかよっ! 文句でもあるのかよ、騎士様方はっ!」
歩兵隊長「それは……」
傭兵弓士「こんな薄いスープで一冬過ごせってのかよっ?」
中央騎兵「大司教様も来られている。話をまとめてくれよう」
傭兵弓士「ああ。はいはい。そういうこったね。
貴族はいつでもそうだ。
良いことは自分たちの手柄で、辛いだの苦しい事だのは
全部精霊様の試練だと? あほらしい。
……俺は隊長の所に戻るよ。
これからのことを話さなきゃならねぇ。
俺たちだって報酬は金貨で貰ってるんだ。
このままじゃ飢え死にしちまう。せめて肉かパンで
給料をもらわねぇとな」
歩兵隊長「……」
従士「……」
歩兵隊長「仕方あるまい。立場が違う」
中央騎兵「ああ、我らは本当に困窮すれば領地から
多少の支援もあるだろうが、傭兵達は根無し草だからな」
歩兵隊長「だがこのままでは……」
従士「寒くなってきましたよ、皆さん」ぶるっ
425 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 00:59:34.46 ID:498vELIP
――魔王城、下層、豪華な寝室
メイド長「いえ、良いですからっ!」
魔王「何を遠慮なんかしているんだ」
勇者「下手だけど頑張るから、ちょっとだけ我慢してくれ」
メイド長「いえ、そうじゃなくて。あんっ。だめですって!
ま、まおー様がまだなのに、下僕たるわたしなんかが
勇者さまのをいただくなんて、そんな恐れ多いっ」
魔王「勇者がそんなに甲斐性無しに見えるのか?」
勇者「……いや頼りなく見えるのは知ってるけれど」
メイド長「そういうことではなくて、そっ。見えますし」
魔王「見えないのがいけないのだっ。これ! 暴れるな」
メイド長「暴れますよっ」
勇者「ちょっとだけだって。すぐ終わるからっ!」
メイド長「だめですっ! な、何をしてるんですかっ」
勇者「わ。足首……細ぇ……」
メイド長「どっ、どうにかしてください、まおー様っ」
魔王「手間をかかせるものではないっ」
勇者「押さえてるから、破いちゃってくれ。魔王」
魔王「心得た」
ビリビリィ!!
勇者「大丈夫、綺麗だぞ」
メイド長「あっ」
430 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 01:03:58.32 ID:498vELIP
魔王「どうだ? 腕は治療可能か? 繋がるのか?」
勇者「うん、切り口も綺麗だ。
これは……指向性の圧縮冷気か?
氷の刃、というよりは高速水流と冷気の複合技に見える。
見たことのない技だ」
メイド長「ううっ。じろじろ見ないでくださいっ」
魔王「3代ほどまえに“氷と悪夢の魔王”がいたというから、
その持っていた技なのかもしれんな」
勇者「何にせよ、傷口が凍り付いたせで出血も見た目ほどじゃない」
魔王「えっと、こうか?」
勇者「角度を完全に合わせて……。神経接合が始まると
激痛だからな……。“催眠呪”……“小回復”」
メイド長「熱っ!」
魔王「メイド長、しがみついておれっ」
メイド長「すみませんっ」ぎゅっ
勇者「……いいなぁ、胸枕」
魔王「集中せんかっ!」
勇者「わぁってますよっ! メイド長、辛いと思うけれど
大きく息を吸って、ゆぅっくり吐きだして」
メイド長「……ぅ。ほぅ〜」
勇者「そのまま」
メイド長「……ぅ。ふぅ〜……ぅ。ふぅぅ〜」
魔王「……」ぽむぽむ
432 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 01:05:59.41 ID:498vELIP
勇者「……催眠はいったかな。行くよ。……“再生術式”」
メイド長「っ! ふぅ〜。……んぅ」
魔王「何とかなったのか?」
勇者「ああ、うん。しばらく握力不足とか、しびれが出るかも
知れないけれど。多分、傷口も残らない」
魔王「ありがとう」
勇者「いや、場所も良かった。間接部とか重要器官だったら
俺の呪文じゃ間に合わなかったかも知れない」
メイド長「……すぅ」
魔王「寝ておると、あどけないな」
勇者「しばらく寝かせておいた方がいい。
血液が減ったのはこの呪文じゃどうにもならないし」
魔王「そうだな……」
勇者「うん」
魔王「……」
勇者「ふぇぇー。ちっと疲れた」ぺたっ
魔王「その」
勇者「?」
魔王「ありがとう」
勇者「あれは、敵の技との相性だよ。酸の技とかは治癒が辛くてな」
魔王「そうじゃなくて、その……。来てくれて、助かった」
勇者「あ……。うん」
435 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 01:08:14.58 ID:498vELIP
魔王「そ、その」
勇者「?」
魔王「疲れたであろう?」
勇者「……うん?」
魔王「おっ……。胸は、その。なんだ。
メイド長がしがみついているが。膝なら貸せるぞ?」
勇者「は?」
魔王「膝枕などどうだ? い、いまなら特別サービスだぞ」
勇者「……えっと、その。さすがにメイド長もいるし」
魔王「いらないのか?」
勇者「……」(熟考)
勇者「……」(黙考)
勇者「……えっと」(長考)
魔王「いらぬのか?」
勇者「あうっ! ……では、その。ちょ、ちょっとだけ」
魔王「うん」
勇者 ちょこん
魔王「何を膝の先っちょの方に申し訳なさそうに頭を乗せている」
勇者「いえ。いや。えっと? ち、違ったのか?」
442 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 01:11:09.78 ID:498vELIP
魔王「勇者ともあろうが、なぜ少年時代の
ひどい虐めがトラウマになったかのような遠慮をしているのだ」
勇者「す、すんませんっ」
魔王「膝枕というのは、こんな具合におなかに
頭部が当たるような距離まで深く近寄ってするものだっ」
むきゅぅ
勇者「……っ。あ、あ、あっ」
魔王「も、文句でもあるのかっ!? ぷにとか言うなよ!」
勇者「いや無いけどっ! そうじゃないけどっ! 静まれ俺の勇者回路っ」
メイド長「……んぅ」すりっ
勇者「ってメイド長の太ももがっ」
魔王「太ももが良いなら頬の下にもあるであろうっ!」
勇者「ごめんなさい、ごめんなさいっ」
メイド長「……んー」
魔王「何を想像しておるのやらっ。勇者のくせに」
勇者「いや、勇者だってその辺の事情と耐性は
平均的な成年男子と変わらないわけで……」
魔王「……ふん」
勇者「……」
メイド長「……すぅ」
魔王「メイド長の呼吸音が落ち着いてきた」
勇者「ああ、もう大丈夫だ」
446 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 01:15:09.50 ID:498vELIP
魔王「……もふもふだ」なでなで
勇者「……うん」
魔王「どうしたんだ、勇者? 何かあったのか?
あっちはどうなっている? みんな無事なのか?」
勇者「地上も色々大変だよ。大騒ぎだ」
魔王「……」
勇者「ん?」
魔王「そうか、知ってしまったんだな」
勇者「え?」
魔王「――“地上”と」
勇者「あ。うん……。魔法使いに聞いた」
魔王「彼女か。勇者の元仲間だというので、伝言を頼んだのだが」
勇者「何とかの図書館か?」
魔王「ああ、瀬良の図書館は我が一族の故郷にして本拠なのだ」
勇者「そこであいつ、ずっと魔法の本を読んでいたのか」
魔王「なにがあったのだ? 地上の世界で」
勇者「うん、何から話せばいいかな……」
魔王「……なにからでも。全てを聞こう」
勇者「結局、一通の書状から始まったんだ」
魔王「うん」なでなで
勇者「紅の学士は教会の教えに背いた異端者だってさ」
474 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:16:41.00 ID:498vELIP
――大陸草原、雪の集合地、三ヶ国軍天幕
冬国兵士「将軍っ! 姫騎士将軍っ!」
女騎士「何事だっ!?」
冬国兵士「敵軍に動き有りっ!」
将官「なんだって? 会戦日の指定はまだ決着していないぞっ!」
冬国兵士「そ、それがっ。一部の傭兵団のみが移動しています。
独断で兵を進めている模様っ。望遠鏡と伝令により確認。
彼らは味方にも隠密で行動している模様っ」
将官「馬鹿なっ! きゃつら戦のルールも判らんのかっ」
女騎士「ルールなどあってないようなものだ。
彼らの判断は、なにも間違っては居ない」
冬国兵士「いかがいたしましょう」
将官「我が軍も早急に陣ぞなえを変更、三重連隊で
防御の陣をひき――」
女騎士「不用っ!」
将官「しかし、この戦では防御に徹せよと」
女騎士「大局を見ろっ」
将官「っ!?」
475 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:17:58.34 ID:498vELIP
女騎士「たしかに傭兵どもは中央の考える教会と騎士道の
規律を破り戦を仕掛けてきた。
あとでなんらかの処罰があるかも知れないが、
彼らにも理由が――おそらく食料の不安があるのだろう。
しかし、その傭兵団との戦いが長引けば、
救援という名目を中央の軍二万に与える事になる」
将官「……それはそうですが」
女騎士「冬国騎士に通達、直ちに第一種軍装にて会戦用意っ。
無駄なものはいらぬ、速度を取れっ」
冬国兵士「はっ!」
将官「しかし、それではこちらは200も居ないではありませんかっ」
女騎士「敵だって傭兵団のみだろう?
で、あるなら騎馬戦力は1000が良いところだ」
将官「無茶ですっ」
女騎士「おい、済まぬが具足と籠手を。盾はいらない」
女修道士「はいっ」
将官「姫騎士将軍っ!」
女騎士「戦ではない。この程度なら、な」
将官「そうではなく、鎖帷子は!? 胸甲はっ!?」
女騎士「重いだろう。つけるのに時間も掛かる」
476 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:19:41.27 ID:498vELIP
――大陸草原、荒れ地の中央部
傭兵隊長「いいか! お前らっ! 良く聞けっ!」
ざわざわ ざわざわ
傭兵隊長「上の連中は頼りにならねぇ。
いつまでたっても戦も始められねぇ、とんだ玉なし野郎どもだっ!
だが俺たちは違うっ! ちゃんと玉のついた男だからよ!
あんな女子供の率いるへろっちぃ奴らと戦うには
何のためらいもねぇってもんよ!」
あはははははっ!
傭兵隊長「だがな、連中の数は数で、
ド田舎の三流国とはいえちょっとしたもんだ。
とくに対魔族の常備軍って事で、
槍兵、石弓兵あたりは随分鍛えられていると聞いている。
そこでだ、俺たちは風のように襲いかかり、
奴らの天幕をメチャクチャにして、さっと逃げる。
先方は、おい、槍騎兵。おめえだ!」
傭兵槍騎兵「はいっ! お任せくださいよ、叔父貴っ!」
傭兵隊長「よーし、よしよし。
切り裂いて、めちゃくちゃにしろ!
何でも構わねぇから踏み荒らしてやるんだ。弓騎兵!」
傭兵弓騎兵「はっ!」
傭兵隊長「火矢も使え。天幕を燃やしてやれっ!」
傭兵弓騎兵「わっかりましたぁ!」
477 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:22:08.57 ID:498vELIP
傭兵隊長「だがしかし、おめえら!
俺はこの激突で長居をするつもりはねぇ。
さっと攻めて、さっと引き上げる。角笛が鳴ったら退却だ。
あいつらの数を俺たちだけで引き受けるのはちと辛い。
奴らの陣地をメチャクチャにして
体面に泥を塗ってやれっ!
そうしたら引き上げてこちらの陣地まで引き寄せるんだ。
やつらはきっとケツにつっこまれたアナグマみてぇに
怒り狂って追いかけてくるだろう。
中央の貴族どもも巻き込んでやれ! そうすりゃ乱戦だ。
これだけの人数差、俺たちが負けるわけはねぇ!!」
あはははっ! 冴えてるな叔父貴っ!
お前が大将だっ! 戦の開始だ! わかったぜ叔父貴っ!
傭兵隊長「なぁに。騎士道が何たらだと抜かす連中だって
本当はこのままじゃ埒なんて開かねぇってことは
判ってるんだ。
この件は何人かの貴族様にも司教様にも話は通してある。
悪いようにはしねぇってなっ!」
おう、それでこそ俺たちの叔父貴だっ!
悪知恵が働くことにかけちゃ叔父貴に叶うやつはいめぇ!
傭兵隊長「この腐れ豚野郎どもっ。こいつは悪知恵じゃねぇよ。
がはははっ。なんつったかな、そうだ。チリャクってんだよ!
戦の駆け引きだ。経験をつんでねぇ領主のぼんぼんどもに
遅れは取るなっ! 行くぞ、お前らっ!」
おうっ! おうっ! はいやっ! 行けっ!
傭兵騎兵「俺たちも行くぞっ! ――ん? あれは、なんだ?」
傭兵槍騎兵「〜っ! 敵だっ! 敵襲〜っ!!!」
479 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:23:47.81 ID:498vELIP
――大陸草原、荒れ地の中央部
女騎士「では、打ち合わせどおり一撃翌離脱で行くぞ。
諸君!! 南部諸王国の勇士の力を期待する! 突撃っ!!」
冬国騎士「「「「オオオオーッ!!」」」」
ダカダッ! ダカダッ! ダカダッ!
ガキィィーンッ!!
傭兵騎兵「なんだっ!? こ、こいつら、どこから現われたっ」
傭兵弓騎兵「ぎゃぁぁぁっ!」
女騎士「戦果にこだわるなっ! 退けっ、右回転。槍交換っ!」
冬国騎士「はぁっ!!」
傭兵騎兵「なっ。なんて速度だ、反転っ! 後ろに居るぞっ!」
傭兵槍騎兵「いや、右だっ!」
傭兵弓騎兵「何処だ、見えないっ!」
女騎士「第二突撃、つっこめぇっ!!」
冬国騎士「「「姫将軍に勝利をっ!!」」」
傭兵騎兵「ギャァァッ!!」
傭兵槍騎兵「なんて突破力だっ。ば、化け物めっ!」
傭兵隊長「馬鹿野郎っ! 相手は少数だっ!
取り囲め! 広がって押さえちまえっ!」
女騎士「離脱っ! 陣形直せ! 16番集合っ!
直ちに第3陣形開始っ!」
冬国騎士「退けっ! 姫将軍の退却命令だっ!」
冬国騎士「イィィーヤッホゥ! お前らに捕まるかよっ!」
480 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:25:12.61 ID:498vELIP
傭兵隊長「追えっ! 見たところ相手は300がいいとこだっ!
追いつけば一ひねりに出来るぞっ!」
傭兵槍騎兵「はっ! 追え追えっ!」
傭兵弓騎兵「つけあがりやがって、あの女っ!」
将官「第3陣形っ!」
傭兵騎兵「っ!?」
傭兵槍騎兵「ど、どうしたっ」
傭兵隊長「どうした、追えっ!」
傭兵騎兵「そ、それが、敵が二手に分かれました。
ど、どちらを追えばっ」
傭兵隊長「ただでさえ少ない兵を二つに? 狂ったか。
どうせ女のやることはそんなもんだっ。お前は右を追え!
俺は左を追うっ!」
傭兵騎兵「はっ!」
女騎士「ふむ、追ってくるか。可愛らしいものだ」
冬国騎士「ははははっ! 馬が本調子でもないでしょうにっ」
女騎士「そろそろ、行くぞっ!」
冬国騎士「了解っ!!」
傭兵騎兵「なっ! また二手にっ!?」
傭兵剣騎兵「どっ、どうするっ。どっちを追うっ」
傭兵騎兵「っ〜! 舐めるな、もう数えるほどではないかっ!
再分割だっ! おまえは左の森の法へ追えっ!
俺は右を追うッ!」
傭兵剣騎兵「判った! 遅れは取るなよっ!」
傭兵騎兵「女子供に馬鹿にされてたまるかぁっ!」
482 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:27:17.70 ID:498vELIP
――大陸草原、荒れ地、16番集合地点
ダカダッ! ダカダッ! ダカダッ!
将官「何番隊だ?」
冬国騎士「8番隊です。ただいま集合しました」
伝令騎士「集合した隊は隊員を把握! 報告せよっ」
女騎士「どうだ?」
将官「はい。全ての隊が集合完了。
ただいま報告させいますが、軽傷者や骨折者が多少出た以外
大怪我を負ったものも脱落したものも居ない模様」
女騎士「二回撃ち込んだだけだからな。
敵の被害もさほどでもないだろう。……その敵は、どうだ?」
冬国騎士「はっ。迷走させましたので、
随分広い範囲に広がってしまっているかと思います」
女騎士「諸君っ! どうだ、疲れたかっ!?」
おおおお! 我らまだ意気軒昂! 姫将軍、ご采配を!
女騎士「よしっ。呼吸も整っているようだな。
では、再侵攻を開始する。今度は一丸となって行くぞ。
先頭はわたしが受けもとう」
冬国騎士「そんなっ」 「そのような軽装で万が一があれば……」
冬国騎士「姫騎士将軍は、シスターの服ではないですか」
冬国騎士「せめて騎士団中央部にっ」「我らが戦いますっ」
483 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:29:10.09 ID:498vELIP
女騎士「そう思うなら戦果を挙げよっ!」びしっ
冬国騎士 びくっ
女騎士「ただし、今度は倒す必要はない。
出来るだけ落馬させよっ! 敵を殺すのは本意ではない!
彼らもまた精霊の教え子。
いまひと時は対峙しているが我らが同胞だっ。
やむを得ない時をのぞいて、なるべく殺さぬよう。
落馬させて戦意を奪えばそれで十分。
あまり倒してしまうとわたしが勇者に……いや、とにかく落とせ!」
冬国騎士「「「はっ!」」」
女騎士「敵の数は多いが、いまや散開につぐ散開を繰り返し
一つ一つの部隊の数は我ら以下、
おそらく半分にも満たないだろう。
一気に襲いかかり突進力で落馬させ、
残った相手は小刻みに移動しながらたたき落とせっ!」
冬国騎士「「「了解いたしましたっ!」」」
将官「行きますか」
女騎士「ああ、移動開始だ」
ザッカッ ザッカッ ザッカッ
冬国騎士「あ」 冬国騎士「おお」
将官「ん……?」
女騎士「来てくれたか」
将官「援軍ですか?」
女騎士「ああ。……雪だよ」
488 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/15(火) 12:47:35.56 ID:498vELIP
――初雪
ちらちら……
ちらちら……
「雪だ……」
「ああ、雪だっ」
「このままで戦闘が……」
「うむ、司令部で動きがあるかも知れん」
ちらちら……
ちらちら……
「なんだって? ……そうか」
「招集! 招集! 梢の国の騎士よ! 士官用テントへ集まれ!」
ちらちら……
ちらちら……
「王弟元帥がご決断為されたっ!
慈悲深きかの陛下は雪深きこの戦場で
騎士や従士などがひもじい思いをしているかと思い、
哀れみをおかけになられたのだっ!
一部の中流兵をのぞき、今回の征伐軍は春まで延期となるっ!」
「帰れる!」 「俺たちは故郷へと帰れるぞっ!」