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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part32


753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 21:35:53.82 ID:Xzdt3noP
青年商人「第二に極光島の租借交渉です」
商人子弟「は?」
青年商人「極光島は地理的に云って冬の国の領内にありますね。
 これを貴族領、もしくは荘園に準じたような形態で租借したい。
 『同盟』が借り上げるのでもかまいませんが
 これについては第三者がおります。
 この交渉は代理交渉であると理解して頂いてかまいません」
商人子弟「はぁ……。どこの誰です? あんな場所を」
青年商人「第三。『同盟』内部には銀行組織があります。
 ご存じですか?」
商人子弟「知っていますよ。その銀行による
 資金の流動化と集中が『同盟』の大きな武器の1つですよね」
青年商人「その銀行組織を含む、『同盟』の商館を
 通商同盟三カ国の首都にそれぞれ構えたい。
 この許可を頂きたい」
商人子弟「それは比較的有り難く、わかりやすい話です」
青年商人「第四に、わが『同盟』は三カ国通商同盟の備蓄する
 全ての馬鈴薯を引き取る用意があります」
商人子弟「……は?」
青年商人「以上が本日の案件です。特記事項として、お察しか
 とは思いますが、現在『同盟』には金貨が殆どありません。
 これらの交渉は金貨を用いないやり方でお願いしたい」

754 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 21:38:16.40 ID:Xzdt3noP
商人子弟「……」
ぱたんっ!
従僕「お茶をお持ちしましたぁ!」
商人子弟「ああ、お配りしてくれ」
従僕「はいっ!」
商人子弟「……」こくっ
青年商人「これは暖まりますね。ジャムを入れるのですか」
商人子弟「ええ、雪国ですからね」
火竜公女「ありがとう、坊」
従僕「えへへへ〜」
商人子弟(あんなフードをかぶってるからどんな面相かと
 思えば、ずいぶんな美人じゃないか)
従僕「あっ。お菓子も持ってきます!」 ぱたぱたっ
青年商人「落ち着く執務室ですね」
火竜公女「ええ、本当に」
商人子弟(どういう事だ……。考えろ。
 一連の交渉に、どんな意図がある?)

759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 21:47:15.94 ID:Xzdt3noP
商人子弟(まず、第一に銀行つきの商会、だ。
 あんな言い方をする以上、銀行機能を解放……
 少なくとも、ギルドか国には解放すると云うことなのだろが。
 それにどんな意味がある? そりゃ、いま人が増えている
 我が国にとっては渡りに船の話だが……。
 しかし、そんなことが公になったならば、
 そりゃぁおおっぴらにではないだろうが、
 中央や教会での『同盟』の立場が悪化するんじゃないのか?)
商人子弟(いや、そうか)
商人子弟(これは、順番が重要なんだ。つまり、三番目に
 話した商会の話は、1,2を通した後のご褒美、と云った
 ところか……)
商人子弟(と、なると順番に考えないとな。
 1は通行権の勅書か。これは容易いな。
 そもそもあの関税は国内の物資流出を防ぐためのもの。
 ただ通り抜けるなら、この商人の云うとおり、
 我が国にはほとんど影響がない。
 ……が。
 何だろう、この違和感は)
商人子弟(次は2についてか。
 相手が判らないと何とも云えない不気味さはあるが。
 付近の漁業や海運に問題を生じないのならば検討の余地はあるな。
 だが、誰が? 何のために?
 あの島で何を行うつもりだ? 塩か?
 島の租借をしてまでそんなことをする意味はどこにある?)

761 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 21:48:21.18 ID:Xzdt3noP
商人子弟(3は良いとして、4か。
 4についても順番としてはご褒美なんだろうが、意味が不明だ。
 そもそもこの商人は三ヶ国がどれほどの
 馬鈴薯を保有しているか把握しているのか?
 なまじっかな相手に売りさばけるような分量ではないんだぞ。
 小国とは言え国家備蓄だ。
 そもそも馬鈴薯が食料として通用する国はそこまで多くない。
 通商同盟三ヶ国、それに湖畔修道会の元本拠地だった
 湖の国やその隣国、梢の国。
 その辺までは、多少広まったはずだが、現在の異端作物指定で
 どこまで買ってもらえるものか……。
 だいたいその二ヶ国でさばける量じゃないはずだ。
 いったい誰に食べさせようと云うんだ)
商人子弟(意味……誰……何処……。
 どこ……?
 そうだ。1についても同様だ。
 我が領内を通り抜けて何処に行くと言うんだ?
 白夜の国だろうが、他の国だろうが、我が領内を
 通らなくてもいけるじゃないか。
 我が国を通り抜けることで圧倒的に輸送コストが
 安くつくような航路があるのか?
 いや、新発見されたのでもなければそんな航路は存在しない。
 氷の国か鉄の国で商売を? 意味がない。
 その関税は通商同盟の内部では効力を持たない設定だ。
 “三ヶ国から外に出る”が発生条件なのだから)

762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 21:50:41.54 ID:Xzdt3noP
商人子弟(金貨がない、ということは今回の買い占めで
 金貨を吐き出したと云うことなのだろうな。
 無理もない。これだけの規模だ。
 中央の物価上昇はすさまじい状況だろう。
 国民は塗炭の苦しみだろうな。
 ……一部の領主は財政出動、社会保障や公共工事によって、
 民間に貨幣を回そうと頑張ったようだが、
 大陸全土の貨幣、通商が繋がっている状態では焼け石に水だ。
 どんなに貨幣をばらまいても、他国にも流れている限り、
 自分の領地のインフレは、薄まらない。
 大ダライの氷水を、スプーンの湯で暖めようとするものだ)
商人子弟(先生の話ではこの種の財政出動、財政政策は
 状況によっては有効と云うことだがな。今回ばかりは
 状況が酷すぎる。全領主が同時にするのでもない限りは。
 ……財政政策。
 銀行……? 金融?
 金融……政策? 金融政策が向こうなのは固定相場を採用?
 先生の言葉によれ貨幣が一種しかないこの大陸は
 完全固定相場を敷いてるわけだ。だからこそ財政出動が有効で)
商人子弟(あ、あ、あっ……)
商人子弟「あなたはっ。小麦を物資だとは見ていないっ。
 現在、疑似通貨としてみているっ」
青年商人「ええ」にこっ

763 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 21:52:08.75 ID:Xzdt3noP
商人子弟「そしてその小麦を、
 三ヶ国通商同盟に投資するおつもりかっ!?」
青年商人「ご名答です」
商人子弟「そ、そ、その心は……」
青年商人「心は?」
商人子弟「――二大通貨体制」 ぞくっ
青年商人「はい、そうです」にこっ
商人子弟「本気なのかっ!?」
青年商人「中央の成長能力は弱まっている。で、あれば
 新興市場で成長が期待できる地域に投資するのは
 もっともな判断かと思いますが?」
商人子弟「我が国はその中央と戦争中なんだぞ!?」
青年商人「戦場で稼ぎたければ、火の粉が飛んでくる距離が良い。
 ……我が師の言葉です。命をはるのは兵士ばかりではない」
商人子弟「それだけの成長保証が何処にあるんですかっ!?」
青年商人「1と2の中に」
商人子弟「……」
従僕「うー?」おろおろ
商人子弟「……っ!」

765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 21:55:11.16 ID:Xzdt3noP
青年商人「そうです」
商人子弟「そ、そのようなことが出来ると思っているんですか?
 わたしたちは、やっとの思いであの島を取り戻したんですよっ」
青年商人「勝ったから出来るのです」
商人子弟「どうしてそんなことを思いつきます。
 なぜそのようなことを実行しようとするんですっ!?
 あ、あなたは。我が国の領海を抜けて……。
  魔族との通商を開始するおつもりだっ!」
青年商人「はい」
商人子弟「なぜ……。そんな……」
青年商人「わたしが商人だからです」
商人子弟「しょう……にん?」
青年商人「商人だから、魔族と取引できるのです。
 この世界は敵と味方だけですか? 白と黒だけですか?
 そうであれば……勇者は何を苦労しているのですか?
 あの方は何を夢見ているというのですか?」
商人子弟「……っ」
青年商人「誰もが異なる正義を持っているのです。
 我らは誰しもが、そうなのです。
 正義ではわかり合えない我らは、誰しもが
 “もうちょっと幸せになりたい”とささやかな願いを抱いている。
 ならばその一点で妥協し取引するのは、
 我らが役目でしょう。ちがいますか?」

766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 21:57:46.76 ID:Xzdt3noP
パサッ
火竜公女「妾からも伏してお願い申し上げる」
商人子弟「あ、そ……その……角」
青年商人「彼女は火竜公女。
 現在魔界にて唯一、人間と魔族が共存する街、開門都市。
 その自治政府の代表者です」
火竜公女「我らには塩が必要なのだ。
 ……あの島を、貸して欲しい。
 謝罪もしよう。代価も払おう。
 我らは、あの島において敗者であった。
 どうかどうかお願いする」
商人子弟「あ、あっ」がたがたっ
火竜公女「衛兵を呼ぶまでもない。
 望むならこのまま虜囚にもなろう。
 ただ、どうかこの件だけでも検討して頂けまいか?」
従僕「それ、つの?」
火竜公女「そうじゃ。坊。妾の自慢の薔薇水晶の角だ」
従僕「あの……」どきどき
火竜公女「?」
従僕「触って、良いですか?」
火竜公女「もちろんだ」にこっ

790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 22:18:34.28 ID:Xzdt3noP
――南極海、ゲート周辺
しゅわんっ!
勇者「この辺か? ――“飛行呪”っ」
勇者「っと、こいつは目立つんだよなぁ。
 特にこんな氷原だと。……あっちか?」
(戦争を終わらせるのが軍だとすれば
 終わる着地点を模索するのが王の役目だ)
勇者「わりぃな。魔王。……魔王はさ、魔の王だけど
 俺は王じゃなくて勇者だから。やっぱり着地点なんか
 探せなかったよ。何でこうなっちまうのかなぁ」
(どうだ? 私の物にならないか?
 私はあんまり我が儘は言わないぞ)
勇者「嘘つけ、お前会ってからこっち、
 ずっと我が儘ばっかりじゃないか。
 あれをする、これをする。
 あっちに行きたい、何処へ連れてけ。
 今度はあれやそれを作る。――そんなんばっかりで。
 そのくせ、おれが魔界へ行く時もちっとも反対なんかしなくて。
 我が儘言わなきゃいけないタイミングで
 1回も我が儘言わなかったじゃないか」

791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 22:19:46.03 ID:Xzdt3noP
(『丘の向こう側』に一緒に行ってくれればそれだけで満足だ)
勇者「そんなのな」
勇者「そんなの俺だって絶対見てみてぇよ」
勇者「魔王と、俺と、女騎士と、爺と、王様と、
 メイド姉妹にメイド長に女魔法使いに開門都市のみんな、
 南部の国のみんな、冬越し村のみんなに、
 実を言えば中央の連中にだって見せてやりたいよ。
 魔族にだって見せたいよっ」
勇者「……だって」
勇者「だって、おれ。
 壊したり殺したりするばっかりで
 何にも作ってないじゃんね」
 ヒュバァァァァァ!!
勇者「他人に見せられるような作品なんて
 一個も作ってないじゃんね」
勇者「だからさ」
 ヒュバァァァァァ!!
勇者「だからもう、やめろよっ。
 俺には微塵も云えた義理はないけどっ。
 壊したり殺したり、それで何かが達成出来り
 偉いと思ったりするのさっ!!」

792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 22:20:49.56 ID:Xzdt3noP
 ヒュバァァァァァ!!
勇者「あれかっ。蒼い肌……。蒼魔族の大型種。
 長距離侵攻用の装備か、糧食もあるな。撤退させるとすれば
 アレを狙うか……」
「おうけい」
勇者「……?」
「……数に入ってた」
勇者「は?」
「……数にはいってたのは、すこし偉い」
勇者「え ……あ?」
女魔法使い「……」こくり
勇者「おまえ、何処にいたんだよっ!?」
女魔法使い「……出待ち」
勇者「はぁ?」
女魔法使い「……うそ。図書館」
勇者「『外なる図書館』かっ?
  どうやってもたどり着けなかったあの場所か!?」
女魔法使い こくり

793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 22:21:43.93 ID:Xzdt3noP
勇者「それにしたって……」
女魔法使い「……あそこは一族しか入れない」
勇者「……?」
女魔法使い「あれ」ぴしっ
勇者「ん? ……ああ、魔族だ」
女魔法使い「まだ、ころしたい?」
勇者「……いや。さっぱり。ただ、止めたいだけだ」
女魔法使い「……判った」
勇者「は?」
女魔法使い「目をつむって」
勇者「……? 判った」
女魔法使い ぴとっ
勇者「ぅわ、ひゃっこいっ!!」
女魔法使い「……連絡回路を形成した」
勇者「通信魔法か?」
女魔法使い こくり
勇者「相変わらず、なんか昼寝してそうな雰囲気だな」
女魔法使い「きのせい」

799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 22:22:35.94 ID:Xzdt3noP
女魔法使い「行って」
勇者「?」女魔法使い「……魔王が、待ってる」
勇者「魔王を知っているのか?」
女魔法使い「……待ってる。あなたのかわりは、わたしがする。
 わたしがあいつらを始末したら……最大呪文で、ゲートを
 壊して」
勇者「そんなことしたら、魔界へ行けなくなっちまうだろっ」
女魔法使い「……」
勇者「……壊せば、いいのか?」
女魔法使い こくり
勇者「どれくらい?」
女魔法使い「最強」
勇者「どんだけえぐれるか保証できないぞ!?」
女魔法使い「必要」
勇者「なにが?」
女魔法使い「勇者が、必要」

813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 22:40:47.36 ID:Xzdt3noP
――南極海、ゲート直情
女魔法使い「魔族総数2670。距離測定開始」
女魔法使い「照準固定、圧縮術式解凍中」
女魔法使い「解凍15%……37%……59%……81%」
女魔法使い「指定範囲カレントエリア、コンフリクト解除」
女魔法使い「勇者の……」くわっ!!
 ぎりぎりぎりぎりぎりっ
女魔法使い「勇者を助けるためにっ、
 こっちは連続圧縮で時間伸張してまで術式ため込んでるんだっ。
  あぁん!? わかるか、お前らっ!
 こっちの年期と覚悟がっ!!
  勇者に何かがあれば必ず駆けつけっ、
 その願いを叶える。
 その魔法使いがっ。魔法を使うあたしがっ!
 あの日。
 あの夕暮れの中でっ!
 何も出来なかったあたしのプライドがっ!
  どんだけ軋んだかっ!
 いくつの夜を歯ぎしりと共に過ごしたかっ
  お前らみたいなぁっ!! 三下のドさんぴんっ!!
 あ い て にぃぃぃぃ!!
 出来るかよぉぉぉぉっ!!!!」

816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 22:41:48.80 ID:Xzdt3noP
勇者「あいつ……また過激になってやがる……」
女魔法使い「消し飛べっ! このち○かすがぁっ!!」
 ヒュバッ!   ヒュバッ!   ヒュバッ!
     ヒュバッ!   ヒュバッ!   ヒュバッ!
 ヒュバッ!   ヒュバッ!   ヒュバッ!
勇者「転移っ!? まさか、こんだけの数を個別転移してるのか!?」
「……除去完了」
勇者「わ、わかった。行く。広域雷撃っ!!」
 ごろごろごろごろ! ズガーン!
「たりない」
勇者「っ!? くっそぉ、魔力結晶! 超高域雷撃、撃滅呪文!!」
「もっと」
勇者「その声、テンション下がるんよっ。
 いや、さっきのはいいです……。。うううぅ!
 雷撃! 雷撃! 雷撃! 極大雷撃殲滅ッッ!!」
勇者「ど、どうだっ」
「……広域破砕を確認」

817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 22:42:56.79 ID:Xzdt3noP
「飛行呪で土煙内部に特攻」
勇者「おうっ!」
 ヒュバァァァァァ!!
「あと25秒」
勇者「……我ながらやり過ぎたか?
 とんでもないクレーター出来ちまったんじゃないか?」
「臨海面接触」
勇者「え?」
「加速して突破」
勇者「おっ、おうっ!」
 ヒュバァァァァァ!! パァァァァア!
勇者「明るいっ、な、なんだ。この風っ。何処に抜けたっ!?」
「ちかせかい」
勇者「え?」
「斥力光球に照らされた地下世界。
 ……“魔界という別世界”は、存在しない」

916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/13(日) 14:23:05.27 ID:6HXLExsP
――鉄の国、国境付近の街道、峠道
 ダカダッ! ダカダッ! ダカダッ!
片目司令官「駆れ! 駆れっ!」
将校「ハイヤッ! ドウドウッ!」
片目司令官「フハハハハっ。見せてやる、地獄を見せてやるぞ」
将校「はっ! 士気も上々でありますっ」
片目司令官「ふんっ。酒と女。略奪の褒美だ」
将校「ふはは。そうでありますな」
片目司令官「数と隊列は」
将校「は。軽騎兵1500! 歩兵500! 傭騎兵400、傭兵600。
 徒歩の歩兵500は後方距離、1日。
 傭騎兵400はあと一時間で合流っ。そのほか傭兵600のほうは
 別ルートから森を抜けて進軍中」
片目司令官「用意しておいた軍使はどうなった?」
将校「はっ。捕虜の鉄の国兵士をつかいます。
 明朝の夜明けとともに宮殿へ到着。
 我らの宣戦布告を通達するでありましょうっ」
片目司令官「よっし、全軍停止!!」
  軽騎兵「停止! 停止っ!!」
  軽騎兵「止まれぇ」
将校「静聴っ! ただいまより司令官の指示があるっ!」

918 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/13(日) 14:24:58.50 ID:6HXLExsP
片目司令官「聞けっ! 白夜の騎兵達よ!
 われらは明朝、夜明けより1時間の後、鉄の国を強襲するッ!!
 鉄の国は三ヶ国通商同盟なる愚劣な世迷いごとをほざく
 背教者の一党である。
 きゃつらは愚かにも光の精霊に背を向けた破門の輩となった。
 これは聖なる戦であり、奴らの頭上には精霊の
 怒りが降り注ぐだろうっ」
  「――背教者に鉄槌をっ!」
片目司令官「我が軍は、この後しばらく並足にて移動、
 森林近くで休憩、仮眠を取る。交代で休むが良い。
 騎馬の世話を行え。明日は存分に働いて貰うぞ。
 武器の手入れも怠るな。
 血を吸う飢えた刃を愛でて眠るのだっ!
 白夜の子らよ、貴様らに精霊の祝福あれっ」
  「――おぉぉおっ!!」
将校「ふふふっ。奴らも仰天しましょう」
片目司令官「鉄の国のような弱敵、相手にもならぬ。
 ぐぅっ!! 〜っつぅ!!」 ぎゅっ
将校「ど、どうなさいましたっ!」
片目司令官「く、暗闇がっ! 燃えるっ。この瞳が燃えるっ。
 囓るなっ、わ、わ、我を囓るなっ! 去れっ、悪魔の使いめっ!
 我が瞳を、我が光を。グギャハハハっ。ああ、そうだ。
 見返してやるぞ、冬寂王とやらっ。
 忘れはしないぞ、裏切り者の砦将めっ。
 我があの苛烈なる魔界の彷徨を決死の思いで抜け出た先に
 魔族の伏兵を配した冬寂王っ。そのうえ、何の落ち度もないかの
 ように振る舞いおって。地獄の業火すら生ぬるいっ。
 鉄の国は始まりに過ぎん。
 我を侮辱した者どもに最高の恥辱を味あわせてくれるっ」