Part3
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:25:10.69 ID:AIDyRnsCP
魔王「これは、この館はどういう物件なんだ?」
勇者「そうだ、気になってた」
メイド長「さる貴族の別邸だったらしい建物でございます。
その貴族……騎士家だったそうですが、その家そのものは
跡継ぎを戦争で亡くされ、この館は手放されたとか」
魔王「正規の手段で手に入れたのだろうな?」
メイド長「ええもちろんです。
修繕を依頼した職工の方々への支払いも現金で行ないました」
魔王「うむ」
勇者「……穏当だな、以外に」
魔王「いずれ実力行使でなければ意を通せない相手も出てくる。
穏やかに通るところで無駄に暴力は使いたくない。
……嫌われると困る」
勇者「?」
魔王「なんでもない。
……で、我らはこの館に逗留して。んー身分は
どうしたものかな」
153 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:32:06.31 ID:AIDyRnsCP
メイド長「村長以下主立った方々へのご挨拶は
すませております。聖王都の神学院で研究なされた
高名な学者の姫君だと」
魔王「そんなんで通るのか」
勇者「格好さえどうにかすれば余裕だろう?」
魔王「この白衣とローブではだめかな」
勇者「ダメっぽいんじゃね?」
メイド長「ダメでしょうね」
魔王「着心地が良いんだが」
勇者「姫君ってのは着心地度外視で服選ぶんじゃねぇかな」
メイド長「そうですね。視線を意識せざるを得ない服で
緊張感を維持しているのかと思われます」
魔王「緊張感がないと!?」
メイド長「そうは申しておりません。しかし……」
魔王「なんじゃ」
メイド長「お耳を拝借いたします」
魔王「ふむふむ……」
158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:35:41.98 ID:AIDyRnsCP
魔王「勇者、勇者」
勇者「どうした?」
魔王「緊張感のない肉は駄肉か?」 じわぁ
勇者「なんで半べそなんだよ」
魔王「そう言われたのだ」
勇者「あー」
魔王「駄肉か? 駄肉なのか!?」
勇者「あー。そのー」
メイド長「お茶のお代わりはいかがでございましょう?」
魔王「ゆるんでぷにってしまうのか?」
勇者「コメントしづらいな」
メイド長「冬場は特に運動が不足しますからね」
魔王「うううう」
勇者「……その、たまには着飾るのも良いんじゃないか?
目先が変わって。その、風情とか云うヤツだ」
メイド長「さようでございますよ、まおー様」
魔王「そ、そうか……」
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:44:06.99 ID:AIDyRnsCP
勇者「で、挨拶がどうとか」
メイド長「ああ、そうでした。
その学術の研究と、新しい農作指導のために
この村に興味を持たれてやってくる、というような
説明をいたしております」
魔王「そうか、話が早くて助かる」
勇者「そうだな、農業ともなれば時間がかかるものな」
メイド長「ええ。……まおー様」
魔王「ん?」
メイド長「魔王軍の方はいかがしましょう」
魔王「ああ。そうだな」 ちらっ
勇者「どうかしたか?」
魔王「勇者と私は、魔王の大広間で決闘をしたとしよう。
そこで両者共に深い傷を負ったという噂を流せ。
私はその傷を癒すために冥界温泉で療養中だ。
勇者は生死不明、一説によると落ち延びたと」
メイド長「かしこまりました」
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:48:41.23 ID:AIDyRnsCP
魔王「それでいいか? 勇者」
勇者「ああ。かまわない。俺はどうせ魔王のものだしな」
メイド長「あたあた、まぁまぁ」にこっ
魔王「からかうな」
魔王「この噂で、まぁ1年くらいの時間は稼げよう。
魔王軍の急進派も何かの策略ではないかと見て
しばらくは動きを控えるだろう」
勇者「1年か」
魔王「その他にも手は打つ。粘るつもりもあるが
まぁ、3年と云ったところだろうな、猶予は」
勇者「……」
魔王「その間に『まだ見たことのない結末』を
見つけなければならない」
勇者「見たいだけじゃなかったのか?」
魔王「……見つけ出さないと、私の持ち主に嫌われる」
勇者「あ、その。そ……そっか。そうだな」
164 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:53:49.41 ID:AIDyRnsCP
魔王「それはいいとして、だ」
勇者「お、おう」
魔王「この地で結果を出したいのは、農法の改善だ」
勇者「のーほー?」
魔王「農業の方法だ」
勇者「農業の方法たって、
種撒いて芽が出て収穫するだけだろ?」
魔王「その方法を改善する」
勇者「うーん。改善なんてあるのか?」
魔王「同じ土地で麦を収穫し続けると
どんどん質がわるくなるのはしっているか?」
勇者「あー。聞いたことがあるぞ。
大地の恵みみたいな物がなくなっちゃうんだろう?」
魔王「この辺りで広く行なわれているのは三圃式農業という
もので、畑を3種類に分ける。
それぞれ夏に使う、冬に使う、一年間お休みと分けるんだ。
そしてローテーションさせてゆく」
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 00:59:01.92 ID:AIDyRnsCP
勇者「工夫してあるんだな。ふむふむ。
いや、まてよ? そもそも何でローテーションするんだ?
どんどん新しい畑を開拓すればいいじゃないか。
新しい場所なら大地の恵みもたくさんある」
魔王「ばかもの。
誰もが勇者のように化物じみた戦闘能力と体力と
破壊魔法を使えると思ったら大間違いだ」
勇者「そ、そか?」
魔王「開拓には長い時間と労力がかかる。
それにそうやって開拓範囲を広くすれば、
収穫や種まきなどで移動しなければならない
距離も広がるし、魔物や野生動物から防衛しなければ
ならない敷地も広がってしまう」
勇者「そういえばそうか」
魔王「そこで3分割ローテーションを行なっているのだが」
勇者「ふむふむ」
魔王「この手法をより改善して、
食料の供給量を増やすのが当面の目的だ」
167 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:06:07.19 ID:AIDyRnsCP
勇者「目的は判った。けれど、具体的にはどうするんだ?」
魔王「輪作……つまりローテーションという概念は良いんだ。
これを4回転式に改善しようと思う」
勇者「ふむふむ」
魔王「すなわち、大麦を作る畑、クローバを作る畑、
小麦を作る畑、かぶを作る畑に4分割する。
この四つをセットにして4年周期で畑を活用するんだ」
勇者「なんか、3ローテと大差がないように聞こえるな」
魔王「3ローテは1周期に一回お休みがあるだろう?
こちらは4周期にお休みらしいお休みはクローバーだけだ」
勇者「それがそんなに大きい差なのか?」
魔王「差が出る秘密は、麦以外にある。それがカブだ」
勇者「シチューに入れると旨いけど、そんなに作っても
飽きるだろう?」
169 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:10:12.33 ID:AIDyRnsCP
魔王「もちろん人間が食べても良い。
麦ばかりだと健康に悪いからな。だがこのカブは
畜産の使うんだ。具体的に云うと豚の餌にする」
メイド長「豚、ですか?」
魔王「知ってるとおり、この寒くて貧しい地方では
肉食というのは冬場の重要な栄養素だ。
冬には充分な果物も野菜も採れないし、
充分な穀物が無い事の方が多い。
そこで豚を食べるわけだが、豚は生きているから
活かしておくためには食料が必要だ。
冬の間は人間の食糧すら不足するだろう?」
勇者「ああ、そうだな。だから豚は冬になる前に、
最低限の数を残してしめちゃうんだ。
それでソーセージやベーコンやハムにして、
冬の間の食糧備蓄をする。南部諸王国じゃ
何処でも見られる冬の始まりの風物詩って所だ」
魔王「冬場……つまり農作物が充分では無い時期の
代替え的補助食料なのに、結局は農業と同じように
季節に支配されている。これは非効率的なことだ」
173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:17:28.72 ID:AIDyRnsCP
勇者「……云われてみれば、そうだな」
魔王「そこでクローバーとカブを使う。
クローバーは夏場の間、豚や羊などの牧草になる。
畜産をおこなえば肥料も出してもらえるしな。
カブは冬の間に飼料として役立つ」
勇者「そうかっ!」
魔王「そうだ。この方法は『畑を休ませない』、
『畑を痩せさせない』、『農作物以外も豊かにする』
の三つのアイデアで出来ているんだ」
勇者「そこでこの村な訳か」
メイド長「どういう事ですか?」
勇者「この村みたいな、農業も畜産もやって、
ある程度自給自足の体制の方がこの農法には都合が
良いんだよ。データ採りの意味でも。
都市部や、小麦ばっかりを大量生産している、
それが出来ちゃうような温暖な地域では意味が薄い。
東方の米みたいな穀物にも効果が薄い。
『寒くて貧しい地域を救う』アイデアだから」
メイド長「そういうことでしたか!」
175 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:22:32.70 ID:AIDyRnsCP
魔王「他にもいくつかある。北氷海の魚による肥料とか
、農機具にも改良の余地がある」
勇者「へ? 色々あるんだな」
魔王「難しいのは、農地と村の統廃合だ。
放牧地にした場合、羊などの動物はコントロールに
難があるしな。いまの危険な時勢だと、この種の
『開墾した権利』の縄張り争いは、たやすく利権の
争いに変化してしまうのだ」
勇者「そうだな、それは予想がつくよ」
メイド長「でも、人間は土地を重視する、
って、まおー様はいってましたよね。
話し合いで解決するんですか?」
魔王「そこで魔族だ」
勇者「?」
魔王「魔族で村を攻める。
どうせたいした守備軍もいないだろう?
ちょっとした中隊規模で充分だ。
脅して適度に放火でもしてやる。
最悪の場合は主立ったものを殺すこともあるかもしれない」
勇者「……」
177 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:26:08.44 ID:AIDyRnsCP
魔王「村人が立ち退いたあとに、魔王軍は駆けつけた
騎士団と一戦して引き上げる。開拓民は戻ってくる
だろうが、それは領主の庇護下に入ってのことだろう。
その状況なら、農地の整理や、村と村との統廃合も
問題なく行くだろう」
勇者「……」
魔王「幻滅したか?」
メイド長「……まおー様」
魔王「むろん、手心は加える。そもそもこの手法は
王国側、少なくとも騎士団には内通者というか
こちら側の理解者が必要だ。
だがこの種の作戦には事故がつきものだ。
血が流れないと云うことはあり得ないだろう」
勇者「……」
魔王「だが、わたしは何かをすると決めたんだ。
このまま、血まみれの夢に似た消耗戦を100年繰り返し
取り返しのつかない停滞を過ごすつもりはない。
わたしは『終わった後の物語』が読みたいんだ」
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:31:23.17 ID:AIDyRnsCP
魔王「愛想が尽きたか?
魔王なんて嫌いになったか?
で、でもダメだぞっ。
勇者は私のものだから。
絶対に手放すつもりはないぞっ」
メイド長「……」
魔王「それとも、やっぱり魔王を退治するつもりになったか?
それならそれで仕方がないが……。
私は勇者のものだから
その剣を避けるなんて出来ないけど……」
勇者「それでも……」
魔王「……」
勇者「それでも、救われる人はいるんだろう?
この3年間の秘密休戦で救われる人はいるんだろう?
それにその4ローテーションの工夫が上手く行けば
毎年何万人もの飢えた子供たちが春を迎えられるんだろう?
――そして戦争を終わらせるための余裕が、
人間の手に戻ってくるんだろう?」
179 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 01:34:26.27 ID:AIDyRnsCP
魔王「そうだ」
勇者「なら俺はやっぱり魔王の剣だ」
メイド長「……」
勇者「俺は何をすればいい?
……まぁ、うっすらと判っちゃいるんだが」
魔王「予想通りだ。
勇者には『正義の味方』をやってもらう。
攻め込んだ魔王軍を撃退する、南部諸王国領主の
軍事的先鋒だ」
勇者「茶番だな」
魔王「うん。悪の首魁とこんな話をしているいま、
それは限りなく茶番だろう」
勇者「100回地獄へ行っても救われないな」
魔王「判るなんて云わない」
勇者「でも『その役が』いないと始まらないもんな」
240 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 14:42:09.44 ID:AIDyRnsCP
――冬越しの村
魔王「思ったより難航しそうだな」
勇者「ああ、そうだな」
メイド長「あんなに分からず屋だとは思いませんでした」
勇者「仕方ないさ。俺たちにとっては挑戦だけど
この村の人たちは、一年不作になっただけで人死が
出るんだ」
メイド長「それはそうですが……」
魔王「考えてみると、この地よりも魔界の方が
気候的には恵まれているな」
勇者「そういやそうだな」
メイド長「勇者様は魔界のあちこちに旅されたのですか?」
勇者「ああ、人間では一番の魔界通だと思うぞ」
メイド長「しかし、村長があの態度ですと
農業技術の改良ですか? 難しいのでは……」
魔王「うむ。……露骨に断ってくるわけでもないので
対処に困るな」
勇者「村長から見たら、魔王は貴族の令嬢に見えるんだ。
正面から反対はできないさ」
243 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 14:49:16.30 ID:AIDyRnsCP
メイド長「それならいっそ……」
魔王「却下」 メイド長「しかし、まおー様。目的のために手段は」
魔王「農地改革のために、細かい利権争いをする
領主や地主を取り除くのはやむを得ない。
生産性を上げるためには、必要なことだ。
でもそれは、農業技術が発展して集約農業が
可能になって初めて出来ることであって
その技術的な先行試験場で、指導者を
取り除くことには百害あって一理もない」
勇者「だよなぁ」
メイド長「困りましたね」
魔王「ん……。やはり教育程度がねっくなのか」
勇者「教育?」
メイド長「関係あるのですか?」
魔王「まぁ、いろいろとな。次の段階でと考えていたのだが
あちこちに手を入れなければ物事が進まないようだ」
245 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 14:54:32.24 ID:AIDyRnsCP
メイド長「何をするのです?」
魔王「考えても見ろ。私たちがこの村で生産性を
向上させても。それを他の村や王国にも伝えて
いかなければ、全体的な変化は望めない。
でも私たちが一カ所ずつ教えて回るのは
時間的に見ても経済的に見ても不可能だ」
勇者「道理だな」
魔王「だから、新しい技術を覚えて様々な国へ
伝えるため専門の人員、まぁ、部下でも同盟者でも
いいんだが、そういった人材も必要だ」
勇者「ふむ」
メイド長「それで、教育ですか」
魔王「ところで聞くが人間界の教育とはどうなってるんだ?」
勇者「そんなこと云われてもなぁ。そもそも教育って何だよ」
246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:00:09.67 ID:AIDyRnsCP
メイド長「……」
魔王「えーあー」
勇者「いやだからさー。当たり前みたいに
難しい言葉を使われても」
魔王「つまり、知識を子供や年下の存在に伝えると云うことだ」
勇者「何だ、簡単な説明じゃないか。そんなのは
人間社会にだって当然あるよ。そもそも教えなきゃ
赤ちゃんは話せるようにだってならないだろう?
このあたりじゃ、まずは子供はじいさんか
ばあさんに預けられて、まとめて育てられるな。
両親は畑や狩に出かけるから、同年代の複数の家の
子供がまとめて面倒を見てもらう」
メイド長「効率的なんですね。お年寄りにも仕事が出来ます」
勇者「ある程度年甲斐ったら、農作業の手伝いをすることに
なるな。魔王みたいな理屈での話じゃないけれど、
いつ何処に何を作付けするかとか、天気の読み方だとか、
獣の避け方だとか、そう言う知識は数年も働けば自然と
身につくもんだ」
249 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:24:38.66 ID:AIDyRnsCP
勇者「それから、この地方の冬は深いんだ。
雪がどっさり降るし、冬には嵐がやってくることも多い。
この地方のこんな村では、冬の間は殆ど家の中に
閉じ込められるんだ。そんな間、農民たちは
細かい工芸品を作ったり、羊毛で衣類をこしらえたりする。
子供たちは長い冬の間、村の智慧者たちから
いくつものお話を教わる。英雄譚や王の話、神々の話だな。
あー、なんだ。魔族の話も出てくるぞ。
それから、ちょっと目端の利く若者や村長の子弟は
読み書きを習ったりもする」
魔王「ふむ」
勇者「都市部だとまた話が違うな。
都市部で教育と云えば、教会でのミサと家庭教師だ。
家庭教師ってのは、知ってるか?
えーっと、物語や読み書きや算術を教えてくれる
個人用の語り部みたいなものだ。
裕福な商家や貴族の家では両親が家庭教師を雇って、
自分の子供に様々な知識と技術を教えさせる」
メイド長「勇者様もその口ですか?」
勇者「まぁ、そうだな。とは云っても、俺の場合は
剣の教師とばっかりつるんで遊んでいたようなものだけど」
250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:33:52.38 ID:AIDyRnsCP
勇者「どうだ? 教育ってこういう事の事じゃないのか」
魔王「いや、まさにそう言うことだ」
勇者「人間社会のことも任せておけっ」
魔王「まぁ、で、その人間社会の教育は未開なので」
勇者「未開っ!?」
魔王「む。表現が悪かった。『発展の過程における
初期的な未発達の状態』だな」
勇者「同じじゃねぇか」
魔王「からかっただけだ」
勇者「くぅ」
魔王「だが、自然な教育だよ。無理がない」
勇者「……」
魔王「とはいえ、こちらは不自然な発展を望んでいるから
不自然で気合いの入った教育をしなければならない。
……だがなぁ、教育って云うのは金がかかるんだ」
勇者「金かぁ。俺勇者だし、勇者の装備を売れば
そこそこ金にならないか?」
252 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/04(金) 15:40:23.28 ID:AIDyRnsCP
メイド長「えーっと、勇者の剣と勇者の盾、
勇者の鎧ですか……38万Gくらいにはなりますね」
勇者「なっ? すげーだろ?」
メイド長「どれくらい必要なのですか」
魔王「むぅ。そうだなぁ、今年度の予算計画は
流動的でいくつかのパターンを考えているのだが
切り詰めた案で5600万G程度かな」
勇者「お、おれの……勇者の……装備が……」
メイド長「落ち込まないでください。勇者様」なでなで
魔王「メイド長。それ以上の接触は禁止だ」
メイド長「はい、まおー様♪」
魔王「なかなかに難儀な話だなぁ」
勇者「まったくだな」
メイド長「まぁ、そろそろ冬になりますし、
どちらにせよ本格的な農業実験は春からでしょう?
この冬を使ってゆっくり手を打てばいいですよ」