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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part29


473 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 22:01:16.27 ID:sQx9tPoP
執事「おお、そう言うことでしたかっ」ぽむんっ!
冬寂王「ん? どうした爺」
執事「いやいや。
 最近、野盗化する傭兵団の噂が後を絶たぬのですよ。
 連中、食い詰めて盗賊に身を落としているのだな」
冬寂王「そのような話も出ていたな」
商人子弟「野盗であるなら異端指定だからと云って
 馬鈴薯を嫌がったりもしないでしょう。
 領内に強盗、いや略奪が発生しないとも限りません」
将官「それは小官の役目でありますね! ご安心あれ。
 常備軍を通常の国の三倍もおいているのは
 我が南部の諸王国だけです。
 強盗ごときにどうして引けを取りましょう」
執事「野盗とはいえ、元は傭兵団。慢心するでないぞ」
将官「はっ!」
商人子弟「もう一点が、流入する民衆です。
 これから越冬に向かいもし中央部がもっと冷えるのであれば
 飢饉になるやもしれません。そうすれば、大規模な移民が
 発生する可能性があります」
冬寂王「ははは、そうなれば、それはそれでありがたいがな」
商人子弟「それもこれも食べさせることが出来れば、です。
 その点もあり、馬鈴薯の増産を進言しました」

475 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 22:03:40.30 ID:sQx9tPoP
冬寂王「委細承知した。良く進言してくれたな」
商人子弟「いえいえ、これもお役目」
従僕「ですっ」にこっ
冬寂王「貴公の見識は良く把握した。今日から財務長だ」
商人子弟「え」ぴきっ
冬寂王「侯爵位だ。給金や手当はおって考えよう」
商人子弟「いや」
冬寂王「遠慮はするな。財務長となったからには
 三倍の仕事もこなせるはず。よろしく頼むぞっ」
商人子弟「ちょ、ちょっとまってくださいよ!
 そういうんじゃないですよ! 死んじゃいますよっ!」
冬寂王「ははははっ。我は早速布告作業にはいる。
 何かあれば何時なりと来てくれるが良い。
 そうだ、こんど晩餐でも共にしよう。たのんだぞっ!」
将官「ご愁傷様です」
執事「はやく奥様を貰われることですな。
 おっぱいは男を癒す摩訶不思議な力がありますぞ?」
商人子弟 がくっ
従僕「……」なでなで

477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 22:05:49.20 ID:sQx9tPoP
冬寂王「ははははっ。では、行ってくる!」
執事「お待ちください、若〜。爺もまいりますぞっ」
 かっかっかっ。がちゃん
商人子弟「……ふぁぁぁ」がくり
従僕「大丈夫ですか?」
商人子弟「ダメかもしんない」
従僕「お茶入れましょうか?」
商人子弟「たのむよ」
従僕「はーい♪」 ぱたたたっ
商人子弟「それにしても……この流れ……」
商人子弟(誰の仕掛けかなんて事は判っている
 こんな規模の商戦をしかけられるのは
 『同盟』以外にあるものか。
 連中が大規模な買い占めをやっているんだ。
 だが、その目的は何だ? 連中は敵か? 味方なのか?)
商人子弟(俺みたいな三下の商人の小せがれじゃぁ
 どうやったって化け物みたいな商人連中のそのまた
 集合体である『同盟』になんか太刀打ちできないぞ。
 だが……。はぁぁぁ。今さら逃げるわけにも行かないし)
商人子弟(小麦と生活必要物資を買ってどうする?
 その費用はどこからひねり出したんだ? 他の物資の
 売買の兆候はない。とすれば、何らかの契約か、自分の
 財布から金をひねり出したんだろうが……。
 そんなことに何の意味がある? ただの投機なのか?
 食料品の価格を高騰させて、売り抜けて利益を得る。
 ――可能だろうが、それだけが目的なのか?)

503 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:00:03.23 ID:sQx9tPoP
――思い出の庭、魔王の回想
メイド長「――!」
魔王 かちゃかちゃ
メイド長「――! ――!」
魔王「むぅ、変換式が違うのか?」
メイド長「――!
  もうっ、呼びかけたら返事くらいしてくださいっ」
魔王「うぉっ! びっくりしたではないか」
メイド長「びっくりしたのは、こっちですよ!」
魔王「むぅ。お互いびっくりでは間抜けではないか」
メイド長「それこそお互い様ですっ」
魔王「むぅ」
メイド長 くんくん 「ん? ――! いつから
 着替えてないんですかっ!?」
魔王「そんなこと良いではないか。
 ライオンも熊も着替えはせぬ。
 竜も殺戮機兵もだ。
 そんなことしなくても生きていける」
メイド長「ダメですよ。そんなの。
 あなたは人型形態なんですから。
 そもそも年頃の女の子なんですよ? 弁えてくださいっ」
魔王「年頃なんて云ったって、もう100年もこのままではないか」
メイド長「そりゃ、ここは『外なる図書館』だからですっ」

504 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:01:45.14 ID:sQx9tPoP
魔王「身支度は苦手だ」
メイド長「ああっ。もうっ!
 そういう話じゃなかった。
 ――! 魔王になるってのは本当なんですか!?」
魔王「ああ、うん……」
メイド長「照れないでくださいっ!」
魔王「なるのだ」えへん
メイド長「無駄に成長した胸を張らないでくださいよっ」
魔王「だめだったか?」
メイド長「……まさか、わたしのためじゃないでしょうね?」
魔王「いや、違うぞ」
メイド長「それなら良いんですが……」
魔王「あれは本当に行きがかりのことだ。
 気にする方がおかしいのだ」
メイド長「……」
魔王「来月には、継承をする」
メイド長「――魔王になる意味、判ってるんですか?」
魔王「うむ」
メイド長「冥府宮にはいるんですよ?
 他の魔族ならいざしらず、この一族には
 冥府宮に関する知識だって伝わっているじゃないですかっ!」
魔王「“この一族”なんていうな。“我が一族”と云うべきだ」
メイド長「わたしは……新参ですから」
魔王「新参だろうが何だろうが、一族だ」

507 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:03:47.48 ID:sQx9tPoP
メイド長「そんなことより、あそこに行ったら歴代魔王に
 意識も身体も乗っ取られるんですよ?」
魔王「正確には乗っ取りではない。汚染だ」
メイド長「同じじゃないですか」
魔王「全然違うぞ。汚染はわたし自身の変化だ。
 乗っ取りなら元に戻る方法もあるかもしれないが
 汚染に方法はない」
メイド長「余計に悪いじゃないですかっ?」
魔王「いや、そうとも限らない。
 物事には何でも利点と欠点があるのだ。
 まず、汚染されてもわたしはわたしだ。
 最後までわたしの罪はわたしについて回る」
メイド長「欠点にしか聞こえません」
魔王「それに、乗っ取りは一瞬だろうが、汚染には
 時間がかかろう? そこが目の付け所だ」
メイド長「はぁ?」
魔王「冥府宮にはちょっぴりだけ入る」
メイド長「へ?」
魔王「ちょぅぴり入って、すぐ出てくる」
メイド長「はぁ〜? な、何を言ってるんですか!?
 それじゃ魔王の戦闘能力が身につかないじゃないですかっ。
 そんなのでどうやって魔界を統治するんですかっ?
 そもそもどうやって戦うんですかっ!?」

510 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:05:57.83 ID:sQx9tPoP
魔王「統治に暴力なんて使わない」
メイド長「何を言ってるんですか、そんなっ」
魔王「NDC310番台を見てみろ。
 人間は個体の戦闘能力など中級魔族以下なのに
 それでも統治も政治もやって居る。
 戦闘能力など統治の必須要件ではない証明だ」
メイド長「そ、それはそうかもしれませんけれど。
 だいたい、何で魔王になんてなるつもりなんですかっ。
 そこからして変じゃないですか。研究の虫のくせにっ」
魔王「これも一つの実習だ。お前だってしているだろう?」
メイド長「実習……」
魔王「うん。わたしは、二つの世界がふれあう様を見てみたい。
 出来うるならば、わたしの運命に出会いたいんだ」
メイド長「え?」
魔王「ほら」
 キラキラキラ、キラキラキラ
メイド長「これ……え……?」
魔王「先週、生まれたんだ」
メイド長「にん、げん?」
魔王「遠隔映像に過ぎないし、酷く画質は悪いし、
 これっきりだけどな。瀬良の図書館も、万能ではないから」

513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:10:24.46 ID:sQx9tPoP
メイド長「男の子……なんですか?」
魔王「勇者だよ」
メイド長「……っ!?」
魔王「この世界にたったふたつのLiving Singularity。
 運命の子供だ。きっと15年もすれば格好良くなるんだろうな」
メイド長「まさか……」
魔王「うん。ふふふっ。――この人に会いたいんだ」
メイド長「そ、そんなっ。この人は、魔王を殺しに来る
 存在ですよっ!? 何を考えてるんですかっ!!」
魔王「それが良いんじゃないか」
メイド長「――」
魔王「わたしに会いに来てくれるんだ。
 遠いところから触れあえないはずのところから来てくれるんだよ。
 それはまぁ、彼の剣はわたしを殺すかもしれないけれど、
 殺される前に“こんにちは”位は云えるだろう。
 もしかしたら“ご機嫌いかが”も云えるかもしれない。
 奇跡でも起きたら――あの黒髪に
 触れさせてもらえるかもしれない。あれはきっと、
 もふもふしてて、くしゃくしゃにすると幸せなんだ」
メイド長「正気じゃありませんっ」
魔王「いたって正気だ。それがわたしの持っている
 唯一のチャンスだと思う。“見たことのない未来”を
 見るための。この図書館に収められていない物語を
 読むための。――運命と出会うための」

515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:13:40.57 ID:sQx9tPoP
メイド長「そんな……だって」
魔王「決めたんだ」
メイド長「継承候補者戦はどうするんですかっ」
魔王「それは、まぁ、適当に」
メイド長「魔界からとっておきの猛者や従者が6人も
 集まるんですよ? 勝てるわけ無いじゃないですかっ。
 無理に決まっています、魔王になることも出来ませんよっ」
魔王「それはまぁ、うまくやるよ。
 戦闘は苦手だけど損得勘定は得意だ。
 棄権して貰うように話をまとめるとか。
 手加減して貰うとか」
メイド長「出来るわけありません」 どんっ
魔王「手厳しいな」
メイド長「――はっ! ――は馬鹿ですかっ!?」
魔王「勝ち負けは問題じゃないんだ。
 ここが唯一のチャンスだから。
 問題はもはや勝ち負けではなく
 “賭けずに後悔するか、賭けてみるか”でしかないんだ」
メイド長「……あなたは」
魔王「ん? 変なことを云ったか?」
メイド長「いえ」
魔王「……」
メイド長「…………マイマスター」
魔王「なんだそれ?」

518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/11(金) 23:16:24.08 ID:sQx9tPoP
メイド長「マイマスター。あなたは酷く馬鹿ですから」
魔王「何を言い出すんだっ。異界の博士号だって取れるんだぞ」
メイド長「それでも馬鹿ですから」
魔王「む」
メイド長「わたしがメイドとしてあなたに仕えましょう」
魔王「え?」
メイド長「あなたの従者になりましょう」
魔王「何を言っているんだ。馬鹿を云うな。
 これはわたしの夢で、わたしのチャンスなんだっ。
 他人を巻き込んで良いものじゃないっ」
メイド長「ならさっさと諦めるべきです。
 王になる、統治者になるというのは、
 “他人を巻き込む”以外の何だというのですかっ!?
 その程度で曲げるような夢に命を掛ける馬鹿がいますかっ!」
魔王「――っ」
メイド長「これは、わたしの夢でもあります。マイマスター。
 わたしも、“メイド道”を極めたいですからね。
 あなたには多少の恩もある。
 でもそれ以上に、こんなにぐうたらでいい加減な人は
 見たことがありません。素材は良いのに宝の持ち腐れ。
 本当に理想のご主人様です」
魔王「いいのか? そっちだって馬鹿の相乗りになるぞ。
 死ぬかも、というか死ぬっぽいんだぞ? かなり確実に」

521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:19:35.57 ID:sQx9tPoP
メイド長「それはマイマスターがメイドをご存じないからでしょう」
魔王「はぁ?」
メイド長「どの書物を読んでもメイドの卓越した美意識、
 実務能力、家政能力、問題処理能力、
 さらに特筆すべきはその戦闘能力について絶賛されていますよ?
 ヴィクトリア朝とヤーパンにおける
 メイドはまさに現人神のようなものです」
魔王「そう……なのか?」
メイド長「ええ、ご安心あれ」
魔王「そ、そうか。その」
メイド長「お茶でも入れましょうね」
魔王「う、うむ。頼む。その……メイド長」
メイド長「まだ部下は居ませんけれどね」
魔王「部下がいなくても、長に相応しい」
メイド長「ありがとうございます」 にこり
魔王「でも、その……良いのか?」
メイド長「ええ、もちろん。――だって」
魔王「……」
メイド長「“さだめられたあの方を待つために”なんて
 そんな夢、応援しないわけには行きませんでしょう?
 わたしだって女性の身に生まれているのですから」

534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:46:03.44 ID:sQx9tPoP
――大陸中央、霧の国、領主の館
家令「領主様っ! 領主様ぁっ!」
肥満領主「んー。もう1個プラム剥いてくれたまえっ」
 少女メイド「はい……」
家令「領主様っ!」
肥満領主「ええいっ! うるさいっ! 聞こえているわっ!
 何事だ、騒々しいっ!」
家令「き、き、来ましたっ!」
肥満領主「召集令かっ!?」
家令「その通りでございますっ!」
 ぱらっ、するするするっ
肥満領主「ふむっ。総大将は霧の国の灰青王か……。
 招集が掛かるは思っていたが、このように早くとはなっ。
 ふははははっ! 南部の蛮王どもめ、我らが書面による
 交渉を繰り返すと高をくくっていたのだろうな。
 現実はそうそううまくはいかんよっ」
家令「いかがいたしましょう?」
肥満領主「領主の義務ゆえ、至急馳せ散じると返書を送れ!」
家令「ははぁっ!」 がちゃっ!
肥満領主「何とも良いタイミングで招集をかけてくれたものよ。
 こちらは小麦の売買を通してたっぷりと軍資金を蓄えておる。
 今年に限って“小麦引き渡し証書”なるものまで
 出現する始末。わが宝物庫には金貨がうなっておるわ」

536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 23:47:48.34 ID:sQx9tPoP
少女メイド「あ、あの……剥けました……」
肥満領主「ふふっ。おうっ、これは甘いなっ」くっちゃくっちゃ
肥満領主「これだけの金があれば、騎士達への給金も
 余裕を持って払えようし、傭兵団を雇うことも
 容易かろう……」
肥満領主「700、いや1000の兵をそろえれば、
 灰青王の本軍よりもさらに人数で上回ることも
 可能かもしれんな。そうなれば司教様の覚えもめでたくなる。
 光の白十字章か、いや……伯位も夢ではないかもしれん」
肥満領主「丁度小麦も値あがっていたのだ。
 これだけの金貨があればどうとでもなるとはいえ、
 ふふふふっ。
 最近肥え太っているという、南部の豚料理をいただくのも
 それはそれで悪くなかろう」
肥満領主「その宮殿にはたっぷりと
 宝物が蓄えられていようゆえな。くっくっくぁっはっは。
 今から胸が高鳴るわ。
 戦は、ふむ……集合は半月後。
 冬ではあるが、年を越して雪が本格的になる前に
 けりをつけるつもりか。
 これはこれは、灰青王も血気にはやっていると見ゆる」
ガチャリ
家令「返書を手配してまいりりましたっ!」
肥満領主「よいだろう。領内の騎士のリストを持てっ!
 招集する部下の選定を始めるぞっ! 武具を確かめよっ!」

630 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 13:12:44.49 ID:Xzdt3noP
――湖の国、富裕街、路地
青年商人「はははは。ではお嬢様も?」
金満貴族「ははっ。ミーの娘ももう年頃なのだがネ。
 いろいろヤンチャがオゥバァヒィトでこまるよ。ははっ」
青年商人「いえいえ、女性は花に舞う蝶のようなもの。
 そのようなお嬢様に憧れる騎士や貴族の方も
 多いかと思いますよ」にこにこ
金満貴族「そういうユーはどうなのかね? ん?
 『同盟』の中でもかなりの地位があるのだろう?」
青年商人「いえいえ。わたしなどまだまだ未熟でして。
 こうして貴族様とお近づきになれるチャンスがありますと
 未だにあがってしまうんですよ」
金満貴族「ははは。謙虚な男だな、君は。
 どうだい、今度我が領内で、舞踏会があるのだよ。
 何人か貴族の娘もでるはずだ。ご招待しよう」
青年商人「わたくし不調法でして、
 とんだ粗相をしないとも限らないのですが……」
金満貴族「はっはっは。気にしないでくれ。
 なぁに、新しい冬の別邸のお披露目をかねた
 内輪の小さな……そう、100名程度のパァティなのだよ」
青年商人「すばらしいですね」にこっ

631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/12(土) 13:14:05.87 ID:Xzdt3noP
金満貴族「ははははっ。今日は本当にナイスな取引が
 出来たよ。ふぅむ、北方産の鳩血紅玉が45万とはね。
 ふふふふっ。良く手に入れてくれた」
青年商人「勉強させて頂きました。今後ともご贔屓に
 お願いいたします」
金満貴族「ああ、貴族仲間にも紹介しようじゃないか。
 では、舞踏会の日取りが決まったら招待状を送ろう」
カッポカッポカッポカッポ
青年商人「さ、馬車の用意が出来たようですよ」
金満貴族「そのようだ。では行かせて貰うよ」
青年商人「真にありがとうございました」 ふかぶか
金満貴族「うむっ」
がちゃん、カッポカッポカッポカッポ
青年商人「……」
青年商人「ふぅ。……結構なことだ。
 紅玉髄(ルビー)に45万とは。一晩の稼ぎとしては悪くない。
 代価は麦でいただけるとは、あの方本人は把握もしてないん
 だろうが……。その紅玉、食べれればさぞ美味いだろうな」
 ヒュルルルゥーン

632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/12(土) 13:15:44.48 ID:Xzdt3noP
青年商人「冷えるな。まぁ、湖の国でももう冬だ。
 南はそろそろ雪もきつかろうな。――っくしっ」
青年商人「宿に帰るか。今晩は作戦本部もいいだろう。
 馬車は……乗るまでもないな」
カッカッカッ
乞食「おねげぇでございますだ、旦那さな」
青年商人「……」ちゃりん
青年商人「柄にも、ない。か」
 どんっ
????「ひゃ」
青年商人「こりゃ済まないな」
青年商人(この夜更けに、フードにケープ? 北方の人か?
 声は若い女性のようだが……)
????「いや妾こそ」
青年商人「こんな時間に女性の一人歩きは危ないですよ。
 お気をつけて宿にお戻りなさい」
????「お待ちくださるかや」

633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 13:16:42.98 ID:Xzdt3noP
青年商人「は?」
????「お客人」
青年商人「はぁ」
????「一度お会いしました」
青年商人「は? え。流石にそのフードだと」
火竜公女「そうでありましたね、申し訳ない」 はらり
青年商人「あ。ああっ!」
火竜公女「思い出してくださいましたかや」にこり
青年商人「どうしてこんなところにっ」
火竜公女「お客人を探しておりました」
青年商人「なんでわたしを?」
火竜公女「お客人は、商人だと。どのようなものでも
 手に入れらるる方だと、あの宴で聞きましたゆえ」
青年商人「それは商人ですが。……あっ」
火竜公女「?」
青年商人「尻尾。……尻尾を」
火竜公女「尻尾が何か?」 ゆらゆら
青年商人「いえ、場所が悪い。移しましょう」
火竜公女「はい。妾も話があります」