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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part28


408 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 19:23:24.29 ID:sQx9tPoP
冬寂王「いずれにしろ、軍を小部隊に編制して、
 国境地帯を見回らせようと思う」
勇者「それがいいだろうな」
将官「小官は国内治安も不安であります」
執事「それについては、わたしも報告を受けておりますな。
 国境付近では、野盗化した傭兵団が出没しておるとのことです。
 また国内では、急速に自由化が進んでいるために
 地主に対する略奪事件が起きているとか」
冬寂王「なかなか頭が痛い問題だが、そちらの方はわたしが
 面倒を見ているよ」
勇者「ああ、すまないなぁ。なんか俺、そういうのは苦手だ。
 良い案がないってーか、うすうす判っちゃ居るんだが」
冬寂王「これについて、奇跡の妙手はないのだと考える。
 地道に説き、問題の起きた箇所をそのたびに手直しせねば
 ならないのだろうな。
 農奴が全て自由開拓民になって、独自の畑を持てるようになるのは
 なるほど素晴らしいことなのだろが
 その場合、どうしても、開墾されていない土地が
 割り当てられることになる。
 開墾をした土地は、開墾者に権利があるべきだからだ。
 だが、未開墾の土地では栽培もままならないだろうし、
 飢えれば暴力的な事件も起きるだろう」
勇者「そうだな」

409 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 19:27:07.22 ID:sQx9tPoP
冬寂王「また、地主による集団的な労働管理が無くなれば
 開墾のような多数の人手を必要とする作業も出来ないし
 付近のみんなが使うような、いわば公共の施設の維持や
 管理もままならない。
 実際、このような乱暴な改革が曲がりなりにも
 実施できたのは、土地の面積に比べて、住んでいる
 国民の数が少ない、貧しい国だったからに過ぎないよ。
 農奴を解放したはいいが、地主に変わる機構が
 何も出来てやしないのだからな」
勇者「解決の方策はあるのか?」
冬寂王「まずは、巡回衛視だ。
 兵の中から常識のある者を選抜し、領内の村を巡回させている。
 もめ事に対処させるためだ。
 また法を犯した者は厳重に処罰する。
 地主的な存在が居なくなったいま、全ての国民は
 等しく尊法精神を身につけて貰わねばならぬ」
将官「わたしも衛視なのですよ。
 わたし達は国内の村々を廻り、
 二週間ごとに戻ってくるような巡回経路が
 それぞれ組まれているのです」
勇者「ふむ」
冬寂王「次に、戸籍と里家制度だな」
勇者「里家?」

410 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 19:31:02.92 ID:sQx9tPoP
冬寂王「ああ、数軒から十軒程度の自由開拓民の家を
 ひとつの“里家”とする。
 開拓や、公共物の管理は“里家”を単位として
 受け持って貰う。税の徴収や賦役も同じくだ。
 “里家”ごとに、種芋や必需品を配り配分をし
 力を合わせて発展して貰う」
冬寂王「もめ事が起きた場合は、巡回衛視が対応する。
 問題があるような一家は訴えなどを聞きつつ、
 “里家”を移す」
勇者「理念は判るが、大変そうだな」
冬寂王「そうだな、大変だ。恐ろしく手間がかかる。
 その上、これは過渡的な制度だ。いまは、流入してきた
 開拓民を“里家”に強制的に編入しているが
 将来的には“里家”さえも自由に選べるのが理想なのだろう。
  大変だが、仕方あるまい。これが正しいと信じたのだ。
 学士殿が残してくれた『紙』が役に立っているよ」
勇者「そらまた、どうして」
執事「このようなことには大量の記録を保存する必要が
 あるのですよ。ここまで詳細な戸籍調査が行われ
 きめ細かい対応を実施できるのは記録のたまものです」
勇者「はぁ……俺や女騎士には無理な領域の話だな」

417 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 20:02:20.18 ID:sQx9tPoP
――湖の国、首都、『同盟』作戦本部
 カッカッカ。ガチャン!
辣腕会計「……小麦の価格が異常上昇を開始しましたっ」
青年商人「来ましたね」
辣腕会計「はい。例年よりも64%、先週より9ポイント増しです」
青年商人「湖の国に本部を移した直後でよかったですね、
 手遅れにならずに済みます」
辣腕会計「開始しますか」
青年商人「まだためらいでも?」
辣腕会計「いいえ、わたしも商人に生まれた者。
 ここまで来れば腹をくくりました。果てを見ましょうっ」
青年商人「そうですね。通達準備、早馬の準備は?」
辣腕会計「整っています」
青年商人「ここからは潮目次第の勝負もあります。
 この本部は不眠不休になりますよ」
   職員「「「「はいっ」」」」

418 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 20:03:20.73 ID:sQx9tPoP
青年商人「でが、通達を」
辣腕会計「はっ」さらさら
青年商人「現時刻から『同盟』は、
 小麦、鉄、塩、木炭を中心とした生活必需品の
 買い占めを行います。
 小麦は例年の320%、そのほかの品については240%を
 一旦の上限として買い増し」
辣腕会計「……」サラサラっ
青年商人「もちろん、不必要に金を払う必要はありません。
 取引ごとには、いつもどおり細心の注意を持って利益を
 求めること。ただし、今の風は現金よりも現物です。
 物資を持つべきです」
辣腕会計「はいっ」
青年商人「治安悪化も予想されます。物資の輸送と保管
 には注意を払い、警備の傭兵を増やしてください。
 傭兵への支払いは現金を中心としますが、
 つなぎ止めに必要とあらば、直接小麦やそのほか穀物
 での支払いも認めます。
 その場合は月払いではなく週払いにするように」
辣腕会計「心得ました」
青年商人「“小麦引き渡し証書”についてはどうですか?」
辣腕会計「順調に契約が進んでいます」
青年商人「大規模な地主と領主に交渉を集中させてください」

419 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 20:06:57.12 ID:sQx9tPoP
辣腕会計「……」サラサラ
青年商人「さて、ここからですね」
辣腕会計「?」
青年商人「教皇派委員はこれ以上の買い占めには
 難色を示すでしょうから」
 ペラッ
辣腕会計「はい、すでに口頭での不快感表明をしていますね」
青年商人「教皇に尾をふってどうします。
 目の前の利益を捨ててまで権力の歓心を買おうとは
 それはそれで商人としての筋が通りません」
辣腕会計「……何か対処を?」
青年商人「『黒の手』を回します。
 教皇派委員3人は、二週間現場を離れて貰います」
辣腕会計「……っ」
青年商人「二週間で形勢を作ります。
 一度始まった楽曲を、中途で止めさせはしません」
辣腕会計「判りました」
青年商人「ぎりぎりまで物資の買い付けを装いましょう。
 この手を予想しているひとは、中央には居ないと思いますが
 それも長くは持たない。この偽装で2週間は突っ張ります」

431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 20:27:20.01 ID:sQx9tPoP
――聖王の国、地方都市、貴族領
地方市民「はぁ!? なんでだよっ!」
穀物商「だから、云っただろう? 小麦一袋で、金貨19枚」
地方市民「馬鹿じゃねぇのか? 何でそんな値段なんだよ」
穀物商「あんた買い物に来るのは久しぶりなのかい?」
地方市民「ああ、そうりゃそうだ。わざわざ荷馬車を
 御してまで、買い付けに来たんだ。この買い物で
 一家八人が食うんだぞ!?」
旅商人「親父、小麦をくれ」
穀物商「はいはい、商人さんだね。いくつだい?」
旅商人「いくらだ?」
穀物商「小麦一袋で、金貨19枚。挽きが粗い二級のものなら
 金貨15枚半だ。大麦は金貨12枚」
旅商人「二級を見せてもらおう」
穀物商「こいつだ!」
旅商人「ふむ……。多少虫が混じっているな」
穀物商「今日日どこでもこんなもんだ。買手は他にも居るんだよ」
旅商人「良かろう。25袋積んでくれ」
穀物商「よしきた、売買成立だっ」

433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 20:28:39.82 ID:sQx9tPoP
 カッポ、カッポ、カッポ……
地方市民「……くそ。親父、じゃぁ、俺にもその二級のをくれ」
穀物商「一袋、金貨16枚だ」
地方市民「はぁ!? さっきは15枚半って云ったじゃねぇか!」
穀物商「お客さん。この二級の小麦、
 先週は一袋で金貨8枚だったんだ。
 この先もどうなるか判りゃしない。
 わたしだって、売らないで取っておいた方が
 儲かるかもしれないんだ」
地方市民「……くぅ。くれっ! 2袋だ。それと大麦も4袋くれ」
穀物商「お客さんはよい買い物をしたと思うよ」
  パン屋「安いよぉ! 安いよぉ! いまなら
   バターをつけた大きな葡萄パンが、二つで   金貨一枚だっ」
 カッポ、カッポ、カッポ……
地方市民「何が安いもんか。あんなに小さいじゃないか。
 それが金貨一枚だなんて。いったいどうすりゃいいってんだ」
地方市民「……仕方ない。レンズ豆とカラス豆も
 仕入れるとしよう。今年は精霊様のお恵みがなかったんだ。
 来年になれば良いこともあるさ」

435 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 20:30:31.48 ID:sQx9tPoP
地方市民「え!?」
商家「レンズ豆は一袋、金貨9枚。カラス豆は11枚半だ」
地方市民「なんでそんなことになるんだよっ!?
 小麦は不作だったかもしれない。確かに天気がちょっと
 良くなかったから。しかし、豆は豊作だったはずだろう!?」
商家「ああ、確かにね。しかしね、お客さん」
地方市民「あ、ああ」
商家「考えてみてくれ。普段小麦を食べている人でも、
 小麦が高ければ、大麦やカラス麦のパンを食べるだろう?
 普段大麦やカラス麦のパンを食べている人でも、
 それが高ければ、マメや、蕎麦、クルミまでも食べ
 なけりゃならん。
 判るだろう? 普段より大勢の人間が、豆を求めてるんだ。
 値段が上がってしまうんだよ」
地方市民「何でこんなことになってしまったんだ……」
商家「これでも、わたしは努力しているんだよ。
 ちょっとでも安くしようとね」地方市民「……?」
商家「と、いうのも、領主が来月には、豆や穀物、
 さらにはパンの値段を固定しようとしているんだ」
地方市民「固定……?」
商家「ああ、定価販売を義務づけるというんだ」

438 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 20:33:03.84 ID:sQx9tPoP
地方市民「素晴らしいじゃないか! じゃぁ、来月まで
 待てば麦も豆ももっと安く買えるんだっ!」
 カッポ、カッポ、カッポ……
 
旅商人「やれやれ」
地方市民「あぁ、あなたはさっきの」
旅商人「さきほどの穀物商でもお会いしましたな」
地方市民「ええ、旅商人の方ですか? ごきげんよろしく」
旅商人「何にも判っていないようですね」 ちらっ
商家「仕方ありません。畑を耕している方には本来無関係
 何ですからね」
地方市民「どういうことです? どうしたのです?」
商家「……はぁぁ」
旅商人「本来こういうことを言ってはいけないかも
 しれないのだが、わたしは旅の者だし、差し支えないだろう」
商家「わたしは、豆の重さでも量っていますよ」
地方市民「?」
旅商人「麦の値段は、小麦も、大麦も、オート麦に至るまで
 上昇の一途だ。来月に下がるとはとても思えない。
 こんな状況で、麦やパンの販売価格を決められたらどうなると
 思う? あっという間に破産してしまう。
 仕入れるべき小麦は高いままなのだからね。
 正気の穀物商やパン屋なら、店を開くこともしないだろう」

439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 20:35:08.64 ID:sQx9tPoP
地方市民「あっ!」
旅商人「そういうことだ。値段は上がっているが、
 彼らもある程度は売り切ってしまいたいのさ。
 もちろん、自分たちが食べる分くらいは残さないと
 飢えてしまうがね」
地方市民「……そ、そんな」
商家「よいしょっと。……そうですよ、お客さん。
 もしかしたら、来月のこの通りは一軒の店も開いて
 無いかもしれない。わたしだって、こんなベーコンや
 豆は始末して、少しは大麦を買い入れておきたいんだ」
地方市民「わ、わ、わかった。買うよ!」
商家「今日は店じまいだ。おまけしておくよ」
地方市民「レンズ豆とカラス豆を2袋ずつ頼む」
商家「金貨20枚にしておこうかね」
旅商人「こちらはカラス豆を20袋だ」
商家「よしきた。おーうぃ、大口のお客だ。
 運ぶのを手伝っておくれ〜」

456 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 21:43:43.65 ID:sQx9tPoP
――冬の王宮、広間、対策会議
 ガチャ。ザッザッザ!
商人子弟「王よ、冬寂王よっ!」
従僕「わわわ。はわーっ」
将官「これは商人子弟さんではありませんか、
 どうされたんですか?」
商人子弟「緊急の上奏があってきました。王はどこに」
執事「おや、商人子弟殿。若はこちらですよ」
冬寂王「なにごとだ?」
商人子弟「おお。冬寂王っ。至急案件です。
 上奏があります、公布を出して頂きたい」
従僕「はうー」
冬寂王「なにごとだ?
 税のことでそのような緊急事態など起きるものなのか?
 それともまさか軍事のことなのか?」
商人子弟「違います、まさに税のことです」
従僕 こくんっこくんっ
冬寂王「上奏文を読もう」
商人子弟「読まないでいいです。時間がもったいないから」
執事「随分たくましくなって……」
商人子弟「王との付き合い方を学びました」

458 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 21:46:09.19 ID:sQx9tPoP
商人子弟「判りやすく口頭で説明をします。
 おい、フリップ!」
従僕「はいっ!」 ペラッ
将官「紙芝居……?」
商人子弟「現在、大陸中央部の諸王国で急速に物価の上昇が
 発生しています。と、同時に金貨の流通量が増えています」
従僕「ですっ」
冬寂王「どういうことなのだ?」
商人子弟「つまり、先週金貨5枚で買えた品物が、
 今週は10枚、来週は20枚というように
 どんどん値上がりしているんです」
執事「それでは庶民の暮らしが立ちゆかないではないか」
商人子弟「当然そうなります。
 しかし、これに対して、領主を中心に金貨の流通量も
 増大しつつあるんです。
 領主が民衆に金をばらまけば、もしかしたら均衡が取れるの
 かもしれませんが、現在は物価の上昇に対応するだけの
 貨幣が民衆の側に無いのが実情です。
 そのため加速度的に事態は進行中。
 おい、フリップその2」
従僕「はいっ!」 ペラッ
商人子弟「この図にあるとおり、現在価格はおよそ例年の
 2倍に迫りつつあり、その速度は衰えていません」
従僕「ですっ」
将官「わ、わかりやすい。……おまけに何故かどきどきする」
執事「これは一大事なのでは」
冬寂王「ふむ」

461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 21:49:39.52 ID:sQx9tPoP
商人子弟「これは何者かによる、
 小麦を中心とした物資の買い占め工作かと考えられます」
冬寂王「工作? 目的は?」
商人子弟「それは後回しです。今はそんな暇はありません。
 ただでさえ、こんな凄腕のプレイヤーを相手に回して
 うちは後手に回ってるんですからねっ」
将官「プレイヤー?」
商人子弟「ああ、それも忘れて良いです」ぽいぽいっ
商人子弟「目下重要なのは、これから何が起きるかです」
冬寂王「判った。対応が先というわけだな。
 いったいどのような事態が予測されるのだ?」
商人子弟「中央の国家全てに、
 激しい富の変調が発生しています。
 市中には金貨がないにもかかわらず一部の大商人、
 地主、領主、貴族、王族には金貨が集中しているんです。
 しかし、価格高騰は全ての物資に波及していて、
 多量の金貨を持っても物資の調達は思うように
 行えない事になるでしょう。時間差はあるでしょうが
 ゆくゆくは、全ての価格が上昇するはずです」
執事「ふむ……」

465 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 21:52:03.03 ID:sQx9tPoP
商人子弟「このような状況には
 財政出動などの政策が効果を持っていて、一部の賢明な
 領主は着手したようですが効果は非常に限定的です。
 理由ははしょりますが、“一部の賢い領主”の努力程度では、
 この流れは止まりそうにありません、となると。
 おい、三枚目出せ」
従僕「はいっ!」 ペラッ
執事「っ!?」
商人子弟「そうです。まだ価格の高騰していない、遠方。
 つまり南部諸王国ですね。ここで大量の物資を調達する
 というのが彼らが次に執る手段です。
 一部にその兆候が見え始めています」
冬寂王「それに巻き込まれた場合は、我が国でも物価が?」
商人子弟「ええ、間違いなく高騰します」
従僕「すごいことになりますぅ」うるっ
執事「た、対処方法は?」
商人子弟「今述べます。まず、第一にこれはある種の
 攻撃であると認識してください。
 向こうにその意図がなかった場合は、災害です。
 防衛しなければなりません。
 これはかなりの危機です。道を誤れば国が傾きます」

466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 21:53:49.86 ID:sQx9tPoP
冬寂王「承知した」
商人子弟「まずは、関税です。
 小麦を中心に、三カ国通商同盟の内側から外側へ
 品物が出て行く場合は税を取りましょう」
冬寂王「通行税のようなものか?」
商人子弟「フリップ」
従僕「はいっ!」 ペラッ
商人子弟「似ていますが、方向が限定的です。
 この場合出て行く物資にかければ良いだけです。
 小麦でも馬鈴薯でも、持ち出す場合は
 荷馬車一台につき金貨50枚」
将官「50枚!? べらぼうなっ!」
商人子弟「なぁに、わたし達の懐が痛むわけではありません。
 それにこの関税をかけなかった場合、わたし達の食料は
 すべて中央に買い上げられ、冬に飢えることになるんですよ?」
将官「そ、そうだなっ。60枚でも良いかもしれない」
執事「飢えるのだけは勘弁して欲しいですからなぁ」
商人子弟「次に宮殿関連の給金制度の段階的な休止」
冬寂王「それはどういう意味があるのだ?」

468 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 21:55:52.50 ID:sQx9tPoP
商人子弟「この現象は、“金貨一枚で何が出来るのか?”
 という問いの答えがあやふやになったから起きているのです。
 つまり、普段ならパンが四つは買えた金貨で、
 今何が出来るか判らない。そこに問題があります」
執事「ふむ」
商人子弟「普段金貨30枚もあれば一月暮らすことが
 出来ていたとしても、今は出来るかどうか判らない。
 今出来たとしても、今後どうなるか判らない。
 これはつまり、貨幣の信用が崩壊しているせいです。
  ですから、通貨の使用を一部減らします。
 必要であれば、兵士や文官の給与は金貨ではなく、
 今貯蔵のある小麦で支払います」
将官「馬鈴薯ではいけないのか?
 あれは旨いし、沢山あるだろう?」
商人子弟「フリップつぎっ!」
従僕「はいっ!」 ペラッ
商人子弟「さいわい、我が国および通商三カ国は
 食料の中心を麦から馬鈴薯に移行しつつあります。
 これは不幸中の幸いです。何せ馬鈴薯は中央から見れば
 異端指定の作物ですからね。生半可なことでは
 これを買おうとは思わないでしょう。
 そこを利用します」
冬寂王「そうか、定価制だな」

470 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 21:58:19.30 ID:sQx9tPoP
商人子弟「そうです。馬鈴薯の生産者からは一定の金額で
 これを買い上げます。そして馬鈴薯を食べたいものや、
 市中の食堂などには一定価格で馬鈴薯を売ります。
 この一定価格は、2ヶ月毎程度で見直すべきですが」
商人子弟「また、開拓者に飢饉が発生した場合などは
 この馬鈴薯を中心に対処を行うべきです。
 これによって、少なくとも三カ国通商内部では
 貨幣の信用力が比較において安定するはずです。
  つまり、金貨一枚で、馬鈴薯がいくつ買えるか?
 という問いに答えが出るわけですからね。
 金貨十数枚で一月暮らせるだけの馬鈴薯が保証される
 のならば、金貨を持っている意味は保証される。
  加えて云うならば、気になることも何点かあり
 馬鈴薯の貯蓄はなるだけ伸ばした方がいいでしょう。
 生産を奨励してください」
冬寂王「対処としてはそのようなところか?」
商人子弟「ええ、これがとりあえず財政の
 処方箋です。しかし、まだ有ります」
冬寂王「なんと」
商人子弟「こちらはわたしの専門ではありませんが
 大陸中央の物価が上昇すると云うことは、
 餓死者が出るはずです。当然治安悪化も予想されます」