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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part26


185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 21:37:41.59 ID:I7KnzzEP
氷雪の女王「では次はわたしですね」
勇者「よし、二番。氷雪の女王。胸はでかいが年増」
氷雪の女王「既婚者ですからね。
 そそういう突っ込みを入れる殿方は埋めますよ?
 さて、問題の対応策ですが、これはもう
 農奴の開放政策しかないでしょうね……」
勇者「以外にまともな意見だ」
氷雪の女王「馬鈴薯のお陰で扶養人口は倍増していますから
 今なら、さほど無理なく方向転換が出来るとも思えます」
鉄腕王「しかし、それは中央との戦争がなければであろう?」
勇者「その辺はどうするんだ?」
氷雪の女王「戦争は殿方のお気に入りですからお任せします。
 ぐっぴ、ぐっぴ、ぐっぴ。あら、もう一杯お願いね」
将官「はぁ、もってまいります」
勇者「だ、だめだ。このおばさんも何も考えてない……」

189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 21:41:41.42 ID:I7KnzzEP
鉄腕王「ふふん、では真打ちの登場と
 行こうじゃないか。勇者殿っ。我こそは鉄の国6代、鉄腕王じゃ!」
 
ドーン!
勇者「あんまり気乗りしないけど、じゃ三番、鉄腕王」
鉄腕王「まずは我が三カ国連合軍で、北の平野に前線をひく。
 我が領土の収穫量を減らさぬため、今度は出戦となろう。
 余剰食料を元手に傭兵も雇い入れる。
 なあに、まだ中央からの義援金は残っておる。
 いいや、実を言えば先代王の頃から少しずつ蓄えておったよ」
勇者「おおお! 初めて堅実な言葉が聞けたっ!」
鉄腕王「そして、進軍してくる異端審問官および捕縛軍、
 または中央国家連合軍を、北の平原で迎え撃つ。
 過去の遠征軍の規模からして、5万を超えると云うことは
 まずありえないだろう。これを初戦で撃破!」
勇者「ふむふむっ」
鉄腕王「そのまま北上、駐留軍を撃破! 城を攻略!
 恭順の意を示す国家は次々と組み入れ、連戦連勝!
 とどろく我が無敵鉄鋼からくり部隊っ!」
勇者「……」
鉄腕王「そのまま聖王都に肉薄し、昼夜を分かたぬ
 波状攻撃にて、王都陥落っ! 後顧の憂い無し。
 物語は大団円を迎えるのじゃー! がははははは」
勇者「はい消えたー」

192 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 21:49:21.56 ID:I7KnzzEP
勇者「……もうね、なんかね」
メイド姉「すいません、勇者様」
冬寂王「ふぅむ。これは政策の根本から見直す必要があるな」
勇者「何か良い考えでもあるのか? 王様」
冬寂王「正直、無い」
勇者「がくっ」
冬寂王「だが、整理をしてみれば……、何か思いつくかもしれん」
勇者「あーもう。おい、誰かー?
 何か思いついたやつは居ないのかよ」
将官「あのー」
勇者「おお、君は?」
将官「将官は名も無き軍人であります、勇者殿!」したっ
勇者「いや、素面というだけで君は有用な人材だ」
将官「将官もなにも思いつきはしませんが、
 いくつか気にかかることを。
 いや、気が付いたこと、とでも云いますか」
勇者「ふむ」

194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 21:56:17.97 ID:I7KnzzEP
将官「まず、おそらく、中央はすぐには
 軍を発しないと思われます」
商人子弟「それはそうでしょうね」
勇者「根拠は?」
商人子息「まず、第一に中央の意図は、南部諸王国を屈服
 させることであって滅ぼすことではないということです。
 南部諸王国が滅びたあと、魔族の侵攻があった場合
 結局は自分達の身を守る盾が無いことに気がつくでしょう?
 ですから、このあと、さらに圧力を強める何らかの
 手を打ってくるのではないでしょうか?」
将官「それに、中央の持っている軍事力の殆どは
 貴族の元に分散されています。
 ですから集合や準備に時間もかかりますし
 もし軍を発するのならば、その報酬も問題になります。
 この場合、報酬は……考えたくはありませんが
 わが南部諸王国を解体して、
 貴族に分け与えることになるでしょう。
 ですから、軍を発するとなれば、南部諸王国を
 消滅させるつもりです。その準備には時間がかかる」
勇者「ふむふむ。どれくらい猶予があるんだ?」
冬寂王「いまは冬だからな。短くても春まで。
 普通に考えれば、半年以上はかかるだろう」

200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 22:05:40.90 ID:I7KnzzEP
勇者「半年かぁ……」
冬寂王「だが……いや……。そのような……ある、とすれば」
将官「……?」
勇者「どうしたんだ、王様?」
冬寂王「いや、なに。ちょっとした、懸念をな。
 無いとは思う。ありえないとは、思うのだが……」
氷雪の女王「なんですか、若き王よ。じらしてはいけませんよ」
鉄腕王「がっはっはっは。なんでも忌憚なく言うが良い!」
冬寂王「聖王都が、魔族と……すくなくとも、魔族の一部と
 手を握るなどということがあるだろうか?」
 
ぞくっ
冬寂王「いや、ただの思い付きだが。あははは。
 まぁ、そうなれば、魔族の再侵攻についてもある程度は
 安心が得られようしな。我らが南部諸王国に対する圧力も
 ずっと自由度が上がるのではないか。
 たとえば、魔族の侵攻にあわせて、再び異端告発を行い
 動揺と経済的疲弊を狙う、といったような……。
 いや、空想的なことを云ってしまった」

205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 22:12:29.51 ID:I7KnzzEP
勇者「まぁ、そいつについては、俺が偵察して事情を
 探ってくるしかないとして……」
女騎士「なぬ!? お出かけか? お出かけなら
 お供するぞ勇者っ。地の果てまでも惨状、いや参上だっ」
勇者「えい、沈んでやがれ」スコンッ
女騎士「くふっ」 どでん!
勇者(えーっと、何から手をつけりゃ良いんだ……。
 どれがどうなってんだよ、もう……っ)
勇者(こんなとき、あいつならどうする?
 あいつならどう考える? 表面を考えちゃダメだ。
 構造と、利害関係を……。
 わ、わからーんっ!?)
  
メイド妹「でねー! じゃーん! これがパイですー!」
  将官「おお! これはなんとも雅な……」
勇者(そもそも、何で戦ってるんだ。俺達は。
 領土争い……なのか? 豊かになるための。
 豊かってなんだっけ……?)
――……つまり、富をため込むってのは『お金持ち』にはなれても
 『豊か』にはなれないんだ。
 お金を渡して、使ってもらう。物もお金も流れが
 よどみなく太いことが豊かなんだよ。

208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 22:21:57.10 ID:I7KnzzEP
勇者(つまり、それは、その。
 関係があるってことだよな。
 物を売ったり、買ったりして流れて……
 それが豊かってことだろう?
 じゃぁ、俺達の世界は豊かになってないんじゃないか?
 だって閉じてるんだから。
 ……教会がやってること、聖王都がやってること。
 それはなんなんだ? 世界を限定して、狭くして……
 その意図はどこにあるんだ?)
  
鉄腕王「黄金色で綺麗じゃのう!」
  氷雪の女王「これはなんじゃ? ウズラのタマゴと肉なのか?」
勇者(つまりそれは……
 教会がなりたいのは『お金持ち』なのか?
 それは“富の独占”。いや、富ばかりじゃない。
 知識も、人気も、権力も……“独占”するってことなのか?)
  
商人子息「おもしろいですね、さくりとした感触が」
  メイド妹「そうだよー! 洋ナシのもあるよー♪」
勇者(閉じられた環境下で、他者から吸い上げることによって
 階層構造を作り出し、それを永続化させることか?
 そうなのか……。魔王が“違う”といったのはそういうことか)
メイド姉「勇者……さま?」
――精霊様は……  精霊様はその奇跡を持って人間に生命をあたえてくださり、
 その大地の恵みを持って財産を与えてくださり、
 その魂のかけらを持ってわたし達に自由を与えてくださいました。

212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 22:25:49.48 ID:I7KnzzEP
勇者(“独占”……“生命”……“財産”
 そして“自由”……。独占とは、一者が全てを占めること。
  
冬寂王「ほほう、甘い味のもあるのか。うむ、美味い!」
  将官「これは絶品でありますね」
  鉄腕王「酒にも合うぞ、もっと塩辛くてもいけるのぅ」
  氷雪の女王「軽やかで宮廷料理に比べても引けをとりませぬね」
勇者(一者とは……中心。集中する点。積み上げた石組みの、頂点)
  
商人子息「これは新商品になりますよ!」
  メイド妹「えへへ〜そうかなぁ?」
  
冬寂王「おお、王直筆の勅書をあたえよう!」
  将官「御用達というヤツですね王様っ」
  
鉄腕王「おお、わしのもやるぞ」
  氷雪の女王「氷の国でも是非流行させてください」
勇者「じゃかしいわっ! お前ら王族かよっ!!」
メイド姉「す、す、すみません。勇者様っ」
鉄腕王「がははは! 勇者殿も、そう泣き笑いしても
 しかたあるまい。勇者殿はどっちを食べる?」
勇者「どっち?」
メイド妹「ウズラのパイと、洋ナシのパイだよ♪」

219 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 22:33:09.65 ID:I7KnzzEP
メイド妹「はい♪ どっちにする?」
勇者「――」
将官「勇者殿?」
冬寂王「しっ」
勇者「――」
メイド姉「……ゆうしゃ、さま?」
勇者「公布を出そう」
商人子弟「公布? 新しい税ですか? 法律ですか?」
勇者「南部諸王国三カ国は、湖畔修道会を、
 国家宗教として認めると。正当なる光の精霊信仰だと」
将官「へ?」
勇者「そうだよなっ! 別に1つしかないなんて決まりは無いし!
 二つあっても良いじゃんな! 選べた方が幸せじゃん!
 そうしよう! そうしようぜ。おい、起きろ、女騎士」ぐらぐら
女騎士「う、うぅうーん」
勇者「で、印刷機でどんどん刷らせよう! ほら、例のさ!
 メイド姉の演説? あれを表紙にして、湖畔修道会の教えをさ。
 農業技術だって載せちまおうぜ! なぁ、いいじゃないか。
 教科書の代わりにもなる。なんだったら種芋の引換券を
 つけちゃうってどうだ!?」
氷雪の女王「それにどういう意味があるのだ?」
勇者「頂点を二つにするのさっ。広報戦争だっ」

231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 22:53:01.12 ID:I7KnzzEP
――湾岸都市、商業区、大きな商業会館執務室
青年商人「は?」
辣腕会計「えっと、ですから……。もう1つの教会である、と」
青年商人「……湖畔修道会が?」
辣腕会計「ええ、少なくとも南部三カ国通商同盟はそう公布しました」
青年商人「……」
辣腕会計「どう、されました?」
青年商人「ふふふふっ」
辣腕会計「?」
青年商人「ふははははははっ! そうですか!
 そんな手を打ちましたかっ!
 誰ですかね、これは。
 あの人かな。いや、違う気がしますね。
 あの人はああ見えて保険を忘れない人ですから。
 私にも言質はくれませんでしたしね。
 このやぶれかぶりっぷりは、勇者ですかねっ。
 あはははっ!」
辣腕会計「委員……」
青年商人「そうですか、もう1つの教会。あははっ。
 これはすごい、傑作ですね! 聖光教会の偉いがたは
 赤、青を通り越してどす黒くなっているのではありませんか?」
辣腕会計「それはもう。すさまじい怒声だそうです」

236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 22:59:20.48 ID:I7KnzzEP
青年商人「あははは。素晴らしいっ!
 見世物だとしたところで、金貨千枚の価値がある!
 あの老人達も冷水を浴びせかけられたような気分でしょうよ」
辣腕会計「それはそうですよ。まったく!
 自分達が異端指定した人物を、聖人に祭り上げた挙句に
 真っ向から対立されたんですよ?」
青年商人「情勢は?」
辣腕会計「それは、中央聖光協会が圧倒的な人数と支持ですよ。
 当たり前ですがね。ただ、気になることも……」
青年商人「気になること?」
辣腕会計「こんなものが配られているんです」
青年商人「紙ですか? まだ高価でしょうに」
辣腕会計「いえ、それが、どうやら氷の国に工場なるものが
 あるらしく……」
青年商人「工場?」
辣腕会計「工房に似たもののようです。
 沢山紙を作っているのだとか。さらにそれを鉄の国で
 印刷なる方法で、文字を記しているようで」
青年商人「ふぅむ。なるほど、これは……
 ハンコのようなもののようですね」
辣腕会計「ええ、読めば判りますが、どうもこれは……」
青年商人「……」こくり
辣腕会計「ええ、そうです。
 農奴の権利開放を意図しているようなんです。
 ですから、南部に近い王国では、この半月で
 ずいぶんな数の農奴が三カ国通商同盟に流入しているらしく」

240 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 23:05:31.15 ID:I7KnzzEP
青年商人「ほほう」にやっ
辣腕会計「驚きませんね」
青年商人「彼らなら、それくらいはするでしょう」
辣腕会計「そうですか」
青年商人「『同盟』内部の状況はどうです?」
辣腕会計「教皇派は3人のようです。三カ国派は2名。
 残りは中立です。資産状況はこちらにまとめました」
 
ペラッ
青年商人「まだ機は熟していませんが……。
 こちらも動き出すべきのようですね。小麦の価格は?」
辣腕会計「先週より2ポイントあがっています。上昇基調ですね。
 冬ですし、このところ中央大陸の景気は低調ですから
 しかたありません。今年も餓死者が出そうです」
青年商人「買いです」
辣腕会計「買い、ですか? 『同盟』の抑えている小麦を
 放出すれば、かなりの利ざやが期待できますが?」
青年商人「……まぁ、そういう意見が多いでしょうから
 “まだ値上がりしそうなので買い”と。しておきましょう」

243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 23:12:32.27 ID:I7KnzzEP
辣腕会計「は、はぁ」
青年商人「小麦の買い指定は、とりあえず6ポイント上乗せまで
 『同盟』全て、それに取引のある商人に回してください」
辣腕会計「了解」 さらさら
青年商人「それから、これは『同盟』内部の担当部署に
 向けての発注です。鉄鉱石、木炭、銀。全て買いで」
辣腕会計「ポイントは?」
青年商人「不自然にならない範囲で、部署に任せます」
辣腕会計「はっ」 さらさら
青年商人「来週には100ポイント、来月一杯で250ポイントまで
 小麦を買い付けますよ」
辣腕会計「っ!?」
青年商人「どうしました?」
辣腕会計「3倍以上の値段ですよ!? それは常識外れですっ!
 そんな買いなど、聞いたことがありません。
 だいたいそれだけの資本金をどうやって調達するんですか!?」
青年商人「調査して貰った資本で十分にまかなえますよ」
辣腕会計「それにしたって常軌を逸しているっ」
青年商人「あはははっ。そう見えるだけです。
 わたし達は、買い付けなんかをしている訳じゃないんですよ?」
辣腕会計「何をしていると云うんですかっ?」
青年商人「王国の金貨を、売っているんです」にこっ

343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/09/11(金) 15:53:53.03 ID:sQx9tPoP
――冬の王宮、広間、対策会議
将官「国境街道で見る限り、昨日は12人ですね」
勇者「うーん。思ったようもペースが鈍いな」
冬寂王「ふむ」
メイド姉「やはり、自由という考えは
 受け入れられないのでしょうか……」
勇者「まぁ、難しいってのはあるだろうな」
冬寂王「言葉のない者に言葉を教えるようなものだからなぁ」
氷雪の女王「でしょうね……」
女騎士「いっそ、こう。どかんと人さらいをだな」
勇者「お前、本当に聖職者か?」
冬寂王「だが、あまりペースが遅いと冬が終わってしまうだろう」
勇者「そうだな、少なくとも冬の間にある程度の数を
 取り込まないと、結局は既存路線の強さが出てしまうだろうし。
 時間を掛けると、あっちの教会は信者も聖職者も
 わんさといるんだ。押し負ける。
 うーん……
 文字を読む、ってのが意外とハードルが高いのかもなぁ」
女騎士「説法士を派遣はしているのだが、
 湖畔修道会全体で50人も居ないのだ。
 とても大陸はカバーできない」
勇者「ふむ……」
氷雪の女王「説法士ですか。――説法ではなくとも
 良いのではないですか?」
女騎士「ん? 当てがあるのか?」

346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 15:56:27.27 ID:sQx9tPoP
氷雪の女王「詩人はどうですか?
 我が国は吟遊詩人のふるさとです。
 幸い今は冬ですから、旅回りの吟遊詩人達も王都に
 集まっているでしょう。
 彼らに報償を出して、諸国で歌って貰うのですよ。
 内容は、新しい修道会の教えで良いでしょう?
 そして、三カ国の行いも歌って貰う。
 歌は強いですよ? 農民でも節回しさえあれば
 かなり難しい言葉を覚えてくれるものです。
 覚えてくれれば、吟遊詩人が立ち去ったあとでも
 歌の響きが続くでしょう」
女騎士「それは良い考えだな!」
勇者「どれくらいの人数が居るんだ?」
氷雪の女王「そうですね。腕の如何を問わなければ
 500人近くは居るかと思います」
冬寂王「よし、早速依頼しよう。
 旅の支度金はこちらで用意してもかまわぬぞ」
氷雪の女王「そうですね。……いっそ、吟遊詩人には、
 この国当ての紹介状を書かせ、沢山の開拓民を
 送り込んでくれた吟遊詩人には開拓民ひとりにつき、
 金貨1枚の褒賞を与えるという事にしたらどうでしょう」
勇者「ああ、それがいいな! えっと、なんだっけ。
 学士がいうところの、いんせんちぶだ」
冬寂王「いんせんちぶ?」
勇者「やる気があるやつに金を出す、みたいな意味だよ」

348 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 15:57:34.68 ID:sQx9tPoP
メイド姉「あのぅ」
冬寂王「ん、どうしたのだ?」
メイド姉「今回の目的は、戦争じゃないんですよね?」
冬寂王「ああ、そうだ。出来れば戦争は避けたいと思っている」
氷雪の女王「そうですわね。
 魔族の襲撃が何時あるか判らないこの状況では
 争うのは愚かという他ないですわ」
メイド姉「では、教会とは喧嘩をするべきではないと思うんです」
勇者「……ふむ」
女騎士「どういうことだ?」
メイド姉「たぶん、教会のひとたちは、修道会の説法士さんや
 吟遊詩人さんをあしざまに罵倒すると思うんです。
 嘘つきだとか、悪魔の使いだとか……背教者だとか」
勇者「するだろうな」
女騎士「馬鹿の一つ覚えというやつだ」
メイド姉「ですけれど、そこで喧嘩を買ってしまったら
 戦いになってしまいます。
 人間同士で戦いはしたくないですよね」
冬寂王「そうだな」
メイド姉「ですから、説法士さんや吟遊詩人さん、
 それをいうならばこれから印刷する紙にも、
 教会を非難するような内容は盛り込むべきでは
 ないと思うんです」

349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/11(金) 16:00:24.41 ID:sQx9tPoP
女騎士「とはいえ、あいつらの根性が曲がっているのは
 確かなことだぞ。やられっぱなしではないか」
メイド姉「そうかもしれませんけれど、
 大部分の信仰者の人は、本当に光の精霊様を信じているだけの
 普通の人々なんですよ? そういう人まで争いに巻き込んでも
 益はないはずです」
勇者「そうだな……」
女騎士「では、無視か? こう、つーんとな。
 馬鹿は相手にしないっ。と」
メイド姉「それもあまり適当ではないと思うんです。
 むしろ、褒めて良いと思うんですよ。
 光の精霊様は尊い存在です。
 正直、勤勉、平和。
 そう言った点では同意が出来ると思うんです。
 ですから、中央の聖教会も否定せず、その信仰を
 守っている人も尊重すべきです」
氷雪の女王「それでは開拓民達を勧誘できないではないか」
メイド姉「それは手法の差で表現するんです。
 南方の荒れ地は未だ開拓されていない。
 そこには苦労もあるけれど、チャンスもある、と。
 のうちを手に入れる機会は、精霊様がくれたものです、と。
 南部の諸王国は、新しい開拓民を求めていて、
 そこには農奴制度はなくて、誰でも頑張って働きさえすれば
 飢えないだけの実りが取れる。租税もかなり安いぞ、って」
冬寂王「……夢見がちな理想論を唱えるかと思えば
 嫌になるほど冷静な現実を武器として持ち出すな」
勇者「あいつの教え子はみんなそうなるんだよなぁ」