Part24
39 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 15:25:08.13 ID:I7KnzzEP
――魔王城、最下層、冥府殿
オオオオン!
オオオオオン!
メイド長「随分、魔素が濃くなっておりますね」
魔王「無理もない。二年近く放置していたからな」
メイド長「ええ……」
魔王「荒れておるな、魔王の魂どもめ」
メイド長「封印はいかがでしょう?」
魔王「うむ。ぎりぎりだが、どうにかなるようだ。
わたしが中に入れば、ポテンシャルを
内側に解放して沈静化するだろう」
メイド長「まおー様が心配です……」
魔王「こんな残留思念に乗っ取られるのは
わたしだってごめんだ。
150年の生のうちでも、
これほど命を惜しむ気持ちになるのは初めてかもしれないな」
メイド長「……」
魔王「悪いことばかりでもない。ここに入れば
それだけで戦闘能力が上がるからな」
40 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 15:28:10.09 ID:I7KnzzEP
メイド長「それは……。
歴代魔王様達の能力全てが順次継承されてゆくのですから 戦闘能力は増大するでしょうが……」
魔王「故に、魔王は魔族最強なのだな。ふふっ。
……歴代魔王の中には日常からこの冥府殿を寝所として
使用していた剛の者もいたと聞く」
メイド長「それで破壊本能にとりつかれた
まおー様なんて見たくはありませんからね」
魔王「わたしだって見たくない。
そういう筋肉で解決! 的な思考はスマートさに欠ける。
醜悪だ。学究の徒として耐えられない」
メイド長「まおー様は学究の徒というより、
夢をおいかける現実主義者のような方ですよ」
魔王「ま、とにかく」
メイド長「……」
魔王「地震が起きない程度には、
この結界の内圧を下げてやらねばならん。よいな? メイド長」
メイド長「はっ」
魔王「もしここから出てきたわたしが、
わたしでなかった時には……」
メイド長「一命に賭けて、その“魔王”。討たせていただきます」
44 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 15:46:45.94 ID:I7KnzzEP
――冬越し村、魔王の屋敷
冬寂王「……」
女騎士「……」
執事「そのような次第で、
早馬に早馬をかさねまかり越した訳でして……」
勇者「……判った」
メイド姉「……」
メイド妹「おねぇちゃん……?」 ぎゅっ
冬寂王「しかし、学士殿が留守とは」
勇者「最低でも二月は帰らないと云う話だ」
執事「そうですか……。その知恵におすがりしたく
思っていたのですが。居ないとなりますと」
女騎士「それにしても教会め。
……光の精霊様をなんだと思っているんだ。
詭弁の種に使っているだけじゃないか」
冬寂王「……」
46 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 15:51:32.19 ID:I7KnzzEP
執事「しかし、聞けば幻術の指輪があるとか」
女騎士「爺さん。その先を口にすると両手に
首を抱えることになるぞ」
執事「しかし、わたしが言わずに誰ば云います」きっ
勇者「……っ」
冬寂王「すまぬ……」
女騎士「……何故、このような試練を」
冬寂王「勇者よ。……いきさつは爺から聞いた。
本来ならばあなたの生還を祝い国を挙げて
祭りを催すべきなのだろうが……。
その大恩ある勇者、そのお身内にまたしてもこのような
災禍をふりまく事になってしまった。
すべてこの冬寂王、冬の国、南部諸王国に力なき故のこと」
執事「若……」
冬寂王「すまぬ。我が不徳ゆえ、
故無くこのような仕儀となってしまった。
事は全て、我が南部諸王国が中央のくびきを脱しようと
独歩の気風を育てようとしたことから始まったこと。
詫びて詫びきれるものではない」
47 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 15:55:02.72 ID:I7KnzzEP
勇者「まぁ、その話は終わってるんだ。
気にしないで欲しいな」
女騎士「……」
メイド姉「あの、わたし……わたしが……」
勇者「それは不許可だ」
メイド姉「だけどっ」
冬寂王「……勇者、しかし」
勇者「おい、王様。その先は口に出したら感電死だぞ。
もしここにあいつが居たらそういうオチもあったかも
しれないけれどな」
(なんだったら魔族に村を襲わせて……)
メイド姉「でも……」
メイド妹「お姉ちゃん〜」ぎぅっ
勇者「だけど、その先は考えても、口に出したら
王としては立ち行かないんじゃないかと思うぜ。
それとも、その独歩の気風ってのは思いつきで云ってたのかよ」
冬寂王「……っ」
48 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 15:56:34.14 ID:I7KnzzEP
冬寂王「だがしかし、わたしには冬の国の国民全てを
守る義務がある。そのためには……。そのためには……」
執事「……」
勇者「ま、その辺は俺の方で案配するよ」
女騎士「……勇者?」
勇者「メイド姉には迷惑掛けるが、捕まってくれ」
メイド姉「はい」
冬寂王「それは……」
勇者「で、冬の国を出て、適当なところで俺が助ける。
なに、たかが異端審問の護送隊だろう?
いても100人やそこらだ。たいした敵じゃない」
女騎士「だがしかし、それじゃあ!」
執事「……勇者すみませぬ。申し訳ございませぬ」
勇者「引き渡して、冬の国を出たあとならば、
冬の国へのおと咎めはないだろう?
責任は護送隊の方にあるはずさ。それで万事解決だ」
49 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:00:14.29 ID:I7KnzzEP
執事「勇者。……それでは、勇者はまた」
勇者「うん。まぁ……また姿をくらませなければならないけどな。
しかたあるまいよ。教会に逆らうのは無理なんだろうし」
執事「また。この老愚は。
勇者を一人に……。また勇者を一人で……」
勇者「あー。ならない、ならない。
今回はこの姉妹も居るし、そのうち学士だって帰ってくる。
女騎士だって爺さんだって王様だって、
表だっては無理だろうが……また会ってくれるだろう?」
女騎士「論外だ、会うだなんて。わたしは共に行く」
勇者「それじゃ農民のや開拓民の支援を誰がやるんだよ」
女騎士「……それくらいっ、修道院の組織で出来るっ」
勇者「ま、そこのところが……。
軌道に乗り始めてきた改革や新しい作物、色んな発明が
全部無駄になっちまうのが痛いところだけどな。
しかしまぁ、メイド姉を見殺しにしたところで、
全部異端とか云って禁止されてしまうんだから同じ事だ。
あいつには生ぬるいって云われるんだろうけど
……俺はやっぱり勇者だから、見捨てるなんて出来ないよ」
50 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:03:39.18 ID:I7KnzzEP
執事「また勇者一人に背負わせてしまうのですか……」
冬寂王「これも全て人界の醜さだというのに。
我が身で済むことでさえあればっ」
勇者「落ち込むなよ。夜逃げには馴れてるんだ」
女騎士「では――この村ともお別れか」
メイド妹「おねーちゃん。この村から引っ越すの?」
メイド姉「……」
メイド妹「酒場のおいちゃんにパイ教えてあげちゃだめ?」
メイド姉「……」
冬寂王「……っ」
執事「若。若には、国を守る責務がおありです。
背筋を伸ばしてくだされっ」
勇者「そうそう、笑っておこうぜ。空元気でもな!」
女騎士「勇者……。勇者であれば、聖王都の軍でさえ
相手に回して戦うことも出来るのに……」
勇者「残念ながら、俺のオーナーがそう言うやり方は
許してくれないんだよ。戦って勝つとか、倒して奪うとか。
……だからって、奪わせる気なんかないけどな」
56 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:29:49.75 ID:I7KnzzEP
――冬の国、名も知れぬ村
なんだって? 学士様が?
まさか、そんなわけがあるわけないべ!
だって、教会の人が道ばたでそう怒鳴っていただよ。
教会? 修道会じゃないのけぇ?
うん、中央の教会から来たっていう、おっかない人だっただぁよ。
まさかぁ。
学士様が異端? そんなこと……。
でも、そう言ってただよ。
学士様がもってきた馬鈴薯は、悪魔の食べ物だって。
だって馬鈴薯がなかったらどうするんだべ?
学士様が居なかったら、うちの孫娘は死んでいたんだべや。
何かの間違いに決まってるだぁよ。
でも……学士様が連れて行かれたらどうすんだべ。
57 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:31:27.31 ID:I7KnzzEP
ほーうい! ほーうい!!
ほーうい!
どうしたんだべか?
そっただ慌てで、羊でも逃げちまっただかぁ?
おい、森の中の道にっ。はぁっ、はぁっ!
へ?
森の中の道に、学士様をとらえるって
檻と鎖を引きずった、おっかない兵隊さん達が進んでるだよっ!
え? 本当けっ!?
あれは、この国の兵隊じゃないべ、なしてだ?
なして冬の国に、人間の国が攻めてくるんだべやっ?
学士様を、学士様を出せって叫んでるべやぁ!
それじゃ学士様が異端だってのは……。
恐ろしい、なんてことだべや。精霊様、どうかお慈悲を!
ガシャン。ガシャーン。ガシャーン。
ああ、聞こえてきた。どうなっちまうんだべ。
せっかく暮らし向きも良くなってきたと思ったのに……。
この国はどうなっちまうんだべ……。
63 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:43:44.52 ID:I7KnzzEP
――湾岸都市、商業区、大きな商業会館執務室
辣腕会計「……以上です」
青年商人「そう、ですか……」
辣腕会計「これはやはり」
青年商人「ええ、教皇選挙の結果でしょうね。
今度の教皇は大陸中央、生粋の聖王国主義者です。
おそらく、教会の威信の低下を察知したのでしょう。
その回復のために、三回目の聖鍵遠征軍を企画して
いるのですね」
辣腕会計「そのためには、内政を回復させつつある
南部諸王国が邪魔である、と」
青年商人「そうです。
このところの魔族の進軍の鈍化。
いえ、鈍化というよりは空白ですね。
その影響で、南部諸王国が経済的自立を強め
結果、中央の発言力が低下している」
辣腕会計「中央が南部諸王国のとりまとめを
させようとしていた白夜王は、敗戦責任を取り
半ば以上失脚した形ですからね」
青年商人「ええ、その上、中央がノーマークだった
冬寂王などという英傑まで現われて、
人心を掌握しつつある。
さらには謎の学士が様々な農業改革や
機械開発を通して、南方の荒れ果てた地でも
その人口を養えるだけの食料が生産されてしまった」
64 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:45:08.90 ID:I7KnzzEP
辣腕会計「食料は、中央が南部諸王国につけた
いわば番犬の鎖でしたからね」
青年商人「……中央は、教会権力の権威を見せつけるために
魔族との軍事行動において勝利を喧伝しなければなりませんが
南部諸王国が国力をつけることは、望んでいない。
そう言うことになりますね」
辣腕会計「はい……」
青年商人「……」
辣腕会計「委員、『同盟』としてはどうしますか?」
青年商人「現状では、身動きが取れませんね」
辣腕会計「……」
青年商人「目下すべきは別のことです。
10人委員会の準備をしましょう。
……彼は居ますか?」
ガチャ
中年商人「おう、そろそろかと思ってたぜ」
貴族子弟「お邪魔します、青年商人さん」
67 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:48:09.53 ID:I7KnzzEP
青年商人「いえいえ、いつでも歓迎ですよ」にこにこ
貴族子弟「足がありませんでしたから、
こちらこそありがたいですよ。
ああ、そうだ。これ、氷雪女王からの代金です」
辣腕会計「それはわたしが受け取りましょう」 がさごそ
青年商人「女王はいかがお過ごしですか?」
貴族子弟「今回の件では心を痛めていますよ。
だがしかし“三国通商同盟の盟主は冬寂王だ”と。
それだけははっきりと申されました」
青年商人「そうですか」
中年商人「さぁて、俺はどこに行けば良いんだい?」
青年商人「中央へ。他の10人委員へと会ってきてください」
中年商人「この坊主は?」
青年商人「どうされます?」
貴族子弟「いやー。わたしは、氷雪宮にいても役立たず
なんですよ。女王もね。丁度良いから各国をまわって
お土産の饅頭でも配ってこい、なんて仰られて」
中年商人「良いのかよ、そんな暢気で」
70 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:50:25.45 ID:I7KnzzEP
貴族子弟「氷雪の国は別名、詩人のふるさと。
吟遊詩人を多く輩出する芸術の発祥地ですからね。
わたしみたいな穀潰しでも居心地が良いんです。
ま、ダンスと口説き文句が冴えないと
居心地悪くなってしまう国なんですけどね」
青年商人「では、決まりですね」
中年商人「ふむ」
青年商人「当面は静観です。決して天秤を揺らさぬよう。
そして、静かに10人委員に接触を持ってください」
中年商人「こいつはどうするんだ?」
青年商人「ご本人の仰るとおり、船に乗せて
行き先々でご挨拶させてあげればいいのではないですか?
手を貸す必要はありませんよ。
もちろん、あなたが紹介したい相手でも居れば、
そうなさることに反対はありませんが」
貴族子弟「一つよろしくお願いします」にこにこ
中年商人「まったく、俺はガキの子守かよぉ」
貴族子弟「そこを何とか。美味しい酒あるんですからっ」
とっとっとっと、がちゃん。
71 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 16:52:17.21 ID:I7KnzzEP
辣腕会計「――さて」
青年商人「はい」
辣腕会計「10人委員会への接触は、任せるとして」
青年商人「彼ならば他の委員の旗色を伺ってくれるでしょう。
教皇派がどれくらい居るのか、早急に把握したいですね」
辣腕会計「委員はどちらなのです?」
青年商人「どちらでもありませんよ。むしろどちらかに
偏っていたら、きっとあの人に軽蔑されてしまう」
辣腕会計「わたしはどうしましょう」
青年商人「……ふむ」
ぺらっ
青年商人「資産調査をお願いします」
辣腕会計「は?」
青年商人「『同盟』各支部の動的財産の規模把握、
および『同盟』参加商人に資産状況の把握です」
辣腕会計「資本……ですか?」
青年商人「ええ。聖鍵遠征軍が組織されるにせよ
そうでないにせよ、次に吹く風は生半可ではありませんから」
74 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 17:00:46.59 ID:I7KnzzEP
――冬の国、王宮、控えの間
うわぁぁ、うわぁぁ
勇者「外はすごい群衆だ」
女騎士「ああ、魔王は農民たちに慕われていたからな」
メイド姉「はい」
勇者「横柄な態度の女なのにな」
女騎士「そうか? 修道院にやってくる
開拓民や農奴の中には、魔王を本当の女神様だと
思い込んでるやつだって沢山いるんだぞ?」
メイド姉「わたしと妹が村の道を歩いていると」
勇者「……?」
メイド姉「みなさん、笑って手を振ってくれるんです。
笑顔で話しかけてくれるんですよ?
この春はこんなに馬鈴薯が取れたって。
この秋は小麦の育ちが良いって。
それでベリーをくれたり、
タマゴを持っていけって云ってくれたり。
ウズラを届けてくれたり。
あの屋敷で、村の人から貰ったものが
食卓に並ばない日なんてありませんでした」
勇者「そうだったのか」
女騎士「……あの村らしいな」
75 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 17:01:41.49 ID:I7KnzzEP
メイド姉「みんな本当にいい人で、
わたしや妹のことを可愛がってくれて。
当主様の役にたってやってくれ、って。
自分たちは本当にお世話になってるけれど
色んなお手伝いは直接できないから、って。
馬鈴薯をくれてありがとう、って。
時には赤ちゃんを連れてきて
小さな葉っぱみたいな手に触らせてくれるんです。
賢くて優しくなるように、って。
ただの農奴だったわたしにですよ?
当主様に仕える、偉い人だからって」
勇者「……」
メイド姉「あの村は、良い村ですね。
わたしたちが逃げ出した地主は、
隣村で没落してしまったみたいですが。
あの村では開拓民の方も、地主さんも、農奴の方も
本当に一生懸命で。支え合って、健やかで。
修道院で教えて貰った歌を夕暮れの畑で
麦を刈りながら何時までも歌っているんです」
勇者「うん」
メイド姉「……お別れするのは、少し寂しいですね」
女騎士「なに、次の住まいでも、きっと良い出会いがある」
77 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 17:03:34.19 ID:I7KnzzEP
女騎士「王は、すでに向かったか?」
勇者「ああ、引き渡しは広場の中央という話だったな」
女騎士「見せしめにしたいのだろうさ」 ぎりっ
勇者「あれが……使者か」
うわぁぁ、うわぁぁ
女騎士「わたしも行かねばならぬな。
湖畔修道会の長としてあの下卑た男の言葉を
受ける必要があるのだ。汚らわしいが」
メイド姉「はい、あの」
女騎士「?」
メイド姉「いってらっしゃいませ」
女騎士「メイド姉。君だってわたしの友人だ。
思い悩む必要なんて無いのだぞ」
カッカッカッ
勇者「……。よし、俺も移動する。無いとは思うが
周辺の監視もしておきたい。平気か?」
メイド姉「はい」
78 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 17:05:29.02 ID:I7KnzzEP
勇者「大丈夫だよ。メイド姉はなにも怖がる必要も
難しく考える必要もないんだ。二日以内にきっと
助け出してやる。少しだけ辛抱してくれ。
済まないな、こんな役を押しつけて
この国や人々を守るのは、俺や女騎士や、王の仕事なのに」
メイド姉「はい……」じっ
勇者「どうした?」
メイド姉「いえ。……わたし」
勇者「ん?」
メイド姉「いえ、なんでもないんです」
勇者「……? では、行く。ずっと見ているからな」
メイド姉「はい」
カッカッカッ
メイド姉「……。……っ」
メイド姉「わたし……」
メイド姉「……」ぐすっ
メイド姉「何でこんなに、何も出来ないんだろう……」
80 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/10(木) 17:13:27.99 ID:I7KnzzEP
――冥府殿、闇の奥底
オオオーン。
オオオオオオーン。
魔王「こんな所……勇者には。みせ、られないな……」
殺せ! 殺せ! 人の全てを! ゲートを破壊せよ。
全ての大地は我が魔族のもの。世界の全ては我が魔族のもの!
魔王「違うであろう。……お前が言っているのは
“俺のもの”でしか……ないではないか」
そのどこがいけないっ。それのどこが悪いっ。
実りは全て手を伸ばした者の獲物。
剣を、鋼を持ち。
奪ったものが全てを手に入れる。
それが太古から続くただ一つの掟。絶対の法則ではないかっ!
魔王「芸のないことを。……太古から続く?
新しい掟を作るだけの想像力……の……欠如をことさらに
自慢をするなっ。何のために脳が……ついているのだ」
そのような脆弱な魔力で如何にこの世を統べる?
どうあがこうがこの世は力。
魔王「力にも……色々種類……が……あるのだ」