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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part18


908 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 12:48:05.32 ID:I63MLpWkP
――冬越しの村、晩夏、メイド妹の日記
「夏が終わろうとしてます。
 勇者のおにーちゃんが帰ってきてから、もう半年がたちました。
 当主のおねーちゃんはずっと機嫌がよいです。
 騎士のおねーちゃんは毎日来ます。
 剣の訓練がない日も、なんだか理由をつけて毎日来ます。
 おねーちゃんはお昼ご飯を6人分つくることにしてしまったので
 雨が降ったりして騎士のおねーちゃんがこないとこまります。
 わたしがぷにぷにになっちゃうからね!
 眼鏡のおねーちゃんは、この間までしばらく旅に出ていました。
 帰ってきて怒られました。
 勉強サボってごめんなさい。
 でも、掃除はさぼってないよ! それに、花の名前は
 今年は沢山覚えました。
 今日は勇者のおにーちゃんのお弁当を届けに行きました。
 勇者のおにーちゃんは毎日どこかへ行くけれど
 大抵夕方には帰ってきます。今日はイノシシ狩りでした。
 イノ鍋です。
 でかしたぞ、おにーちゃん」

913 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 12:55:44.19 ID:I63MLpWkP
――冬越しの村、魔王の屋敷、裏庭で訓練中
女騎士「遅い! 腕を上げろ!」
若手兵士「やぁ!」 びゅんっ!
若手騎士「そいや!」 びゅんっ!
女騎士「ちがう、盾を持つ側だ。
 喉を晒すな! 半身を崩すな! 重心の切り替えを
 素早く! 弱点を晒すのははこちらが攻撃したときなんだぞ!」
若手兵士「や、やぁ!」 びゅびゅん!
若手騎士「そりゃー!」 びゅん!
勇者「ちげー! もっとこう……グワっと来てズパン! だ!」
貴族子弟「ひぇー!」 びゅんっ!
軍人子弟「どりゃっ!」 びゅんっ!!
勇者「いいぞ、もっと後ろ足をひきつけろ!」
貴族子弟「こ、こうかな?」 おずおず
軍人子弟「きっとこういう感じでゴザル」 びゅん!
貴族子弟「そうか、こうか?」 びゅ
軍人子弟「そうそう!」 びゅんっ!
勇者「やれば出来るじゃねぇか、あと3000!!」
貴族子弟「ひぃぃぃ!?」
軍人子弟「な、なんとぉ!?」

915 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:00:17.71 ID:I63MLpWkP
女騎士「では、仕上げだ! ため池の廻り5周!」
若手兵士「はぁ、はぁっ」
若手騎士「5、5周でありますか!?」
女騎士「疲れてる時じゃないと意味がない。
 戦場で逃げ出すのはさんざん戦ったあとだろう?
 つまり、へとへとになったときに足が動くかどうかで、
 生き死にが決まるんだ。とっとと行け!!」
若手兵士・若手騎士「「は、はいっ!」」
勇者「ってなわけで、お前らも行け。負けるなよ」
貴族子弟「ひぁ!?」
軍人子弟「はっ!」
勇者「ちょっとまった、お前らは馬鈴薯の袋担いでけ!」
貴族子弟「な、なぜそのような!? お、横暴だ!」
勇者「逃げてる最中に子供見つけたら背負って逃げてぇだろ?」
貴族子弟「うううう」
軍人子弟「わ、判ったでござる! いくでござる!!」
貴族子弟「ひ、ひぇぇ!」

919 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:06:23.34 ID:I63MLpWkP
勇者「あ〜! いい汗かいた! 気分爽快!!」
女騎士「ちっとも運動して無いじゃないか」
勇者「そんなことないぞ、他人に教えるってのは疲れるな」
女騎士「お前のは半分くらいいじめだ」
勇者「そうかなぁ。あれくらいやれるって」
女騎士「そのうち死ぬぞ」
勇者「だいじょぶだいじょぶ。半分くらい殺した方が育つって!」
女騎士「ホントにこいつは……」
勇者「うわぁ、暑いな」 がちょん、がしゃん
女騎士「鎧を投げ出すな。はしたない」
勇者「女騎士は厳しいなぁ。……もう。これでいいか?」
女騎士「そうだ、命を守る武具だぞ。丁寧に扱うべきだ」
勇者「暑ぃ〜。おれ、井戸行って水浴びしてくる」
女騎士「ん、そうか?」
とことこ
  とことこ
勇者「ん?」
  女騎士「どうした?」

922 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:12:39.57 ID:I63MLpWkP
勇者「何でついてくるの?」
  女騎士「わたしだって暑い。水浴びをしたい」
勇者「そうか」
  女騎士「うむ」
勇者「よし、くみ上げるぞ? んしょ、んしょ」
  女騎士「おー。ご苦労! このポンプなるものは便利だな」
勇者「まったくだな……。水貯まったか?」
 
ざぁぁぁぁ!!
  
女騎士「ああ。気持ちよいぞ! もう一杯頼む」
勇者「よしきた……んしょ、んしょ」
 
ざぁぁぁぁ!!
  
女騎士「ああ、涼しい! 爽快だ! もう一杯!」
勇者「どんどん行くぜ! ……んしょ、んしょ」
  女騎士「勇者は本当にいいやつだな」
 
ざぁぁぁぁ!!
  
女騎士「ふぅ、訓練のあとの水浴びは最高だな」
勇者「そうだなっ!」
  女騎士「さぁ、もう一杯頼んだ」
勇者「任せろ……ってか俺は汗みどろで暑いままだこのやろー!!」

925 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:18:22.84 ID:I63MLpWkP
女騎士「男のくせに細かいことを」
勇者「水浴びは俺の発案だっての!」
女騎士「ほれ、濡れ布巾だ」
勇者「ちべてー! 気持ちいいな! じゃねぇよっ!」
女騎士「仕方ない。わたしが汲み上げをやろう。代わってくれ」
勇者「よしきた!」
 
女騎士「よっこいしょ」
 勇者「……」びきっ
 
女騎士「どうした?」
 勇者「お、お、ひょ、ひょ」
 
女騎士「スライムみたいな顔で固まるなよ」
 勇者「おま、な、なんか。なんで肩タオル?」
 
女騎士「水浴びしてたからだろ?
 ああ、なにか?
 おい勇者。それとも私の胸が肩タオルで隠れちゃってるぜ、
 どんなサイズだよそれって云う突っ込みなのか!?
 爺さんと再会してから品が無くなったな!
 しまいには斬るぞ!」
 
勇者「ま、まっしろ、ま、まっしろ」

929 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:24:50.02 ID:I63MLpWkP
 
女騎士「ほれ、とっとと下に行け」
 勇者「あぅあぅ」 ふらふら
  
女騎士「まったく。混乱呪文でもくらってるのか。
   いくぞー。勇者、水でるからなー」
勇者「あぅあぅ」
  
女騎士「ん、せぇっの! ……んっしょ、んしょ」
勇者「き、きたぞー」
 
ざぁぁぁぁ!!
  
女騎士「ちゃんと髪も流すんだぞ ……んっしょ、んしょ」
勇者「子供じゃねーよ!」
 
ざぁぁぁぁ!!
  
女騎士「そうだ、勇者」ひょいっ
勇者 びきっ
  
女騎士「これ貸してやる。修道会で作った石鹸だ」
勇者「お、お、おぅ」
  
女騎士「お前挙動不審だ」
 
ざぁぁぁぁ!!

932 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:30:42.23 ID:I63MLpWkP
勇者「ふわぁ。さっぱりしたぁ!」
女騎士「こっちもさっぱりしたな」
勇者「……」ぴょこぴょこ
女騎士「何してるんだ? 呪われてるのか?」
勇者「耳に水が入った」
女騎士「子供か、勇者は。ほら、タオルだ」
勇者「おお。あんがとよ」
女騎士「良く拭けよ。勇者の髪はもふもふだからな。
 水分をちゃんと取っておかないと、あとで余計に汗をかくぞ?」
勇者「んぅ、わかってるって」 わしゃわしゃ
女騎士「櫛ももってないのか、お前は」
勇者「魔王がしてくれっからなぁ、自分のはねぇや」
女騎士「そうか……」
勇者「ふわぁ!」 とさっ
女騎士「どした?」
勇者「ちょっとベンチで休憩」
女騎士「ああ。良い風だな……」 すとん
勇者「夏の終わりのこの国は、最高だな」
女騎士「ああ、これから栗も美味しくなるだろうな」
 
さわさわさわ……
勇者「……」
女騎士「……」

935 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:36:58.76 ID:I63MLpWkP
女騎士「ずっとこうなら良いんだけどな」
勇者「そうな」
女騎士「……」
勇者「……」
 
さわさわさわ……
女騎士「そうもいかないか」
勇者「うん」
女騎士「妻妾同居にしてもどちらが妻か決っせんと」
勇者「魔界にしても何時までも指をくわえてない、そろそろ動きが」
女騎士・勇者「え?」
女騎士「あ、ああ! そうだな! 戦は今は膠着状態だが
 この膠着状態が保証されているわけでは無論無い」
勇者「だよな」
女騎士「……疑問なんだが、勇者」
勇者「ん?」
女騎士「思うにだな」
勇者「うん」

939 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:43:05.61 ID:I63MLpWkP
女騎士「弓兵の爺さんと、私と、勇者と……
 しゃくだが胸のでかい魔王とでな。
 それでパーティーを組んで
 魔族の主立った将軍と砦、軍勢を全て撃破すれば
 案外、この戦はあっさり終わるのじゃないか?」
勇者「あー。かもなー」
女騎士「ダメなのか?」
勇者「……」
女騎士「魔王は人間の味方になったんだろう?」
勇者「それは違うさ」
女騎士「そうなのか?」
勇者「魔王は、“勝ちでも負けでもない”戦争の終わりを
 目指しているんだ。だから、そんな殲滅作戦みたいなのを
 提案したら同意してくれないと思うぜ」
女騎士「そうか」
勇者「あいつはあいつなりの方法で、魔族を救おうとしてるんだ」
女騎士「そう……なのか?」
勇者「たぶん」

943 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:50:17.55 ID:I63MLpWkP
女騎士「ままならないな」
勇者「そうでもないさ。俺はかえって良かった
 かもしれないと思う」
女騎士「そうか?」
勇者「確かに俺も女騎士も、強いさ。
 『外なる図書館』へ行った魔法使いもな。
 敵を倒すことは出来ると思うよ。
 でも、敵を倒すことと味方を守ることは、似ているようで違う。
 俺たちが魔族の軍を倒すのは良いけれど、
 その間。俺たちがいない場所で
 魔族の軍の逆襲を誰が防ぐ?」
女騎士「それは聖鍵遠征軍をはじめ人間の軍が守る」
勇者「本当にそれで解決になるかな?」
女騎士「出来るさ、きっと」
勇者「それに、そうやって魔族の強硬派を
 粛正したあとどうするんだ?」
女騎士「え?」 きょとん

946 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 13:54:11.46 ID:I63MLpWkP
勇者「それでもものすごい数の魔族が残るんだぜ?
 戦争に直接参加していない魔族も、中立ぎみの魔族も居る。
 人間は魔族の軍を全て殲滅しました、魔族は無防備です。
 魔族の首具には全て敗戦国です。
 ――で、その後は?」
女騎士「そ、それは……」
勇者「魔族狩りか? 奴隷か?
   なんだっけ、魔王は云ってたな
 そう、『植民地』だ」
女騎士「なんだそれは?」
勇者「“他人の土地に攻め込んで支配して、
 自分たちの場所であるかのように利益を吸い上げること”
 だ、そうだ」
女騎士「そんなこと、人間はそんなことっ」
勇者「俺もそう答えかけたけど」
女騎士「っ!」
勇者「言い返すことは出来なかったよ」

950 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:07:58.61 ID:I63MLpWkP
勇者「それにさ、そうやって奴隷にされて、人間に
 支配された魔族の怒りはどれほどのものだろうな。
 もちろん、その後の人間側の対応次第だけど
 世界中の有りとあらゆる場所に憎しみの火だねが
 ばらまかれるんじゃないかな」
女騎士「それは……」
勇者「魔族が人間の主要な軍を全て殺し尽くし、
 進軍をしてきて、南部諸王国を突破し、
 聖王都を征服。人間は最後の一人に至るまで
 魔族に征服されたとする。
 世界のあちらもこちらも、家畜のように扱われる
 人間でいっぱいだ。夏は灼かれ、冬は凍え、常に飢えて
 ムチに怯えて、哀れを誘う懇願だけが続く。
 そうなったら、女騎士はどうする?」
女騎士「命が果てるまで魔族を殺すっ!!」
勇者「ほれみろ。同じじゃねぇか」
女騎士「……」
勇者「そうなったら、それはもう、
 世界中で戦争が起きているのと同じだ。
 俺たちたかが5人や6人程度でどうにかなる騒ぎじゃない。
 世界が終わるまで憎しみが続くんだ」

954 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:17:15.78 ID:I63MLpWkP
勇者「魔王は弱いよ。魔王のくせに笑っちゃうけど。
 一対一で戦ったら、そうだなぁ……冬寂王と互角じゃないか?
 あの王様、あれでしぶとそうだしな。
 でも、その程度。
 爺さんでも女騎士でも、余裕で勝てると思うよ」
女騎士「……」
勇者「でも、あいつは最初から、
 下手をしたら生まれた次の瞬間には気が付いてたんだ。
 “並外れた戦闘能力でこの戦争を終わらせることは出来る”
 でも“争いの火種を鎮火することは出来ない”ってな」
勇者「あいつ、すげーよ?
 知識ももちろんすげーけど
 考えてることがすげーよ」
女騎士「だ、だから……」
勇者「?」
女騎士「だから、勇者は、魔王のこと……」
勇者「うん。仲間になった」
女騎士「……」
女騎士(わたしは、卑しいな……)

956 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:25:18.52 ID:I63MLpWkP
 
さわさわさわ……
勇者「それにさー」
女騎士「……」
勇者「女騎士もすげー」
女騎士「え?」
勇者「だって、魔界から帰ってきたら修道会の院長だぜ?
 農民の生活を底上げするんだ、とか言い出してやがるの。
 その一年前は猪豚鬼のケツの肉を3cmずつスライスする
 練習してたくせにさっ!!」
女騎士「ばっ、あれはお前らが乗せたんじゃないか!!」
勇者「でも、すげぇよ」 にかっ
勇者「なんだろう、正解が判る嗅覚でもついてるのかなぁ?
 お前たちはみんなすごいよ。びびるよびっくりだよ。
 そうだよな、毎日腹一杯食えて、温かくて幸せなら
 隣人に優しくできるもんなー。冴えてるよ」
女騎士「あれは、成り行きなんだ」
勇者「そうなのかー? でも、なんかもー。てへへ」
女騎士「……」
 
さわさわさわ……
勇者「俺は斬った張ったしかできないから、
 二人とも……。いや、みんなが……まぶしいなぁ」

959 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:36:11.81 ID:I63MLpWkP
――冬越しの村、魔王の屋敷、台所
 
がちゃり
勇者「おーっす!」
魔王「おお、教練は終わったのか?」
勇者「おわったおわった、ばっちりさ」
魔王「お疲れ様だ」
勇者「魔王も休憩か?」
魔王「うむ、提出案件への評価が終わったからな」
メイド妹「当主のおねーちゃん、
 お兄ちゃんが帰ってくると思ってそわそわ待って」
魔王「何を言うか、この口かっこの口かっ」ぎゅっ
メイド妹「うーうー。もがもが……もがもが」
勇者「仲良いな、ほんと」
メイド妹「うー。けほっけほっ。もうっ」
魔王「余計なことを云うからだ」
メイド妹「はーい。座っててくださーい。
 ちゃんとオレンジ水だします」
魔王「なんだそれは?」
勇者「お、なんか冷たいぞ?」
メイド妹「井戸水で瓶ごと冷やすのです♪
 わたしが発見したのだー!」

960 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:44:41.27 ID:I63MLpWkP
魔王「まったくもう」
勇者「お、美味いぞ! これ」
メイド妹「えっへーん♪」
魔王「これは……炭酸か?」
メイド妹「当主のおねーちゃんに教えて貰ったから、
 工夫してみましたー!」
魔王「醸造職人もまっさおだな」
勇者「これ、しゅわしゅわで美味いなぁ。
 蜂蜜の甘さも良いあんばいだ」
メイド妹「えへーん♪」
魔王「妹は、良い料理人になるやもしれんな」
勇者「へ? こんな食いしん坊が?」
魔王「良い料理人というものはえてして食いしん坊だ」
勇者「そうなのか?」
メイド妹「料理人?」
魔王「うむ、美味しい料理を作ったり開発したりするのだ」
メイド妹「うわぁん、それすごい♪」
勇者「すげぇ、花しょってるぞ」
魔王「恋する乙女の魔術か?」
勇者「よだれを垂らしてるところが違うな」

963 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:50:19.13 ID:I63MLpWkP
メイド妹「お姉ちゃんに報告してくるっ!」
勇者「何を?」
メイド妹「料理人になるって!
 毎日好きなご馳走を作って食べるんだって!!」
勇者「何か誤解してないか?」
メイド妹「行ってくるー!!」
 
バタン! トタタタタッ!
魔王「騒がしいな、まったく」
勇者「ああ。でも、元気になったなー。あいつ」
魔王「ん?」
勇者「最初の頃は、姉ちゃんのうしろで半べそだったもんな」
魔王「そうだな。そのくせ、噛みついてきてな」
勇者「“めがねのおねえちゃんはいじわるなのっ”だろ?」
魔王「ああ、そうだな。  メイド長のやつ、びっくりしておったなぁ!」
勇者「そうなのか?」
魔王「ああ。あのあとでな。“人間にもなかなか根性のある
 娘がいる”と云っていたよ」
勇者「そうだったのかぁ」

966 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 14:55:42.77 ID:I63MLpWkP
魔王「それにしても」 じぃー
勇者「?」
魔王「なんだそのざまは」
勇者「そのざまって?」
魔王「ぼさぼさではないか」
勇者「なにが?」
魔王「そこでじっとしておれ。わたしが梳かしてやる」
勇者「ああ、髪か。いいじゃんよ。そんなの」
魔王「よくない。自覚を持て」
勇者「へいへい」
 
しゅるん、しゅるるん
魔王「むぅ、もっふもふだ」
勇者「ちゃんと拭いたよ」
魔王「判ってる。これは趣味だ」
勇者「なんだかなぁ……。面倒くさくない?」
魔王「これがいいのだ。だがしかし、
 いささか長くなってきたようだな。気にならぬか?」
勇者「んー。目に刺さると戦闘中困るな」