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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part16


642 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:03:35.91 ID:vGBiMEoLP
――魔界、開門都市、中央砦
遠征軍士官「……ま、まただっ!?」
遠征軍士官「こ、ここもだぁ」
遠征軍士官「呪いだ、呪われたんだっ!」
遠征軍士官「呪いなどである者か、これは暗殺者だ!」
遠征軍士官「それにしたって、ほんの五分だぞ?
 たった五分目を離しただけで、小隊一つが……」
遠征軍士官「こ、これは……」
遠征軍士官「ひからびて死んでる」
遠征軍士官「こっちは、炭化してるぞ」
遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタ」
遠征軍士官「気が狂ってる!?」
遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタ! 夜、夜が来る!
 月、月がふくれて、蒼く笑う。来る、やつが来る!
 ゲタゲタゲタゲタ! ゲタゲタゲタゲタ!」
遠征軍士官「な、なんだっていうんだ!?」
 
ギャァァァアアア!!!
遠征軍士官「こんどは第三見張り鐘楼だ! 急げッ!」

645 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:08:30.22 ID:vGBiMEoLP
ダダダダッ!
遠征軍士官「な、なんだこれは」
遠征軍士官「何でこんな泥とぬかるみが……ヒッ! ひぃっ!」
遠征軍士官「こっこんなっ」
遠征軍士官「呪いだ。人間業じゃないっ」
勇者「……フフフ。フフフハハ」
遠征軍士官「だっ、誰だ!?」
遠征軍士官「で、出てこいっ! 我らは地上最強の
 聖鍵遠征軍だぞ! で、出てこいっ!!」
勇者「……腕が無くても、しゃべれるだろう?」
 
ギンッ! ズザンっ! ザガッ!!
遠征軍士官「ギャ、ギャァ!」
遠征軍士官「黒い、黒い悪霊だっ! 亡霊騎士だぁぁ!!!」
遠征軍士官「退けッ!」
遠征軍士官「退却だ、相手は悪霊だ!! 呪いが現れた!」
遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタ!!」
遠征軍士官「ああああ! 無数の死者が!? 悪魔だぁ!!」

647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:13:51.39 ID:vGBiMEoLP
勇者「ふんっ。腰抜けばかりだな」
羽妖精「黒騎士サマッ! カッコイー!」
勇者「あいつらがよわっちーだけだ。
 それにしてもこれ、すごい顔な」
羽妖精「アハハハッ! 妖精ハ幻術、得意! エヘン!」
勇者「ああ、上手いぞ! この調子で、手分けして
 あちこちに幻を掛けるんだ」
羽妖精たち「「「「ハーイ!」」」
勇者「とびっきりの怖い幻で行くんだぞ?」
羽妖精「怖イ?」 羽妖精「怖イ!」 羽妖精「怖ーイ♪」
勇者「それから、夢魔鶫はいるか?」
夢魔鶫「御身の側に」
勇者「司令室一帯に夢の回廊を作り上げろ。
 思い上がった貴族どもに毎晩の悪夢を送り込んでやれ」
夢魔鶫「仰せのままに」

650 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:19:45.04 ID:vGBiMEoLP
――魔界、開門都市、貴族たちの豪華な寝室
司令官「ぎゃぁぁぁぁ!!??」
司令官「はぁ……。はぁ……はぁ……
 ゆ……夢? 夢、なのか……?」
司令官「なんて……なんて夢だ。
 あんなに無数の手が……死者が……
 た、たかが魔族じゃないか。光の精霊の正義は
 我らにあるのだ。あんな家畜、いくら殺そうが……。
 さ、酒だっ! 酒をもてっ!」
魔族奴隷「御、御酒でござい……ます……」
司令官「獣臭い手で触れるな下郎っ!!」
 
どがぁ!
魔族奴隷「きゃぁんっ!」

651 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:25:57.79 ID:vGBiMEoLP
司令官「だ、だから俺はいやだったんだっ!」
 
ガチャン!
司令官「こんな辺境! 地獄の都市! なにが占領地だ!
 何が栄光だ! こんな所、流刑地ではないかっ!」
司令官「おれは聖王家につらなる、霧の王国の血を
 引いているのだぞ。何でこんな獣臭い魔族の都市に
 ひきこもっておらねばならぬのだ!
 そ、そうだっ。俺の功績は世に並ぶものとてない。
 聖王国へ帰れば栄耀栄華も思いのままだというのにっ」
魔族奴隷「やめてっ! ら、乱暴はっ」
司令官「黙れ! この二等魔族っ、動物もどきめっ!
 貴様らがっ! 貴様らが居るから俺は帰れんのだっ!」
司令官「瀟洒な夜会もない、美しく着飾った淑女も居ない。
 こんな田舎の砂埃にまみれた陰鬱な都市で、一生を
 おえるなどゆるされるものかっ!!」
 
がちゃん!!
遠征軍士官「指令っ!」

654 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:31:23.15 ID:vGBiMEoLP
司令官「何事だっ!」
遠征軍士官「またです! また死霊騎士が現れました!」
司令官「なにっ」
遠征軍士官「こんどは街中に繰り出していた休暇中の
 将官数名がその……」
司令官「報告せんかっ!」
遠征軍士官「水たまりで、溺死したと……」
司令官「……っ!!」
遠征軍士官「そ、それでその……士官たちが」
司令官「なんだというのだ」
遠征軍士官「これは魔族の呪いだと。中には帰国申請を
 出す者すらいる始末で」
司令官「ええい! 何を抜かす! 今までさんざん
 飽食の限りを尽くしてきたではないか!!
 帰りたいと抜かすヤツには、魔族の娘でもあてがえ!
 酒と金を掴ませろっ」
遠征軍士官「その、それは、どこから……」
司令官「街から奪えば良かろうっ!」

656 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:38:58.69 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、海岸線、深夜
漁師「来ました、王様!」
冬寂王「うむ、見えておる」
執事「本当に来ましたな!」
冬寂王「時期の読みもぴたり、だ。でかしたぞ」
漁師「いやぁ、こんなこと、ここらの漁師だったら
 あったりまえだでよぉ」
冬寂王「年越祭が終わってしばらくすると、
 一週間ほどだけ、だったな」
開拓民「うわぁ、でっけぇ!」
開拓民「でっけぇなぁ!」
漁師「そうですだ。おれたちゃ、
 あれをこう呼んでます、王様。
 ――流氷 と」
冬寂王「よし、うかつに船で近づくな。つぶされるぞ!
 アンカーを打て! ロープを掛けろ!
 岸に引き寄せるのだ!
 氷の固まり同士をつなげたら、ロープを張り、
 結合部に海水を掛けろ!! 流氷をつなげるのだ!」

657 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:45:03.42 ID:vGBiMEoLP
開拓民「判りました、王様っ!」
開拓民「ほーぅい! ほーぅい!!」
漁師「おでは小型船で、他の流氷城もみてくるだぁよ」
冬寂王「たのんだぞ」
執事「わたしも斥候を飛ばしましょう」
開拓民「ほーぅい! よーそろー! ロープを引けぇ」
若い傭兵「ほーぅい! ほーぅい!」
兵士「おーせぃ! おーせぃ!」
女騎士「結合部に海水を掛ける! 班を組織しろ!
 周辺には十分注意を払い、石弓兵は空中を監視!!」
冬寂王「海水を掛けたら塩をまくのだ!
 1時間もすれば凍り付く!
   手袋を忘れるな! 二時間ごとに休憩を取るのだっ」
開拓民「おらたちは大丈夫だよ、王様!」
開拓民「王様こそ天幕で温かくしていてくだせぇ」
冬寂王「わたしの方が若いではないか! あははは」
開拓民「まったくだなぁ! あはは!
 王様には負けてらんねーべや!」
開拓民「ほーぅい! よーそろー! ロープを引けぇ」
冬寂王「橋を架けるぞ。流氷の橋を。いや、橋とはいわない。
 この海峡を……騎馬の駆ける戦場としよう」

660 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:54:42.33 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、極光島沖合、早朝
女騎士「重装歩兵団、整列っ!」
 
ザザッ
王国軍兵士「「「「はっ!」」」」
女騎士「これより第二次極光島奪還、上陸作戦を開始する!
 重装歩兵団諸君、中央を突破し、極光島湾岸部に橋頭堡を
 築くのだ! 流氷の末端部は脆い。中央500歩分を隊列の
 目安とせよ!」
王国軍兵士「「「「はっ!」」」」
女騎士「中佐、上陸後一隊を率い、湾岸部西方の岩山を
 占拠せよ! 物見の監視体制と、防空拠点としたい」
王国軍中佐「拝命いたしました!」
女騎士「石弓部隊、先行して空中および水中を監視せよ。
 この流氷、船ほど簡単に沈みはしないが、それでも
 水棲魔族を甘く見るな! もし現れた場合は撤退を繰り返し、  射撃しながら後続を待て!
石弓傭兵「「「「はっ!」」」」

662 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 16:57:54.56 ID:vGBiMEoLP
女騎士「義勇兵のおのおの方!」
義勇兵「「「おー!」」」」
女騎士「おのおの方には、ソリの防衛と、運搬警護をお願いする。
 このソリは頑丈に作られている。また中型のものでも馬車
 数台分の長さをもっている上、鉄の板で補強が為されている」
女騎士「替えの鎧や馬などを運ぶと同時に、それらの
 ソリは簡易型の防御柵、いや、小型の砦となるように
 設計されている!
 水棲魔族や大型魔族などが現れた場合、それらのソリを
 盾として戦うのだ。
 義勇軍槍兵と石弓兵を連携させれば、大型魔族や飛行魔族で
 会っても十分対応可能だ。
 重ねて云う。これは海戦ではないっ!
 我らが人間の得意とする陸戦である!
 個の力で戦う必要はない! 兵を回転させよ。
 遊軍を頼れ。信頼が我らの力だ!」
兵たち「「「「おおおおー!」」」」
女騎士「第一目標、湾岸部! 橋頭堡を築き
 補給線と陣地を確保するぞ。今回は、奇襲はお預けだ!
 勝つべくして勝つ! 諸王国軍の力、見せてやれ!!」

666 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:18:01.37 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、極光島上陸部
王国軍兵士「押せ! 押せ!」
王国軍兵士「第三隊、前へ!」
伝令「後方右翼に大型魔族! 巨大烏賊です!」
将官「義勇兵と軽装歩兵に任せろ!
 この場所を死守すれば後続は来る! 退くな! 王国のために!」
王国軍兵士「「冬寂王のためにっ!!」」
王国軍兵士「「我らが姫騎士将軍に勝利を!!」」
うわぁぁぁぁ!!
伝令「左翼、後退! 蜥蜴人族、およそ1000!!」
将官「重装歩兵第四隊、押し出せ! 突進力を止めよ!!」
王国軍兵士「行くぞ! 第四隊の勇猛を精霊にお見せするのだ!」
王国軍兵士「大槍構え! 突撃ィッ!!」」

668 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:21:28.63 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、簡易司令部
女騎士「はぁっ……はぁっ……。だれか! だれかある!」
兵士「はっ!」
女騎士「伝令、斥候を20出せ! 橋頭堡は確保した。
 通信体制を確立させよっ。
 何もなくとも20分ごとに使いを出せ!」
兵士「はっ!」
女騎士「換えの馬を頼む。こいつの汗を拭いてやってくれ。
 何度もわたしを助けてくれたからな」
馬 ぶるるるんっ
冬寂王「騎士将軍! 戦況は?」
執事「タオルですぞ」
女騎士「上陸作戦に成功、橋頭堡確保。岩山についても
 抵抗戦力はほぼ制圧、占拠に移っています。
 大型魔族の撃破は12」
冬寂王「12か……前回目撃された数のほぼ全てだな」
女騎士「どれくらい余剰戦力がいるか判りません。
 決して油断できる数字はありませんけれどね」

670 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:27:32.68 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「して、損害は?」
女騎士「ざっと見たところ、500弱」
執事「なんと!」
冬寂王「大成功ではないか、ここまでの戦果を挙げられるとは」
女騎士「だがしかし、ここまでです」
冬寂王「……」
女騎士「ここまでは中央突破力と兵種連携で損害を減らして
 前線を押し上げることが出来ました。首尾良く、極光島に
 橋頭堡も確保できて、いま工兵にソリを解体させて
 防備柵への組み替えをさせていますが……」
女騎士「極光島には天然の洞窟も多く、また山城は
 堅固な要塞。そこに魔族の猛者、南氷将軍が居るのならば
 籠城作をとってくるでしょう。
 もちろん、包囲しているのはこちら。
 勝つことは出来るでしょうが、ここからは時間のかかる
 包囲線になるでしょうね。
 消耗戦となれば、こちらの被害も無視し得ません。
 そもそもそう言った戦いとなれば、水に潜り、
 闇に溶けることが出来る魔族の方が有利です。
 でも、まー」

671 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:30:51.10 ID:vGBiMEoLP
執事「まぁ?」
魔王「戦には勝った。もう勝ちは決まったのだろう?」
女騎士「おおざっぱには」
魔王「その先はわたしの出番だ」
冬寂王「学士殿」
魔王「さて、古来城攻めとは難しいものだ。力押しで
 解決するためには、攻城側は守備側の三倍の兵力を
 要するという。わたしの見たところ、魔族の残存
 兵力は約8000。私たちとより4000は少ないが
 倍の差はない。勝てはするが、双方大きく消耗する」
女騎士「甘さのない読みだと思うな」
魔王「問題点は?」
女騎士「なるべく訓練を施したとは言え、こちらの兵の
 練度のばらつきだ。特に義勇軍兵は、単独で敵の正面に
 立たせたくはない。それからさっきも云ったが、
 持久戦にも不安が残る。夜襲や攪乱を使われれば
 こちらが不利だ」
執事「では」
女騎士「魔族は巻き返しが図れると思ってこの状況に
 乗っているとも云える」

675 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:48:30.78 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「聞いていても簡単な状況とは思えないんだが」
女騎士「まったくです。本当ならここからが
 本番。ここはスタート時点ですからね。
 ここから胃の痛くなる神経戦の始まりなんですが」
執事「学士様には策がある、と」
魔王「うむ」
冬寂王「どのような?」
女騎士「……」
魔王「もう、手は打った」
冬寂王「?」
バタン!!
伝令「伝令! 伝令でございます!!」
冬寂王「かまわん! 報告するが良い!!」
伝令「極光島のさらに南、魔界への大陸から軍勢出現ッ!!
 その数1万以上ッ! み、み、み、味方ですっ!!」
魔王「なんの芸もない。――援軍だ。この数の圧力で
 南氷将軍は降伏……はせんだろうが、逃亡する」

677 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:51:00.73 ID:vGBiMEoLP
――魔界、開門都市、作戦会議室
司令官「げ、限界だっ!!」
将官「……」
東の砦将「そんな声荒げなくたってよぉ」
司令官「そなたは外部の砦にいるから判らないのだ!
 この都市は悪夢だ。毎晩のように死霊が……。
 街中には邪悪な死者の呪いが横行してるのだぞっ!」
東の砦将「そんなこと云ったって、
 魔族娘のぼいんぼいーん☆にきゃっきゃうふふで
 街中に居座ったのはあんたら近衛隊じゃねぇですか」
司令官「傭兵風情がっ!」
東の砦将「へぇへぇ、俺たちゃ傭兵ですがね。
 それがなにか?」
司令官「ぐぅっ!」
東の砦将「大体、夢見にびびるってのは一人前の
 男としていかがなものでござんしょねぇ」

680 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:54:11.31 ID:vGBiMEoLP
司令官「これ以上は士気の限界だ。
 わ、わ、我々は撤退を行う!」
将官「司令官殿っ!」
東の砦将「おおっと、そいつはどんなもんですかい?
 仮にもこの都市は人間世界全てが総力を結集して落としたと
 云っても良い、魔界の重要戦略拠点だ。
 そいつを放り投げて司令官が逃げ出すってのは
 そりゃー軍律違反もいいところでしょうがよ」
司令官「〜っ!!」
将官「貴公も口を慎め! 総司令官をなんだと心得る!」
東の砦将「へいへい。だが軍律は、軍律だ」
司令官「え、え、え……援軍だっ!」
将官・東の砦将「はぁ?」
司令官「これは援軍なのだ」
東の砦将「どこから援軍が来てくれるんです?
 援軍要請でも出したんですか? まさか?
 戦らしい戦もしてないのに?」

683 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 17:57:58.08 ID:vGBiMEoLP
司令官「ちがう! 聞けば先日、極光島を舞台に
 白夜王が奪還作戦を繰り広げたというではないか!!
 白夜王は優れた指導力を発揮し勇戦したのだが
 頼むに足りない無能な南部諸王国の王侯に
 足を引っ張られたせいで苦い敗北を喫したという」
東の砦将「ああ、それなら俺も聞いてますけどね」
将官「白夜王は司令官の叔父上と
 縁続きになられたとか」
東の砦将「あー」
司令官「ええいっ! それは関係ない! これは人類全体の
 沽券に関わる重大事なのだ! かかる決戦とも云うべき
 戦を前に、わが遠征軍が手をこまねくわけには行かぬ。
 全軍をもって、極光島へと援軍に向かう!」
東の砦将「ばっ、ばっ、バカか、あんたっ!?」
将官「しぃーっ」
司令官「ええい! うるさい! これは総司令官たる
 わたしの命令だ! わたしの命令と云うことは、
 聖王国、ひいては光の精霊の命令に等しいっ!!」

688 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:03:47.32 ID:vGBiMEoLP
東の砦将「だからってこの都市を放っておく訳にも
 いかんでしょうが! この都市には軍の物資を
 扱うために軍属ではない人間の商人だって沢山
 いるんだぞ!? 彼らの安全をどうするっ!!」
司令官「黙れ、黙れ! そんな奴らは裏切り者だ!
 魔族と交流しているような劣等民を守るために
 尊い遠征軍の血を流せるものかっ!!」
東の砦将「……」 めらっ
司令官「そんの輩、勝手に来たのだ、勝手に死ねば
 良いではないか。いや、いっそ都市に火をかけるか。
 むざむざ魔族に都市を明け渡す必要もないだろうっ
 そうだっ!」
東の砦将 ダンッ!!
司令官「ひっ!? 」
東の砦将「……」 ギラッ
司令官「な、なんだ? 文句でもあるのかっ! 貴様!
 ううう、貴様なぞに、貴様なぞにっ!!」

690 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:07:00.60 ID:vGBiMEoLP
司令官「そうだ、そこまで文句があるなら、
 貴様がやれば良いではないかっ!」
東の砦将「はん!?」
司令官「き、貴様が司令官だ! 貴様がこの街を守れば良かろう!
 それだけ大口を叩くからには貴様はこの街を
 治められるのだろう? あ? 歴戦の傭兵様なのだろう?」
東の砦将「……わかった」
司令官「そうかそうか、貴公が誓約をするのだとなれば、
 我も安心して援軍を出せるというもの! あははははは。
 この先この都市を万が一魔族に奪い返されるようなこと
 あれば全て貴公の責任であると。そう心得よっ!!」
東の砦将「我が砦の将兵に、民間人のために命を惜しむような
 不届きものは一人もいはしないっ」
司令官「いいや、極光島にいるのは魔族の猛将、南氷将軍と
 聞いた。わたしはあくまで全軍をもって援軍に向かうぞ。
 この魔界のような訳のわからぬ地を、兵を減らして移動
 するバカは居はせぬわっ!」
東の砦将「〜っ!」
司令官「ははは! 同じ軍のよしみ、500ほどは置いて
 行ってやる。それでどうにかするが良い! 傭兵めっ!」

692 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 18:12:33.26 ID:vGBiMEoLP
ダッダッダ、バタン!!
東の砦将「あーあ、んったくよぉ」ボリボリ
副官「大将、大変なことになっちまいましたね」
東の砦将「ん? まったくだ。やりきれんな」
副官「どうしやす?」
東の砦将「どうもこうもない。仕方がねぇ、四方砦は
 全て退去だ。守るだけの兵力はねぇ。全員都市に  よびよせちまえ」
副官「はっ!」
東の砦将「それから街の有力商人を呼び寄せろ。
 街に住む魔族の主立ったメンバーも、そうだな、
 合わせて10人位招くんだ。
 付近の有力魔族にも特使を送り出せ」
副官「え? どうするんですか!?」
東の砦将「兵力がないんだからしかたねぇだろう。
 頭下げて頼むんだよ。臨時の自治政府だ。
 今日をもって、この開門都市は人間の領地じゃねぇ。
 交流都市として自治してくっきゃなかろうがよ」