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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part15


557 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:26:53.49 ID:vGBiMEoLP
魔王「勇者、わたしは弱虫になってしまったよ。
 世界を変えることが恐ろしい。
 戦争とはこんなに恐ろしい物だったんだな。
 それではわたしもやはり、血に抗争の遺伝を
 流れさせる魔族の一人であったのだ。
 あんなに躊躇いなく流せていた血なのに……」
魔王「わたしは……。がんばっているぞ?
 勇者。
 勇者も頑張っているのか?
 褒めて欲しいぞ」
勇者「おう。――偉いぞっ。魔王」
魔王「勇者ッ!?」 がたんっ
勇者「おっす」にこっ
魔王「勇者、勇者っ! 勇者っ」
勇者「お、なんだよっ」
魔王「このうつけ者っ。一年もの間どこをほっつき
 回っていたんだっ。糸の切れた凧とはお前のことだっ」
勇者「痛っ、痛いぞ、魔王。ぼこぼこ殴るなっ」
魔王「えい。この程度では飽き足らない!」
勇者「わぁった。ごめん。すみませんっ。
 わたくしが悪ぅございましたぁ〜」
魔王「謝罪に誠意が足りないっ!!」

562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:31:15.17 ID:vGBiMEoLP
勇者「だ、だ、だいたいなっ!」
魔王「ふんっ」
勇者「ちゃんと報告書は届けていたじゃないかっ」
魔王「あんなものは報告書とは言わん。絵日記というのだ!」
勇者「え、え、絵日記!?」
魔王「その。か、顔を見せに来ても良いではないかっ」
勇者「仕方ないだろうっ。こっちはこっちで忙しかったんだよ。
 いまだって『開門都市』の件でてんやわんやなんだ。
 北の砦に物資を運ぶ方法で頭を痛めているしっ」
魔王「何故そんなことをしてるんだ」
勇者「魔王が言ったんだろうっ。強硬過激派の芽を
 そいでおけって! 忘れたのかよっ」
魔王「勇者のでたらめな超絶破壊魔法で
 やってしまえば良いではないか」
勇者「出来るわけ無いだろっ」
魔王「……?」
勇者「みんな生きてるんだ。がんばってるんだぞ。
 毎日毎日少ない手持ちと、なけなしの希望でさ。
 そんなのいっしょくたに壊すなんて、出来るわけ無い」

565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:35:17.72 ID:vGBiMEoLP
魔王「勇者……」
勇者「妖精の女王だって、森歌族だって」
魔王 ぴくっ
勇者「竜の公女だって、鎧族の娘だって、酒場の子だって」
魔王 びきびきっ
勇者「みんな、一生懸命なんだもんよ。勇者だからって
 壊して良いなんて事、あるわけない」
魔王「そんなことを云って、本当はもてもてで
 娘たちに囲まれて鼻の下を伸ばしておったのではないか!?」
勇者「そっ。そんなことはナナナ無いぞ! 断じてないっ」
魔王「そうなのか? 本当にそうなのか!?」
勇者「えー。その件につきましては誤解があるのでしたら
 前向きな調査の上説明して差し上げたく」
魔王「その調査には是非串刺しを取り入れるべきだな」ぎらっ
勇者「そ、そ、そんなこと云ったって……あっちから……」
魔王「なにか?」ぎろっ
勇者「そ、そうじゃなくてだなっ!」

571 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:38:19.90 ID:vGBiMEoLP
勇者「魔王だってなんだよ。若い公子とか、都の貴族とか
 エリート商人かなんかかららぶらぶ光線出されてたん
 じゃないのかよっ」
魔王「あっんの、メイド長めっ。口止めしておいたのに」
勇者「え? マジなの?」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「あ、あれはだなっ! 決してやましいものではなく
 いわば決闘にも似た交渉の場での出来事でだなっ!!
 そもそも高度な交渉というのは妥協と駆け引き、
 決意と損益が火花を散らす戦場と言っても良い場所でっ」
勇者「……」 ずぅぅぅん
魔王「勇者っ。なんだそのざまはっ
 沼地にはまった石巨人のような顔をしおって!」
勇者「いや、だって」 ずぅぅぅん
魔王「ええい、この軟弱者っ」

575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:43:02.07 ID:vGBiMEoLP
勇者「軟弱とは何だよっ。俺頑張ってたのにっ!
 ぷにぷに魔王めっ!!」
魔王「ぷっ!? ぷにぷにっ!? ぷにぷにと云ったか!
 この口かっ! この口かっ!」ぽかぽかっ
勇者「痛いっ、やめれっ!」
魔王「わたしはこれでも毎日すとれっちとか体操してたのだ!
 逆立ちだって頭をつけば出来るようになったのだ!」
勇者「お前魔王のくせに何でそう、みみっちい努力が得意なんだよ」
魔王「みみっちい云うな!
 全ての野望は一歩目の努力から始まるのだ!」
勇者「このバカ魔王っ!」
魔王「アホ勇者っ!」
勇者「ひきこもりめっ」
魔王「放浪うつけ者っ!」
〜♪ 〜〜♪
勇者「……はぁ、はぁ」
魔王「……むぅー」
〜♪ 〜〜♪
勇者「やめよう」
魔王「うむ」

577 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:50:40.29 ID:vGBiMEoLP
勇者「……これ、なんだ?」
魔王「これか、これは村長の家から流れてくるらしい」
勇者「年越祭の、音楽か?」
魔王「そうだろう」
〜♪ 〜〜♪
勇者「明かりつけて良いか?」
魔王「いや、ダメだ。白衣はしわしわだし、寝癖があるのだ」
勇者「自分でばらしてたら意味ないじゃないか」
魔王「そんなことはない。予告編と本編では衝撃が違う」
勇者「あー。もうっ!」
魔王「?」
勇者「ま、魔王はいつでも美人で、その……素敵だよっ」
魔王「え、ええっ!? な、な、なにをっ」
勇者「べつにっ」ぷいっ
魔王「ううううう」
勇者「――ご馳走食べに行かなくて良いのか?
 年越祭なら、子豚の丸焼きやら、酒やら、マスのはいった
 香ばしいパイやら、香草包みやら、キノコのオムレツも
 出るだろう?」
魔王「いい。ここにいる」
勇者「じゃぁ……あー。えー……。一曲、どうだ?」

578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:54:36.09 ID:vGBiMEoLP
〜♪ 〜〜♪
 ――right step foward. right step foward.
魔王「こ、こ、これでいいのか?」
勇者「もうちょい胸を張って」
魔王「こうか?」
勇者「上等」
〜♪ 〜〜♪
 ――1/4 turn left step left.
魔王「あ、足を踏んでも赦すんだぞ? 真っ暗だから」
勇者「いや、雪明かりで見えるよ」
魔王「それはそうだけど」
勇者「白くて、キラキラして、きれいだ」
〜♪ 〜〜♪
 ――1/2turn right step left back.
魔王「……優しい曲だ」
勇者「古王国の輪舞曲だって聞いたことがある」

581 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:56:38.50 ID:vGBiMEoLP
〜♪ 〜〜♪
 ――Touch left next to right & Clap.
勇者「そこで右へ半歩」
魔王「こうか? こうか?」
勇者「上手いじゃないか」
魔王「もっとましな服を着ておくんだった」
勇者「誰も見てないよ」
〜♪ 〜〜♪
 ――right step foward. right step foward.
魔王「だ、だって。あっ」
勇者「大丈夫か?」
魔王「すまん」
勇者「魔王は良い匂いだな」
〜♪ 〜〜♪
 ――left step foward. 2turn left step right back.
魔王「目が回りそうだ」
勇者「輪舞曲は苦手か? ターンが多いからなぁ」
魔王「そうじゃない……けど」

584 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:00:42.06 ID:vGBiMEoLP
〜♪ 〜〜♪
 ――right step foward. right step foward.
勇者「これ」
魔王「これは……私が使っていた櫛だ」
勇者「魔王城へも行ったんだ」
〜♪ 〜〜♪
 ――1/4 turn left step left.
魔王「この櫛は小さな頃から使っていたんだ。
 無くしたかと思っていた……」
勇者「大事に使っていたっぽい感じだったからさ。
 もしかしたらと思ってな」
魔王「うん……」
〜♪ 〜〜♪
 ――1/2turn right step left back.
勇者「安上がりで悪いけど、それが年越祭のプレゼント」
魔王「……勇者」
勇者「ん?」
魔王「プレゼント、無い。……わたし用意してないんだ」

587 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:04:02.91 ID:vGBiMEoLP
〜♪ 〜〜♪
 ――Touch left next to right & Clap.
勇者「気にするなよ。礼を期待してやってるわけじゃない」
魔王「それはそうだろうが……」
勇者「魔王は俺のものなんだよな?」
魔王「もちろん」
勇者「それを聞きに帰ってきたんだよ」
〜♪ 〜〜♪
 ――right step foward. right step foward.
魔王「どうしたんだ? なにか辛いことでもあったのか?」
勇者「いや、頭が悪くてさ。俺。回り道して」
魔王「……」
勇者「勇者の頃は、出てきた敵を順番に倒していれば
 みんなに褒めてもらえたんだ。勇者なんて簡単なものだよな」
〜♪ 〜〜♪
 ――left step foward. 2turn left step right back.
魔王「勇者」
勇者「ん?」
魔王「わたしも、やっぱり勇者に、その……」

589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:07:48.76 ID:vGBiMEoLP
〜♪ 〜〜♪
 ――right step foward. right step foward.
魔王「あの、そのぅ、だな。
 勇者にあげられる価値あるものなんてだな」
勇者「……え、あ?」
魔王「何でこのような時に限って、
 手のひらが汗でペとぺとするのだっ」
〜♪ 〜〜♪
 ――1/4 turn left step left.
魔王「うううう。……静まれ我が魔心臓よ。
 そは決戦の時ぞ、ゆ、ゆ、勇者っ」
勇者「ま、ま、魔王? すごい気迫だぞ?」
〜♪ 〜〜♪
 ――1/2turn right step left back.
魔王「ゆ、勇者。えっと……」ぎゅっ
勇者「それじゃステップ踏めないって魔王。
 ……魔王?」

591 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:11:32.45 ID:vGBiMEoLP
〜♪ 〜〜♪
魔王「勇者とくっつくのも、一年ぶりだ」
勇者「こっちだって」
〜♪ 〜〜♪
魔王「その……勇者が良ければだな。持ち主として
 褒美を取らせてもだな、もちろんまだまだ駄肉で
 ぷにってる訳で褒美というか罰ゲームかもしれないという
 疑いはなきにしもあらずなのだがいやそれは
 横に置いて報償というものは信賞必罰と云ってだな」
勇者「えっとその」
魔王「勇者……?」
勇者「……」
魔王「……」
〜♪ 〜〜♪ ……♪ ……
魔王「お、音楽終わってしまったな!!」 ばっ
勇者「そ、そうだなっ!! 離れないとっ」 ばばっ
魔王「……うううー」
勇者「……」 わたわた
魔王「――も、もうちょっとだったのにっ」

594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 13:18:53.12 ID:vGBiMEoLP
――冬越しの村、雪明かりに照らされる一室
魔王「行くのか?」
勇者「ああ。魔王と会えたから、勇気百倍さ」
 
かちゃ、がちゃ。
魔王「みんなとは、良いのか?」
勇者「魔王は随分人間くさくなったな」
魔王「弱くなったのだ」
勇者「それはこっちも同じだ」
魔王「今度は程なく会えような」
勇者「ああ。一月もかけず、『開門都市』を攻略する」
魔王「出来るのか?」
勇者「魔王と話したからな。糸口は見えたよ」
魔王「こちらも見えてきた」
勇者「次に会うのは」
魔王「戦火の交わるところになるだろうな」
勇者「おっし、準備できた!」
魔王「勇者」
勇者「おうっ」
魔王「構えて遅れは取るまいぞ?」
勇者「心配無用。……俺は魔王の剣にして道だ」
しゅわんっ!!
魔王「君は……わたしの光だよ」

625 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:26:30.42 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、冬の国野営地
義勇軍兵「ほーうい!」
志願兵「交代だ! 差し入れをもってきたぞ」
兵士「ありがたい、なんだ?」
義勇軍兵「ナッツとベーコン入りの黒パンだよ」
志願兵「豪勢だなぁ!」
兵士「年越祭の残り物だそうだよ」
義勇軍兵「そうなのか? 祭りのご馳走もたっぷりだったのに」
志願兵「自分はあんな祭りは初めてでした」
兵士「ああ、今年はひときわ豪勢だったよ」
義勇軍兵「そうなのか?」
兵士「うん。我が国は、少しずつ暮らし向きが
 良くなってきているようだ。
 ねぇ、そうでありますよね! 士官殿」
士官「うむ、そうだなぁ。……ええい、ちゃんと
 見張りをせんかっ!」
義勇軍兵「はっ!」 がしゃ
兵士「はぁっ!」 がしゃん!
士官「まぁ、今のところ敵軍も見えないが」
義勇軍兵「こちら側の陸地へは攻めてこないのでしょうか」
士官「過去の大規模進行の記録はないが、
 人間軍がここに野営地を築いていることは
 向こうも承知だろう。油断は禁物だ」

627 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:32:03.15 ID:vGBiMEoLP
義勇軍兵「それにしても……」
志願兵「ん?」
義勇軍兵「いいのかな。俺たち、ここでもう二週間だぞ」 志願兵「ああ、そうだな」
義勇軍兵「確かに寒い中、厳しい訓練をさせられているけれど
 それだけで戦に勝てる訳じゃないだろう?
 こうやって、ただ飯を食っていて良いのかなぁ」
志願兵「お偉方には、お偉方の考えがあるんだろうさ」
兵士「船が足りないんじゃないか?」
義勇軍兵「ふむ」
志願兵「そうなのか?」
兵士「ここにある船じゃ、半分も乗せられない。
 おそらく船が到着するのを待っているんだろう」
女騎士「見張り、ご苦労!」
士官「敬礼っ!」
 
ザザザッ
女騎士「ここが耐えどころだ。気を抜くな」
義勇軍兵「はっ!」
女騎士「訓練はどうだ?
志願兵「剣の使い方を教えて貰いましたっ!」
女騎士「戦場で己を生き延びさせるのは、常に己だからな。
 わたしも守ってやることは出来ない。腕を磨けよっ!」

628 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:36:42.00 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、臨時作戦本部
冬寂王「……補給物資は? ふむ」
執事「斥候が戻りました。まだ動きはないそうで」
女騎士「なかなかに、焦れるな」
冬寂王「将軍でもそうか?」
女騎士「将軍と呼ばないで欲しい。臨時の肩書きだ」
執事「にょほほ。誰に恥じることない胸ですのに」
女騎士「斬られたいか」ぎろり
士官「よろしいでしょうかっ!」
執事「む、入れ」
士官「お客様がお見えですっ」
冬寂王「客?」
士官「紅の学士、と名乗っております。荷馬車隊と一緒でして」
女騎士「学士殿か。来て頂けたんだなっ」
執事「おお」 冬寂王「噂の天才的学者殿か? かねてから一度お会いしたいと
 は思っていたのだが、なぜ戦場へ?」
女騎士「王よ、学者だとは思わない方が良いぞ」ぼそり

631 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:43:04.03 ID:vGBiMEoLP
魔王「わたしは紅の学士を名乗るもの。お初にお目にかかる」
執事「こ、これはっ」
女騎士(まさか、魔の気配に気付かれるのかっ!?
執事「にょほー。たいそうな胸でございます」
女騎士 がっ
執事「〜っ!」
冬寂王「挨拶痛み入る。わたしが冬の国の冬寂王だ。
 もっとも即位したての若造だがな」
魔王「いいや、王の器量は冬越し村にまで響いてきている」
冬寂王「実績がないゆえ、期待感だけがあるのだ」
執事「お茶でも入れますかな」
魔王「ありがたい」
冬寂王「ところで、どのようなご用件で?
 我が国の農業を支えてくれている方だと伺っている
 是非一度お目にかからねばと思っては居たのだが
 無理難題を積み上げられてしまってな。
 ご挨拶も出来ぬままだった。申し訳ない」
魔王「ご丁寧に。すまないことだ。
 ところで、王よ」
冬寂王「なんだろう?」
魔王「勝つつもりなのだろうな?」

634 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:47:32.48 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「無論」
魔王「是が非でも?」
冬寂王「あの島を取り戻すことは、
 今の南部諸王国には必要なのだ」
魔王「どのような意味合いで?」
冬寂王「南部諸王国の、誇りを取り戻す」
魔王「ふむ」
冬寂王「現在の南部諸王国は、
 云われるままに戦をする使い走りのような
 国とも言えないような国でしかない。
 あの島を取り返せば、わずかとは言えいくつかの交易路が
 安定をするはずだ」
魔王「……」にやり
冬寂王「金のために将兵の命を掛けるとそしられようが」
魔王「いや、良い。理解は浅いが十分だ」
女騎士「まったく……」

635 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:51:34.98 ID:vGBiMEoLP
執事「若に対して無礼な!」
女騎士「弓兵。私たちの出る幕じゃない」
魔王「無礼はわびよう」
女騎士「もしかしてブラックパウダーですか?
 そんなものが無くても、わたしは負けたりはしないと
 云ったじゃないですか」
魔王「いや、ちがう。もってきたのは、塩だ」
冬寂王「……っ!」
女騎士「塩……」
執事「どこでそれを……」
魔王「馬車に6台分ほど用意してある。何かの役に立つかとな」 冬寂王「あなたは……」
魔王「……」
冬寂王「50里の彼方にいて、我が手の内を読むか」
女騎士「そうゆうことがある人だから」
執事「学士とは……そこまで……」
魔王「勝つつもりでいるのなら、あるいはと思っただけだ」

640 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 15:57:15.54 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「この戦に何を望まれる? その塩の代価は?」
執事「報償ですか? それとも宮殿の地位?」
魔王「地位は、とりあえず……そうだな。
 登城が出来る程度の肩書きがあれば面倒がないな」
冬寂王「よし、許そう。だがそれだけだとも思えない」
魔王「時間が所望だ」
冬寂王「時間……?」
魔王「あるいはそれは戦場において黄金よりも
 価値があるやもしれないが」
冬寂王「……」
魔王「わたしは勝利を求めたことはない。
 だから勝利では足りない部分を司ろうと思う。
 そのためには時間が入り用だ。
 長くて一昼夜」
冬寂王「ありえんっ。奇襲が成立せんではないかっ」
魔王「それでも方策はある。女騎士殿ならばな」
執事 ちらっ
女騎士「まぁ、学士様が言うんなら有るんでしょう」