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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part14


418 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 01:31:38.30 ID:vGBiMEoLP
魔王「これから、戦場へ赴く……友に。
 それは酷い仕打ちだと思う。酷い裏切りだと思う。
 わたしは女騎士殿と何の契約も交わしていない。
 修道会と技術頒布の契約を交わしただけだ。
 だから、わたしが女騎士殿に感じる
 この罪悪感は無意味な物なのだ。
 そのはずだ。
 しかし、それでも胸からぬぐえない」
女騎士「まぁ、要するに」
魔王「……」
女騎士「そのブラックパウダーとかいうのは
 特性の広域殺傷用魔法のような物でしょう?」
魔王「ああ」
女騎士「すごく強力で、すごく便利で、素人でも
 使えちゃうかもしれないけれど、いってみれば
 そういうものでしょう?」
魔王「そうだ」
女騎士「わたしはそんな物が無くても負けないから」

420 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 01:34:55.59 ID:vGBiMEoLP
魔王「それだけじゃない。……わたしは」
女騎士「……?」
魔王「女騎士殿に嘘をついているんだ」
女騎士「……」
魔王「ずっとみんなにも嘘をついている」
女騎士「……」
魔王「だから、今夜はここへ来たんだ。
 これもまたわたしが望んだことだから。
 かつて見たことのない『丘の向こう』のひとつだから。
 女騎士殿。
 わたしは……。
 わたしは魔王なんだ」
女騎士「……」
魔王「……」
女騎士「わたしが、湖畔修道会の修道院長だってしってるよね?」
魔王「ああ」
女騎士「光の精霊に仕えていることも」
魔王「もちろん知っている」

427 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 01:40:09.20 ID:vGBiMEoLP
女騎士「では、私、女騎士が
 聖なる光の精霊の信徒の一人として
 湖畔修道会の修道院長として
 魔王、あなたの告悔を受け入れましょう」
魔王「え?」
女騎士「あなたは友に嘘をついた。
 それを友と精霊に告白をした。
 あなたの罪は洗い清められた。
 何の問題も有りはしない」
魔王「魔王なのに……?」
女騎士「懺悔の内容は嘘をついたことでしょう?
 それとも、なに? 魔王であることに罪の意識があるの?」
魔王 ぶるぶる
女騎士「勇者を横取りしようとしたこと反省してるの?」
魔王 ぶるぶる
女騎士「じゃ、この件はそれで終了で良いでしょう。
 湖畔修道会はごちゃごちゃした儀礼苦手なのよ」

439 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 01:46:30.44 ID:vGBiMEoLP
魔王「し、しかし!」
女騎士「いいじゃない。手早くて」
魔王「それじゃ……女騎士殿はっ」
(やー。わるいなぁ。女騎士よっ。
 俺ちょっとさ、また魔界へいってこなきゃならねんだわ!)
(そんでさ、申し訳ないけど、俺の代わりに
 剣の先生やっといてくれねぇ? ひよっこどもだから
 面倒くさきゃ毎日走らせておけばいいよ。
 逃げ足ってのはいつまでたっても重要だからさ)
(そんでさ)
(やー。いいづらいな、ほれ。あれだよ、察しろよ)
(うん、そうそう。あいつ魔王でさ〜。
 痛っ!? ま、ま、まじ。や、やめて!? 両手剣は止めて!)
女騎士「何の問題もない」
(な、頼むよ。ほんと。土下座するから。
 あれは魔王だけど……。その、悪いやつじゃないんだ。
 頭はぶっ飛んでるし、常識ずれてるけどさ。
 義理堅い、約束を破るヤツじゃないんだよ)
女騎士「何の問題もないんだ」

447 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 01:51:44.43 ID:vGBiMEoLP
女騎士「おい、魔王!」
魔王「お、女騎士殿……」
女騎士「こうなったら『殿』なんてつけるのは
 やめにして欲しいな」
魔王「……それは」
女騎士「たしかに、勇者はあなたと契約をした。
 あなたと勇者の間には特別な絆があるかもしれない。
 それはまぁ……。
 悔しいけれど、仕方ない。認める」
魔王「……」
女騎士「でもね、絆は一つじゃない。
 わたしは勇者に信頼されたんだ。それはわたしの宝だ。
 わたしは……わたしだって勇者を裏切らないっ」
魔王「女騎士殿……」
女騎士「だから心配なんてしないで。こんな戦で
 わたしが毛筋ほども傷つくなんてあり得ない。
 まだまだ降りるつもりはないんだからねっ」

456 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 02:04:09.11 ID:vGBiMEoLP
――冬の国、海岸資材集積地
開拓民「ほーぅい! ほーぅい!」
開拓民「よーそー。ようそー」
開拓民「あげろー! もっとあげろー!!」
冬寂王「どうだ?」
士官「はっ! これは冬寂王! 云って頂ければ報告を
 お持ちしましたのに」
冬寂王「足が不自由な年寄りじゃねぇよ」
士官「作業は順調であります」
開拓民「ほーぅい! ほーぅい!」
冬寂王「よー!! 精が出るな!!」
開拓民「あんれ! 王様だよー!」
開拓民「王様だー!」
開拓民「冬寂王だー!」
冬寂王「すまねぇががんばってくれ! 夕暮れになったら
 宿舎に熱い酒でも届けさせるからな!」
開拓民「任せてくだせぇ、王様!」
開拓民「ほーぅい! ほーぅい! 王様のために木を切るよ!」

459 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 02:07:21.56 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「みんな表情に力があるな」
士官「王が回ってるお陰ですよ」
冬寂王「何ほどのことも出来てやしないさ。
 おお、丁度良いところに」
漁師「おお、王様。戻ってきました」
冬寂王「アレはどうなってる?」
漁師「近いですだ。今年も必ず」
冬寂王「どれくらいになるかね」
漁師「年越しをしてから、2週間ほどかと」
冬寂王「ふむ」
士官「野営地の拡充を検討すべきですね」
冬寂王「足りないか?」 士官「志願兵が……これは大陸中央部からですが
 思ったよりずっとやってきています。このままでいくと  今の2倍の野営地があっても足りないかもしれません」
冬寂王「ふむ、そっちの手を先に打ってくれ。
 開拓民が必要なら、ふれを回せ」
冬寂王「で、あるならば外套と手袋が必要だ。
 指が氷っちまったら作業も何もないからな」
青年商人「その件はわたしが対応しましょう。
 『同盟』の名にかけて」

462 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 02:12:27.31 ID:vGBiMEoLP
――第二次極光島攻略作戦、臨時作戦本部
執事「はっはっは。お久しぶりでございます。
 女騎士殿、お変わりないようで欣快に堪えません」
女騎士「爺さんもまったく変わらないな」
執事「ほっほっほ。女騎士殿もお胸のサイズが変わらないようで」
女騎士「斬るっ!」
執事「にょっほっほっほ。にょっほっほっほっほ」
女騎士「その妖怪じみた動きっ! いい加減にしろっ!」
執事「にょっほっほっほ。これは森の中で密かに動くための
 弓兵独特の穏行術ですよ、にょっほっほっほ」
女騎士「ええーい、だから爺さんは昔から苦手なんだっ!
 じっとしろっ! そのヒゲをさっぱりつるつるにしてやるっ」
執事「おや、まさかまだつるつるなのですか!?」
女騎士「〜〜っ!!!」

467 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 02:17:58.87 ID:vGBiMEoLP
執事「にょっほっほ! まだまだこんな物ではありませんよ」
女騎士「ええーい! 器用に腰だけ分身するなっ!!」
執事「まだまだ増えますぞっ!」
冬寂王「あー。なんだ。本当に仲が悪いのか?」
女騎士「こ、これは冬寂王っ!」
執事「若っ。のぞき見とはちとはしたないですぞ」きりっ
冬寂王「……」じー
執事「こほん。女騎士殿、こちら冬の国の冬寂王でございます」
冬寂王「……」じー
女騎士「……なんだその変わり身」
執事「何のことでございますかな?」
冬寂王「爺はこうだったのか?」
女騎士「最初から最後までこうでした」
執事「な、なんのことですかなっ!?」
冬寂王「我が国の者がご迷惑をおかけして申し訳ない」
女騎士「いえ、仕方有りません。しつけをしてください」
執事「若っ!」

472 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 02:25:01.79 ID:vGBiMEoLP
冬寂王「ともあれ呼集に快く応じてくださって
 感謝してもしきれません、女騎士殿」
女騎士「顔を上げください。一国の王ではありませんか」
冬寂王「いえ、我ら一同あなた方には返しきれないほどの
 借りがあります。そのせいで、爺など連絡を渋る始末で」
女騎士「そうなのか?」
執事「胸が育つ時間を猶予で差し上げたかったのです」
女騎士「斬るっ」
執事「にょっほ……こほん、こほんっ」
冬寂王「早速で悪いのですが、こちらへ」
女騎士「は、その方が助かります」
冬寂王「これはこの近辺の地図になります」
女騎士「かなり正確ですね」
執事「わたしが直々に指図して作りましたからな」
冬寂王「だ、そうです」
女騎士「加齢臭がしますね」
執事「なっ!?」
冬寂王「では、戦略の概要を検討するとしましょう」
女騎士「お聞きしましょう。新しき英雄との噂
 我が友の二人の代わりに見届けさせて貰う所存です」

529 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 11:17:18.21 ID:vGBiMEoLP
――冬越しの村、降り込める雪
小さな村人「ほーぅい! ほぅい!」
中年の村人「寒いねぇ」
鋳掛け職人「まったくだぁよ」
小さな村人「今年の雪は大粒だなや」
中年の村人「ぽってりした感じだでなぁ。年が明けてから
 急に寒くなるかもしんねだなぁ」
鋳掛け職人「冬籠もりの準備は終わったけぇ」
小さな村人「ああ、今年はよくがんばっただぁよ」
中年の村人「うちでも、今年は倍もベーコンを作っただ。
 それなのに、豚は去年の3倍も居るだぁよ」
鋳掛け職人「ああ、カブなのかい?」
小さな村人「そうだねぇ。今年はイノシシも捕れたし」
中年の村人「何年ぶりだろう、こんなに豊作な冬は」
鋳掛け職人「良かったねぇ。うちもこの冬に、
 注文して貰った農具の直しを全部やっちまわねぇと」
小さな村人「豚っ子の小屋を少し手直ししてやんねぇと」
中年の村人「雪の中でか? そりゃいそがねぇと!」

533 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 11:21:58.44 ID:vGBiMEoLP
鋳掛け職人「そういえば、学士様が来てもう1年以上だなや」
小さな村人「ああ、そうだなや」
中年の村人「学士様には世話になっとるだなぁ」
鋳掛け職人「ああ、そうだそうだ。修道院が出来てから
 オラの所にもお客がたくさん増えただぁよ」
小さな村人「考えてみたら、村の人も増えただなや」
中年の村人「ああ、そうだ。今年のお祭りはきっと賑やかだぞ!」
鋳掛け職人「年越祭か?」
小さな村人「年越祭だ!」
中年の村人「ああ、楽しみだなやぁ!」
鋳掛け職人「一年で一番良い日だなや」
小さな村人「今年は戦に行ってる人もいるんだけども」
中年の村人「ああ、そうだ。修道院で、戦に行ってる人に
 年越祭の届け物を集めるっていってたなや」
鋳掛け職人「そうかぁ。ジョッキを送ったら使って
 もらえるだろかー?」 小さな村人「鋳掛けさんのジョッキなら大歓迎だでよ!」
中年の村人「おら、ベーコンおくるべぇか。今年は沢山出来たし」
小さな村人「じゃぁ、おらも何か贈り物用意せんとなぁ」

535 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 11:26:00.18 ID:vGBiMEoLP
――冬越しの村、村はずれの館……年越祭の夕べ
メイド妹「〜♪ ふふぅん〜♪」
メイド長「料理の準備は?」
メイド妹「でーきました〜♪」
メイド長「語尾を不必要に伸ばさない」
メイド妹「はぁい」うきうき
メイド長「まったく……。そんなに楽しみですか」
メイド妹「それは楽しみだよう!」
メイド長「よく判りませんね」
メイド妹「眼鏡のおねーちゃんは引っ越してきたから。
 年越祭はこの国では一番大きなお祭りだよ〜」
メイド長「ふむ」
メイド姉「そうなんですよ?」
メイド長「ああ、メイド姉。書類整理はどうでした?」
メイド姉「はい。帳簿整理も、出納管理も一段落しました
 荷物にはタグを全てつけましたので、明日にでも、
 人手を借りられれば修道院の倉庫へ移せます」

537 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 11:34:02.20 ID:vGBiMEoLP
メイド長「ありがとう。それで……」
メイド姉「はい?」
メイド長「そんなに賑やかな祭りなのですか?」
メイド姉「賑やか、と云うのとは違いますが……。
 この地方の冬は厳しくて、ほぼ四ヶ月は
 ろくに屋外には出られません。
 長い冬の間は家畜の世話をするくらいしかないんですよ。
 もちろん、細工物をしたり、繕い物をしたり、
 夏の間に出来ないことはしますけれどね。
 長い冬の間、大人たちは、そういった細かい仕事をしながら
 退屈を紛らわせます。
 子供は新しいお話を覚えたり、羊の世話を覚えます。
 年頃になった女の子は絨毯を編むことを覚えたりしますね。
 それもこれも開拓民の話ですが……」
メイド長「……」
メイド姉「農奴はもっと惨めですが、それでも冬の寒さだけは
 平等です。長い間表にも出られず、じっと火を守って
 春を待つんですよ? そんな長い冬の間の最大の楽しみが……」
メイド妹「年越祭りなんだよ♪」

539 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 11:45:10.91 ID:vGBiMEoLP
メイド姉「新年を迎える日を挟んで四日間が年越祭です。
 ご馳走を作って、プレゼントを交換するんです。
 農奴はプレゼントを用意することは難しいですが、
 それでも精一杯のご馳走を作ります。
 このときばかりは、地主の方も振る舞いをして
 農奴にベーコンやエールなどを訳惜しみなく与えることも
 よく見られます。みんなで歌を歌ったり、運が良ければ
 吟遊詩人や旅人の珍しい話を聞いたりします。
 年越祭は、長い冬をすごすこの国の人の
 一番楽しみにしている日なんですよ」
メイド妹「眼鏡のおねーちゃん、眼鏡のおねーちゃん」
メイド姉「妹、メイド長様と仰い」
メイド長「お姉さんでかまいませんよ?」
メイド妹「おばさんって云うと怒る……」
メイド長「吊されたいんですか?」ちらっ
メイド妹「……え、えっと。眼鏡のおねーちゃん。
 踊りに行っても良いんだよね?」
メイド長「ええ、かまいませんよ。
 そう言うことならば、是非いってらっしゃい」
魔王「うむ、そうだぞ。行ってくるべきだな」
メイド長「あら、当主様。いらしてたんですか?」

540 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 11:51:56.60 ID:vGBiMEoLP
魔王「そうか、そのような素晴らしい祭りであったのか」
メイド姉「はい」
メイド長「どうされました?」
魔王「いや、さきほど村長と修道士が招待に来たのだが、
 生返事をしてしまったのだ」
メイド妹「えー。よくないよぅ」
メイド姉「こらっ」
魔王「もっともだ。良くない事だ。反省しよう」
メイド妹「当主のおねーちゃんも一緒に行こう?
 あのねー。男の子もいっぱい居るんだよ。
 おねーちゃんはおっぱい格好良いから、誘われるよ?」
メイド姉「こ、こ、こ、こらっ」
魔王「うーん。それはありがたい申し出だが
 遠慮しておくとしよう」 なで
メイド妹「えー」
魔王「メイド長」
メイド長「はい?」
魔王「後で村長の家に林檎酒を1樽とどけてくれないか?
 ほら、味見とか云って商人が送ってきたのがあっただろう」

542 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 11:59:19.56 ID:vGBiMEoLP
メイド長「よろしいのですか?」
魔王「いいだろう? わたしたちでは飲みきるものでもないし」
メイド妹「わたしあとで馬車頼んでくるよー!」
メイド姉「そうね。樽を運ぶのは私たちには無理ね。
 馬丁さんによろしくね」
メイド長「賄賂は空振りですよ、商人様。
 まぁ、商人様には泣いて貰いましょう」
魔王「?」
メイド妹・姉 こそこそ
メイド長「どうしたんです?」
メイド妹「ドジャーン!!!」
メイド姉「えっと」
メイド長「?」
メイド妹「年越し祭りのプレゼントで〜っす!!」 メイド姉「大きな物は用意できなかったのですが……」

544 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:04:12.35 ID:vGBiMEoLP
メイド妹「当主のおねーちゃんには、これですー!」
魔王「これは……?」
メイド妹「ぶらぶら勇者様人形でーっす!」ぶんぶんっ
メイド姉「お恥ずかしい」
魔王「あはははは。すごいではないかっ! くれるのか?」
メイド妹「プレゼントですっ」
メイド姉「わたしからは、スズランの香水です。
 秋口から集めて作ったんです。修道院の資料にありまして……」
魔王「ああ。嬉しいぞ。ありがとうっ」
メイド長「あらあら、まぁまぁ」にっこり
メイド妹「眼鏡のおねーちゃんにはこれでーっす!
 二人で作りました〜!!」
メイド長「え? わたしにもいただけるのですか?」
メイド姉「はい。新しい飾りエプロンなのですが」
メイド長「こんな……」
メイド妹「刺繍はスズラン、お姉ちゃん作っ! でぇす!」
魔王「わたしとおそろいだな?」
メイド姉「はいっ」

546 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:10:25.38 ID:vGBiMEoLP
メイド長「でも、こんな」
メイド姉「あっ。や、やっぱり。縫い目が不揃いですか?」
メイド長「とんでもない! でも……」
魔王「私たちはプレゼントなぞ、用意していないのだ。
 すまんな。祭りのことなど、すっかり失念していた」
メイド妹「そんなのいいよー♪」
メイド姉「ええ、お気遣いなく」
メイド長「……」きゅっ
魔王「しかし」
メイド姉「こんなに優しくて暖かいお屋敷で
 働かせて頂いてるんです。
 毎日プレゼントをいただいているような気持ちです」
メイド妹「わたしたち、すっごく幸せだよ〜♪」
魔王「……お前たち」
メイド妹「それにねー。今年はね」じゅる
メイド姉「もぅっ」
メイド妹「えへへ〜」
メイド姉「この子、もうお祭りのご馳走で頭が
 いっぱいなんです。これ以上幸せになったら、
 子豚さんになっちゃいますよ」

549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:16:22.37 ID:vGBiMEoLP
――冬越しの村、村はずれの館……年越祭の夜
(勇者に膝枕してみたいっ!)
(よしきた)
――勇者
(勇者の頭、もふもふしてるぞ)
(魔王も良い匂いだぞ?)
――勇者に
(そうか? 太くないか?)
(寝心地良いぞ)
〜♪ 〜〜♪
魔王「……んぅ」
魔王「ん……。どうやら、うたた寝してしまったようだな」
魔王「今何時だろう、日は暮れているようだが……。
 だれかー……。だれか……。いないのか。
 村長の所へ行くとか言っていたものな」

553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/07(月) 12:20:54.26 ID:vGBiMEoLP
魔王「……」もそもそ
魔王「資料だらけだな」
魔王「んぅ……。背中が痛い。こんなところで
 寝てしまったからだ」
〜♪ 〜〜♪
魔王「……勇者か」
魔王「……」
魔王「もう一年も、だ」
魔王「……」
魔王「もう一年も、触れてない」
魔王「声が聞きたいんだ」
魔王「わたしは勇者の物なのに……」
魔王「勇者のものなのに」