Part12
140 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 17:30:21.52 ID:Lbanm5QNP
勇者「うーん」
魔族娘 おどおど
勇者「街の中にいる部隊と、そのー。外から帰ってくる
兵隊は、なにがちがうんだ? 何か違いがあるのか?」
魔族娘「そのー、えっと、それは、違くて……」
勇者「ゆっくりでいいぞ」
魔族娘「ミブン? 街に残っている軍団は、
ミブンが高いそうです。
……王様の親戚や、子供達なんだと、思います」
勇者(貴族が中心なのか……。
街の中の安全なところで魔族相手にやりたい放題かよ)
魔族娘「宿舎にお金や……お酒……をあつめて
毎晩、騒ぎを……魔族も、沢山捕らえられているそうです」
勇者(相当に悪い状況だな……。
その気になれば、ゆるみきった貴族のバカ息子なんか
1000だろうが2000だろうが消し炭に出来るけれど
そうなったら周辺砦の1万近い軍勢が暴走するだろう。
仮に人間の軍すべてを倒したとすれば、
今度は魔族による民間人間に対する虐殺だ。
人間全てを守るなんて到底出来ないぞ……)
145 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 17:34:09.41 ID:Lbanm5QNP
勇者「この街には、えーっと、さっきの酒場の
親父みたいに、軍ではない人間も沢山いるんだろう?」
魔族娘 こくり
勇者「だよなー。相当多いのか?」
魔族娘「……多いです。酒場も、肉屋も、服も、
野菜も、全部、人間のお店……魔族は、人間の
半分くらいしかいないはずです」
勇者「魔族は奴隷なんだろう?」
魔族娘「ドレイ……わかりません……。
でも、ひどい痛いことされて、仕事や、
やりたくないこと……
させられ……て……ます……」
勇者「そか」
魔族娘「負けたから……」
勇者「……」
魔族娘「魔族が負けたから、負けたのは、悪だから」
149 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 17:39:37.43 ID:Lbanm5QNP
勇者「魔族は、地獄だな」
魔族娘「……仕方ないです。負けたから」
勇者「これが……」
魔族娘「……」
勇者「これが勇者が勝ち取った戦果なのか……。
俺たちが地竜王や妖将姫と戦って手に入れた
魔族の拠点、開門都市はこうなる予定だったのかよっ。
っていうか、人間が勝ったら魔界は全部こうなるのかよ。
魔族が勝ったら、人間界は全部こうなってっ!」
魔族娘 ビクッ!
勇者「ちがっ。その、すいません」
魔族娘「は、はいっ」おどおど
勇者「……」
魔族娘「で、でも」
勇者「?」
魔族娘「東の砦の人は、あんまり乱暴……しないって。
その代わり、街にもあまりきませんけど……。
魔族なら、逃げたら東に向かえって……
いわれてます……」
152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 17:48:16.93 ID:Lbanm5QNP
勇者「んー」
魔族娘「く、黒騎士様?」
勇者「ん?」
魔族娘「お役に立てず、その……」
勇者「ああ、ないない。そんなことない。
役に立った。情報が手に入ってありがたい」
魔族娘「はっ、はい。その……」
勇者「それにしても……。それだけじゃ……。
いや、魔王なら金流れを追えって云うか……。
情報が足りないな……。調査?
街中でもうちょっと……」
魔族娘「そ、そのぅ……。粗末な物なのですが、
く、く、黒騎士様さえ……よ、よろしければ」 そぉっ
勇者「脚 を ひ ら く なっ !!」
魔族娘「ひぃっ。す、す、すいませんっ!」
勇者「うわぁ、何で俺こんな事になっちゃってるんだよぅ!?」
157 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 18:00:18.70 ID:Lbanm5QNP
――湾岸都市の商会、会議室
青年商人「ふぅーむ」
中年商人「どうだ? 性能的には精度があがったと
銅の国の技術者も自慢していたがよ」
青年商人「いや、すばらしい。――生産の方はどうです?」
中年商人「何とか目処が立ったよ。三つの工房が
協力してくれたからな。月産10個にはなる」
青年商人「ふむふむ。悪くはありませんね」
中年商人「苦労したよ。連中新しい技術に興味津々なのに、
プライドだけは高くてね、まったく」
青年商人「もう一声」
中年商人「はぁ?」
青年商人「もう一声、作れませんかね。月産15」
中年商人「本気か?」
青年商人「ええ」
中年商人「そりゃまたどうして」
とさっ
青年商人「南部諸王国からの報告書です」
160 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 18:06:00.68 ID:Lbanm5QNP
中年商人「これは……。戦か」
青年商人「そのようですね。極光島を奪い返すと」
中年商人「聖王都か?」
青年商人「聖王都と、今回は教会ですね」
中年商人「……」
青年商人「教会の方も何かと物いりなんですかね。
魔族との戦いがないと、教会の求心力が
低下してしまうとのことなんでしょうね……」
中年商人「金も集まらない、と」
青年商人「教皇選挙とのからみもあるでしょう」
中年商人「海戦かぁ。まぁ、商売の種にはなるがな」
青年商人「それはもちろん」
中年商人「それで羅針盤の増産か?」
青年商人「それもありますし、戦船の増産もはじめました。
錫の国の造船ドックは押さえてあります」
中年商人「どう転ぶかね」
162 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 18:20:59.28 ID:Lbanm5QNP
青年商人「まぁ勝てば嬉しいですよ」
ばさりっ
中年商人「海図か」
青年商人「極光島が確保できれば、西回りの交易路が
開通できる。陸路に比べてかなり割安な輸送です」
中年商人「ああ、そうなるな」
青年商人「いま、南部諸王国の生産力はあがりつつある」
中年商人「お前の縄張りだな」
青年商人「ええ」こくり 「この流れを壊したくない」
中年商人「ふむ」
青年商人「それに、さる筋から南氷海の鰊(ニシン)を
注文されています。相当な量の」
中年商人「どれくらいだ? いまでも鰊はあるだろう?」
青年商人「少なくともその5倍」
中年商人「鰊で宮殿でも建てるつもりか!?」
青年商人「鰊を麦に変える魔法だそうで」
165 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 18:31:12.73 ID:Lbanm5QNP
中年商人「ああ、さる筋ってのはあれか、お前の姫君か」
青年商人「僕の星ですからね」
中年商人「お前が恋をするとはね。
金貨と添い遂げるかと思ってたが」
青年商人「同床異夢なんて言葉もありますが
彼女とだったら異なるベッドでも同じ夢を見られる」
中年商人「惚気か、敵わんな」
青年商人「しかし一方負けると、これは相当……」
中年商人「まずいか?」
青年商人「負ければ新しい戦艦の受注が増えるとか
武器の追加発注が来るなんて云ううまみはありますがね」
中年商人「それもこれも、中央の。
云ってしまえば教会の意向次第だろう?
魔族がいる限り戦争をやめるわけにも
行かないが、南部諸王国では政権交代が相次ぐと。
そういうわけだな」
青年商人「どうなるかは判りませんがね」
中年商人「全ては、戦争次第か」
170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 18:38:23.50 ID:Lbanm5QNP
――白夜の国、軍艦ドック
兵士達「……すごい数だな」
兵士達「しぃっ……」
兵士達「はじまるぞ」
ザッザッザッ!
白夜王「諸君! 歴戦の勇士たる諸君!
人間世界の守護の盾たる諸君っ!
時は来た!!
愚かなる魔族がこの母なる大地、
光あふれる我が世界にその汚らしい手を伸ばしてから
およそ15年!!
我らが必死の防衛戦、我らが正義の戦は
一進一退を繰り返し、ついには我らが光の領土
極光島を失うに至った。
われらが魔族の重要拠点、開門都市を制圧した時
差し違えるようにして失ってしまった、
大いなる失点であった」
王子「そりゃなにか? 俺の親父に喧嘩うってんのか、
ああん!? このパーマ頭」
執事「若、若っ、聞こえてしまいます」
176 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 18:45:03.68 ID:Lbanm5QNP
白夜王「しかし時は来た! 聞け、勇士諸君よ!
君たちの眼前にあるのは、世界から結集した
軍艦である。その数200! 勇猛なる諸君が
乗り込めば200の軍艦は、そのまま魔族の心臓に
突き立てられた200の剣となろう!
南氷海、極光島は魔族の精鋭、
南氷将軍を僭称する盗人によって占拠されている。
魔族の戦闘能力は確かに脅威である。
大型魔族は様々な能力を持つだろう。
しかし、数ではこちらが圧倒している。
諸君らがその勇気を我に預ければ勝利は絶対である」
王子「おいおい、まじか? このおっさん
船に乗せたら数なんて意味ねぇぞ」
白夜王「さあ、乗り込もう! 船出の時間だ。
太陽は我らが勝利のために輝いている。
魔族から極光島を取り返した暁には、
大いなる恩賞が約束されるだろうっ。
もっともはやく極光島にたどり着いた船には、
船全員で金貨2000枚が支払われる。
勇士諸君、その力を人間世界のために振るうのだっ!」
178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 18:54:45.74 ID:Lbanm5QNP
――魔界、開門都市、略奪された神殿
カランッ
勇者「ここは、一層ひどいな……」
魔族娘「はい……。ここは、神殿です」
勇者「悪いな、案内頼んじゃって」
魔族娘「いえ、あの。沢山お金もらったから……。
マスターは……その嬉しそうでした。あの……わたしも」
勇者「そうだ。魔族には神様、沢山いるんだろう?」
魔族娘「……ううう、そうです」
ザッザッ
勇者「そうか。人間には精霊様が1人だけだ。
沢山いるといいよなー」
魔族娘「そうですか?」
勇者「神様に怒られた時、他の神様が匿ってくれるだろう?」
魔族娘「そう……かもしれません」
勇者「ふむふむ……。瓦礫が、すごいな……」
魔族娘「黒騎士さま……は、なんで……」
勇者「?」
181 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 19:00:35.73 ID:Lbanm5QNP
魔族娘「なんで、人間なのに……魔王様の騎士ですか?」
勇者「あー。本当は騎士でも何でもないって云うか、
説明が難しいんだけど……。
つまり、なんというか魔王の物なんだ。俺は」
魔族娘「魔王様の?」
勇者「そう」 こくん
魔族娘「持ち物ですか」
勇者「そうそう」
魔族娘「じゃぁ、魔王様に……負けた……のですね」
勇者「へ?」
魔族娘「ちがう、ですか? ……ご、ごめんなさい。
魔族は……魔族では、勝ったものが、負けたものを
……その、自由に……します……から。
ま、間違えました……か?」おどおど
勇者「あ、ああ。そういうことか」
魔族娘「負けた……ですか」
199 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 19:10:18.13 ID:Lbanm5QNP
勇者「いや、それは違うな。
……いや、結果的にはそうなのか?
でも違うような……」
魔族娘「?」
勇者「ちょっと難しい関係なんだ」
魔族娘「そう、ですか……」
勇者「この像は?」
魔族娘「片目の神様、です……。竜族の……神様。
その他にも、沢山信じてます。……魔界では
強い神様……です」
勇者「へぇ、どんな神様なの?」
魔族娘「賢くて、強い……槍を持った……
魔王様みたいな……神様だそうです」 びくびく
勇者「どうしたの?」
魔族娘「私みたいな下級魔族は……入っちゃダメなんです」
勇者「あはははっ。こんな廃墟で何を今更」
204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 19:17:04.38 ID:Lbanm5QNP
魔族娘「こっちの二つは……」
勇者「砕かれちゃってぼろぼろだなぁ」
魔族娘「カラスの像です……。
多分、昔はそうだった、はず……
こっちは『記憶』、右が『思惟』……です」
勇者「そう言う名前なのかな?
物知りだなぁ」
魔族娘「神様の……お手伝いで……あちこちに、
おしらせを……する、係で……賢いです。
カラスは、良い子……です」
勇者「あははは。そっか。使いっぱに伝令させるか。
そりゃぁ、確かに魔王によく似てる」
魔族娘「?」
傷病魔族「死ね……死ね、人間は死ねっ」
勇者「……?」
魔族娘「あ……あの……あっちへ、いきましょう」
勇者「あの声は?」
206 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 19:22:44.86 ID:Lbanm5QNP
魔族娘「あのぅ、こういった廃墟には、
戦で不具になった……その、魔族の人が……
棲み着くんです。ご、ごめんなさいっ……。
か、隠す訳じゃ……無いんですけど……」
勇者「うん」
魔族娘「あの、人間の黒騎士様は……その
い、いやな……気分かなと……。
あっちへ、いきま……せんか?」
傷病魔族「死ねっ! 我らが神都を奪った
放漫なる人間め! 悪魔の侵略者!
何千回でも呪われろ、我らが生活を! 我らが平和を!
襲い、奪い、侵した貴様らには腐った沼の蛆だけが
ふさわしい! 死ねっ! 死んで償えっ!
三千年にわたって呪われるがいいっ!!」
勇者「いや……」
魔族娘「でも」
勇者「いいんだ」
208 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 19:33:09.61 ID:Lbanm5QNP
傷病魔族「あはははは! 死ね死ね死ねっ!!
貴様らに二度と安息など無い! 奪われた死者の魂が
安らぐことなど無いと知れ、永劫が消滅するまで
人間世界など常闇に包まれるがいいっ!!」
魔族娘「……」
勇者「……」
ざっざっざ……
魔族娘「あの、ご、ごめんなさい。あ、れは」
勇者「……」
魔族娘「あんなひと、ばかりじゃ。その……ないです」
勇者「やっぱりさ。違うよ。違ったわ。さっきのさ」
魔族娘「?」
勇者「俺は魔王の持ち物だけど、
負けたから持ち物にされたわけじゃない。
勝ったら全てを得る、勝ったら正義。何をしてもいい。
負けたから持ち物になる。負けたら何をされても仕方ない。
そういうのじゃない。
そういうのじゃない事実が俺なんだ。
俺は……『丘の向こうへ続く道』だ」
211 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 19:49:03.35 ID:Lbanm5QNP
――冬越しの村、村はずれの館
メイド姉「今月分の賃借対照表です」
魔王「うむ」
メイド姉「現金流量が増大しながら不安定です」
魔王「しかたない。新規事業を連続開拓している状態だからな」
メイド姉「損益計算書上は問題ありませんが」
魔王「この世界は金融能力が低いからな。
ヘッジにも限界があるという訳か」
メイド姉「ヘッジ? ……とはなんでしょう」
魔王「危機に対する保険、だな。経理上の」
メイド姉「はい……。うーん、困りますね」
魔王「『同盟』内部には銀行に似た信用貸し付けの
機構があると聞いたな。銀行という概念もどうにか
広める必要があるのだろうが……」
メイド姉「手が足りませんか?」
魔王「そうだな」
213 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 19:52:48.53 ID:Lbanm5QNP
ぱさり
メイド姉「これは?」
魔王「おお、それか。火箭だ」
メイド姉「火箭……?」
魔王「ああ、単純な機構の火矢の一種だ。
燃えながら飛んでいって、当たると炎が広がる。
これはナフサを用いたもので、広範囲に対する
攻撃に効果が見込めるな」
メイド姉「……なふさ?」
魔王「難しかったか? まぁ、武器だ」
メイド姉「……」
魔王「どうした?」
メイド姉「やっぱり、武器も作るんですよね」
魔王「……ああ。備えないのは愚か者だ」
215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 20:00:06.42 ID:Lbanm5QNP
メイド姉「当主様」
魔王「なんだ?」
メイド姉「その……」
魔王「?」
メイド姉「戦争って、何なのでしょう?
なぜおきるのですか? なぜ終わらないのですか?」
魔王「それは随分、難しい問いだな」
メイド姉「すみません」
魔王「なぜだろうなぁ」
メイド姉「……当主様にも判らないのですか!?」
魔王「判らないよ。私をなんだと思っていたんだ?」
メイド姉「この世で判らないことがない方かと」
魔王「私には判らないことばかりだよ」
メイド姉「……」
218 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 20:03:06.73 ID:Lbanm5QNP
魔王「戦争は争いの大規模な形の一つだ」
メイド姉「……」
魔王「争いというのは、摩擦だな。
異なる二つが接触した時に生じる軋轢と反発
作用と反作用のある部分が争いなんだ」
メイド姉「難しいです」
魔王「村に2人の子供がいて、出会う。
あの子は僕ではない。僕はあの子ではない。
2人は別の存在だ。別の存在が出会う。
そこで怒ることの一部分が、争いなんだ」
メイド姉「でもっ! 出会ったからって、
争いになる訳じゃありません。
出会って素敵なことだってあるじゃないですか。
助け合ったり、挨拶をしたり、友達になったり遊んだり」
魔王「そうだな。だから、争いは、
そう言う素敵なことの一部分なんだ。
本質的には同じ物なんだよ」
220 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 20:07:33.62 ID:Lbanm5QNP
メイド姉「そんなこと信じたくありませんっ」
魔王「わたしもだ」
メイド姉「……っ」
魔王「でも、私が学んできたことによれば、そうなんだ。
戦争は沢山の人が死ぬ。
憎しみと悲しみと、愚かさと狂気が支配するのが戦争だ。
経済的に見れば巨大消費で、歴史的に見れば損失だ。
でも、そんな悲惨も、出会いの一部なんだ。
知り合うための過程の一形態なんだよ」
メイド姉「これが、出会いなんですか?」
魔王「そうだ」
メイド姉「辛くて悲しくてひもじくて寒いだけじゃないですか」
魔王「でも、そうなんだ」
メイド姉「……」
魔王「出会いは必然にも似た運命、
もしくは運命に近似した必然だ。
しかし、その結果は違う。
だからせめて……あがきたい」